スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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いつも誤字脱字を教えていただき、ありがとうございます。


第十話《落ちるとは、いい意味でも使われる。もちろん逆もある》

 浜辺、様々なウマ娘がトレーニングしている。

 

 そこを走る者、海で泳ぐ者、小屋より大きなタイヤを引きずる者、なぜかクイズ大会をする者。とにかくそこでしか出来ないトレーニングを行っていた。

 

 その中でもまず見れないであろう光景がある。

 

 ご存じスティルインラブと、少年の姿である。スティルインラブはトレーニングのために、トレセン指定のスクール水着。そして少年はシンプルに半袖半ズボンの恰好である。

 

 やることはもちろん並走。二人は全力で走る。

 

 「.........にしても、あの人速くない.........?」

 

 「うん.........さっきからスティルさん、ほんの少しだけど...追いついてない.........」

 

 「.........その、スティルトレーナーさん。彼、ホントに何者なんですか?トリプルティアラ王手にかけてるウマ娘に互角以上とか.........」

 

 「見ての通り、スティルとずっと走ってるバケモンですよ」

 

 「.........なんでスティルインラブと走ってるのに、あんな楽しそうなんです?今は恐ろしさが、ないですが、そういう時も走ってるんでしょう?」

 

 「あの子、頭のネジ生まれつき合ってないやつハメてるから、考え方が違うのよ。あとついでに言えば、そっちのスティルも好きだから」

 

 「.........えぇぇ?」 

 

 そんな感じに、嫌でも目立つこのコンビ。さすがに気になった少年は。スティルインラブに話しかける。

 

 「ええ、気にならないといえばウソになりますが。ただあなたを独り占めしているって考えると、正直悪くないって思ってるんです.........やだ、私なにを.........」

 

 気温以外で顔を熱くする彼女。少年もここで走れることを喜んだ。

 

 すると彼は汗拭くために、服の(すそ)を掴み上げる。

 

 そこで顔を拭くが、その際に腹がしっかり出てしまう。

 

 そしてその腹筋は見事なものだった。

 

 スティルインラブとひたすらに走り、彼女のトレーニングに追いつけるよう、自分なり筋力トレーニングを行ってきた結果、アスリートレベルの肉体美を手に入れた。

 

 そんなものを見てしまった、ほかのウマ娘たちは黄色い悲鳴を上げた。

 

 「うおっ.........男の人の腹筋、やっば.........」

 

 「やだぁ.........私もあんな人欲しかった.........」

 

 なんだか、変な盛り上がりが発生した。女性というのは、腹筋がそんなに好きなのか。

 

 スティルインラブに聞いてみることにする。

 

 そんな彼女は、本能が開花したかのように、目を(あか)く光らせていた。

 

 「.........どこ見ているの?」

 

 黄色い悲鳴は、いっきに青ざめた。少年は彼女に、本能が飛び出てることを指摘する。

 

 「.........!?私、一体.........!?」

 

 「スティル!大丈夫!?今、本能が出てなかった!?」

 

 トレーナーが急いで駆け寄り、彼女の様子を確かめる。

 

 「今まで引き出せなかったのに急に.........何がきっかけなの?」

 

 そんな質問をされ、スティルインラブはバツが悪そうな顔をし、顔を伏せてしまう。

 

 代わりに少年に聞くことになった。彼は事の経緯を説明する。するとトレーナーは()頓狂(とんきょう)な声を出してしまった。

 

 「.........つまりスティルは、嫉妬して、ついうっかり切れちゃって出た.........てこと!?」

 

 「ち、違うんです.........あの子がぁ.........あの子が勝手にぃ.........」

 

 「あーなんだ、今日はもうやめようか。人が多くなりすぎてるからね?」

 

 「は、はい.........」

 

 と、いうことで切り上げ、荷物を持って両方面に行こうとする。

 

 砂浜から道路に入るコンクールの階段に向かっていると。上る手前、あるウマ娘と出会う。

 

 「あっ.........」

 

 「アドマイヤグルーヴさん.........?もう大丈夫なんですか.........?」

 

 「.........別に」

 

 排他的な雰囲気はある。しかし覇気がまるでなかった。いってしまえば、しょぼくれた状態である。

 

 彼女は先に階段を上り始めた。しかし半分ほど、上った時だった。

 

 アドマイヤグルーヴの片足が踏み外した。

 

 「っ!?」

 

 「あっ!?」

 

 態勢を崩してしまい、そのせいで後ろに倒れる。いくら丈夫なウマ娘といえど、不慮の事故で重症を負うのは不思議ではない。

 

 アドマイヤグルーヴは目を強くつぶり、衝撃になすすべなく落ちていく。

 

 そしてその衝撃が.........

 

 来ることはなかった。

 

 「.........?」

 

 ゆっくりと目を開ける。目の前にはなんと少年の顔があった。

 

 「.........!?」

 

 結論を書こう。アドマイヤグルーヴは、お姫様抱っこをされていた。

 

 落ちた彼女を見た少年はすぐさま駆け出た。そしてとっさにとった行動が、これである。

 

 彼はアドマイヤグルーヴに声をかけた。しかし返事が返ってこない。もしかして落ちた時点でなにか起こったのかをきいた。

 

 「.........そ、の.........だい、じょうぶ.........」

 

 (なに.........?こ、この温もり.........?)

 

 彼女の中で、今までに感じたことのない何かが目覚めた。

 

 そしてそれが出たのはアドマイヤグルーヴだけでなかった。

 

 「.........は?」

 

 スティルインラブの中にも、今までよりも紅いなにか起きた。

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