スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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第十二話《ホンモノ、よりも本物》

 「あっスティル」

 

 「と、トレーナーさん.........」

 

 「.........落ち着いた?」

 

 「は、はい.........」

 

 昼前、岩場の日陰で落ち着いていた時、トレーナーがやってくる。アドマイヤグルーヴの事故からしばらくたったためか、大分落ち着いていた。

 

 「.........大変申し訳ございません。あんな.........あんなことを.........」

 

 「あぁ.........うん。なんというか、やっぱ嫉妬深いね、あの子」

 

 「はい.........」

 

 顔をうつむき恥ずかしそうにする。すると少年がなにかに気づく。

 

 「ん?どうしたの?」

 

 あの事故の時、助けたあとの、あのスティルインラブの振る舞いについて、彼女は敬語だった。

 

 一方のもう一人の彼女は、敬語を崩して話す。ゆえに辻褄が合わないのだ。いきなりあっちのスティルインラブが、そんな話し方をする人格だとも思えない。

 

 「...えっ、まって。つ、つまり、あのときのスティルは.........!?」

 

 「っ...まさかっ...!?わ、私...!?」

 

 少年は再度聞く。あのとき、もう一人の彼女は出ていたか。

 

 いや、出ていたのだろう。だが恐らく、誰も予想だにしない方法、全く違うやりかたで。

 

 つまるところ、()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 「.........」

 

 スティルインラブは動揺する。内なる紅が今の彼女を操ったわけではない。にもかかわらず、あの状態。

 

 はっきりと言えば、スティルインラブそのもの、の本能。改め本音が出たのだ。

 

 まさか、自身にあんなものがあったなんて。

 

 「ハァ....ハァ...ッ.........」

 

 動揺が激しい。今までにない恐怖が出る。そこに少年はあの時のように声をかける。スティル。スティル、しっかり。と。

 

 だが聞こえてないのか、スティルの動揺は止まらなかった。

 

 今までのやり方が聞かない。そこでトレーナーは彼がダメなら、とスティルインラブに近づく。

 

 「スティル、落ち着いて...!あのときは突然のことだったから、感情が追いつけなかっただけなの。大丈夫。落ち着いて...」

 

 今度はトレーナーが、彼女の両肩を掴み、耳元でささやく。

 

 すると効果があったのか。少しずつ、動揺が落ち着いていく。

 

 「...申し訳ありません...わ、私...」

 

 「...」

 

 「...ごめんなさい」

 

 「うん、大丈夫。怖かったね...」

 

 

 ――――――――――――

 

 

 夜、スティルインラブとトレーナーが戻ってくる。そこにエアグルーヴが話しかけてきた。

 

 「大丈夫か?」

 

 「あっ、エアグルーヴさん...」

 

 「...今は何とか落ち着いているな。...まったく、一体なにがどうなっているのか...」

 

 「も、申し訳ありません...」

 

 「一応アルヴから事の経緯、トレーナーからはお前の過去について話は聞いた。.........まぁ、なんというか。お前にもいろいろあったのは、わかった」

 

 「......」

 

 「......はぁ、彼とは距離をとれ。とも言えんな」

 

 「......え?」

 

 エアグルーヴは力が抜ける。その目はどこか、羨ましそうにも見える。

 

 「......大切な存在なのだろう?絶対に譲れない、自分だけの、かけがえのない存在......いい人をもったな」

 

 「......エアグルーヴさん」

 

 「だが、もうあのような状態はもうやめてくれ。次はもしかすれば、取り返しのつかないことになりかねん。いいな?」

 

 「......はい」

 

 「さあ、早く風呂に入って寝るんだ。しっかりと休め」

 

 「はい。トレーナーさん、先に戻ります。おやすみなさい」

 

 「うん、おやすみ」

 

 スティルインラブは寮に入っていった。見届けた後、今度はトレーナーに話しかける。

 

 「そういえば、彼は無事か?あのときは、彼がスティルを抱えてどこか行ったが、あのあと、なにかされたりとか......」

 

 「いや、とにかくじっと一緒にいただけらしいよ」

 

 「そうか......それにしても、あの少年は、肝っ玉が()わりすぎてないか?あの状況下、普通あそこまでできないと思うんだが......」

 

 「うーん、なんというか......小学からの付き合いってやつもあるけど、やっぱ頭のネジが、ガタガタなんだと思う。当時から愛してるって言われてて、それでいて惚れてるって感じじゃなくて、一人の仲間として認識してる感じ......あれ?あの子なんで、スティルのような美少女にドストレートな激重愛情ぶつけられておいて、下心がないの?」

 

 「......まさか、単に鈍感なだけ、なのか......?あ、ありえんだろ......」

 

 「正直あの子だから、っていうレベルで、納得できてしまう......」

 

 「ウソだろ......」

 

 呆れた声が、とくに響くことなく、消えていった。

 

 

 ――――――――――――

 

 

 「えっ?先にトレセンに戻った?」

 

 「ああ、トレーナーの案らしい。残りの二週間は、リフレッシュに使うようだ」

 

 エアグルーヴとアドマイヤグルーヴの会話にて、彼女の言う通りスティルインラブは合宿を切り上げ、先に帰っていった。

 

 「......まったく気が付かなかった。あれだけ目立っていたはずなのに......」

 

 「まあ、何もしていないときのスティルは、なぜか気づきにくいからな。走っているときは誰よりも目立つのに、あれはあれで一体どういう理屈なのやら......」

 

 「......もしかして、彼も......」

 

 「ん?あぁ、あの少年か。彼もスティルと一緒に戻った。......というか珍しいな。スティル以外に気をかける者がいたとは」

 

 「いえ、そのっ......彼には、恩があるだけなので......それを、返したいだけ、です......」

 

 「そうか......まあ、会う機会があればいいな。だが、そのときにはスティルインラブに気を付けるようにしてくれ。またあの状況にならない、とは言い切れんのだ」

 

 「っ......はい」

 

 「さて、トレーニングの準備をしよう。もう他人に気にかけてる暇はないぞ?」

 

 「っ!はい!」

 

 そういって、二人は準備を進めたのであった。

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