スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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第六話《合宿、夏の神秘》

八月、トレセン学園の生徒、ならびにトレーナーたちは夏合宿があり、九月までの二ヶ月にわたって行われる。

 

丁度折り返しの日付になったとき、少年はようやく合流できた。

 

奇しくも合宿所の近所に、彼の祖父母が住んでおり、頼み込んで月末ギリギリまで泊まりながら、彼女らの手伝いをする予定になっている。

 

また、実績も相まって彼も条件付きでトレセンの敷地内にある程度入れる。

 

と言ってもいきなりそこで、トレーニングを行うわけではない。合宿の現場は海と山で囲まれており、大半のウマ娘は海で行われる。

 

それを逆手にとり、スティルインラブたちは山でトレーニングを始める。

 

「しかし暑いなぁ・・・気温が下がってる気がしない。」

 

緑で囲まれていると言うものの、日本の八月はとても暑く。比較的涼しい朝方の時間に始めても汗が大量に出る。

 

ひとまず大きな木の下に座り、水分補給と汗拭きをする。

 

七月の間についてだが、トレーナーとスティルインラブたちは引き続き、本能を支配するトレーニングを行っている。

 

しかし状況はあまり(かんば)しくなく、オークスの時のような高い完成度が発揮できていない。

 

「先ほども、ともに走ってみても、多少はよかったのですが・・・こう不安定だと、もどかしいですね・・・」

 

「しかし、どうすべきか・・・オークスのようなバチバチの空気があれば、あるいは・・・ってヤツなんだろうけど。そんな都合よく作れる訳じゃないしな・・・」

 

「えぇ・・・」

 

そこに少年が相談する。トレセンは強化レースでも行ってないかと。

 

 

「いや、さすがに行事としてもないね。一応コート自体ならあるけど、任意だもんな・・・

 

・・・よし!」

 

すると、トレーナーがなにか思い付いて二人のそばに立つ。

 

「今日はもう切り上げて、遊んできなよ。彼氏がせっかく来てくれたんだからさ!」

 

「かっかか彼氏!?違います!!そんな関係ではありません!!!」

 

「お前はなにを言っているんだ。オークス前、あんなことしといて、彼氏じゃないならなに?あなた専用の走る輸血パック?」

 

「ち・・・違うんです・・・あれは、あの子がぁ・・・」

 

せっかく休憩を始めたというのに、すぐに汗だくになるスティルインラブであった。

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

しばらくして、海。一般の人々も数はまばらながらも、いる場所にて、二人はいた。

 

少年は日傘を持っており、トレーナーから渡されたのを今さしている。

 

一方のスティルインラブは今来たところで、格好は水着になっていた。

 

具体的には全ての水着が白色だ。

 

フリルのついたビキニタイプ、腰には長いパレオを着た彼女は、神秘的な印象を(まと)い、普段つけているベールも取り、髪を一本に束ねていた。

 

「い、いかが・・・でしょうか・・・」

 

そんな姿の彼女に、少年も感動をしている。普段そういうのとは縁のない彼でも、親しい相手ならば嬉しい他ない。

 

本当に出会えてよかったと、改めて伝えた。

 

「・・・っ!あ、ありがとうございます・・・!そのっ・・・そう言ってくださって、安心しました・・・」

 

ちなみにだが彼女自身、学校指定の水着だけ持っていくつもりだった。

 

しかし彼も来れるならと知ったトレーナーがスティルインラブのために、必要なもののついでに買い物をすることになった。

 

困惑するスティルインラブに色々と選ばせた結果、どれも恥ずかしがったため、トレーナーの趣味で今回の格好になった。

 

と、言うわけで二人で傘に入り、波のつく浜辺を歩くことに。スティルインラブは嬉しそうに話した。

 

「・・・トレーナーさんにも、ずっとお世話になりっぱなしですね・・・この水着も買ってくださって・・・今まで、そしてこれからも、ともに歩いてくださってくれる・・・。貴方のほかに、私を受け入れてくれる人がいるだなんて、思えませんでしたから、安心しました」

 

彼女はトレーナーがついたとき、真っ先に伝えたのが彼である。

 

少年も出来たと聞いたとき、それはもう喜んだ。

 

なにより最初こそ、こちらの馬力症に驚いたものの、すぐに受け入れてくれて、その後のトレーニングも呼んでもらえるという、至れり尽くせり、である。

 

彼もなにか、トレーナーにお礼をしたいのだが、なにがいいかと聞いてみる。

 

「そうですね・・・あの人が喜びそうなもの・・・。レースが好きな人ですから、なにかそれに関するものとか・・・。

 

あっそう言えば、これ・・・」

 

首にかけている、銀プレートを手に取る。追加塗装無しのバラが輝いて見える。

 

「トレーナーさんは羨ましがってました。こう言うのはお揃いにしやすい、と・・・その、もしよろしければ、いつか一緒に選んでみませんか?」

 

そんな質問に、もちろん二つ返事をした。

 

 

━━━━━━━━━━━━

 

 

「あの二人・・・」

 

浜辺そばの道路にて、いまだにジャージ姿でトレーニングをしているアドマイヤグルーヴは、スティルインラブが少年と日傘に入って歩く光景を見つけた。

 

「・・・・・あのときも確か、あれぐらいくっついていたかしら・・・。やっぱり付き合っているのね」

 

二人の光景を、どこか眩しそうに見つめている。するとそんな彼女に声がかけられる。

 

「まだトレーニングを行っていたか。アルヴ」

 

茶色に近い黒色である、鹿毛(かげ)の髪をボブカットにしているウマ娘、エアグルーヴ。

 

彼女もかつてスティルと彼女が走る、ティアラ路線を走った者で、トリプルこそ逃したがその圧巻の走りは《女帝》と呼ばれるほどなのである。

 

そんな女帝だが、ある日オーバーワークを繰り返すアドマイヤグルーヴを見かね、声をかけたことで顔を知り合うことになる。

 

また、あるいざこざがありつつ、エアグルーヴの面倒見のよさが現れ、今回の合宿もたびたび関わっていた。

 

「今日はただでさえ暑いし、今後しばらくこの暑さは続く。もう上がって休むんだ」

 

「・・・別に、平気です」

 

「分からんはずもないだろう。ただでさえ厳重注意報が出たレベルだ。命に関わるから、もう止めるんだ」

 

「・・・・」

 

アドマイヤグルーヴは極めて他者に不信である。過去にあることがあって以来、誰も信じることなく、己一人で強くなろうとしている。

 

当然エアグルーヴにも、しつこさを感じており、なにかとあしらっている。

 

彼女はそっぽを向くように海を見る。するとあの二人が海へ足を進めているのがわかる。

 

そんな光景をどこか、感じるように眺めていたせいか、エアグルーヴもそちらを見、そして驚いた。

 

「あっあれはスティルインラブ・・・!?そしてその隣にいる男子は・・・!?なんというか、随分と・・・距離が近いが・・・その、付き合ってるのか、あの二人は・・・?」

 

「・・・さあ、知りません」

 

「・・・あっ待て!」

 

隙を見てアドマイヤグルーヴはその場を後にする。向かっている方向が寮のため、そのまま戻っていればいいが、と思いながら見逃した。

 

すると再び、スティルインラブとその少年の方を見る。二人はとても楽しそうに、波を楽しんでいる。

 

しっかり両肩を当てながら。

 

「こ、声をかけるべきか・・・?学生でありながらあんな・・・いや、プライベートにそんな野暮なこと・・・しかし・・・」

 

生徒会副会長でもあるのだが、実は今回のような今回のケースは彼女も始めてである。

 

一体どうすればいいかと、悶々(もんもん)とする他なかったのだった。

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