スティル「喰らわせて?」幼馴染み「ええで」   作:狸より狐派 ハル

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九本目《いつも一緒にいてほしい》

 「う~ん、難しいですね。確かな資格を持った指導員ならともかく、外部・・・それにスティルインラブさんの同年代でしかも異性となるとちょっと・・・」

 

 「あ~、まぁそうですよね・・・」

 

 「・・・それと・・・ウマ娘と同じ速度で走るって・・・」

 

 「あっその、気にしないでください。邪魔してすみませんでした」

 

 そうトレーナーはトレセン学園の理事長秘書に頼み込むも、察してその場を後にした。

 

 やはりそう簡単にいかない。今は変わらず分けたトレーニングを行うしかなかった。

 

 後にスティルインラブを落ち込ませるも、割り切ってくれた。とにかくトレセンにはトレセンの強みを生かせるよう、現場での慣れも染み込ませる。

 

 今はそのコースにてスティルインラブが走っていた。

 

 「どうでしょうか。トレーナーさん・・・?」

 

 「うん、フォームがキレイだったよ」

 

 「あ、ありがとうございます。ここにきてから、意識して取り組んだので・・・」

 

 「取り組んだ?」

 

 「せめて正しく美しく、と・・・」

 

 そうスティルインラブは話すが、顔が暗くなっていく。

 

 「・・・彼には・・・申し訳ないのですが・・・」

 

 「う~ん・・・」

 

 あの少年はどっちかというと本能的になった彼女が好きである。だが彼女自身、この場では今の様な走りで表現したがっていた。

 

 「みんなが受け入れてくれればなぁ・・・難しいんだよなぁ・・・」

 

 「すみません・・・」

 

 「スティルが謝ることじゃないよ。そういえば、あなたの夢って聞いてなかったよね?」

 

 トレーナーは気分転換のために、話題をそらす。これに関しては話さなければと思っていたことだ。

 

 「夢、ですか・・・実は《ティアラ路線》には、あこがれがあります」

 

 「ティアラ路線!いいね」

 

 スティルインラブが挑戦する競争ウマ娘界隈、《トゥインクルシリーズ》には様々な道があり、そのうちの一つがそれだ。それを制覇するにはある三つのレースで一着をとる必要がある。

 

 「あの麗しい輝きを(いただ)ければ、きっと誰からも認められる・・・愛されるって、素敵だな、って。・・・ど、どう思われますか?」

 

 「もちろん素晴らしいと思うよ・・・あっティアラ路線といえば印象的なのが・・・」

 

 そうトレーナーが思い出したのは過去のあるもの、それと同時に黄色い悲鳴が聞こえた。

 

 「きゃあ・・!ラモーヌ様だわ・・・!」

 

 周りにいたウマ娘の視線を追うと、そこには話題にしようとしたウマ娘、メジロラモーヌがいた。

 

 この紺色(こんいろ)に近い色である青鹿毛(あおかげ)の髪を丸く束ね、妖艶で大人びた風貌をもったウマ娘は、歴史上初めてかつ唯一ティアラ路線、全てのレースを制した存在。通称《トリプルティアラ》という偉業を達成したのである。

 

 『ああ、愛したい』

 

 トレーナーは彼女の走りをその目で見た。そして何度も心を掴まれた。

 

 「すごかったんだよ。ラモーヌの走りは・・・」

 

 その時のことを熱弁したのである。最後まで美しく、強く駆け抜けた彼女の走りを。

 

 「あぁ・・・あの輝きは、忘れられないなぁ・・・」

 

 「っ・・・!」

 

 「だからスティルもさ、・・・スティル?」

 

 「っ!」

 

 スティルインラブがなぜか身構えていた。

 

 「どうしたの・・・?」

 

 「いや、別に・・・その・・・」

 

 しどろもどろになる彼女。するとメジロラモーヌが、こちらを見ているのに気づく。

 

 「あっ、こっち向いた」

 

 「・・・!」

 

 「ああ、キレイだな・・・」

 

 「・・・申し訳ありません。今日はここで・・・!」

 

 「えっ!?ちょっと」

 

 そういうとスティルインラブはあっという間にどこかに行ってしまった。

 

 そんな光景をメジロラモーヌは、底が見えない様子で眺めていた。

 

 

 ――――――――――――

 

 

 その日、彼女は会う予定のなかった少年を呼び出し、いつもの公園にやってきた。

 

 よく休憩する屋根付きのベンチに腰を座らせ、そしてそのまま腕を組む・・・というより、彼の腕に絡んでいる。

 

 「耐えれませんでした。あれほどまでに熱く語るのを見るのが・・・そしてメジロラモーヌさん。あの人を見てると、急に抑えられない何かが、沸いてきたんです・・・」

 

 心細くそういう彼女。少年は何かされたかと質問する。

 

 「いいえ、トレーナーさんにはなにもされてませんし・・・ましてやメジロラモーヌさんとは話し合ってもいないです。ただ・・・」

 

 そこで彼女の声が途切れる。なにか言いたいかが決まらにのか、口が少し震えている。

 

 「――――さん」

 

 彼女は彼に目線を合わせる。切ない表情をしながらこんなことをいった。

 

 「あなたは・・・他の方を見つめないでください・・・」

 

 そんな発言に、彼は固まる。そこからなんて言葉をかければいいかわからなった。

 

 「・・・っ!!私っ、なんてはしたないことを・・・!」

 

 我に戻った彼女はとっさに立ち上がり、彼から距離を置きながら両手で顔を覆う。

 

 「ちがう、こんなことで彼に甘えてはダメ・・・!」

 

 『でもこれで見えてきたじゃない?すべきことが・・・?』

 

 声が聞こえる。もう一人の彼女、内なる紅がスティルインラブを(そそのか)す。

 

 『彼を完全に自身のものにするために、トリプルティアラ・・・いや、それだけでなく、あの魔性(メジロラモーヌ)から・・・すべてを奪うの・・・』

 

 「う、奪うだなって・・・そんな恐ろしいこと・・・!」

 

 『そうでなければ、もしかしたら彼は・・・彼までもが犯されるかもしれないのよ?いいの?あの魔性に彼が奪われて・・・』

 

 「っ!!いやっ。そんなの・・・そんなことになったら私は――――!」

 

 そこでスティルインラブは肩を掴まれ、固定される。少年が自身のほうに向かせたのだ。

 

 声をかける。大丈夫だ、どこにも行かない、と。

 

 「・・・!」

 

 震えが止まり覆っていた手を開ける。再度目を合わすと、彼の真っ直ぐとした目を見つける。

 

 「ああ・・・あなたという人は・・・」

 

 スティルインラブは彼に体を預けた。(ほお)が胸にあたり、鼓動が聞こえる。

 

 「・・・あなたはいつも手を差し伸べてくれる・・・もう甘えてはならないというのに・・・。ですがやはり自分だけではこの思い・・・抑えられそうにありません・・・

 

 これからも、このように頼らせてもよろしいでしょうか・・・?」

 

 そんな質問に、かれは相変わらずの二つ返事をするのであった。

 

 

 翌日、スティルインラブはトレーナーに謝罪すると同時に、トリプルティアラの夢を伝える。

 

 もちろんトレーナーも、ともに目指さんと道を作ろうとした。

 

 そのためには文字通りスティルインラブの全ての力を引き出す必要があると考えながら。

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