スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
スティルインラブらを否定すべく、二人彼女らの元へと向かおうとすらアドマイヤグルーヴ。
そこに気づいたのがエアグルーヴだ。
「アルヴ、なにをしようとしている」
「あなたには関係ないことです」
「ダメだ。感情のまま動くんじゃない」
「別に感情的ではありません」
「そんなこと言ってる時点で感情的になっているだろう。いいから今はあの二人に━━━」
「関わらないでって言っているでしょう!!」
アドマイヤグルーヴの叫びに、エアグルーヴも止まってしまう。こうなった以上もう止まらないだろうと、また見逃した。
二人の並走が終わったとき、アドマイヤグルーヴは接触する。
そして勝負を申し込んだ。
「......どうする?」
「......少し時間をください」
そこで一度トレーナーと少年で三人集まり、臨時会議を開くことにした。
少年はアドマイヤグルーヴに対して、良い印象は持てなかった。
「エアグルーヴさんという生徒会副会長に聞いたのですが、あくまでも
「愛、ね......私自身意識はしてないけど、どっちにしろ信頼関係がない、支えがないと、この先がキツイと思うけどなぁ......」
そこで少年は、具体的にどうするかを聞く。やるかやらないか。
「......走ります。ですが本能のほうは......」
「いや、さっきの走りをやってみて。レースの楽しさを、思い出して。メイクデビューの時のように」
「よろしいのですか......?」
「本来レースはそう言うものなんだよ。それだけじゃない世界なのは、確かにそう。けど走るのが好きなのに、楽しめなきゃ
「......はい!」
スティルインラブはアドマイヤグルーヴに向かった。
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立会人としてエアグルーヴが率先し、レースが行われた。
二人のみのレースだというのに、多くの生徒、トレーナーが釘を刺すかのように見届けている。
そしてレースの序盤から意外なことが起こる。
「っ!ペースが早い!」
そう、スティルインラブは先攻し、アドマイヤグルーヴを気にせず、ただ気の
二年目、ましてやG1レースを複数回経験しているのなら、もっと慎重になると思っていたが、マトが外れたアドマイヤグルーヴは、急いで離れないようにする。
だがそれがダメだった。スティルインラブはペースを気にしていない。コーナーですらドンドンと加速していく。
焦るアドマイヤグルーヴ。こちらを見向きもしないことへ
なによりもドロドロとした憎しみはしかし、楽しさという
そして終盤には、オークスの時のように離され、《愛》が証明された。
ゴールラインを思いっきり通りすぎ、十分距離をとって止まる。息を整えて、アドマイヤグルーヴがたどり着き、止まるのを確認すると、彼女は少年たちの方に向かった。
「スティル!すごく良かったよ!」
「はい......!━━━━さんを思いながら走りました......。とても......とても楽しかったです......!」
そう喜びを
一方のアドマイヤグルーヴだが、完全に意気消沈してしまった。
絶対に
「......どうして?私と彼女......いったい......なにが違うと......いうの......?」
フラフラと足を動かし、どこか行こうとしてしまう。
そうなったアドマイヤグルーヴを、エアグルーヴは今度こそ見逃さなかった。
「アルヴ、ひとまず寮に戻るんだ」
「......イヤです、私は......」
「そんな状態でまともに動けるわけないだろう。いいからいくぞ」
アドマイヤグルーヴの手を掴み、無理やりでも連れていく。
それが何故だか、気温や体温とは違う、妙に暖かさを感じたのだった。
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その日の夜、少年はレースコートに一人、戻っていた。
日が出ている時間がウソのように、全く誰もいない空気は、いつもの公園のときのような、どこか似た空気がある。
彼はアドマイヤグルーヴのことを思い出す。彼自身走りを見るだけで人間性がわかるような、そんな特技は持ち合わせていない。
しかしスティルインラブとは違う、明らかな苦しさを持っていた。
どうも引っ掛かってしまった。なぜあそこまで苦しんでいるのか、そこまでして否定したい原因はなんなのか。
ほぼ他人である自分には、直接知るきっかけは訪れないだろう。
そう諦めたそのとき、彼女とは他人ではなくなった。
「あなた......」
声をかけられる。そちらを見ると、アドマイヤグルーヴ本人がいた。
動く気力が切れたハズなのに、どうしてここにいるのか。
「......うの?」
よく聞こえなかった少年は、耳を傾ける。
「私とあなたたちは......なにが違ったというの......??」
主語がわからない彼は、つい聞いた。どうかしたのかを。
「......私はずっと一人で走ってきた。そうすることで自分を証明し続けた。なのにそれでも、
視線が下に向く。少年は静かに待つ。
「愛なんて、そんなの間違ってる......けどあなたたちは、愛で強くなっていく......ねぇ、どうして......?どうしてそんなもので、強くなれるの......?」
震える声でそう言う彼女。まずはいきなり返事をせず、言葉を思い選ぶ。
そこで彼はこう言った。
「......は?」
そう、少年にとって、それが当たり前なのだ。とくに意味もなく、ただひたすらに走る。それが好きだった。
一人で走っていたとき、もの足りないと感じた。ただ一緒に走ってくれる人がいればよかった。
だが皮肉にも体力に恵まれ過ぎた彼の周りには、ともに走ってくれる存在が居なかった。
ウマ娘は初めこそライバル視してきたが、圧倒的な実力差と種族による意識により嫌悪感を抱き、次第に離れていった。
ヒトなんてもっての他だった。ゆえに一人で走っていた。
確かに走ることは好きだし楽しい。しかしどうしても寂しかった。
そんなときだった。スティルインラブと会ったのは。
いつの間にか共に走り、気がつけばずっと側にいた。それだけですごく嬉しかった。
ただ楽しかった。そんな時間が。
何気ない
それが偶然速さに繋がったと言うのが、彼の持論だ。
「......なにそれ、そんなので、私は置いていかれたというの......?」
彼女にとってそんなこと、であっても少年にとっては大事な時間なのだ。
もちろん、これは少年らだけの特異体質なのかもしれない。人によって過程は違う。
だがウソも微塵もついていない。ただ深く考えず、自分の出来ることと、やりたいことをやること。それだけだった。
つまり噛み合っていたのだ。自分のやりたいことと、スティルインラブのやりたいこと。
それが相性よく混ざりあい、そしてお互いの喜びと楽しみになり、それが高める結果となったのだ。
「......」
結局人によるとしか言いようがないのだ。自身に合う手段を手に入れたかどうか、である。
少年は聞く、今のやり方は自身に合っているのかを。
「っ......」
言葉がつまる。彼女は答えきれない。今まで正しいと信じたやり方が揺らいでいる。
いったいなにが正しいのか。
しばらくしても、声がだせない。そこで少年は質問を変えた。
どうして一人でやることに、固執するのかを。
どうしても教えてほしかった。
「......」
少年は強く願った。でなければこちらも、どう接すれば良いのかわからない、と。
「......昔から、昔から私は一人だった。一人で何でもやった。一人で出来ることは全部やった。だから愛なんて必要ない。そんなの与えられなくても、今まで......貴方たちが現れるまで出来てきた......それだけ......」
多くは語らなかった。しかし少しは予測できる。家庭環境のせいなのだろう。周りに恵まれず、ただ走るために育てられた。
孤高、というより孤独なのだ。昔から本当の意味で支えてくれる存在がいなかったため、人間不信になっているのだ。
だが悲しいかな、それでも少年はうまく答えられない。
そこで彼はあることを言った。それは━━━
「......は?」
純粋なウマ娘であるアドマイヤグルーヴのことが、羨ましい、ことだった。