スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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第十四話《ティアラの引き換え》

夏休みが終わり、そしてあっという間にトリプルティアラ最後のレース、秋華賞が行われた。

 

最終コーナー出口、一番始めに飛び出したのはスティルインラブである。

 

「スティルゥゥゥ!!!」

 

両手で彼女たちからプレゼントされたドッグタグを握りしめ、叫ぶトレーナー。となりの少年も叫んだ。

 

その圧倒的な迫力は他のウマ娘を圧倒し、抜け出す。そんななか、スティルインラブに怖じ気付くことなく、追う存在が一つあった。

 

そう、アドマイヤグルーヴである。彼女だけ果敢に追い続ける。

 

『アドマイヤグルーヴ!!アドマイヤグルーヴがスティルインラブを追う!!距離が縮まってきている!!勝つのはアドマイヤグルーヴか!?スティルインラブか!?』

 

可憐、それでいて白熱の勝負である。前方の彼女が食らいつくし、後方のウマ娘は支配せんとする。

 

(あか)(あお)の閃光が混じりつつある。

 

 

━━━━━━そしてその二つがゴールラインを越した。

 

 

『━━━━━━勝ったのはスティルインラブ!!スティルインラブです!!彼女が勝ちました。ついに!ついに史上二人目のトリプルティアラが生まれました!!スティルインラブです!二人目のトリプルティアラはスティルインラブです!!』

 

実況の言うとおり、彼女はこの日誰よりも輝いた。

 

 

━━━━━━━━━━━

 

 

そんなことがあった同日の夜。いつもの公園にいた。

 

「やはり、ここだと落ち着いますね......すべての始まりであり、そして私の全てがここにある。と言っても過言ではありません」

 

スティルインラブにトレーナー、そして少年は空を見た。それは満月である。本来彼女はあれが苦手なはずだった。しかし今はそれほど嫌悪感はなかった。

 

「......今の私は、極限的にまで制御できていると思っています」

 

「うん、今までの訓練の甲斐があったと思う。......よかったよ」

 

「ええ。トレーナーさん。本当にありがとうございます」

 

お礼を言う彼女。そこに少年は、もう一人の彼女を呼ぶ。どうだったかを。

 

「......ええ、本当に、本当に成長したわ......。私がいなくなってもいいくらいに」

 

「「......え?」」 

 

スティルインラブの目が光っているときに、そんなことを言った。

 

「......私はしばらく眠るわ。そうする必要があるの」

 

「眠る......?どういう意味?」

 

「アナタ」

 

内なる紅が、少年のほうを向く。その顔はやけに穏やかに見える。するとふと近づく。

 

「寂しくなるわ......しばしとはいえ、お別れしなきゃならないもの。この子のことをよろしくね」

 

少年は聞く。何をするのかを。

 

「アナタ、そしてワタシたちに必要なもののために......」

 

少年は追加で聞く。いつものスティルインラブの走りはどうなるのかを。

 

「言ったでしょう?この子は私がいなくてもいいくらいに、と。アナタと初めて会ったときから走り続け、この子の土台は完璧に作られた。綺麗な薔薇にも相応の花壇が必要なように......」

 

目をつむり、胸に手を当ててそう語る。こうしてみると、いつものスティルインラブと全く大差がなかった。

 

「もうこの世界では十分に食らいつくした」

 

「え?」

 

「近い将来、ワタシたちはアナタと......ふふふ。さようなら、またいつか、必ず会う日まで......」

 

そういい、再び目をつむるスティルインラブ。少しするといつもの彼女が現れる。

 

「......」

 

「......スティル?」

 

「......どこか、いってしまいました......」

 

そう、静かな声しか出なかった。

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