スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
「そうか、まぁ・・・そうなら仕方ないよな」
少年が現在通っている学校の廊下にて、以前からの友人と会話をしている。
「トレセンにはそういう設備とか、よっぽど充実してるだろうしな。当然そうなる・・・それにトリプルティアラを目指すんだろ?今までのやり方だけでは、足りないんだろうな」
それは少年もわかっている。ただまぁそれはそれとして、物寂しいものだ。
「あー・・・もう完全に馴染んでんな・・・今さらなんだけど、その・・・スティルインラブさんと走っているときってどんな感じだ?」
彼女と走っている感覚、と言うのはやはり楽しさである。ともにいる安心感に充実感、ただ理由なく一緒になり、そして後ろからその存在感を感じること。
それがとにかく好きなのである。
「ふ~ん・・・俺も馬力症であればわかるのかな・・・いや、たぶん変わらんと思う・・・」
少年からしてみればそれこそが疑問だった。なぜ彼女の元気になった走りが恐いのか。
「いやもう完全に感覚的なものなんだけどさ・・・見てると怖く感じたんだよ。お前が理由なく楽しいように、俺はなぜか恐く感じる・・・本当に理由自体はわからない。けどどうしても、な・・・」
そんなものかと、少年は不服に思った。彼自身、スティルインラブの性格が極端に変わることは初めて会った時から知っている。
だがあくまでも、と言うには少し強引だが、昔観たアニメで普段オドオドとしているキャラクターが、乗り物に乗ると突然激しくなるようなものがあり、少年にとって彼女はそんな性格の子だと納得しているのである。
「そんな変わるか・・・?周りが遅くてイライラするってのならわかるが・・・」
まぁとにかく、少年から見ればどっちもスティルインラブという少女なのである。おしとやかなスティルインラブも、とても元気なスティルインラブも。
「・・・前から思ってたが、そう言うところはすげぇよなお前、ホント」
誉めているというより、呆れている友人の声が
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「ねぇねぇ、あの子初めてあった時ってどんな感じだったの?」
「えっ?か、彼との出会い、ですか・・・?」
「うん」
場所は変わってトレセン学園のトレーナーとスティルインラブの部屋。まだトレーニング開始時間ではないため、とりあえずそこにいた。
「えっとですね・・・その・・・恥ずかしながら・・・」
「・・・どんな感じ?」
「・・・彼が、走ってるところを見つけたんです・・・あの公園で・・・」
「そうね、そこからは具体的に聞いてないから気になってて」
過去にトレーナーは二人の出会いを聞いたが、あくまでも簡潔な説明で終わったため、ふと今気になった。
そんな彼女をよそに、スティルインラブは顔を赤らめ、恥ずかしがっている。
「・・・それがなんですが、その・・・走っているのを見つけて・・・」
「見つけて・・・?」
「・・・追いかけ、たんです・・・」
「ほ~、・・・もしかして、我慢できなかった感じに?」
「はい・・・あぁ・・・今思い出すだけでも、お恥ずかしい・・・あの時の私は、完全にあの子に支配されていました・・・
初めこそなぜウマ娘でないのに、と思ったのですが、気がつけば脚が動いていました。とても止められず、ただ彼を追いかけ回した・・・
ですが、どれだけ走っても追い付けなかったのです。背中が目の前にあるかと思ったら、離されて・・・追い付いたらまた離され
・・・その日から彼から一度もたどり着いたことはありません」
「ほえ~、そんときから速かったんだ」
「はい・・・そして・・・、そして彼は、そんな私を待ってくれてました。追い付けず、脚がもたつく私を、先に行った彼は必ず待ってくれてました。
とても、とても嬉しかった。彼と出会えたからこそ、今の私がいると、断言できます・・・彼と出会えて、本当によかった・・・」
「ひゅ~」
穏やかな表情になり、トレーナーもニヤけが出てしまう。そこでちょっとイタズラとしてこんなことを言った。
「ねぇ、そんときにときめいちゃったの?」
「えっ?ときめくって・・・」
「一目惚れ、しちゃった?」
「・・・っ!?ち、違いますっ!!あのお方とは、そんなはしたない関係では・・・!!」
「あの感じでそういう関係じゃないって、本来無理があるから。まぁあの子、スティルのような美少女に対して下心がマジでないから、タチが悪いんだか・・・」
「び、美少女って・・・そんな、私は・・・」
「いやめっちゃ美少女だから、目立たないこと除けば百人中全員振り向くレベルだから」
「そんな・・・ダメです・・・そんなこと・・・」
「そういうとこ、普通なら男子イチコロなんだけどなあ~。相手が悪すぎる・・・」
少年の、のほほんとした顔を思い出し、力が抜けるトレーナーだった。
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同敷地、屋上。トレセンはここを解放しており、今日は一人、ウマ娘がいる。
キレイなブロンドの長く、ボリュームある髪をしている。また、変わったことに髪の内側は水色になっている。
瞳もマリンブルーの色をしており、幻想的な印象を持ったウマ娘である。
そんな彼女がポツリ、こんなことを呟く。
「・・・彼女自身の《HPED》は、ここでも避けきれないか・・・。それの回避、サーチ、開始・・・
・・・認証、確認出来ず・・・」
ハスキーな声が落ち込んでいる感じがある。彼女とスティルインラブの関係は寮の同室、そして彼女の本能を目にしても無気味がらない、希少な人物の一人、名をネオユニヴァース。彼女は空を見上げて両手を上げている
「・・・ネガティブ。一人、イレギュラーを確認。その対象を参照が必要」
他の人が聞いてもわからないであろう、単語などを独り言するその光景を、少なくとも誰にも見られていなかった。