スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
「あっスティル」
「と、トレーナーさん.........」
「.........落ち着いた?」
「は、はい.........」
昼前、岩場の日陰で落ち着いていた時、トレーナーがやってくる。アドマイヤグルーヴの事故からしばらくたったためか、大分落ち着いていた。
「.........大変申し訳ございません。あんな.........あんなことを.........」
「あぁ.........うん。なんというか、やっぱ嫉妬深いね、あの子」
「はい.........」
顔をうつむき恥ずかしそうにする。すると少年がなにかに気づく。
「ん?どうしたの?」
あの事故の時、助けたあとの、あのスティルインラブの振る舞いについて、彼女は敬語だった。
一方のもう一人の彼女は、敬語を崩して話す。ゆえに辻褄が合わないのだ。いきなりあっちのスティルインラブが、そんな話し方をする人格だとも思えない。
「...えっ、まって。つ、つまり、あのときのスティルは.........!?」
「っ...まさかっ...!?わ、私...!?」
少年は再度聞く。あのとき、もう一人の彼女は出ていたか。
いや、出ていたのだろう。だが恐らく、誰も予想だにしない方法、全く違うやりかたで。
つまるところ、
「.........」
スティルインラブは動揺する。内なる紅が今の彼女を操ったわけではない。にもかかわらず、あの状態。
はっきりと言えば、スティルインラブそのもの、の本能。改め本音が出たのだ。
まさか、自身にあんなものがあったなんて。
「ハァ....ハァ...ッ.........」
動揺が激しい。今までにない恐怖が出る。そこに少年はあの時のように声をかける。スティル。スティル、しっかり。と。
だが聞こえてないのか、スティルの動揺は止まらなかった。
今までのやり方が聞かない。そこでトレーナーは彼がダメなら、とスティルインラブに近づく。
「スティル、落ち着いて...!あのときは突然のことだったから、感情が追いつけなかっただけなの。大丈夫。落ち着いて...」
今度はトレーナーが、彼女の両肩を掴み、耳元でささやく。
すると効果があったのか。少しずつ、動揺が落ち着いていく。
「...申し訳ありません...わ、私...」
「...」
「...ごめんなさい」
「うん、大丈夫。怖かったね...」
――――――――――――
夜、スティルインラブとトレーナーが戻ってくる。そこにエアグルーヴが話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「あっ、エアグルーヴさん...」
「...今は何とか落ち着いているな。...まったく、一体なにがどうなっているのか...」
「も、申し訳ありません...」
「一応アルヴから事の経緯、トレーナーからはお前の過去について話は聞いた。.........まぁ、なんというか。お前にもいろいろあったのは、わかった」
「......」
「......はぁ、彼とは距離をとれ。とも言えんな」
「......え?」
エアグルーヴは力が抜ける。その目はどこか、羨ましそうにも見える。
「......大切な存在なのだろう?絶対に譲れない、自分だけの、かけがえのない存在......いい人をもったな」
「......エアグルーヴさん」
「だが、もうあのような状態はもうやめてくれ。次はもしかすれば、取り返しのつかないことになりかねん。いいな?」
「......はい」
「さあ、早く風呂に入って寝るんだ。しっかりと休め」
「はい。トレーナーさん、先に戻ります。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
スティルインラブは寮に入っていった。見届けた後、今度はトレーナーに話しかける。
「そういえば、彼は無事か?あのときは、彼がスティルを抱えてどこか行ったが、あのあと、なにかされたりとか......」
「いや、とにかくじっと一緒にいただけらしいよ」
「そうか......それにしても、あの少年は、肝っ玉が
「うーん、なんというか......小学からの付き合いってやつもあるけど、やっぱ頭のネジが、ガタガタなんだと思う。当時から愛してるって言われてて、それでいて惚れてるって感じじゃなくて、一人の仲間として認識してる感じ......あれ?あの子なんで、スティルのような美少女にドストレートな激重愛情ぶつけられておいて、下心がないの?」
「......まさか、単に鈍感なだけ、なのか......?あ、ありえんだろ......」
「正直あの子だから、っていうレベルで、納得できてしまう......」
「ウソだろ......」
呆れた声が、とくに響くことなく、消えていった。
――――――――――――
「えっ?先にトレセンに戻った?」
「ああ、トレーナーの案らしい。残りの二週間は、リフレッシュに使うようだ」
エアグルーヴとアドマイヤグルーヴの会話にて、彼女の言う通りスティルインラブは合宿を切り上げ、先に帰っていった。
「......まったく気が付かなかった。あれだけ目立っていたはずなのに......」
「まあ、何もしていないときのスティルは、なぜか気づきにくいからな。走っているときは誰よりも目立つのに、あれはあれで一体どういう理屈なのやら......」
「......もしかして、彼も......」
「ん?あぁ、あの少年か。彼もスティルと一緒に戻った。......というか珍しいな。スティル以外に気をかける者がいたとは」
「いえ、そのっ......彼には、恩があるだけなので......それを、返したいだけ、です......」
「そうか......まあ、会う機会があればいいな。だが、そのときにはスティルインラブに気を付けるようにしてくれ。またあの状況にならない、とは言い切れんのだ」
「っ......はい」
「さて、トレーニングの準備をしよう。もう他人に気にかけてる暇はないぞ?」
「っ!はい!」
そういって、二人は準備を進めたのであった。