スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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その2 一緒に一日

 「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 

 とある神社。先に来ていたスティルインラブが少年に年明け初めての挨拶をする。

 

 少年も返すが、一人気になるブロンド髪の少女がいた。

 

 「はじめまして、私はネオユニヴァース」

 

 彼女については話しに聞かされていた。スティルインラブの寮の同室で、よく相談に乗ってくれている。また、存在感の薄い彼女を上手く見つけられる数少ない存在でもあり、少年としても会ってみたかった。

 

 「あなたが、スティルインラブのディスティニー?」

 

 なんか聞いてきた。少年はスティルインラブに何のことかと聞く。

 

 「えっと、つまりあなたのことを運命の相手と言っているのです…」

 

 「アナタについては、スティルインラブにたくさん聞いた。スティルインラブの満たされなかった力。あなたがたくさん注いだおかげで、今までにないくらいにセイフティだよ」

 

 ゆっくりと喋ってくれてはいるが、なんだか先が見えないような話し方だ。

 

 「ユニヴァースさんはの言っていることは少々難しいですが、落ち着いて聞けば意味が分かりますよ。ですが今日会うのが初めてなので、私なりに解釈して伝えますね。

 先ほどは、あなたのおかげで内なる紅が満たされて、落ち着いている様子。というわけです」

 

 「うん。だけど“内なる紅”の居場所はネガティブ。いまも感知を継続してるよ」

 

 彼女もどうやらなにかしらを感じることはできているのか。ともかくネオユニヴァースも今内なる紅が、どこにいるかまではわからないらしい。

 

 「おそらく接触はまだずっと先、今は何もできない」

 

 ならどうするべきかを、彼女に聞く。

 

 「まずは“OMIR(おまいり)”だよ」

 

 そういいながら、彼女は(やしろ)を指さした。

 

 さすがにそれは、英語っぽく話さなくてもいいんじゃないかと思ってしまった。

 

 ―――――――――――

 

 神社でお参りをした後、おみくじを引いたり、甘酒を飲んだりしてすることをやったあと、彼女たちは海辺に来ていた。

 

 真冬の海には以外にも()()()なりに人がおり、歩いている。

 

 そんななかネオユニヴァースが先導しており、ふと落ちていた一つのなにかを手にする。

 

 「なんでしょう、そちらは…?鍵、のように見えますが」

 

 「“MSTR”…でも、きっと『謎』だよ」

 

 「“WDDG”…?」

 

 「うぃーどぅーじー?」

 

 「スフィーラ」

 

 頼むから日本語で話してほしかった。ネオユニヴァースの独特すぎる話術は、日本語一年生の外国人よりもあっちこっちいってるように感じる。

 

 まぁスティルインラブが楽しそうだから、それでよかった。

 

 そうしながら海辺を歩きなつつ、流れ着いたものを見つけてはなにかと考察するふたり。

 

 しばらく歩いていると、甘酒の温かさが切れたのか、少年はくしゃみをした。

 

 「あっ大丈夫ですか?たしかあちらにお店があったはず…買ってきますね」

 

 そういって一人で走っていった。少年も後を追おうとする。

 

 「まって」

 

 ネオユニヴァースに止められる。

 

 「あなたにとって、もう一人のスティルインラブは何?」

 

 突然な質問だった。内なる紅についてだろうが少年は迷わず、《大切な存在》と答える。

 

 「…スティルインラブは自分よりももう一人のほうが大切ではないか、と言っていた。

 スティルインラブは今悩んでいる。このまま幸せでいいのか、と」

 

 そんなのは、彼にとって当然のことであった。内なる紅についても気になるが、元のスティルインラブもまた大切な存在である。

 

 もし彼女になにかが足りない、不安があるのなら自分がどうにかする、と言った。

 

 「…スティルインラブはもともと、もう一人のほうを嫌がっていた。暴走、それが彼女の(むしば)み。だけどここでは違った。蝕みは赤い糸となり、あなたと繋ぐ鎖になっている」

 

 急に日本語で話し始めた。とりあえず聞き続けることにする。

 

 「決して千切(ちぎ)れることのない、強固な“ROPE(ロープ)”。それは恐らく、あなたとスティルインラブの世界に続いている。 

 だけどその世界が“HPED”なのか…それとも“BDED”なのかは不明。

 少なくとも、あなたの選択にかかっていることは、必須」

 

 ロープだけはなんとなくわかるが、後者ふたつはわからない。ようするに、今後は少年次第、ということなのだろうか。

 

 「…イレギュラー。ネオユニヴァースはあなたとスティルインラブの無事を“祈る”するよ。…スティルインラブをお願い」

 

 「お待たせしました…ふたりとも、なにか話されてました?」

 

 飲み物を持ってきた彼女が戻ってきたときには、すでに少年のキャパシティーをやや超えてしまっていたのだった。

 

 ――――――――――

 

 そんな帰り道、もう夕日となった時間の商店街にて福引会があるのを見つけた。

 

 じつは少し前にネオユニヴァースが買い物をしていたが、その時に福引券を一枚もらっていた。なので彼女に引かせようとすると、当の本人は少年に渡してくる。

 

 「これはあなたが使って」

 

 いいのか?と少年は聞く。

 

 「はい」

 

 福引券を持った手を伸ばしながら(うなず)く彼女に、それならと受け取って会場に向かった。

 

 「あいよー!さあなにがでるかな~!?」

 

 自身よりも張り切っている商店街の人をよそに、彼は木材でできた車輪のような抽選器を回す。

 

 昔早く回しすぎて母親に怒られたな、と思いながら動かしていると、コロンと木の板に落ちる子気味よい音がする。

 

 そこには金色の小さな球体が落ちていた。

 

 「なんとっ!おめでとうございまぁぁぁす!!特賞『温泉旅行券』、出ましたぁ~~~~!!」

 

 会場は瞬く間に盛り上がった。自分のように喜ぶものや、やけに感動している人たちに圧巻されてしまう。

 

 「おめでとう!まさか出るとは思わなかったよ!!」

 

 それはそうだった。心の隅で出たらいいな~と思いつつ、彼の本命は1等の『ニンジンハンバーグ』であった。

 

 商店街の人から温泉券を受け取ると、そそくさとスティルインラブたちのところに戻っていく。

 

 「お、おめでとうございます!当たってよかったです!!」

 

 彼女から賞賛をいただく。しかし彼自身申し訳なさそうだった。もともとあの券はネオユニヴァースのもの。ゆえにこれは返すものではないか、という。

 

 「私はいい。それよりもこれは、あなたに必要なもの」

 

 まるでこれが当たることが前提に言ってきた。しかし、親にどう説明すべきか。

 

 「それは“あとでなんとかなる”だよ」

 

 えらい投げやりだった。

 

 とまあ、仕方なく今は手にしておく少年だったが河川敷についた当たりでスティルインラブをさそった。

 

 「え…いいのですか?」

 

 あの両親なら間違いなく許可するだろう。彼はお参りの時よりも勢いよく手を合わせる。

 

 「…はい。あなたよろしいのであれば」

 

 スティルインラブはそういって微笑んだ。…もしかして、ここまで読んでいたのだろうか。

 

 ネオユニヴァースのほうを見ると、明後日の方向を向いている。そんな彼女に聞いてみても、“SAN”としか返ってこなかった。

 

 ―――――――――――

 

 これはとある男女ふたりの物語。愛を望んだふたりは、どこか遠くの場所に行ってしまった。

 

 誰にも来れない、ふたりだけの場所。そんな男性はいま一人の少女の膝の上で寝ている。

 

 とても安らかな寝顔である。そんな彼の頭を少女は優しくなでる。

 

 彼女はやさしく何かをささやく。嬉しいはずなのに、その表情には切なさも見える。

 

 誰にも邪魔されないここには、たしかに幸せなふたりがいた。

 

 たとえそれが周りに認められなくとも、その愛は永遠につながるものだった。

 

 そう、いつまでも…。

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