ウマ娘とトレーナーのピアニストコンビ   作:5ln,-q

1 / 2
 燦々たる日曜日、俺は娘と遊園地に遊びに出かけた。その帰り道、晩飯の食料を買う。そのために俺は通り道にある、ある施設に立ち寄った。


出会いと鍵盤

 東京都、府中市郷土の森博物館。俺は普段こんなところになんて寄らないが、今日はひょんなことで娘と共にふらりと寄ってみた。

ここは採れたて野菜の販売を行なっていると、以前に誰かから聞いたことがあった。そして...。まぁそれはまだ良いだろう。

 

 目についたのは、生産者様直々に描いたらしいウマ娘の似顔絵と(これはシンボリルドルフさんだろうか?)、その下に置かれている大量の人参。

 

そう言えば娘は人参が嫌いだったな...。そんなことを思いつつも、克服してほしくてつい3本セットのそれを手に取る。

100円...形が少し悪いだけで、他には何も問題がない。安いな、ここ。この分なら入場料の元も手早く取れそうだ...

 

 

 「パパ〜」

 

 人参に見とれていると、タタタタタ、という軽い小走りの音が近づいてきて、俺はズボンの裾を引っ張られる。

俺の娘だ。ハーフの母親に似たきらびやかな金色のサラサラした髪をツインテールでまとめている、俺の腰よりも背の低い、赤みがかった瞳が俺を見つめてくる。

 

「パパ、お外にピアノさんある」

 

 可愛らしい娘はそう言うと、ズボンの裾を掴んだままもう片方の手で外の謎のドームを指差した。

 

なんだ、外にあったのか。どおりでね。

 

「そうかそうか、よし!いっちょ父さんが弾いてやろう!何が良い?マリ」

 

 俺は手に取っていた人参を置き、窓の外にある半透明の半径三メートルほどの半球...やけに半が多くつくな。それだけを見つめながら歩き出した。

 

「あれ!まえ弾いてたの!」

娘は自動ドアを通過したあたりのところで俺にリクエストをあげてきた。そうかそうか、気に入ったか!

 

 ドームに入ると、そこには確かに黒く塗りたくられた大型ピアノが鎮座していた。外の芝生とはマッチしない外観、浮いている黒塗りの猛獣。流れるように椅子に引きつけられる。蓋を開けて鍵盤と対面する。

 

白黒白黒白白黒白黒白黒白 一見不規則に見えて規則的な配置に毎回舌を巻かされる。

 

 ドームの扉付近には既に、小汚いおっさんがピアノのドームに入るのを見て、物珍しさに観戦に来た初老の男女夫婦が立っていた。彼らは娘に向かって朗らかに微笑んでいる。

 

 

 さあ、はじめよう

 






 

 

 パチパチパチパチ!!

 

 気持ちいい...。弾いている最中ももちろんだが、やはり一番は溢れんばかりの拍手喝采の中で目を閉じる時。この時のこの感覚が、最高に気持ちいい。

 

何を隠そう、俺はここのストリートピアノの話を聞いていて、半分はこれを目当てにここに来たのだった。

 

 ゆっくりとまぶたを開けると、ドームの周り一周を人が囲んでいた。

 

こんなに集まっていたのか...。

 

 その時、俺は一人だけ浮いている観客がいることに気がついた。

誰だ?あれは。どこかで見たことがある気がする。

 

 浮いている理由は三つある。一つは、周りと違って全く拍手をしていないこと、そして無表情なこと。

もう一つは、観客のほとんどが老人なのに対して、その浮いている者はかなり若い女性であったこと。

そして最後に極め付けは...彼女はどうやらウマ娘だと言うこと。

 

黒塗りショートヘアーでところどころに白いハイライトがかかっている頭に、アクセントのように付いているこれまた黒いピンと立った耳。まるで色反転版鍵盤だ。...例えが下手だが。よく見ると髪飾りは四分音符の形を...二分音符か?俺と同じで音楽が好きなのかもしれない。

何せドームは半透明なので、あまり外の景色はよく見えなかった。

 

 すると、彼女は表情を固定したままドームの周りを回って入り口の方へと歩き出した。

 

 ま、まさか入ってくるんじゃあないだろうな?そんなことを思いながら慌てて俺は椅子から立ち上がった。

マリは(娘は)そんな俺を不思議そうに見あげる。

 

 案の定、彼女は俺と娘だけのドームの中に足を踏み入れてきた。

 

 あっ終わった...なんかやっちまったんだ、俺...。あ、やっぱり髪飾り二分音符か。

 

 

 「あのー...」

 

「はいっ!」

 

ゴクリ...と、喉がデカすぎる音を鳴らす。ドームの中は熱がこもるせいか、汗が出てきた。

 

「演奏終わったなら、どいてくれません?ピアノ...弾きたいんですけど」

 

「ふぇ?あ、あー、ええ、もちろんもちろん、はいはい、いえ!はい...ははははは」

 

 俺はドバドバと身体中の汗腺から塩水を垂れ流しつつ、引き攣った笑顔で娘とドームの外に出る。

しかし、それを拒んだのは意外にも我が血を分けた娘だった。

 

「ママー」

 

「おいこら、ママじゃないだろ?いくぞ、うぉ!あぁこら!」

 

マリは俺の手からするりと抜けると、椅子に座って既に鍵盤に手を置いていた彼女の方へ駆け出した。

あの無表情ウマ娘も、流石に急なことで豆鉄砲を食らった顔をしていた。

 

「あっは!は、ごめんなさい、すぐにどかしますんで

ほら、マリ!おいで!ちょっ、隠れるの!?」

 

 周りからの視線が熱い!せっかく気持ちのいい自己満を謳歌してたのに!

 

 その時、黒髪ショートのウマ娘は椅子から立ち上がって、マリの前にしゃがみ込んだ。ちょうど俺からマリが見えなくなる。

 

「君、パパの言うこと聞かないと、怒られちゃうよ?ふふw...よしよし、いい子だね...。ん?大丈夫?もう。そう、よし!じゃあ戻ろっか」

 

...ガチか...

 

「どうしました?幽霊でも見たような顔をして...。ほら、娘さんももう戻りましたよ?」

 

「い、いえ、ありがとうござい...ます...では!いくぞマリ!」

 

 俺はもう脳内キャパシティオーバーの限界を感じており、一言礼だけ言うと、すぐさまその場から娘を抱き抱えて逃げ出した。

 

「あぁ!買い物買い物!わすれてた」

 

しかしまた足を戻した。

すると、あのウマ娘の子の演奏だろうか...ピアノの音色が耳に流れ込んできた。

 

「♪♫♩♫♪ ♬♬♫♫♪♪ ♩♩♫♪♪」

(凄まじく早く凄まじく重なりの多い演奏)

 

 

...ガチか...

 

 






 

 

 「人参?全部売り切れましたよ?さっき黒毛のしっかりしてそうな娘がねー、人参全部くださいって。ウマ娘だったかな?」

 

 

...ガチか...

 

 





まだ登場者は全員オリジナルです。
ウマ娘にわかなので、おかしなところは多々あるかもしれません;-; 。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。