スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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二本目《この世界は二人だけ》

 あれから少女とは公園に行くたびに毎回出会うことになった。

 

 自身の通う小学校でも走ることはあるが、そこでは出会うことはない。ということは他所の少女なのだろう。

 

 公園に行くと、必ずその少女が待っていた。

 

 見かけると彼女の表情は無表情に近かった。しかし声をかけると、()()()っと明るくなった。

 

 そこから準備運動を始めて、さっそく二人は走り始めた。

 

 足は少年のほうが早い。いや、正確に言うとそういう脚質なのだろう。彼が先行し、そして少女が後を追う形で走りあう。

 

 どれくらい走るかは特に決めていない。とにかく気が済むまで二人は走った。

 

 前を走る少年は徐々にスピードを上げて楽しそうに走る。

 

 少女も彼の後ろを、嬉しそうに走っている。

 

 だが二人の競争を見ているその場にいた人たち・・・ヒトもウマ娘も関わらず、その光景を恐ろしそうに見ていた。

 

 前の少年は確かに純粋に楽しそうだ。問題は背後の少女。

 

 あれはなんだ?自分の知っているウマ娘ではない。狂気が人の姿をして走っているようにしか見えない。

 

 前の少年は大丈夫なのか?なぜ平然としている?

 

 ネガティブな感情がそこにいた者たちを蝕んでいる。

 

 そんな光景を、少年は特に気にすることなく少女をちぎっていった。

 

 

 ―――――――――――――

 

 

 ああ、楽しい・・・嬉しい・・・!そう思いながら、目の前を走る彼を私はガムシャラに追い掛け回しました。

 

 そう、本当に目の前なのです。わかりますか?とってもお腹を空かせた状態で大好物の料理が目の前にある感覚。

 

 あと少しで届きそうなのに、どれだけ手を伸ばしても届かない、鉄格子に挟まれて前に行けないもどかしさ。

 

 とてもじれったかった。とてももどかしかった。

 

 ・・・だからとても興奮していたのです。

 

 私は彼のそばで不気味に笑いました。フフフ、フフフフフ・・・!そうどう考えても、とても受け入れられない、そんな気味の悪い笑い方。

 

 けれども彼はそんな私を特に突き放すこともなく、むしろ笑顔で返してくれました。

 

 本当に・・・本当に嬉しかった。

 

 私の周りには人がいないはずでした。ゆえに常に一人で過ごしていました。

 

 そんななか、強引に彼の世界に入ったにも関わらず、二つ返事で受け入れてくれました。

 

 獰猛で狂気的なもう一人の私、生まれついて怪物を宿している私自身、その両方を疑問に思うことなく、ともに走ってくれる。

 

 そう、二人っきりで走るこの時、この場所、まさに彼と私だけの世界。

 

 いつまでも、いつまでもこの瞬間があればいいのに。

 

 しかし時の流れは残酷で、あっという間に周りが暗くなっている。

 

 「・・・また、会いましょう。いつまでも・・・いつまでも待っていますからね・・・」

 

 そういって彼と別れる。とても、とても名残惜しい。私にとって彼と走る日がくるたび、その日は毎回特別な日だと感じる。

 

 だから私は、我慢ができなくなる。

 

 その時のことを思い出して、体がうずいてしまう。

 

 おかげである晩は寝付けることができませんでした。

 

 自分以外が寝ている時間帯、私は家から抜け出し、あの公園に行く。

 

 ついてみると、そこには誰もいませんでした。

 

 当然なことに対して、私は不必要に落胆しました。

 

 ただその時はすぐに受け入れ、そこを走りました。

 

 実のところ今回が初めてではありません。過去に何回か、発散させるために・・・ある時はもう一人の私に支配されていつの間にかここを走ったりしていました。

 

 一人で誰の目も気にすることなく走り、飢えを満たしていました。

 

 ですがこの日は、どれだけ走っても満たされることはありませんでした。

 

 彼と走ったことを鮮明に思い出すのです。数時間前に走ったばかりだというのに、彼が恋しくてたまらない。

 

 ああ、喰らいたい・・・彼を喰らいたい・・・!

 

 (かえ)って飢えが増幅する。しかし中途半端な飢えでした。それがなおさら私を焦らしていきました。

 

 頭の中が彼でいっぱいになっていました。この時間にも彼がいてくれたらいいのに・・・・・。

 

 すると突如、声をかけられました。

 

 そちらの方に首を向けると、なんと彼がいました。

 

 なぜ?私は彼に問いかけると、そんな彼も寝付けず、ここにやってきたというのです。

 

 なんてシンパシーなのでしょう。これを運命といわず、なんというべきなのか。

 

 私は彼と走りました。公園の明かりしかない、この暗闇の中で。

 

 昼の時とは違う、紛れもない二人だけの世界。

 

 強いてほかの存在があるとすれば、それは祝福するかのように、二人っきりにしてくれるかのように、()()()()()()が私たちを見守っててくれました――――――。

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