スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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三本目《愛しています》

 今日も二人は公園で全力疾走する。しかしほかのことを気にしない二人は、この日あるものに邪魔される。

 

 それは雨だ。走っている途中に降り始めたのだ。

 

 もっとも二人は今の並走を止めなかった。そのおかけで全身が汗だけでなく雨で濡れたのだが。

 

 ともかくその並走が終わると、二人は屋根のあるベンチまで行く。

 

 あらかじめ持ってきていたタオルで体を拭く少年。少女も髪から水分を取っていた。

 

 「・・・せっかく楽しくなってきたところだというのに・・・」

 

 少年も肯定する。雨の中の走行も嫌いではないのだが、風邪でも引くと本末転倒になる。

 

 今は雨が止むのを待つしかなかった。

 

 村雨(むらさめ)、というべきか。降水は中々に激しい。

 

 ただこう言う雨は予想よりも早く止むのが少年にとっての経験談である。

 

 この日は確かに曇りであるし、降水確率も高かった。

 

 それでもこの日公園に来たのは、ひとえに彼女と走りたかったからだ。

 

 別れるたびに約束をしてくれる少女。せっかくできた友達の思いを大事にしたいから。

 

 しばらく待っていると、雨は止んでくれた。しかし(いま)だに曇り空でいつ降ってもおかしくない。

 

 それに足場がぬかんでいる。このまま走ると、後ろについてくる彼女は、泥で汚れてしまいそうだ。

 

 そこで彼は少女を先行させる案を伝えた。

 

 が、少女は首を横に振る。

 

 「・・・あなたの後ろがいいの。そこからあなたの背後をじっくりと見つめて、()いで、そしてあなたを(むさぼ)りたい・・・!そのためならば、あなたの脚によってどれだけでも汚れてしまっても、はしたなくなってもいいの・・・!!お願い。あなたの背中を味わわせて・・・!!!」

 

 真っ赤に目を光らせながらそんなことを言われ、渋々了承する少年。

 

 彼女の圧で走らされる・・・という恐怖的思考は一切ない。

 

 ただ少年が不満に思っていることは、少女のような奇麗なのが似合う存在に、自分の足のせいで汚れてほしくないという、特に深い理由のない思いだけだった。

 

 

 ――――――――――

 

 

 濡れた足場をお構いなく走る私と彼、彼は汚れに気を使って前に走らせようとしてくれたけど、私はそれでも後ろを走りたかった。

 

 たった一人だけで走ることに満足はもう私にはできない。前を走っていると、彼の存在を(じか)に感じれなくなる。

 

 それが嫌な私は、彼にわがままを言ってしまいました。

 

 今あの発言を思い出すと、顔が沸騰しそうなほどに恥ずかしい言葉を羅列してしまってました。

 

 そんなことを言われても、突き放さなかった彼。ああ私はなんて幸せ者なんでしょう。

 

 足場がぬかんでいるせいで、足の力が流され、普段よりもスピードが出せない。

 

 それでも、と全力を出すのをやめない。なぜならよりうまく走ればいいだけの話なのだから。

 

 彼もこの濡れた足場に四苦八苦しているようでした。これなら・・・。

 

 そう思った矢先のこと。(ほお)に水分が触れる。

 

 それは頬だけにとどまらず頭上、そして全身へと感じた。

 

 村雨がまた私を阻まんとしてきました。

 

 ですが不思議とより、集中力が上がっていきました。

 

 彼の跳ねてる泥がどれだけ私につこうとも、どれだけ濡れようと、状態は消耗するほど、より感覚が鋭利になっていきました。

 

 喰らいたい!喰らいたい!!喰らいたい!!!

 

 ・・・その時今までで一番、内なる私に支配されていたのでしょう。

 

 それでも彼に追いつけませんでした。

 

 また遠ざかっていく彼の背中。ここまで行くと、内なる私も徐々に控えめになってきます。

 

 こんなにも解放して走っているのに、届かない。ちょっとした悔しさも感じました。

 

 あの時のようにコーナー手前で待ってくれている彼。

 

 そばまでヘロヘロとなって足を無理に動かしてた時。

 

 「―――っ!?」

 

 足を滑らせました。よほど踏んだところが悪かったのでしょう。私は全身から倒れこむのに、反射的になった目を強く閉じました。

 

 その直後に感じたのは、地面に倒れている感覚ではありませんでした。

 

 なにかにしがみ付いた状態。目を恐る恐る開けると、彼のお顔が目の前にありました。

 

 彼が・・・とっさに倒れる私を支えてくれたのです。

 

 私はどうしてこうなったか理解が追いつきませんでした。

 

 大丈夫?と声をかけてくれる彼。いくら雨が降っているとはいえ、十分聞こえる声でした。

 

 しかし返事をすることが出来ません。ずぅっと見つめてしまってました。

 

 その時の私たちの状態は、お互いしっかりと深くハグをしていた状態でした。

 

 彼が中腰に近い体制で、そこに私が体重に任せて彼による形で。

 

 胴体の大体が密着状態でした。私は自身の鼓動と、彼の鼓動を胸で感じ取りました。

 

 すると気分が瞬く間に高揚していくのがわかりました。

 

 そして・・・血迷った私は、彼にとんでもないことを・・・何度目かの迷惑をかけてしまいました。

 

 屋根まで行こうと言ってくれる彼をその場に動かせないよう、抱きしめる力をより強くする私。

 

 困ったお顔をしていた彼が、かわいくてたまりませんでした。

 

 「好きです」

 

 そう言いました。彼はきょとんとしました。

 

 「あなたが・・・好きです」

 

 もう口が止まりませんでした。あれは・・・告白というにはあまりにも、はしたなすぎるものでした。

 

 「あなたが・・・あなたが大好きです・・・!」

 

 もう腕の力が止まりませんでした。彼のすべてを感じたかったのもあります。そしてそれと同時に、私のすべても彼に感じてほしかったのです。

 

 当時の記憶は曖昧(あいまい)になってます。

 

 それがようやく緩んだときは、雨もすっかり止み、太陽に照らされていました。

 

 その時まで彼も私を抱きしめてくれたことがその日何よりも嬉しかったです。

 

 ・・・翌日、私だけ風邪をひいたのは別のお話。

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