スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
それは突然のことだった。
トレーナーからの電話にて、スティルインラブがどこか行ってしまった。
本能を抑えて走る訓練の一環としてフリースタイルレースに参加してしまったのが事の発端である。
フリースタイルとは要するに非公式レースのことである。そこで実戦を想定したレースを行っていたのだが、彼女の本能が暴走、結果現場を混乱に陥り、スティルインラブは罪悪感のあまり、今に至る、という。
少年は急いで彼女を探し出す。いつもの公園に道路、とにかくいたるところを探したが、うまく見つけられない。
しかし必死になった甲斐か、ようやく河川敷で見つけることが出来た。
「あっ・・・どうして、ここに・・・?」
いきさつを話す。そして彼は彼女を慰めた。
「・・・あぁ、世界中の人たちが、あなたのように受け入れてくれるのなら・・・この力・・・存分に出すことが出来るというのに・・・
でも・・・そんなことはならない・・・あの舞台に立つには・・・あれを抑えなければならない・・・でも私・・・どうしたら・・・」
非常に弱弱しくなってしまうスティルインラブ。彼はとにかく同情した。優しく彼女を介抱し、少しでも落ち着かせる。
「ごめん!!スティル!!」
少しすると、トレーナーもやってくる。汗だくになりながら、息を整えて彼女に話しかけた。
「私が
「いえ、トレーナーさんはなにも悪くありませんっ。あれだけトレーニングを行ってたのに、私は・・・」
「・・・とにかく、まだやり直せるはず。お願い、希望を捨てないで」
「・・・・・うう・・・」
「大丈夫、君には諦めない勇気がある。信じて」
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「・・・暖かそうね。・・・私とは違う」
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「本能を利用する?」
「はい、そうでもしなければ。トリプルティアラは手に入れられないかと」
「でも、それは・・・」
「わかっています。ですが、このままでは
「覚悟?それは?」
「いずれ、また・・・どうか、お願いします」
「・・・OK、キミもそれでいい?」
後日、そんな話を聞かされた少年。突然のことに、彼は関心・・・はできなかった。
不安なのだ。彼女が耐えれるかが。
「ありがとうございます。どうしても・・・どうしても必要なのです。あの子の力が・・・そこで――――さん。どうかあの子と直接話し合ってくれないでしょうか?
あなたであれば、あの子も話を聞いてくれます。どうか、よろしくお願いいたします」
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いつもの公園、この日は満月。本能がより顕著になるこの夜。彼らは内なる紅と再会を果たす。
「久しぶり、というにはそこまで経っていないわね。アナタ・・・」
赤く目を光らせ、少年を逃がさんと捉える。彼は頼んだ。スティルインラブの力になってほしいと。
「・・・相変わらず、いけずなのね。ワタシがあなたに、どれだけ思い焦がれていると思っているの?」
妖しく、彼女は少年に近づき、そして首へ腕を絡ませる。近くにトレーナーがいるのだが、お構いなしだった。
「あそこには確かに色々な獲物がいる・・・どの子も、捨てがたい・・・あなたと出会なければ、飢えの限りを尽くしていたでしょうね」
そのまま顔を近づける。まさに目と鼻の先、吐息が顔に当たる。
「けどどの子も、あなたには及ばない。ワタシの愛を直に受け続けたあなたには敵はいない。
そう私さえも・・・
今は」
一度閉じた瞳が、一瞬で見開く。失明しそうなほどに光るその瞳が彼の目に当てられる。
「本当にいいの?この先、ワタシの飢えを満たして。飢えを満たせば満たすほど、
もしもワタシとあの子が完全に一つになれば、アナタは確実にいただかれる。その意味が本当にわかっているのかしら?」
ならばと彼はこういう。その日が訪れそうになっても、自分が先を走ると。
「・・・ふふふ、あなたならそう言ってくれると思ったわ。・・・くれぐれも、くれぐれも、忘れないでね?アナタも獲物だということを。
そして
―――力を分けてくれ―――
「ええ、あなたが望むのなら・・・
イ ク ラ デ モ」
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あのお方には常に私の我儘を聞いてくれた。いつも、いかなる時も。
そう、今度は私から恩を返す番。
あのお方の望む走りをし、そしてあのティアラをささげる。
それが私のできる、唯一の使命。
だから・・・誰にも渡さない。
『愛なんて、必要ない―――――』
『無邪気な心も、頂こうかしら』
そう、誰にも渡さない。
どれも、何もかも―――――