スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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第十三話《贈り物》

合宿から引き上げたスティルインラブ。今は少年と街に出掛けて散策をしている。

 

「......こうやって、街に落ち着いて歩けるのも、久しぶりですね。

 

ああ、そうえば。トレーナーさんに、お揃いの銀プレートを選ぶ約束、してましたよね。丁度街に出ましたので、見に行ってみませんか?」

 

 

と、いうことで彼が買ったとされる銀プレートの店にやってきた。

 

そこは一言でいうと、デパートの中にあるアクセサリー店。

 

指輪やネックレス。ピアスにミサンガと()()見取(みど)りである。

 

その店でこだわっているのが、銀プレート。改め、ドッグタグとその刻印(こくいん)である。

 

「わぁ......色々とあるのですね」

 

彼女の言うとおり、なにも描かれていないものから、犬や鳥、なにかの道具。また、タグを文字どおり全体使って迷彩やマークなどがある。

 

「......そう言えば、薔薇のタグがないですね。あっ、あった......けど、貴方からくれたものとは絵が違う......」

 

その店にかかってあった薔薇は、彼女が持つ繊細なものよりも、(あら)めの薔薇だ。

 

「この薔薇の絵のものは、どこに......」

 

「それはその子が私に作らせた、特注品だよ」

 

ウマ娘の店員に声をかけられる。彼女は誇らしげというか、笑顔で接してきた。

 

「えっ?特注品......?」

 

「そ。ウチはなにも描かれてないヤツに、オリジナルの絵を描くサービスやってるの。追加料金こそ(かさ)むけど、それのように、より良い感じのヤツ作れるの」

 

「......!」

 

「いやー、まさかあのスティルインラブちゃんが、送る相手だっただなんてな~。彼氏くん何て言ったと思う?この普段店にかけてるヤツよりも、良い薔薇を作ってほしい。その薔薇と同じくらい綺麗な女の子に渡したい。って。だからついタダでサービスしちゃった!

 

描いた後勢いに任せすぎた、って思ったけど、今は描いててマジでよかったよ!!マジで素敵な彼女がスティルインラブだなんて思わなんだー!!」

 

「~~~~~っ!?あっあのっ......!!私はっ......!!」

 

真っ赤になりだすスティルインラブにノリノリの店員。そして店員が彼に話しかける。

 

「ねぇねぇ、どうやって渡したの?」

 

彼はことの経緯を話す。桜花賞直前に、彼女の手をとってゆっくりと渡した、と。

 

「ヒュー!!」

 

「~~~......」

 

「いや~眼福眼福~」

 

彼女はより縮こまった。この状態だとまともな会話は出来ないだろう。

 

ふと、少年は気がついた。彼女を知っているのかと。

 

「そりゃあ知ってるよ!てか知らないわけないじゃん!トリプルティアラ王手かかってる娘なんて!いやマジで嬉しい!来てくれたの!」

 

「......え?」

 

顔がもとの色に戻ったスティルインラブ。その代わり、その顔は驚きがでていた。

 

「私見てたよ!桜花賞とオークス!!めっちゃスゴかった!桜花賞のとき始めてみたけど、めっちゃ感動した!!だからオークスも見た!!だからマジで来てくれて嬉しい!!」

 

「......」

 

少年も意外そうに思った。まさかそこまで熱中しているとは。というかまずここにいることに、気づくことが意外だった。

 

「え?いや気づくじゃん。だって美少女ぞ?気づかんほうが嘘じゃん

 

......え?それこそ嘘じゃん。影薄いって、ありえんじゃん?えー?!信じられない!」

 

普段は目立たないという、少年の説明を受けても底抜けに明るい彼女。トレーナーという例はあれど、まさか応援してくれるファンからそんな者が現れることは、スティルインラブは予想にもしなかった。

 

ゆえにどう接すれば良いかわからなかった。

 

そこで少年は、本題を話す。トレーナーに渡すドッグタグについて。

 

「えー!?マジでエモい!!いいね作ろ作ろ!!タダで作ったげる!!あとタグもタダで!!」

 

「えぇ!?さ、さすがにそれは......」

 

「いいっていいって!!あのレース見せてくれた感謝!!じゃなきゃウチが納得できない!!」

 

「そ、そこまで言うなら......」

 

「よーし、張り切って作っちゃうぞ~!!」

 

終始ハイテンションの彼女に流されたまま、作ることになった。

 

 

━━━━━━━━━━━

 

 

そして作られたトレーナーのタグ。それは百合(ユリ)の紋章である。

 

「百合っていうのはね、敬愛の意味があるの。だから先生とか、トレーナーのような恩師にはぴったりだと思うの。まぁ立場上、常につけれないからな~。けど飾るだけでも、全然アリだよ!」

 

「あ、ありがとうございます。素敵なものをこのように......」

 

「そして、彼氏のキミも!彼女からの思い!!」

 

「ちょっ、その、あの......」

 

少年にもドッグタグを渡される。そこに描かれていたのは、見慣れない花、そしてタグの他にも、まるで銃に使われる弾丸のような小さな筒もある。

 

「この花は《クリスマスローズ》っていうの。花言葉は追憶や私を忘れないで。私の心配をやわらげてっていう意味があるの。

 

本来は転校とかで遠くに行く子に渡すために使われるのだけど。私はずっと一緒にいるって意味を込めて、この花を描いたの。だから絶対あなたたちは、どんなときでもずぅっと一緒にいなきゃダメだよ!!」

 

満面の笑みでそう言ってくれた。少年は感謝を述べる。しかし一つ気になることがある。この弾丸はいったいなんなのかを聞いた。

 

「うん。それ弾丸。あっホンモノじゃないよ。あくまでそれっぽく作ってるだけ。けど意味もちゃんとあるの。

 

銀の弾丸。これって悪魔をやっつけるものなの。だから悪い男がひっついてきたら、ちゃんと追い払わないとダメだよ?

 

それとね、万能薬って意味もあるの。といっても偉いヒトが『この世にそんなものはない』っていう風に使っちゃったんだから本当は良い意味で使われない。

 

けどそんなのなんかイヤじゃん?だから、彼女にとっての何でも直す薬になるようにって、意味にならなきゃだよ!

 

だから絶対に(はな)(ばな)れになっちゃダメだよ!!いいね!?これも彼女が選んだのだからね!!」

 

「ひゃ、ひゃい......」

 

 

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「す、スゴいお方でしたね......。けど、お陰で素敵なものが出来ました」

 

夕方になり、帰路に着く二人。

 

「ありがとうございます。今日も素敵な日を過ごすことが出来ました」

 

少年もドッグタグをくれたことに、感謝を述べる。

 

「ええ。なにを描こうかと悩んでいたところ、あの店員さんが提案してくれました。あの人にはいくら感謝をしても、しきれません」

 

少年も感心する。そこで弾丸のことが気になった。なんというか、スティルインラブが選ぶとは思わなかったのだ。

 

「......それを見たとき、なぜだか貴方に受け取ってほしいと思ったのです。ご迷惑でしたか?」

 

そんなことはなかった。彼女からもらえるものは、何でも嬉しいのである。

 

「......なんでも?......いいえ、なんでもありません

 

......━━━━さん。またいつか、今日のようなお出かけをしましょうね」

 

そう、彼女は年相応に微笑(ほほえ)んだ。




さて、気を取り直して、今回来た理由を話す。
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