スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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ACT5《その関係は?》

 「やあ、災息(さいそく)しているようだね」

 

 「会長!いらしたのですか」

 

 トレーニングを見ていた当生徒会長は、タイミングを見計らってトレーナーたちと接触した。

 

 「会長さん?どうしてこちらに…?」

 

 「まあトラブルがあって、それ程経ってないからね。スティルインラブは…大丈夫そうかな?」

 

 「はい、今はこうして励むことができてます…」

 

 「そうか…それは良かった。それとアドマイヤグルーヴ、キミも顔つきがなかなか良くなったね。なにかとエアグルーヴが心配していたからな」

 

 「っ…。ど、どうも…」

 

 「それにネオユニヴァースにゼンノロブロイも、まい進できているかな?」

 

 「うん。ネオユニヴァースはCDR(よかった)、だよ」

 

 「は、はい!スティルさんはとても速くて…!だからこそ追いつきたいと思います!」

 

 「うむ。そして…というか…」 

 

 シンボリルドルフは少年を見る。…フルフェイスマスクにヘルメットに作り物の尻尾をした彼を見て、戸惑いで言葉が詰まった。

 

 「…その、キミが…例の?」

 

 「はい、会長…彼…じゃなかった。彼女がスティルらのインストラクターです」

 

 「いや、その…前にエアグルーヴが言っていたスティルの幼馴染み、では…?」

 

 「ああ…まあさすがに無理でしたか。いやまあ、普通にバレるって初めからわかってましたが…」

 

 「ちょっとエアグルーヴ。もうちょい頑張ってごまかして?」

 

 「どうにもならんに決まっているだろ、たわけ」

 

 トレーナーの愚痴にツッコミするエアグルーヴをよそに、もう気づいているならと彼はマスクを外していった。

 

 「ああ、しかし…本当に男性だったとはね…。私もここに入学する前から、噂に聞いていたが…こうして本当に会えるとは」

 

 手をあごに当て、まじまじと少年を見る。顔から体やそのライン。そして脚へと目を動かす。

 

 「…なるほど、確かにただ者ではないな。どこにも所属はおろか、レースも未経験…にも関わらずこの体…とんでもないな」

 

 そういうのは、中学生になってから言われるようになっていた。もっとも、トレーナーからも教わることもあるため、それも相まって成長できている。

 

 「そりゃあそうだろう。本来トレーナーの指導を合わせて強くなるのがウマ娘…いや私たちに限らずみんながそうさ。だがキミの身体は根本的に違う…。ウマ娘の力を持った、という一言だけでは収まらないものがある。

 でなければ彼女たちよりも、速く走れるわけがない。その根幹はいったい…?」

 

 そんな問いに彼は、スティルインラブがいたから、と返した。

 

 「ほう…なら一つ聞こう。キミにとってスティルインラブとは…どういう関係が、一言で教えてくれないが?」

 

 ()()と聞き、かけがえのない存在というには逸れた返答になってしまうため、彼は一旦相応しい答えを探す。

 

 少しした後、彼はこう答える。

 

 運命のパートナー、と。

 

 「っ」

 

 「ちょっ…」

 

 「お、おお…」

 

 「…WOW」

 

 「ふぇっ?!」

 

 「はい、でた惚気(のろけ)

 

 トレーナーは呆れるが、他は妙な気恥ずかしさがでた。そしてシンボリルドルフも驚いたような顔をする。

 

 「…そこまで言うのか。いや、まさにそうなのだろう。ふっ、スティルインラブが羨ましいよ。常に共にある存在…それだけでなく、いつでも全力を出し合える。ウマ娘として、これほど素晴らしいものはないと、私は思うな」

 

 (…ん?)

 

 彼女の発言に、エアグルーヴは違和感を抱いた。なにかすれ違っていないか?と。

 

 「…自分も出会えてよかった、か…。ああ、そうだろう?共に走ることは、いいことだ。少年…いや、キミの名前を教えてほしい。

 ――――、か。いい名だ。いつか私とも走ってくれないか?」

 

 「おおっ?!」

 

 「ちょおっ、会長!?」

 

 。という文字が思い浮かぶと同時に、エアグルーヴとアドマイヤグルーヴ、そしてトレーナーは反射的にシンボリルドルフを止めようとした。

 

 「ん?どうしたんだ?」

 

 「あのその…!今はまずいというか…」

 

 「そ、そうです!彼にはスティルさんがいるから、やめといたほうが…」

 

 「うんうん!なんというか、スティルは彼のもの、いや間違えた彼はスティルのものだから、お願いですから止まってください悪いこと言わないから!」

 

 「む?な、なぜそんな焦っているんだ?」

 

 突然慌てる三人に困惑するシンボリルドルフ。だがそこに少年が一言謝った。

 

 スティルとしか走る予定はない。

 

 そう言いながら、彼はスティルインラブの肩を掴んだ。

 

 「っ…!」

 

 「!…そうか、残念だが、仕方ないな。突然ですまない」

 

 そう返事を聞いた彼は、今度は二人っきりで走るために、そのままスティルインラブを連れてコートへ向かった。

 

 「…え?ああ、はい、大丈夫です。…いつでも走れます。

 …はい。では、まいりましょうか」

 

 少年とスティルインラブは走り始める。前が彼、後ろが彼女。そんな二人にとっていつもの走り。あっという間に遠くへ行った。

 

 「ふ…、やはり凄まじいな。スティルインラブの走りに全く臆していない」

 

 「あの…会長。先ほどの質問についてですが…」

 

 「ん?彼が運命のパートナーと答えた件かい?」

 

 「ま、まあそれもあるのですが…ひとまず、どうして少しひねった質問を?」

 

 「なに、少しラモーヌの真似をしてみただけさ」

 

 「ラモーヌ先輩、…の真似?」

 

 メジロラモーヌ。スティルインラブよりも先にトリプルティアラを達成した、魔性のウマ娘。シンボリルドルフは彼女との関係は決して短くなかった。

 

 しかし、この先代はシンボリルドルフでさえ、()()()()とされる雰囲気をまとう事でも有名である。

 

 「ああ。若干変わった質問のほうが、より答えを引き出せると思ってな。予測通りだったよ」

 

 「そうですか…。ちなみに、一緒に走ってほしい、というのは…?」

 

 「それは…、そのままの通りだが?」

 

 「ああ…やはり…、すみません。変なこと聞きました。忘れてください…ですが」

 

 エアグルーヴはシンボリルドルフに近づき、妙に張り詰めた顔を向けてくる。

 

 「どうか、どうか()()()()()()()()()()ような真似は控えてください…!いかなる理由も絶対に…!いいですね!?」

 

 「!?そ、そこまでしたつもりはなかったのだが…!?」

 

 「いやホントお願い。マジで勘弁して。毎回あの空気感じると、寿命縮むから」

 

 「よくわからないが、そんなことが!?」

 

 エアグルーヴとトレーナーの迫真の説得に、現会長はおののいてしまった。

 

 そんな光景を見るアドマイヤグルーヴも怖さ半分、呆れ半分で彼女を見ながらこうつぶやく。

 

 「…いつか刺されるかもしれませんね…相手のその相手に」

 

 「えっ」

 

 「はわわわわ…!!や、やはりあの二人は…そういう…!」

 

 「ウイ」

 

 ゼンノロブロイの慌てっぷりに、とりあえず返事したネオユニヴァースであった。

 

 ―――――――――――

 

 後日にて行われた《宝塚記念》。

 

 スティルインラブはこのレースでも、圧巻の展開を見せつけた。

 

 ()()()()のタップダンスシチーを再び置いていき、同じく出場していたゼンノロブロイにも、手も足も出させずに真っ先にゴールしていった。

 

 このとき、タップダンスシチーは「まさに、この世代の紅い波そのもの」と残している。

 

 観客たちも彼女の勝利を祝福をし、スティルインラブもまた微笑んでお礼をした。

 

 レースが一通り終わり、会場の外へ来た少年と同行してくれたネオユニヴァース。トレーナーは今、迎えに行っている。

 

 そのとき、ネオユニヴァースが何かに気づいた。明後日の方向へ手を上げてそのままじっと固まる。

 

 しばらくそうしている時間があった。それもトレーナーとスティルインラブがそのうちに、戻ってきたほどに。

 

 「……なんでもない」

 

 丁度上げ終わったかと思ったら、そんなことを言った。

 

 しかしその声はどこか、なにかを隠しているようだった。

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