スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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ちらほらACT2の挿絵評価が、高そうで嬉しかったです(小並感)。


ACT4《不解な繋がり》

 「おはよう、アルヴ」

 

 「エアグルーヴさん…おはようございます」

 

 朝、トレセン学園とその寮の間にある通学路にて、エアグルーヴはアドマイヤグルーヴを見つけて共に登校する。

 

 「聞いたか?スティルインラブについてだが…」

 

 「ええ、彼が来ていたのでしょう?そこに乱入者が現れて、あわや惨事直前だったと」

 

 「いや、それじゃない…と言っても関係なくはないが…。まったくアイツという奴は…」

 

 アグネスタキオンは普段から、なにかと目をつけられている問題児で、一時期は退学寸前まで陥るほどの素行っぷりだった。

 

 今は実績もあって、ある程度の自由は与えられているものの、なにかと実験と称してトラブルは今でも起こしてしまっている。

 

 「ああ、あの人のこと…。いえ、それじゃない、というのは?」

 

 「話が逸れてたな、すまない。スティルインラブが寮を離れた、ということだ」

 

 「寮を離れた?」

 

 「ああ、なんでも親戚の家から通うことになった、ということなのだが、その様子だと寝耳に水だったようだな」

 

 「…もしや、いやさすがに…」

 

 「どうした?心当たりでもあるのか?」

 

 「いえ…なんでも…」

 

 「そうか…しかし、あのたづなさんが、いつにも増して気疲れしていたからな…よほどなんだろうな…」

 

 そう他愛のない会話をしながら歩いていき、校門がはっきりと見えるところまで行く。

 

 すると前で話し合っていた別の二人組が横になにかに気づき、足を止めて呆然とした。

 

 気になった二人もそっちを見てみると、別の方向からさらに二人並んで来るのを見て、同じく止まってしまった。

 

 スティルインラブと少年である。彼女のほうはエアグルーヴらのようにトレセン学園指定のセーラー服を着ており、少年のほうは学ランである。

 

 そんな異色的な存在は自然と、周りの視線を集める。

 

 一方の彼らは、視線に気づきつつも正校門の目の前まで歩く。

 

 そしてそこで彼らも立ち止まり、校舎を見上げる。

 

 「…」

 

 スティルインラブは残念そうだった。本当はまだ一緒にいたいのに、これ以上は彼が入れない。もっと居たかった。

 

 少年のほうも同じ気持ちだが、居続けると周りの迷惑になるため、彼女に一言伝える。

 

 彼女は視線を下げ、少しそうしていると彼のほうを向く。

 

 「はい…また後で…」

 

 彼はそんな表情を見ながら、軽く顔を縦に揺らす。そしてそのまま先ほど来た道を走っていった。

 

 そしてその背中が見えなくなるまで、彼女は見続けていた。いや、見えなくなった後もその視線を離せなかった。

 

 「…スティル」

 

 はっとなって、声を掛けたエアグルーヴへ向ける。一方のこの副会長は、まあ困惑がしかと見える顔をしている。

 

 「ど、どういう…ことだ…?なぜ彼がここまで…?」

 

 「…彼がわざわざ、ここまで見送りをしてくれているのです…。親戚として」

 

 「は?…あっ」

 

 エアグルーヴは察した。駿川たづなとの会話にてある程度、事情を知った彼女に強く出れなかった。

 

 一旦一呼吸おき、もう一度話し始める。

 

 「………まぁ…親戚なら…仕方ないな…うん、親戚だもんな」

 

 「えっ」

 

 顔に自分の手を当てるエアグルーヴと、それでいいの?みたいな顔するアドマイヤグルーヴだった。

 

 ―――――――――――

 

 さて、そんな放課後。スティルインラブはジャージを着て、トレーナーと別の校門で彼を待っていた。

 

 彼の実家からなら正門が近いのだが、彼の学校からはここが最短である。

 

 そこで準備運動もしていると、彼が姿を現す。スティルインラブの表情は明るくなった。

 

 こうして大人兼担当であるトレーナーと入ることで円滑に、校舎内へ入ってからトレーニングを始めていくようになった。

 

 さて、レース場にてトレーニングを行っていると、トレーナーはあることに気づく。

 

 「あれ…周りに私ら以外に来てなくない…?スティルより速い人が走っているって、もう噂は広がっているのに、誰もいない…。もしかして…」

 

 「まあその通りだ」

 

 「あっ、エアグルーヴとアルヴ」

 

 だいたいの事実、つまり今のスティルインラブに関わっては、恐ろしい目に合う、という事も拡散されたようだ。

 

 それについて、納得と同時にこれはこれで、いい状況なのでは?と思ってしまった。

 

 今走っている、二人を邪魔する可能性が減ったのだ。より集中して励むことができるのだ。利用しない理由はない。

 

 「まあ確かに…しかしあまりこの状況を利用しないでくれ。他のウマ娘たちがここでトレーニングができなくなる」

 

 「それはもちろん調整するよ。並走に癖ができないかが心配だし…ああ、どうしよう。そこ考えたら、デメリットもちゃんとあるよね」

 

 「それについて、ですが…」

 

 アドマイヤグルーヴが話し出す。意外と思いつつ耳を貸してみるトレーナー。

 

 「…もし必要であれば、私が走ってもいいです」

 

 「え?いいの?」

 

 「あなたたちが、それでいいのであれば…」

 

 「おお…」

 

 (ここまで行くか。想像以上の成長だ)

 

 トレーナーは感嘆して声を漏らし、エアグルーヴも笑みが(こぼ)れる。

 

 「…あ、待ってください」

 

 「えっ?」

 

 「いやその…去年のことを思い出してしまって…」

 

 「ああ…いや待って、彼を混ぜずに走れば大丈夫…なはず」

 

 「そこは確信していってほしいが…、むう…想像がたやすいな…」

 

 あの時を思い出し、震えてしまう彼女たち。そこへ一旦走行を止めたスティルインラブたちが戻ってくる。

 

 「アルヴさん?どうしてこちらに…?」

 

 「…どうも」

 

 「スティル。よかったら彼の代わりにアルヴと走ってみないか?実戦を想定したトレーニングができるはずだぞ」

 

 「アルヴさんと…?」

 

 「…よかったら…だけど…」

 

 「!」

 

 「ウィルコ」

 

 「へ?うおっ!?」

 

 いつの間にかネオユニヴァースがいた。ウィルコとは『了解』の類義語である。しかも彼女だけではない。後ろにはもう一人、フレームが太めの眼鏡をかけた()()()髪型で小柄のウマ娘もいる。

 

 「あっ、キミは…」

 

 「どうも…。その、私もスティルさんと走らせてもらえないですか?」

 

 《ゼンノロブロイ》。本好きの図書委員で控えめな性格だが、彼女が持つ走りの実力は決して引けを取らないウマ娘である。

 

 スティルインラブとも仲が良く、トレーナーも本探しのときになどに世話になったことがある。

 

 「ネオユニヴァースもスティルインラブと、“走りたい”だよ」

 

 「…よろしいのですか?」

 

 「スティルインラブも、一緒に走りたい。はずだよ」

 

 「…」

 

 「スティル、私からもお願いできないかな…?」

 

 トレーナーも頼み込む。スティルインラブは朝のように考えると、彼女らに顔を向ける。

 

 「…わかりました。お願いします」

 

 「そう…少し待ってて」

 

 こうして少年と交代になり、今度はアドマイヤグルーヴとネオユニヴァース、そしてゼンノロブロイがともに走っていった。

 

 先頭はスティルインラブが走っている。本来彼女はアドマイヤグルーヴとネオユニヴァースと同じ《差し》という脚質である。

 

 つまりレース中どこにポジショニングするかについて、集団半ば辺りで位置する走りのものだ。

 

 ゼンノロブロイの方は《先行》脚質で、先頭を走る《逃げ》との中間にいるものだが、彼女も追い抜いて前に出ている。

 

 「スティルのペースが速い。気にしていない…というよりあれは確か…」

 

 「うん、彼のように走ってるね。前と後ろを両方気にしながら、それでいて好きに走る。普通逃げるなら、あまり後ろを意識しない方がいいけど、彼の走りを今までずっと間近で見てきたから、うまく再現できてる」

 

 「ああ。一時的なものとはいえ、ブランクがあるとは思えん。それにしても、断ると思ったんだがな」

 

 エアグルーヴはトレーナーへ向き、一方のトレーナーはそのまま四人の走りを見続ける。

 

 「スティルのことを考えると、混ぜない方がいいのではないのか?」

 

 「私もそう考えてたけど…友達や仲間はいた方がいいからね。私も学生のころ部活入ってたんだけど、こだわりが過ぎて距離を置かれてちょっと後悔したし、スティルにはそんな思いをさせたくない。打てる手は打っていかないとね」

 

 「そうか…そうだな。…明石トレーナー、アルヴを受け入れてくれて、感謝する」

 

 「どういたしまして」

 

 四人が近くまで、来始めている。ちょうど視界内に入ったフェンスにいる少年と見ながら、その走りを目に焼き付けた。

 

 ――――――――――

 

 「ふ…心配だったが、なんとかなっているようだったな」

 

 レース場観客席、最上階にこの学園の生徒会長《シンボリルドルフ》は、安堵しながら彼女らの走りを見ていた。

 

 ウマ娘の幸せを願う存在として、噂を聞いて心配したためやってきた。

 

 「…しかし、スティルインラブ。私は彼女個人については詳しくないが…今のラモーヌが見たら、どう思うか…」

 

 それと同時に、最強と言われてもおかしくない実力を持った存在でもある。ゆえに、スティルインラブの走りを見てあることに気づく。

 

 体の動きや性質だけでなく、人間性もある程度見抜けるシンボリルドルフ。しかし今まで感じたことのない、謎の不安がスティルインラブから感じたのであった。




毎日投稿やっぱ辛ぇわ…。
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