スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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第三話《紅の契約》

 それは突然のことだった。

 

 トレーナーからの電話にて、スティルインラブがどこか行ってしまった。

 

 本能を抑えて走る訓練の一環としてフリースタイルレースに参加してしまったのが事の発端である。

 

 フリースタイルとは要するに非公式レースのことである。そこで実戦を想定したレースを行っていたのだが、彼女の本能が暴走、結果現場を混乱に陥り、スティルインラブは罪悪感のあまり、今に至る、という。

 

 少年は急いで彼女を探し出す。いつもの公園に道路、とにかくいたるところを探したが、うまく見つけられない。

 

 しかし必死になった甲斐か、ようやく河川敷で見つけることが出来た。

 

 「あっ・・・どうして、ここに・・・?」

 

 いきさつを話す。そして彼は彼女を慰めた。

 

 「・・・あぁ、世界中の人たちが、あなたのように受け入れてくれるのなら・・・この力・・・存分に出すことが出来るというのに・・・

 

 でも・・・そんなことはならない・・・あの舞台に立つには・・・あれを抑えなければならない・・・でも私・・・どうしたら・・・」

 

 非常に弱弱しくなってしまうスティルインラブ。彼はとにかく同情した。優しく彼女を介抱し、少しでも落ち着かせる。

 

 「ごめん!!スティル!!」

 

 少しすると、トレーナーもやってくる。汗だくになりながら、息を整えて彼女に話しかけた。

 

 「私が迂闊(うかつ)だった・・・あんな思いさせて、本当にごめんなさいっ」

 

 「いえ、トレーナーさんはなにも悪くありませんっ。あれだけトレーニングを行ってたのに、私は・・・」

 

 「・・・とにかく、まだやり直せるはず。お願い、希望を捨てないで」

 

 「・・・・・うう・・・」

 

 「大丈夫、君には諦めない勇気がある。信じて」

 

 

 ―――――――――――

 

 

 「・・・暖かそうね。・・・私とは違う」

 

 

 ―――――――――――

 

 

 「本能を利用する?」

 

 「はい、そうでもしなければ。トリプルティアラは手に入れられないかと」

 

 「でも、それは・・・」

 

 「わかっています。ですが、このままでは(らち)が空きません。相応の理由と覚悟が出来ました」

 

 「覚悟?それは?」

 

 「いずれ、また・・・どうか、お願いします」

 

 「・・・OK、キミもそれでいい?」

 

 後日、そんな話を聞かされた少年。突然のことに、彼は関心・・・はできなかった。

 

 不安なのだ。彼女が耐えれるかが。

 

 「ありがとうございます。どうしても・・・どうしても必要なのです。あの子の力が・・・そこで――――さん。どうかあの子と直接話し合ってくれないでしょうか?

 

 あなたであれば、あの子も話を聞いてくれます。どうか、よろしくお願いいたします」

 

 

 ―――――――――――

 

 

 いつもの公園、この日は満月。本能がより顕著になるこの夜。彼らは内なる紅と再会を果たす。

 

 「久しぶり、というにはそこまで経っていないわね。アナタ・・・」

 

 赤く目を光らせ、少年を逃がさんと捉える。彼は頼んだ。スティルインラブの力になってほしいと。

 

 「・・・相変わらず、いけずなのね。ワタシがあなたに、どれだけ思い焦がれていると思っているの?」

 

 妖しく、彼女は少年に近づき、そして首へ腕を絡ませる。近くにトレーナーがいるのだが、お構いなしだった。

 

 「あそこには確かに色々な獲物がいる・・・どの子も、捨てがたい・・・あなたと出会なければ、飢えの限りを尽くしていたでしょうね」

 

 そのまま顔を近づける。まさに目と鼻の先、吐息が顔に当たる。

 

 「けどどの子も、あなたには及ばない。ワタシの愛を直に受け続けたあなたには敵はいない。

 

 そう私さえも・・・

 

 今は」

 

 一度閉じた瞳が、一瞬で見開く。失明しそうなほどに光るその瞳が彼の目に当てられる。

 

 「本当にいいの?この先、ワタシの飢えを満たして。飢えを満たせば満たすほど、あの子(いつものスティル)もアナタを(ほっ)する・・・

 

 もしもワタシとあの子が完全に一つになれば、アナタは確実にいただかれる。その意味が本当にわかっているのかしら?」

 

 ならばと彼はこういう。その日が訪れそうになっても、自分が先を走ると。

 

 「・・・ふふふ、あなたならそう言ってくれると思ったわ。・・・くれぐれも、くれぐれも、忘れないでね?アナタも獲物だということを。

 

 そして()()()()()()()()()()()()()を」

 

 ―――力を分けてくれ―――

 

 「ええ、あなたが望むのなら・・・

 

 イ ク ラ デ モ」

 

 

 ―――――――――――

 

 

 あのお方には常に私の我儘を聞いてくれた。いつも、いかなる時も。

 

 そう、今度は私から恩を返す番。

 

 あのお方の望む走りをし、そしてあのティアラをささげる。

 

 それが私のできる、唯一の使命。

 

 だから・・・誰にも渡さない。

 

 『愛なんて、必要ない―――――』

 

 『無邪気な心も、頂こうかしら』

 

 そう、誰にも渡さない。

 

 どれも、何もかも―――――

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