スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」 作:狸より狐派 ハル
さて、スティルインラブというこの少女、前々から
専属トレーナーとなった彼女が自身の部屋であるトレーナー室で作業しているとき、スティルインラブが声をかけるだけではわからず、顔を目の前にやって、ようやく気付くほどである。
これに関しては、スティルインラブ自身にとっても一つの悩みで、日常生活にとにかく困っていた。
まだ交流し始めて、日が浅いトレーナーはうまく具体的な案が出せなかった。そこでトレーナーは少年も誘ってお出かけを行おうとした。
彼とはあの日以来、スティルインラブとのトレーニングにとても必要な存在となっている。
彼のおかげでスティルインラブの走りをより確かめることが可能になっている。しかし欠点として、彼は外部の人間であるために、毎回公園にいかなければならない。
本来トレーニングは設備の整った学園で行ったほうがずっといいのだが、彼は入れないので今はこうするしかなかった。
今後の活動において課題となっている。
話を戻す。トレーナーたちは普段とは違う別の公園にいた。
「なんだか新鮮です・・・普段私は彼としか過ごしたことがないので・・・」
「・・・その、どうして、目をそらして・・・?」
「え、えっと・・・ごめんなさい。・・・本当にほかの方と過ごしたことがなくて・・・緊張していて・・・」
「ああ、ごめん。やっぱ迷惑だった?」
「いいえ、迷惑だなんてとても・・・私、こう見えてもとても嬉しいのです。こうやってみなさんと何気なく過ごせることに」
そう彼女は、はにかむ。少年も時折こうやって走らず、スティルインラブと過ごせるのが嬉しい。
おかげか気まずさもなく穏やかに公園を歩いていく。
すると前から女性同士の二人が歩いてくる。その相手はとくにおかしい点はなかったが、このまま歩くとスティルインラブがぶつかってしまうのではないか。
彼女はこちらを見ており気づいておらず、相手もお互いを見て話しているためかこちらに気づいていない。
間に合わないと感じつつ、トレーナーは声をかけようとした。
しかし少年の動きのほうが早かった。
彼は片腕でスティルインラブの奥の肩を掴み、自身のほうに寄せた。
「ひゃっ」
驚く彼女をよそに、あの相手二人は結局気づかず通り過ぎて行った。
突然の行動をした彼は、彼女に謝る。
「い、いえ・・・おかげでぶつからずに済みました・・・」
そう顔を赤らめてそういった。少年は気を取り直し、一緒に歩こうとする。・・・肩に手を当てっぱなしにして。
「・・・その、いったん離そうか・・・」
きょとんとされた。トレーナーは変なこと言っていないのに。
「いやぁ・・・その・・・ちょっと見てるこっちが恥ずかしいというか・・・」
「その・・・――――さん・・・あの・・・は、恥ずかしい・・です・・・」
さらに顔を赤くするスティルインラブに少年も申し訳なくなり、ようやく離した。
「ごめんなさい・・・トレーナーさん・・・彼とはこうやって助けてもらってて・・・よく私を支えてくれてて・・・」
「・・・はは、なんだか王子様みたいだね」
そんなこと
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チェーン店に誘い、ともに食事をしようとする。そこでスティルインラブは注文を行おうとした。
だが彼が代わりに行おうとする。
「すみません・・・みなさんにはすでにお世話になりっぱなしなので・・・せめてこれくらいやらせていただければと・・・」
そう言ってくれたが、少年はなんだか不安そうにして、大丈夫かなと呟く。
どうしたのだろうと、トレーナーはスティルインラブを観察してみる。すると彼女が声を確かに出して、店員に話しかけているにも関わらず、相手は気づいていない。
もう一度かけても結局どこかに行ってしまった。
そんな光景にたまらず、彼が声を出した。そうしてようやく店員が気づいたのだった。
注文し終えたあと、スティルインラブが彼に謝る。
「ごめんなさい・・・今回もあなたに頼ってしまう形になって・・・」
「なんか・・・本当に気づいてなかったのかな?あの店員さん」
「本当に気づいてなかったのだと思います。彼と出会ってからも他の方々に声をかけているのですが・・・どうしても気づかれないのです・・・」
そうえば学園でもそうだった。彼女と契約して少し経ったある日、彼女がほかのウマ娘に声をかけていたが、その子たちも気づかずどこか行ってしまった。
「そんなにも気づかれないの・・・?」
「はい・・・まるで霧の中にいるみたいに・・・ほかの人は気づくことがないのです」
そう気落ちしながら言った。少年もどうにかならないのかといった。
「いいえ、絶対にそうなりたい、とまでは思っていなんです。あなたさえいれば私は・・・」
そうスティルインラブはいうが、少年のほうは納得していなかった。
彼は彼女が周知されない事実に不満を誰よりも感じている。
確かに二人っきりでいることも好きだ。けれど他者から存在しない扱いは嫌がっている。
だから少年は、トレーナーに少々強引に顔を合わせに来ても文句言わないでほしいといった。
「うん、もちろんだよ。私も初めは驚いてたけど、この驚きは、スティルからのサプライズだと思ってるから」
そういうと、彼もようやく安心してくれたようだ。スティルインラブも顔がより穏やかになる。
「それに方法がある、絶対に気づいてもらえるヤツ」
「それは、いったい・・・?」
「レースだよ。絶対にわかってくれる人が現れるはず。だからこれからも頑張ろう」
「ええ・・・もちろん私もそうするつもりです・・・ですが・・・その・・・」
「あー・・・やっぱり周りが怖い・・・?」
「そ、それもあるのですが・・・あの、すごくわがままなことを、いってもよろしいでしょうか・・・?」
「うんいいよ。なんでも言って?」
「あ、ありがとうございます・・・えと・・・そのですね・・・?」
口がどもってしまう彼女、少しして意を決意してこんなことを言った。
「彼を・・・トレセンに入れることは・・・できないでしょうか・・・?」