『あなたの転生』~一般通過宝具持ち転生者の人生~   作:砂漠谷

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16時に今話、18時に次話の投稿をする予定です。
投稿ミスをしなければ――(フラグ建築)


少年前期シナリオ・成長パートAppendix2

選択

『回路接続(違法)B+』を使う

+ 幸運3つ

+ フェーズ1で取得した追加幸運も使用

 

「――」

(心眼、瞠目)

 

 瞼を閉じたまま、その呪物の柄を握り、心の眼を開く。

 『回路接続(違法)B+』、その端子を受容体として。

 解釈は要らない。共感も要らない。

 ただ正鵠に、明瞭に。本質も非本質(うちもそと)も、全てを精神(こころ)に映し出すことを望む。

 

 情報は回路を通り、あなたの精神に映るのは、吉兆丸の形状、形質。

 それは、瞳孔を通った可視光線によって像を成したものとも、オーラの感覚によって姿を現したものとも、趣きを異にしていた。

 

 短剣であることには変わりない。剣が纏ったオーラが禍々しいことにも。

 ただし。近代的な超人製造メソッドとしての心源流武術が定義する『念能力』、その枠組みからは、かけ離れている代物だった。

 

 刀身は金属光沢にも、コガネムシの甲殻のような虹の構造色にも思える。

 柄は脈打ち、葉脈にも血管にも、地殻の罅にも見える。

 モチーフは重なり、しかし拡散している。

 それは、古代の王とはいえ、人間の心が産んだとは――到底感じられない。

 否、解釈は後回しだ。かくあるが故にかくある。主観を捨てろ。我を捨てろ。怨の一文字を抱くのは、今ではない。

 

 あなたは、三種の瞳を持っていた。

 『眼球』を"凝"によって強化し、瞳孔を通り、水晶体を経て、視神経を通る、光学的な形を測る瞳。

 螺旋状に浸潤する『星屑の螺旋』というオーラから届く、定量的に質を測る瞳。

 物質を超越した架空神経に基づいて『回路接続(違法)』が受容する、構成情報をそのまま読み取る、定性的に質を測る瞳。

 

「全部」

 あなたは、自らの全てを使うと決意する。

 

 閉じていた瞼を開く。精孔を拓く。回路を啓く。

 全ての感度を最も鋭く。どんなノイズも、見逃さず。

 

「お前の全てを、解き明かす」

 

システム

第一フェーズ『剣』を開始します。

 

 あなたの心の内側で、三つの剣の姿が写し取られた。

 物理的(フィジカル)心理的(メンタル)魔術的(アナロジカル)。三つの視点が、脳内で強制的に統合される。重い。吐き気がするほどの、概念の暴風雨。

 だが、あなたに解けないパズルではない――本当に?

(構造面では……いや、接合できない。論理的にも、細部に矛盾があるように見える)

 集中は高まっていく。吉兆丸と呼ばれる宝剣の他は、色が失せ、解像度が荒くなる。

 

 時間は停まったように、しかし確実に一瞬一瞬と刻まれるように流れる。あなたを心配するルーペの声も届かない。

 

 その時。

 剣の内側。実物の吉兆丸ではない。あなたの心の湖面に映し出された宝剣、その水底に潜む誰かに、手を取られる。

 

「っ!」

 

 あなたの意識は、心の奥底に引き込まれた。

 

 

 

 瞼を開く。そこは、あなたの常識に照らし合わせれば、ひどく奇妙な風景だった。

 天蓋には、歯車。時計のものだろう、ゼンマイやバネも複合的に組み合わさっていた。

 その向こう側の恒星(?)は、緑色の光で地面を照らしている。太歳の星、だろうか。

 時折、歯車のパーツの一部が蠢く液体と化して、地面に落ちる。

 

 その地面も奇妙だった。ぬかるんだ緑の沼が、生きているように、絶えず脈動している。

 人の手や顔を象っては、元の緑泥に戻っている、一見すれば悍ましいと感じられる風景だが、あなたは恐怖を抱かなかった。

 一面の沼には、ひび割れた鉄と硝子で出来た奇妙な浮島が点々とある。

 その一つである、比較的大きな硝子の島。

 かつて住んでいた別荘に似た家屋がある島に、あなたは立っていた。

 

「ここは……」

 

『心象風景。あるいは、原風景と言った方が的確か。そろそろ、呼んだ方がいいと思ってな』

 

 背後から聞こえてきた男の声に、あなたは振り返る。

 そこには、人間の形が、外形だけがあった。

 黒い肌に黄金の罅割れ、顔の部分は完全に破損している、人間の表面。

 なぜ"表面"と言い切れるのか。顔の内側には、本来あるはずの表情筋も、骨格も、脳味噌も。

 何一つ、無かったからだ。

 誤解を恐れずに言うと、皮膚だけの人物と表現できる。

 

 恐る恐る、あなたはがらんどうの男に尋ねる。

 奇妙なこの場所はどこなのか、ひび割れたあなたは誰なのか、と。

 

『この景色は、君がカキン帝国の村で見た悲劇。謝肉祭を抽象化したものが大半だ。あの惨劇を含め、君の心に今まで強く刻み込まれた人生の記憶そのもの。いわゆる精神世界だ』

 

 もう一つの質問にも、彼は答える。

 

『生まれる前。君の魂には、二つの宝具が刻み込まれたが、二つ目、『無限の剣製(アンリミテッド・ロストワークス)』。その元の持ち主の残滓、と言うのが一番正確だな』

 

 あなたは薄々感づいていたが、宝具には元の持ち主というものがあることを、ここで確認した。それを知っている彼は、一体何者なのか。

 歴戦の兵士の如き『動』の威迫と、無機質な、油の差されていない螺子巻き時計の如き『静』の重みを感じさせる。

 元の持ち主の残り香だとしても、一日の長を上回る程度には、宝具の使い方や、心象風景に関して詳しいのではないだろうか。

 

『『太歳頭上動土(タイソエイ・アウェイクン)』は、逸話の顕現であり、太歳の星そのもの。一方、神格である『太歳星君』は、それを擬人化した肉塊の化身にして神霊。つまり、神格と権能が切り離せるタイプの宝具だ。君もヤツには会っただろう? 神を祀る祭壇は神を失い、代用品の偶像として、巫女として、君を与えられた』

 

 そう言って、男は天上の、緑色の光を放つ星を指さす。

 では、彼は。

 切り離せないタイプの宝具に、宿るものだと。前の持ち主だとでも言うのか。

 

『言っただろう、残滓と。君の心象風景に移植された固有結界、そこに焼き付いた精神の残像。由来である■■■(エミヤ)とは程遠い。地面にある鉄と硝子の群島にこびりついた、傷や錆、手垢のようなものだ』

 

 ならば、この男をどう呼べばいいのだろうか。本人ではないにしろ、こうやってあなたと語っているならば、人格として存在するはずだ。

 

『好きに呼ぶといい』

 

 では、アンリミテッド・ロストワークスより、アンリさんと。

 あなたがそう言うと、男は苦虫を嚙み潰したような――顔は見えないが――挙動を取った。

 女性的な呼称は嫌だったのだろうか。

 

『そうだな……不完全な(デミ)野郎(ヤろう)。デミヤとでも呼べ。そろそろ戻った方がいい』

 

 あなたは、宝剣・吉兆丸の分析をしていたことを思い出す。あまりの情報量に、やるべきことを見失っていたようだ。

 そうだ、この罅の男に、分析に関して何か助言を貰えないだろうか。

 

『解析には一家言あるが……アレは解くものじゃない。焼き切るものだ』

 罅割れた男が、天上の星を再度指さす。

『毒は火で焼き潰せ、呪いはより大きな呪いか――または浄めで押し流せ。お前の"星"が有用だろう』

 

 それに釣られてあなたもその星を直視し、眩い光に瞳が焼かれ……

 

 

 

 意識が戻る。

 

「大丈夫!? __ちゃん!?」

「呼吸が十秒ほど止まっていましたが、無事でしょうか。少し休んでも――」

 

 肺が再度動き始める。酸素を取り戻し、景色に色が戻る。

 ゲルの心配の声、ルーペの休止の勧めを振り払う。ボトバイだけは、両腕を組んで、あなたをじぃと見定めていた。彼だけは、あなたの心がまだ折れていないこと、限界にはまだ届いていないことを察していた。

 

 吉兆丸は、己を掴むあなたの掌を傷つけようと、呪おうと、高密度の怨念のオーラを纏っていた。手に宿した高密度のオーラで対抗しなければ、呪いの類に耐性のあるあなたでさえ、それに侵されるだろう。

 

 罅の男は、デミヤは、『より強い呪い、もしくは浄め』が必要だと言った

 あなたは、あの空間、心象風景の中で。太陽の如き、太歳の輝きを直視した。

 それは、陽性の残像として、あなたの瞳に宿っていた。

 

 部屋から出てほしいと、三人に伝える。彼らであれば死にはしないだろうが、この能力の行使に巻き込みたくはない。

 

「大丈夫なのね? あなたを信じるわ」

「何か起きたら、大きな声を出してください。ドアの向こうで待機しています」

 ゲルとルーペは、そういって部屋から出た。ボトバイもそれに従うが、最後に振り向いて。

「監視カメラは外さなくてよいかね?」

 問題ないと伝える。下手に隠せばハンター協会に懐疑の眼で見られる。ナスビ暗殺はすでにバレているから、これ以上手の内を隠す意味はあまりない。

 カメラ越しで見たところで、宝具を発展させた業を理解できるとも思えない。

 

 三人が鉄の扉から出て、ドアがしっかりと閉まったことを確認し。

 息を吸う。精神世界の底の底に宿る、太歳の星。その実物を、あなたの腹の底から引きずり出しはしない。

 

 それでも。その性質を、あなたは魂で理解した、体感した。

 それは天上に輝く木星の鏡像。地中に蠢く異星の神――の、祭壇。

 鏡像であるならば、それをさらに鏡写すのも、できるはずだ。

 

「二重の鏡像。天上から地中へ。地中から――人眼へ」

 

 あなたの瞳に、仄かな緑の光が渦を巻く。

 

「是なるは主なき神殿の現身、否、写し視なり」

 

 太陽を直視すれば目が潰れる。だが、水溜まりの底の太陽ならば見えないこともない。それを眺める人の眼の輝きは、尊い。

 

(姉は、家族は、私にとってとても尊い)

 

 月を直視し続ければ気が狂う。だが、湖の底に沈む月は穏やかに揺らぐ。それを眺める人の眼の輝きは、美しかった。

 

(私に笑顔を見せるエラは、美しかった)

 

 木星は日を選ばなければ見ることはできず。木星の鏡像を見れば、呪われ、膿へと姿を変ずる。それを直視しても、呪われなかった人の眼の輝きには――清浄が宿る。

 

(私は、どうあるべきか)

 

 答えは未だ出ず。

 しかし、宝剣の底の底。不倶戴天たる王族の、祖が産んだ能力の本質を。

 見透かせるという確信だけは、あった。

 

「この(まなこ)は呪いを赦す。この(ひとみ)は祝りを許す。さかしまの祭壇は一巡した。力は全て神の御元へ。想いは全て人の土地へ」

 

『太歳頭上動土Lv2』成長方針:『広域・非殺傷』

追加能力が確定します。

『浄識・勅視の魔眼』:

視界内全域の『オーラ』を観測し、人の想いと生命の力を峻別し、別のものとして確定させる。

『生命の力』は無害化され揮発(エーテル化)する。『人の想い』は無力化され、粘体や結晶の形で析出する。

能力者の勅令を、オーラという封蝋を破って視認する。故に「勅視」。

 1.視認可能な『発』を発動させた視界内の対象に戦闘基礎値-20、および内容の一部開示

2.視認可能な、四大行以外のオーラ操作を行った視界内の対象に戦闘基礎値-10

1と2は重複するが、同じ項目を複数重ねることはできない。

"隠"や超速度などで視認不可能なものには効果がない。

また、実物体を不可視のオーラで操作しているものにも効果がない。

 

()識。人の前に立つなら、自分の(こころ)を見せなさい」

 

 憎い敵であろうと、笑顔で。ホイコーロの祖の意志と対面しよう。

 あなたの心の底に沈んでいる太歳の星が、ぶるりと震えた気がした。

 

システム

第一フェーズ『剣』

――属性『剣』『呪物』『物質』『具現化物』

基本難易度:120

『オーラ精度Lv1』『構造分析Lv2+1(星屑の螺旋Lv1による補正)』『物質加工Lv2』

『太歳頭上動土Lv2』『無限の剣製Lv1』

『道具作成C』

追加要素:『回路接続(違法)B+』

120の補正により、自動成功

成功報酬――第二フェーズ進出、吉兆丸使用権(幸運Lv5獲得)。

大成功報酬――上に加えて、『無限の剣製』による吉兆丸複製権(『幸福変換C』獲得)。

極大成功報酬――上に加えて、心象風景(住人・デミヤ)へのアクセス権。

上記の報酬を獲得します。

 

 視界が変質する。 吉兆丸を覆う禍々しいオーラ。その中から、ドロリとした怨念だけが、水と油のように分離して見えた。

「視えた、分かった、解った」

 それは、()()()()()()()()()

 (オーラ)は霧散し、重ねられた意志(呪い)だけが澱として残る。

 

『オォオオオオ、オォォオオオオ!!!』

 

 最期の叫び。吉兆丸は蠢き、膨らみ、その柄を大顎と変じさせてあなたの掌を噛み千切ろうとする。

 

「ようやく、顔を見せたな」

 

 ――そして。顎に付随して現れた目は、あなたの瞳と眼が合ってしまい。

 吉兆丸を動かす燃料としてのオーラは、剣から勢いよく噴き出し。

 内包される呪いのオーラは、無害な『空の』オーラと、力なき悪意に分離され、完全に抜けきった。

 

 吉兆丸の構成要素を、質量にしてエネルギーであるオーラと、方向性にして設計図である呪いの意志に分けると、その殆どが意志で構成されていた。

 故に、吉兆丸の形はその殆どが保たれている。萎んだ印象を感じさせる、人間の顔を柄に持つ短剣。

 先ほどまでの、見た人を恐れさせる威は感じさせない。

 ただ、自家中毒になりそうな悪意が多層にこびり付いていることは、明らかに見て取れた。

 

 あなたは一度、力を失ったその剣から手を放す。もはや宝剣とは言えないだろう。抵抗する気力は、短剣からは感じられない。

 様々な角度から、その剣を見つめる。大口を開け、濁った目の意匠からは、『他者の幸福を喰らう』『人の幸運を貪る』といった悪意で満ち溢れていた。

 目の奥の奥には、僅かに澄んだ色が残っていたが、注視しないとその色は分からないだろう。

 

 あなたは合点が行った。ナスビ・ホイコーロと戦った時の、奇妙なまでの幸運はこれが所以か。おおむね、他者から幸福や幸運を奪っていたのだろう。

 

 少し目を瞑って休め、大きく深呼吸を何度か繰り返す。

 息を大きく吸って、再度、呪い纏う短剣に触れる。

 悪意は未だにあるが、害を成す力はない。

 

「これなら、通る」

 

 もう一度、強くその柄を握りしめる。

 

システム

続いて、第二フェーズ『壺』に移行します。

 

『凝』で強化した肉眼、『星屑の螺旋』によるオーラの浸潤、『回路接続(違法)』による概念走査。

 三側面から、剣の奥に潜む、悪意の本質を見抜く。

 

 そこには、『一体、何のために謝肉祭が』『一体、何のために人の幸福を奪うのか』、その正体が潜んでいるはずだ。

 

 確信を胸にして、奥底に進み。その設計図を、頭から足先まで精査していく。

 ――そこで、あなたの認識が、剣の本質にかちりと合致した、そんな気がして。

 

 剣が、刀身を窓ガラスとして、別のどこかを、誰かを映し出し始めた。

 

第二フェーズ『壺』

――属性『呪物』『物質』『美術品』『具現化物』

基本難易度:120

『オーラ精度Lv1』『構造分析Lv2(遠隔のため、補正なし)』『物質加工Lv2』

『太歳頭上動土Lv2』『道具作成C』

追加要素:『回路接続(違法)B+』

これらにより、-105の補正が掛かる。難易度15

1~15で失敗。16~30で成功 31~45で大成功 46~100で極大成功

1d100 = 99 極大成功

 

成功報酬――第三フェーズ進出、『カキン繁栄の念システム』の情報開示。

大成功報酬――上に加えて、『運命燃焼C』を獲得

極大成功報酬――上に加えて、第三フェーズ『卵』への補正-25を付与

 

『ぜぇ、ぜぇ……。これで、カキンの民は幸福になれる。少なくとも、不幸を痛切に感じることは大きく減る』

 

 第二王子カミーラをどこか思わせる、中性的な顔つきの男。

 歯を強く食いしばり、額には玉の汗が光る。

 カミーラとは異なり、どこか必死さがある。

 その瞳には、力強く純粋な志を感じさせた。

 

 別のシーンに移り変わる。

 

『自分を不幸だと思う気持ちは、害しかもたらさない。自尊心は損なわれ、被害者意識は増長し、人から奪うことを正当化し始め、さらなる不幸を生む』

 

 そう語る男は一呼吸おいて、念の籠った短剣を、躊躇いなく腹部に突き刺した。

『その負の連鎖を、この神器たちで止める』

 

 溢れる鮮血。裂ける肉の音。だが、彼の表情は、告解を聞く神父のように慈愛に満ちていた。痛みに顔をしかめることさえない。あふれ出る血を、壺の中で這いまわる蟲たちへ注いでいく。

『これで、カキンの民は幸福になれる』

 その笑顔が、何よりも恐ろしかった。狂人のそれではない。まごうことなき「正気の善意」で、本能と倫理のタガを焼き切っていた。

 

 彼は、自らの血を流し、肉を裂き、創造した呪物で、人々の不幸を減らそうとしていた。

 

『大きな不幸の収拾と分解。加えて、過度な幸福の徴収と利用。これで、どんどんシステムを広げていけるはずだ。国の民を幸福にして、余剰の幸福を集め、不幸を減らし、さらに人を幸福にする。それが、私の。否、ホイコーロの一族の使命だ』

 

 さらに、別の場面に転ずる。

 

 先ほどの二つの場面より年老いた彼は、二つの神器を目の前において、あぐらをかいて座る。

 一つは吉兆丸。今の吉兆丸と違い、創造理念に忠実に、磨かれずとも輝いていた。

 一つは壺中卵。目を瞑り、口を開いた顔を持つ壺。啜る不幸を直視しないように、ただ、味わわず、飲み込み、その胃で消化するために。

 

『あとは、この神器と国土を、繋げる。私が人柱になるしかないだろう……ふふ、託したぞ、我が子孫』

 

 彼は呼吸を止め。鼓動を止め。

 カキン帝国と神器を繋げる霊脈の源となって。

 そうしてから、長い年月が経ち、現在のカキンのシステムへと至る。

 

 剣はどんどん穢れていく。代々の持ち主によって創造理念は拡大解釈され、余剰とは言えない、必要な幸福までも奪っていく。奪われた幸福に付随した人の怨恨も蓄積され、元型を留めぬほどに歪んでいった。

 壺は不幸を吸い上げて肥えてゆく。莫大な不幸を消化するためには、国民の幸福を奪っても奪っても足りない。

 即身仏になった人柱は、もはや自我なく、意志なく、現状の認識もなく。広大な国土に溢れる不幸を、ただシステムとして壺の内側に注ぎ込んでいる。

 

 始まりの理念とは大きく異なる形で、カキン繁栄の念システムは成立していた。

 不幸を吸い上げるということは、政府への不満も消失するということ。

 国民を従順に飼い馴らすために国に根付く、麻薬のような仕組みに変性していた。

 そのシステムすら、もはや限界を迎えつつある。直感的に、あなたには感じ取れた。

 

 不幸と幸福を綯い交ぜにすること、すなわち運命。それを燃やし、力に変える。あなたは、システムの根幹である『運命燃焼』、その業を理解した。

 しかし、今の現状、そして、まもなく来たる災厄――その正体は、未だ分からない。

 

 刀身に映された即身仏と、壺中卵。

 人柱が育んだ壺、その中に潜むのは、ナニモノなのか。

 

(刀身越しであろうとも。この腐りきってしまった使命を、宿命を、その末路を、私は――)

 あなたは、見定めなければならない。

 

システム

続いて、第三フェーズ『卵』に移行します。

 

 刀身の向こう。この『吉兆丸』を覗き穴として、壺の内側を盗み見る。

 

 まずは、吉兆丸を我が物とすること。あなたは第一フェーズで、吉兆丸の力を揮発させ、乾物のような無力な呪物へと転じさせた。

 それを自らのオーラで、再度『戻す』。『星屑の螺旋』による効率的な浸潤は、吉兆丸を持つエネルギーを膨らませ、力を与える。

 だが、その力の源は、全てあなた。あなたに噛みつくことは、自らの喉笛に噛みつくも同然であり、吉兆丸にはできない。

 吉兆丸の最後の抵抗は、オーラに依存せぬ機能、すなわち創造理念の呈示によって、その決意を揺らがすことだった。

 その抵抗に意味はあったのだろう。あなたの決意はたしかに、少しだけ震えた。

 しかし、真実に驚愕すると共に、決意はさらに鋭く研がれ、定まる。

 

 次に、刀身に五指を添え、オーラを向こう側に送り込む。『星屑の螺旋』は変化系である以上に放出系の念能力。あちらに至る穴があれば、向こう側に届かせることができる。物理的にはつながっていないようだが、吉兆丸が中継器の役割を担った。

 神器の周囲に人はいない。即身仏を祀る玄室の内側には、厳かな雰囲気があった。

 うっすらと埃が積もっていることすら、どこか神秘的だ。

 

 ここまでは問題ないだろう。

 関門は――壺の奥に潜む、ナニモノかの迎撃だ。

 

 呪物を我が物とし。

 オーラを研ぎ澄まし。

 迎撃に備え。

 

 あなたは、壺中卵の口の中。その深奥に、念を()ばした。

 

第三フェーズ『卵』

――属性『呪物』『具現化物』『生命』『念獣』『魂』

基本難易度:150

『オーラ精度Lv1』『構造分析Lv2(遠隔のため、補正なし)』

『太歳頭上動土Lv2』

追加要素:『回路接続(違法)B+』『第二フェーズの極大成功』

これらにより、-95の補正が掛かる。難易度55

1~55:失敗 56~100:成功

1d100 = 71 成功

 

到達報酬――『来たる破滅の正体』の情報開示。

成功報酬――『殲世資胚 A』を獲得。

 

 ギチリ、と、蟲が顎を鳴らす音が、壺の深奥から響き渡った。




住人デミヤはFGO二部終章の序盤、『終着特異点X』でチョッと出てきた『がらんどうのエミヤオルタ』の容姿を想像して頂ければ。
FGO要素は原則として能力のみですが、『心象風景の展開』という宝具の性質上、多少はこびり付いてなければおかしいタイプなので……
太歳星君(アルターエゴ)の方は、人格としては本作には登場しません。
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