スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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ACT7《小百合(リリィ)の危機》

 「ねーちょっとくらいいいでしょ!?ねーったら!!アタシと走りなさいよ~~!!」

 

 夏合宿のある日。愛用の魔女帽子をかぶるスイープトウショウは少年に、地団駄(じだんだ)な様子で抗議している。

 

 何事かとダイワスカーレット、ウオッカ、アストンマーチャンは彼らに近づいた。

 

 「どうしたのよ。今度は何に騒いでるの?」

 

 「聞いてよ!ずっとお願いしてるのに、『スティルとしか走らないようにしてる』って何回も言ってくるのよ!!」

 

 「あ~っ…そ、そりゃあダメだろ…。おいスイープ、いいからもうやめろよ…」

 

 「も~何なのよ?!言いたいことがあるなら、言ってて何度も言ってるでしょ!!なんなのよそれ!!」

 

 「いい、いわせんなよ!いいからあんまり迷惑かけんななー!」

 

 「やーだー!ヤダヤダヤダヤダヤダーー!!一緒に走るまでここを動かないんだから~~~!!」

 

 癇癪(かんしゃく)が全然止まらないスイープトウショウに、ダイワスカーレットとウオッカはまたかと呆れる。

 

 そこにアストンマーチャンが割って入る。少し背を下げて彼女の目線に合わせようとする。

 

 「スイープさん、もしかして彼からなにか魔法を教わりたくて、頼み込んでるんですか?」

 

 「そうよ!このアタシがせっかくここまでしてるのに、なんでいう事聞かないのよ~!!」

 

 「いやぁ…いくら生まれつきウマ娘の力持ってるとはいえ、さすがに魔法までは持ってないでしょ?」

 

 「持ってるに違いないわよ!!じゃなきゃこんなに速いわけないでしょ!!」

 

 「あのときの話まだ引きずってたの…。いい加減諦めなさい、邪魔になってるわよ」

 

 「ううう~!だってぇ!だってぇ…!」

 

 「う~ん、これはマーちゃんなりの考えですが、スイープさんの言う事を聞かないのは、しょうがないと思いますよ?」

 

 アストンマーチャンは指一本を、自身の口元に当てながら(つぶや)

 

 「どういうことよ?」

 

 「前にスイープさんから見せてもらった、魔法の本に書いてあったような気がするんですけど、彼はスティルさんの専属になっているんですよね?つまり、彼はスティルさんと契約をしたことにより、スティルさん以外のいう事を聞けなくなったんじゃないかなと、マーちゃんは思うんです。ポケモンでいうところの、言う事を聞かない状態です」

 

 「ポケモンで例えていいのかこれ?」

 

 「!、そうだった!契約魔法を使ったのなら、主人になった者以外の言う事を聞かないのは道理なはずだわ!だったらスティル!命令しなさいよ!」

 

 「ええ!?し、しかし…」

 

 「だってあなたの言う事しか聞かないんでしょ!?だからなんでもいいから命令しなさいよ!」

 

 「あーもう!いい加減にしなさい!これ以上迷惑かけないで!」

 

 しびれを切らしたダイワスカーレットが、スイープトウショウの手を掴み、強制的にこの場から離そうとする。

 

 「閃いた!!」

 

 「うわあ!な、なんだぁ!?」

 

 実はその場にずっといたスティルインラブのトレーナーは、手の平をもう片手で叩きながら、いきなり大声を出す。

 

 「チーム戦やらない?アオハル杯のように走ればなにか、ヒントが見つかるかもしれないし、なによりスティルと彼を無理に分けなくて済む!」

 

 アオハル杯とは過去に開催された大会で、先ほどのように1レースにつき、三人のチームメンバーを組んで競争する特殊レースである。

 

 少年はその大会についてサッパリだったが、要するに自分とスティルインラブと組めば問題が減る、という事だろうか。

 

 「そうだね。それなら文句ないんじゃない?っていうかキミとスティルもいい?」

 

 「はい、それならば…」

 

 彼も彼女と共に走れるなら、異論はなかった。

 

 「決まりね!!でレース条件とメンバーはどうすんの?スティルたちはあと一人選べるけど候補とかいる?」

 

 「条件としては中距離走ろうとは思ってるけど、無理にあと一人決める必要はないかな?アオハル杯を目指すわけないから」

 

 「うーん、となると短距離専門(スプリンター)のマーちゃんは走れませんね。スカーレットとウオッカ以外に誰か呼ぶか、もしくは二対二で走るかになりますね」

 

 「私が走るわ」

 

 「はい、わかり…!!?」

 

 「えっ?う、ウソッ!?」

 

 全く聞かない声に一瞬わからなかった彼女たちは、何も疑問を持たずに声の主の方に向く。

 

 そこにはあの、初代トリプルティアラ《メジロラモーヌ》がいた。

 

 「ラ、ラモーヌ先輩!?どうしてここに!?」

 

 「なんだか面白そうな声が聞こえて。私も混ぜてちょうだい?」

 

 「っ!?」

 

 (メジロラモーヌが参戦!?これは本来またとない機会だけど、今回ばかりはタイミングが悪いかも…!)

 

 スティルインラブはメジロラモーヌに苦手意識を持っているため、接触は避けたかった。いずれレースでまみえるかもしれないと思っていたが、こんな形で関わってくるとは、全く考えていないのである。

 

 「えっ!?あのラモーヌ様が走るの!?」

 

 「しかもアオハル杯のチーム形式ですって!つまり彼も走るってこと!?」

 

 「マジで!?超見てみたい!!あのメジロラモーヌ様と、スティルインラブ様を育て上げたお方が勝負するなんて、この先二度とないマッチよ!!」

 

 「おいマズくないか…?周りが勝手に盛り上がってるぞ?」

 

 「うーむ、さすがラモーヌ先輩。存在するだけで全部持ってくるとは…」

 

 「感心してる場合じゃないだろ!?」

 

 「それで?どうするのかしら?」

 

 正直状況は事実マズかった。どんどんと人が集まり、断りづらい雰囲気が作られてしまう。

 

 トレーナーが戸惑う中、スティルインラブはメジロラモーヌを警戒しながら、彼に口を開く。

 

 「…貴方は、貴方ならどうしますか?」

 

 少年は笑顔で返答する。

 

 スティルが挑むなら、共に走る。

 

 「!…わかりました。受けて走りましょう」

 

 「そ、じゃあ行きましょう」

 

 周りがさらに盛り上がり、メジロラモーヌは気にせずレース場へと向かった。

 

 「トレーナーさん、申し訳ありません。勝手に進めてしまって…」

 

 「…いや、謝る必要なんてないよ。むしろこっちこそ何もできなくてゴメン」

 

 「いえ…ではまいりましょう」

 

 そういい、彼女らもそっちに向かう。するとスイープトウショウがなにかに気づいた。

 

 「…っていうかチーム分けどうするのよ!?こっち全然決まってないんだけど!?」

 

 ―――――――――――

 

 さて、ほぼスイープトウショウの強引な振り分けで、赤チームとしてスティルインラブ、少年、ダイワスカーレット。

 

 青チームとしてスイープトウショウ、ウオッカ、そしてメジロラモーヌという事になった。

 

 ちなみにアストンマーチャンが、どこからか持ってきたゼッケンを、メジロラモーヌも律儀に着ている。

 

 「まさかあのラモーヌ先輩が、本当に走ろうとするだなんてな…」

 

 「なんの風の吹き回しでしょうか、突然…。もしかしてスティルさんのことが気になって?」

 

 「…いや、あの人の視線をよく見ろ」

 

 噂を聞きつけ、レース場にやってきたエアグルーヴとアドマイヤグルーヴが、メジロラモーヌの送っている視線の後を追う。そこには、あの少年がいた。

 

 「彼に…?正直、意外です。話だとメジロラモーヌさんは、レースしか興味を示さない、と聞いたことがあるのですが…」

 

 「ああ。しかし…恐らくいいものでは、ないかもしれん。あの人の考えていることは、私でも掴めない。レースが終わったあと、一悶着(ひともんちゃく)あるかもしれん」

 

 そう少し遠くから当の女王を見て、緊張するエアグルーヴ。そんなのを含む多くの視線を浴びるメジロラモーヌは、何を思っているのかが、わからない無表情で彼を見つめていた。

 

 「…はぁ、浅いわね」

 

 そう勝手に、少年へ失望しながら。




 ラモーヌファンの方、申し訳ありません。 

 昔に実装される前のラモーヌの小説書いてる身として、いまだに彼女のキャラが掴めてません。(というか当時のキャラ崩壊がヒドイ)

 とにもかくにも、ご愛読ありがとうございます。
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