スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
「ねーちょっとくらいいいでしょ!?ねーったら!!アタシと走りなさいよ~~!!」
夏合宿のある日。愛用の魔女帽子をかぶるスイープトウショウは少年に、
何事かとダイワスカーレット、ウオッカ、アストンマーチャンは彼らに近づいた。
「どうしたのよ。今度は何に騒いでるの?」
「聞いてよ!ずっとお願いしてるのに、『スティルとしか走らないようにしてる』って何回も言ってくるのよ!!」
「あ~っ…そ、そりゃあダメだろ…。おいスイープ、いいからもうやめろよ…」
「も~何なのよ?!言いたいことがあるなら、言ってて何度も言ってるでしょ!!なんなのよそれ!!」
「いい、いわせんなよ!いいからあんまり迷惑かけんななー!」
「やーだー!ヤダヤダヤダヤダヤダーー!!一緒に走るまでここを動かないんだから~~~!!」
そこにアストンマーチャンが割って入る。少し背を下げて彼女の目線に合わせようとする。
「スイープさん、もしかして彼からなにか魔法を教わりたくて、頼み込んでるんですか?」
「そうよ!このアタシがせっかくここまでしてるのに、なんでいう事聞かないのよ~!!」
「いやぁ…いくら生まれつきウマ娘の力持ってるとはいえ、さすがに魔法までは持ってないでしょ?」
「持ってるに違いないわよ!!じゃなきゃこんなに速いわけないでしょ!!」
「あのときの話まだ引きずってたの…。いい加減諦めなさい、邪魔になってるわよ」
「ううう~!だってぇ!だってぇ…!」
「う~ん、これはマーちゃんなりの考えですが、スイープさんの言う事を聞かないのは、しょうがないと思いますよ?」
アストンマーチャンは指一本を、自身の口元に当てながら
「どういうことよ?」
「前にスイープさんから見せてもらった、魔法の本に書いてあったような気がするんですけど、彼はスティルさんの専属になっているんですよね?つまり、彼はスティルさんと契約をしたことにより、スティルさん以外のいう事を聞けなくなったんじゃないかなと、マーちゃんは思うんです。ポケモンでいうところの、言う事を聞かない状態です」
「ポケモンで例えていいのかこれ?」
「!、そうだった!契約魔法を使ったのなら、主人になった者以外の言う事を聞かないのは道理なはずだわ!だったらスティル!命令しなさいよ!」
「ええ!?し、しかし…」
「だってあなたの言う事しか聞かないんでしょ!?だからなんでもいいから命令しなさいよ!」
「あーもう!いい加減にしなさい!これ以上迷惑かけないで!」
しびれを切らしたダイワスカーレットが、スイープトウショウの手を掴み、強制的にこの場から離そうとする。
「閃いた!!」
「うわあ!な、なんだぁ!?」
実はその場にずっといたスティルインラブのトレーナーは、手の平をもう片手で叩きながら、いきなり大声を出す。
「チーム戦やらない?アオハル杯のように走ればなにか、ヒントが見つかるかもしれないし、なによりスティルと彼を無理に分けなくて済む!」
アオハル杯とは過去に開催された大会で、先ほどのように1レースにつき、三人のチームメンバーを組んで競争する特殊レースである。
少年はその大会についてサッパリだったが、要するに自分とスティルインラブと組めば問題が減る、という事だろうか。
「そうだね。それなら文句ないんじゃない?っていうかキミとスティルもいい?」
「はい、それならば…」
彼も彼女と共に走れるなら、異論はなかった。
「決まりね!!でレース条件とメンバーはどうすんの?スティルたちはあと一人選べるけど候補とかいる?」
「条件としては中距離走ろうとは思ってるけど、無理にあと一人決める必要はないかな?アオハル杯を目指すわけないから」
「うーん、となると
「私が走るわ」
「はい、わかり…!!?」
「えっ?う、ウソッ!?」
全く聞かない声に一瞬わからなかった彼女たちは、何も疑問を持たずに声の主の方に向く。
そこにはあの、初代トリプルティアラ《メジロラモーヌ》がいた。
「ラ、ラモーヌ先輩!?どうしてここに!?」
「なんだか面白そうな声が聞こえて。私も混ぜてちょうだい?」
「っ!?」
(メジロラモーヌが参戦!?これは本来またとない機会だけど、今回ばかりはタイミングが悪いかも…!)
スティルインラブはメジロラモーヌに苦手意識を持っているため、接触は避けたかった。いずれレースでまみえるかもしれないと思っていたが、こんな形で関わってくるとは、全く考えていないのである。
「えっ!?あのラモーヌ様が走るの!?」
「しかもアオハル杯のチーム形式ですって!つまり彼も走るってこと!?」
「マジで!?超見てみたい!!あのメジロラモーヌ様と、スティルインラブ様を育て上げたお方が勝負するなんて、この先二度とないマッチよ!!」
「おいマズくないか…?周りが勝手に盛り上がってるぞ?」
「うーむ、さすがラモーヌ先輩。存在するだけで全部持ってくるとは…」
「感心してる場合じゃないだろ!?」
「それで?どうするのかしら?」
正直状況は事実マズかった。どんどんと人が集まり、断りづらい雰囲気が作られてしまう。
トレーナーが戸惑う中、スティルインラブはメジロラモーヌを警戒しながら、彼に口を開く。
「…貴方は、貴方ならどうしますか?」
少年は笑顔で返答する。
スティルが挑むなら、共に走る。
「!…わかりました。受けて走りましょう」
「そ、じゃあ行きましょう」
周りがさらに盛り上がり、メジロラモーヌは気にせずレース場へと向かった。
「トレーナーさん、申し訳ありません。勝手に進めてしまって…」
「…いや、謝る必要なんてないよ。むしろこっちこそ何もできなくてゴメン」
「いえ…ではまいりましょう」
そういい、彼女らもそっちに向かう。するとスイープトウショウがなにかに気づいた。
「…っていうかチーム分けどうするのよ!?こっち全然決まってないんだけど!?」
―――――――――――
さて、ほぼスイープトウショウの強引な振り分けで、赤チームとしてスティルインラブ、少年、ダイワスカーレット。
青チームとしてスイープトウショウ、ウオッカ、そしてメジロラモーヌという事になった。
ちなみにアストンマーチャンが、どこからか持ってきたゼッケンを、メジロラモーヌも律儀に来ている。
「まさかあのラモーヌ先輩が、本当に走ろうとするだなんてな…」
「なんの風の吹き回しでしょうか、突然…。もしかしてスティルさんのことが気になって?」
「…いや、あの人の視線をよく見ろ」
噂を聞きつけ、レース場にやってきたエアグルーヴとアドマイヤグルーヴが、メジロラモーヌの送っている視線の後を追う。そこには、あの少年がいた。
「彼に…?正直、意外です。話だとメジロラモーヌさんは、レースしか興味を示さない、と聞いたことがあるのですが…」
「ああ。しかし…恐らくいいものでは、ないかもしれん。あの人の考えていることは、私でも掴めない。レースが終わったあと、
そう少し遠くから当の女王を見て、緊張するエアグルーヴ。そんなのを含む多くの視線を浴びるメジロラモーヌは、何を思っているのかが、わからない無表情で彼を見つめていた。
「…はぁ、浅いわね」
そう勝手に、少年へ失望しながら。
ラモーヌファンの方、申し訳ありません。
昔に実装される前のラモーヌの小説書いてる身として、いまだに彼女のキャラが掴めてません。(というか当時のキャラ崩壊がヒドイ)
とにもかくにも、ご愛読ありがとうございます。