『あなたの転生』~一般通過宝具持ち転生者の人生~ 作:砂漠谷
お久しぶりです。お待たせしました、申し訳ありません。
やや短いかもしれませんが、お楽しみください。
全身に、茨を纏う龍の如き和彫りが刻まれた、筋骨隆々、半裸の男。
それが、小隕石の姿だった。
ビルの屋上に落下し 身長ほどの半径のクレーターを作り出したその能力者。
変わり果てた正体を見抜けたのは、彼と共にかつて数年ほど暮らしたウェルス。"盗掘屋"は、オーラの掏り手を数多に浮かべ、男を警戒する。
「イヴァンか……"狂犬病の男"とは、おぬしかの?」
「病気なのはお前だ、ウェルス! 復讐のため、幼いお嬢様を利用し、その手を穢させた! 貴様は……いや、もう言葉も要らない」
予言の詩に"仏師"と詠まれたネテロは、淀みなく手刀を構える。しかし、どこかそのオーラは全力には程遠い。反射的に
「自衛はできるが、攻勢はミザイ、サイユウ、任せた」
「もちろんだ」「合点承知!」
三つのカードを手元に携え、『
「『
「儂もおる!」
ウェルスがオーラの手をイヴァンに殺到させる。だが、直後にイヴァンのオーラは、薄く展ばされたように広がる。"円"、それによってウェルスの『
「何……!?」
「チ、使えねぇ……らぁ!」
ウェルスを尻目に、如意棒を構えてサイユウは駆ける。墨の入った右腕で受けの構えを取るイヴァンは、しかし、右腕を迂回するように、頭蓋を如意棒に殴られた。
「ぐぅっ!」
「変わるのは長さだけじゃねぇンだわ!」
脳へのダメージでふらついたその隙に、三匹の猿が別方向から同時に襲撃する。オーラを籠った攻撃を与えられれば、たとえ無傷であろうと――。
成功したのは、見猿。視覚を奪う一体だった。
「やりぃ!」
如意棒を太く、やや短く。棍棒の如く変形させ、その質量で視界を失ったイヴァンの頭蓋を叩き潰そうと迫る。
――しかし。
視界を奪われたイヴァンは、ピクリとも動じない。
瞼は閉ざされ、それでも、彼には第三の瞳がある。
喉仏部分。タトゥーとして刻まれた、薔薇の中央にある瞳の意匠。
それが、ギョロリと蠢いた。
第三の眼には、瞬時にオーラが"凝"められる。
「――な、見えっ……!」
見えていたかのように動く――否。
イヴァンの動きは、生物としての限界を、僅かに超越した。
筋線維の限界を越えるように。片足を持ち上げ、腰を落とし、強く、踏み込む。
心源流とは似て非なる武術技法。
「疾ッ!」
震脚。
同時に、"硬"に限りなく近い"凝"。
剛拳が、サイユウの鳩尾に突き刺さる。
しかし、サイユウも熟練の格闘家。オーラを腹部表面に集中させ、致命傷を防いだ――はずだった。
「っ、
絞り出すように呟き、サイユウは崩れ落ちた。
(――今)
敵を一人倒した時の安堵、それは最も大きな隙である。長年の経験から、ミザイストムはそれを知悉していた。
警告不要の即時排除。加害行為の現行犯のみに適用される、最も重い『
ミザイストムが手首を回す。カードの裏の赤い面を提示すると、空間そのものが審判を下すように軋んだ。
「『退席』!」
宣言と同時、イヴァンの足元の影が、底なしの闇へと変質する。抵抗を許さぬ強制力の穴が、大男の体を物理法則を無視して引きずり込み始めた。
それでも、イヴァンの喉の第三眼には、ウェルスしか映っていない。老いた盗掘屋を睨むように、屋上の床に五指を刺し込み、吸い込まれぬように耐える。
ウェルスは、再度オーラの掌を生成し。十の掌を使い、イヴァンの十指を床から剥がしていく。
「おぉぉお、ウェルス、貴様ァ!」
「すまぬ……! じゃが、儂の弟子は、儂が守る!」
ウェルスの額に血管が浮く。老いたオーラの手は、物理的な重さではなく、"師としての執着"で動く。
脳裏をよぎるのは、別荘での穏やかな日々。
不器用な手つきで紅茶を淹れ、『お嬢様』の成長を嬉しそうに報告してくれた、実直な男の笑顔。
(すまぬ、イヴァン……!)
その記憶を振り切るように。同じ食卓を囲んだかつての友人を、底なしの闇へと突き落とした。
イヴァンは、闇の中に吸い込まれ、その姿を消失させた。それを見届けたウェルスは、疲労によって地面に倒れ伏した。
「……ふむ。運が良いというべきか。"札束の牙城"、お嬢ちゃんの父親が要塞化したあのホテルの中に転移したようじゃの。あそこならカンザイがおる」
ネテロは、オーラの知覚を研ぎ澄ませ、"円"によらずともおおよそのイヴァンの位置を把握した。
そう、ミザイストムの『退席』は、吸い込まれた対象を、一定距離でランダムな座標へ転移させるものだ。
「隙を突かれたが、あやつの武術自体はサイユウと同等以下、という程度じゃったな。しかし、妙なのはオーラの異質さ。サイユウの防御にずぶりと沈み込むように、"凝"が貫けていったわ」
「そういった"発"でしょうか」
ミザイストムは、気絶したサイユウに駆け寄り、呼吸と脈を確認しながらネテロに問う。命に別状はなさそうだ。
「おそらくの。じゃが、あれは"強力な矛"というよりは……そう、"幽霊"に近い」
ネテロは、自身の髭を弄りながら目を細める。
「硬い壁を突き破るのではなく、壁など最初から無かったかのように通り抜ける。……重い制約か、もしくは過酷な修行か」
声色に浮かぶ、未知への興味と武術家としての好奇心。それを察し、ミザイストムは呆れてため息をつき、帽子のツバを直した。
一方、ハンター協会本部ビル、その知られざる地下。
あなたは、ゲルに連れられ、ここにたどり着き。
かつて自身が奪った宝剣、『吉兆丸』と対面していた。
ルーペとボトバイ、そしてゲルによるによる監視の下、吉兆丸を閉じ込めるための、神字が刻まれた強化硝子の匣を、慎重に開く。
「これは……」
硝子の匣が開かれた瞬間、地下室の気温が数度下がったような錯覚を覚える。
いや、それは温度ではない。皮膚にまとわりつく、湿った殺気だ。
吉兆丸。正統な所有者を失った国宝の呪いは、かつてより遥かに顕在化していた。
鞘に収められてなお、どす黒い怨念を撒き散らしている。
耳を澄ませば、何千、何万という亡者の呻き声が聞こえてきそうなほどの、濃密な"死"の気配。
十二支んの猛者であるボトバイでさえ、眉間の皺を深くし、無意識に重心を低くしている。
ごくり、とルーペの喉が鳴る音が、静寂の中で不自然に響いた。ルーペの経験からしても、このような特級の呪具を近くで見るのは初めてだった。
「私は……反対です。あなたはまだ子供だ。解析だけでも危険極まりない代物に、触れるべきではない」
ルーペは、あなたと目線を合わせ、諭す。
「……それでも。この吉兆丸が、あなたの解析が、多くを救う切っ掛けになるかもしれない。ゲルさん。今までの解析結果を、彼女に」
ゲルは、その大きな瞳を細め、こくりと頷く。
「呪物、吉兆丸。それは、カキン首都の地下深くに眠る、『呪詛貯蔵器・壺中卵』と、距離を越えて繋がっています。ただ、現在の解析では『繋がっていること』『壺中卵がもうすぐ限界を迎えること』しか分かっていません。もっと強く繋ぐことはできるのか。限界を迎えれば何が起こるのか。それは分かっていません」
ゲルは、ボトバイに目くばせをして、言葉を続けた。
「……ただ。ベンジャミン第一王子の反応から、アイジエン大陸全体に被害が広がるような事態が十分にあり得るとのことです」
十二支んの一人、"辰"のボトバイは、深く息を吐く。
「君が解析を行わなくても、途中で解析を取りやめたとしても。我々ハンター協会の解析チームが全力で解析を続ける。危険だと思ったら、その時点で中止して構わない――いや、中止しなさい」
子供の自己犠牲に頼っている。それは、ハンター協会幹部として、テロリストハンターとしての誇りを、自ら貶めている気がしたのか。ボトバイは、拳をきつく握りしめた。
ゲルもまた、長い睫毛を伏せ、直視することを避けるように視線を吉兆丸へと逃がす。
あなたは、その言葉を受け止めて、感謝の言葉を述べ、頭を下げた。
――そして。
呪具、吉兆丸に、恐る恐る手を伸ばす。
吉兆丸は呪具だ。莫大な呪いの凝固体である『
吉兆丸は剣でもある。『
その右手には、微弱な『
あなたは、四年ぶりにその呪具の柄に触れ。
瞬間、脳髄を無数の針で刺されるような悪寒が走った。
吉兆丸が拒絶の叫びを上げ、漆黒のオーラが物理的な衝撃となってあなたの手を弾く。ぱちん、と皮膚が裂け、掌から鮮血が滴り落ちた。
「大丈夫ですか!?」
ルーペの声が遠く聞こえた。
痛みはある。だが、この痛みこそが、かつてエラが味わった理不尽の何千分の一かでしかない、あなたは知っている。
流れる血の熱さが、逆に思考を冷徹に研ぎ澄ませていく。
あなたは静かに、一度引いて。
腰に下げた朱色の仮面を撫で、眼を瞑った。
エラの、最期を思い出していく。
『どうして』
あの理不尽を生んだのは、あなたであると同時に、カキン帝国、すなわちホイコーロ一族でもある。
憎むべき共犯者の象徴、それが吉兆丸。
なぜ、ホイコーロの一族は謝肉祭という虐殺を行うのか。
なぜ、カキン帝国はそれを許容しているのか。
『分からなければ』『知らなければ』
そうでないと、また謝肉祭が起こる。一度、崩壊させても。
カキンという国が、ホイコーロの血統が持続する限り。
何度でも。何度でも。
「赦さない」
『
オーラでさらに手を覆う。その外側に、螺旋を纏う。
目を開く。まるで眠りから覚めたかのように。そのオーラは力強く、冴え渡っていた。
「恐ろしいな……これほどまでとは」
ボトバイのみが見抜く。生者の力でありながら、死後強まる念の領域に近づいていることに。
――肺に空気を満たし、意識を深く、暗い底へと沈めていく。
全身の
だが、この呪いの奥底に潜む真実を解き明かすには、それだけでは届かないかもしれない。
ならば、オーラとは異なる道理。『回路接続』の端子として宿した、架空の神経。異なる世界において、魔術回路と呼ばれたものに酷似した、次元の異なる器官を励起させるべきか。
リスクも伴う。身を焦がすような危険か、確実な一歩か。
どちらにせよ、剣の柄を握らないと、始まらない。
あなたは、呪われた運命をねじ伏せるべく、眼を見開いた。
| メッセージ |
| 呪具『吉兆丸』、および、それを通じたカキン繁栄の念システム分析判定は、三つのフェーズから成ります。 |
| 第一フェーズ『剣』 |
| ――属性『剣』『呪物』『物質』『具現化物』 基本難易度:120 『オーラ精度Lv1』『構造分析Lv2+1(星屑の螺旋Lv1による補正)』『物質加工Lv2』 『太歳頭上動土Lv2』『無限の剣製Lv1』 『道具作成C』 これらにより、-105の補正が掛かる。難易度15 |
| 1~15で失敗。16~30で成功 31~45で大成功。46~100で極大成功 |
| 成功報酬――第二フェーズ進出、吉兆丸使用権(幸運Lv5獲得)。 |
| 大成功報酬――上に加えて、『無限の剣製』による吉兆丸複製権(『幸福変換C』獲得)。 |
| 極大成功報酬――上に加えて、????へのアクセス権。 |
| 第二フェーズ『壺』 |
| ――属性『呪物』『物質』『美術品』『具現化物』 基本難易度:120 『オーラ精度Lv1』『構造分析Lv2(遠隔のため、補正なし)』『物質加工Lv2』 『太歳頭上動土Lv2』『道具作成C』 これらにより、-85の補正が掛かる。難易度35 |
| 1~35で失敗。36~70で成功 71~100で大成功 |
| 成功報酬――第三フェーズ進出、『カキン繁栄の念システム』の情報開示。 |
| 大成功報酬――上に加えて、『??燃焼C』を獲得 |
| 第三フェーズ『卵』 |
| ――属性『呪物』『具現化物』『生命』『念獣』『魂』 基本難易度:150 『オーラ精度Lv1』『構造分析Lv2(遠隔のため、補正なし)』 『太歳頭上動土Lv2』 これらにより、-50の補正が掛かる。難易度100 追加の補正がない限り、確定で失敗 |
| 失敗しても『来たる破滅の正体』の情報開示。 |
| 成功した場合、『????A』を獲得。 |
| メッセージ |
| 一度解析を始めたら、失敗するまで中断することはできません。 |
| フェーズの突破数に応じて、技能点取得判定があります。 |
| 追加情報_1 |
| 『回路接続(違法)B+』の使用を選択できます。使用時のメリット・デメリットは以下の通りです。 |
| メリット 全てのフェーズの難易度に-20の補正が掛かる。 第一フェーズでは確定で極大成功、第二フェーズの最終難易度は15、第三フェーズでは成功可能性が20%出てくる。 |
| デメリット 第二フェーズ『壺』で失敗した場合、肉体が呪いに侵される。今期冒険パートでの戦闘基礎値に-30。 ただし、幸運で振り直した場合は失敗と見なされない。 第三フェーズ『卵』で失敗した場合、精神に負荷がかかり、今期冒険パートでの戦闘基礎値に-15。 ただし、幸運で振り直した場合は失敗と見なされない。 |
| 追加情報_2 |
| 『幸運』による振り直しダイス投入可能数(現在3つ所持)を選択できます。使用時のメリット・デメリットは以下の通りです。 |
| メリット 各フェーズでの振り直しが可能。振り直しは『失敗』時にのみ行われる。 |
| デメリット 幸運の消費は、冒険パート"終了時"に回復する。 そのため、本判定で消費した振り直しダイスは、今期冒険パート中は使用できない。 |
選択
| ・解析をやめる | |
| ・回路接続(違法)B+を使わない | 幸運不使用 |
| ″ | 幸運ダイス1つ使用 |
| ″ | 幸運ダイス2つ使用 |
| ″ | 幸運ダイス3つ使用 |
| ″ | 幸運ダイス3つ+フェーズ1で取得した追加幸運も使用 |
| ・回路接続(違法)B+を使う | 幸運不使用 |
| ″ | 幸運ダイス1つ使用 |
| ″ | 幸運ダイス2つ使用 |
| ″ | 幸運ダイス3つ使用 |
| ″ | 幸運ダイス3つ+フェーズ1で取得した追加幸運も使用 |
卒論執筆の息抜きの合間に投稿しています。
FGOもなんとかレイドまでたどり着きました、大して周回していませんが……
次話も少しお待たせすると思いますが、一段落は付いたので、今回ほど待たせることはないと思います。
吉兆丸およびその向こうにある『何か』の解析
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解析をやめる
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違法接続不使用+幸運不使用
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違法接続不使用+幸運1使用
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違法接続不使用+幸運2使用
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違法接続不使用+幸運3使用
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違法接続不使用+幸運全使用
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違法接続使用+幸運不使用
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違法接続使用+幸運1使用
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違法接続使用+幸運2使用
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違法接続使用+幸運3使用
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違法接続使用+幸運全使用