スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
「やあ、
「会長!いらしたのですか」
トレーニングを見ていた当生徒会長は、タイミングを見計らってトレーナーたちと接触した。
「会長さん?どうしてこちらに…?」
「まあトラブルがあって、それ程経ってないからね。スティルインラブは…大丈夫そうかな?」
「はい、今はこうして励むことができてます…」
「そうか…それは良かった。それとアドマイヤグルーヴ、キミも顔つきがなかなか良くなったね。なにかとエアグルーヴが心配していたからな」
「っ…。ど、どうも…」
「それにネオユニヴァースにゼンノロブロイも、まい進できているかな?」
「うん。ネオユニヴァースは
「は、はい!スティルさんはとても速くて…!だからこそ追いつきたいと思います!」
「うむ。そして…というか…」
シンボリルドルフは少年を見る。…フルフェイスマスクにヘルメットに作り物の尻尾をした彼を見て、戸惑いで言葉が詰まった。
「…その、キミが…例の?」
「はい、会長…彼…じゃなかった。彼女がスティルらのインストラクターです」
「いや、その…前にエアグルーヴが言っていたスティルの幼馴染み、では…?」
「ああ…まあさすがに無理でしたか。いやまあ、普通にバレるって初めからわかってましたが…」
「ちょっとエアグルーヴ。もうちょい頑張ってごまかして?」
「どうにもならんに決まっているだろ、たわけ」
トレーナーの愚痴にツッコミするエアグルーヴをよそに、もう気づいているならと彼はマスクを外していった。
「ああ、しかし…本当に男性だったとはね…。私もここに入学する前から、噂に聞いていたが…こうして本当に会えるとは」
手をあごに当て、まじまじと少年を見る。顔から体やそのライン。そして脚へと目を動かす。
「…なるほど、確かにただ者ではないな。どこにも所属はおろか、レースも未経験…にも関わらずこの体…とんでもないな」
そういうのは、中学生になってから言われるようになっていた。もっとも、トレーナーからも教わることもあるため、それも相まって成長できている。
「そりゃあそうだろう。本来トレーナーの指導を合わせて強くなるのがウマ娘…いや私たちに限らずみんながそうさ。だがキミの身体は根本的に違う…。ウマ娘の力を持った、という一言だけでは収まらないものがある。
でなければ彼女たちよりも、速く走れるわけがない。その根幹はいったい…?」
そんな問いに彼は、スティルインラブがいたから、と返した。
「ほう…なら一つ聞こう。キミにとってスティルインラブとは…どういう関係が、一言で教えてくれないが?」
少しした後、彼はこう答える。
運命のパートナー、と。
「っ」
「ちょっ…」
「お、おお…」
「…WOW」
「ふぇっ?!」
「はい、でた
トレーナーは呆れるが、他は妙な気恥ずかしさがでた。そしてシンボリルドルフも驚いたような顔をする。
「…そこまで言うのか。いや、まさにそうなのだろう。ふっ、スティルインラブが羨ましいよ。常に共にある存在…それだけでなく、いつでも全力を出し合える。ウマ娘として、これほど素晴らしいものはないと、私は思うな」
(…ん?)
彼女の発言に、エアグルーヴは違和感を抱いた。なにかすれ違っていないか?と。
「…自分も出会えてよかった、か…。ああ、そうだろう?共に走ることは、いいことだ。少年…いや、キミの名前を教えてほしい。
――――、か。いい名だ。いつか私とも走ってくれないか?」
「おおっ?!」
「ちょおっ、会長!?」
危。という文字が思い浮かぶと同時に、エアグルーヴとアドマイヤグルーヴ、そしてトレーナーは反射的にシンボリルドルフを止めようとした。
「ん?どうしたんだ?」
「あのその…!今はまずいというか…」
「そ、そうです!彼にはスティルさんがいるから、やめといたほうが…」
「うんうん!なんというか、スティルは彼のもの、いや間違えた彼はスティルのものだから、お願いですから止まってください悪いこと言わないから!」
「む?な、なぜそんな焦っているんだ?」
突然慌てる三人に困惑するシンボリルドルフ。だがそこに少年が一言謝った。
スティルとしか走る予定はない。
そう言いながら、彼はスティルインラブの肩を掴んだ。
「っ…!」
「!…そうか、残念だが、仕方ないな。突然ですまない」
そう返事を聞いた彼は、今度は二人っきりで走るために、そのままスティルインラブを連れてコートへ向かった。
「…え?ああ、はい、大丈夫です。…いつでも走れます。
…はい。では、まいりましょうか」
少年とスティルインラブは走り始める。前が彼、後ろが彼女。そんな二人にとっていつもの走り。あっという間に遠くへ行った。
「ふ…、やはり凄まじいな。スティルインラブの走りに全く臆していない」
「あの…会長。先ほどの質問についてですが…」
「ん?彼が運命のパートナーと答えた件かい?」
「ま、まあそれもあるのですが…ひとまず、どうして少しひねった質問を?」
「なに、少しラモーヌの真似をしてみただけさ」
「ラモーヌ先輩、…の真似?」
メジロラモーヌ。スティルインラブよりも先にトリプルティアラを達成した、魔性のウマ娘。シンボリルドルフは彼女との関係は決して短くなかった。
しかし、この先代はシンボリルドルフでさえ、
「ああ。若干変わった質問のほうが、より答えを引き出せると思ってな。予測通りだったよ」
「そうですか…。ちなみに、一緒に走ってほしい、というのは…?」
「それは…、そのままの通りだが?」
「ああ…やはり…、すみません。変なこと聞きました。忘れてください…ですが」
エアグルーヴはシンボリルドルフに近づき、妙に張り詰めた顔を向けてくる。
「どうか、どうか
「!?そ、そこまでしたつもりはなかったのだが…!?」
「いやホントお願い。マジで勘弁して。毎回あの空気感じると、寿命縮むから」
「よくわからないが、そんなことが!?」
エアグルーヴとトレーナーの迫真の説得に、現会長はおののいてしまった。
そんな光景を見るアドマイヤグルーヴも怖さ半分、呆れ半分で彼女を見ながらこうつぶやく。
「…いつか刺されるかもしれませんね…相手のその相手に」
「えっ」
「はわわわわ…!!や、やはりあの二人は…そういう…!」
「ウイ」
ゼンノロブロイの慌てっぷりに、とりあえず返事したネオユニヴァースであった。
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後日にて行われた《宝塚記念》。
スティルインラブはこのレースでも、圧巻の展開を見せつけた。
このとき、タップダンスシチーは「まさに、この世代の紅い波そのもの」と残している。
観客たちも彼女の勝利を祝福をし、スティルインラブもまた微笑んでお礼をした。
レースが一通り終わり、会場の外へ来た少年と同行してくれたネオユニヴァース。トレーナーは今、迎えに行っている。
そのとき、ネオユニヴァースが何かに気づいた。明後日の方向へ手を上げてそのままじっと固まる。
しばらくそうしている時間があった。それもトレーナーとスティルインラブがそのうちに、戻ってきたほどに。
「……なんでもない」
丁度上げ終わったかと思ったら、そんなことを言った。
しかしその声はどこか、なにかを隠しているようだった。