スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
夏休みが終わり、そしてあっという間にトリプルティアラ最後のレース、秋華賞が行われた。
最終コーナー出口、一番始めに飛び出したのはスティルインラブである。
「スティルゥゥゥ!!!」
両手で彼女たちからプレゼントされたドッグタグを握りしめ、叫ぶトレーナー。となりの少年も叫んだ。
その圧倒的な迫力は他のウマ娘を圧倒し、抜け出す。そんななか、スティルインラブに怖じ気付くことなく、追う存在が一つあった。
そう、アドマイヤグルーヴである。彼女だけ果敢に追い続ける。
『アドマイヤグルーヴ!!アドマイヤグルーヴがスティルインラブを追う!!距離が縮まってきている!!勝つのはアドマイヤグルーヴか!?スティルインラブか!?』
可憐、それでいて白熱の勝負である。前方の彼女が食らいつくし、後方のウマ娘は支配せんとする。
━━━━━━そしてその二つがゴールラインを越した。
『━━━━━━勝ったのはスティルインラブ!!スティルインラブです!!彼女が勝ちました。ついに!ついに史上二人目のトリプルティアラが生まれました!!スティルインラブです!二人目のトリプルティアラはスティルインラブです!!』
実況の言うとおり、彼女はこの日誰よりも輝いた。
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そんなことがあった同日の夜。いつもの公園にいた。
「やはり、ここだと落ち着いますね......すべての始まりであり、そして私の全てがここにある。と言っても過言ではありません」
スティルインラブにトレーナー、そして少年は空を見た。それは満月である。本来彼女はあれが苦手なはずだった。しかし今はそれほど嫌悪感はなかった。
「......今の私は、極限的にまで制御できていると思っています」
「うん、今までの訓練の甲斐があったと思う。......よかったよ」
「ええ。トレーナーさん。本当にありがとうございます」
お礼を言う彼女。そこに少年は、もう一人の彼女を呼ぶ。どうだったかを。
「......ええ、本当に、本当に成長したわ......。私がいなくなってもいいくらいに」
「「......え?」」
スティルインラブの目が光っているときに、そんなことを言った。
「......私はしばらく眠るわ。そうする必要があるの」
「眠る......?どういう意味?」
「アナタ」
内なる紅が、少年のほうを向く。その顔はやけに穏やかに見える。するとふと近づく。
「寂しくなるわ......しばしとはいえ、お別れしなきゃならないもの。この子のことをよろしくね」
少年は聞く。何をするのかを。
「アナタ、そしてワタシたちに必要なもののために......」
少年は追加で聞く。いつものスティルインラブの走りはどうなるのかを。
「言ったでしょう?この子は私がいなくてもいいくらいに、と。アナタと初めて会ったときから走り続け、この子の土台は完璧に作られた。綺麗な薔薇にも相応の花壇が必要なように......」
目をつむり、胸に手を当ててそう語る。こうしてみると、いつものスティルインラブと全く大差がなかった。
「もうこの世界では十分に食らいつくした」
「え?」
「近い将来、ワタシたちはアナタと......ふふふ。さようなら、またいつか、必ず会う日まで......」
そういい、再び目をつむるスティルインラブ。少しするといつもの彼女が現れる。
「......」
「......スティル?」
「......どこか、いってしまいました......」
そう、静かな声しか出なかった。