凡才のレベルアップ無双   作:パラレル・ゲーマー

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魂の覚醒、ウェポン・マスタリー

入り口には、ドウセツ老師が静かに立っていた。

その姿を見た瞬間、カイの目から一筋の涙がこぼれ落ちた。それは悲しみや喜びとは違う、ただ再びこの世界に戻ってこられたことへの、魂からの安堵の涙だった。

老師は何も言わなかった。ただ、この十日間で一回りも二回りも痩せ、頬はこけているにもかかわらず、その瞳の奥に宿る光が以前とは比較にならないほど強く澄み切っている弟子の姿を見て、全てを悟っていた。

「…答えは見つかったようだな」

「はい、師範」

カイは力強く頷いた。その声には、もう一片の迷いもなかった。

 

山を下り、カキン軍の宿舎へと戻る道すがら、カイは世界の全てが以前とは違って見えることに気づいていた。木々の葉脈を流れる生命のオーラ。岩に宿る永い年月の記憶。老師の歩く足音一つに込められた、熟練の気の流れ。彼の五感は、試練を経て、念能力者としてさらに一段上の領域へと研ぎ澄まされていた。

 

宿舎に戻ると、ガドが腕を組み、仁王立ちで二人を待っていた。

「…ちっ、幽霊みてえなツラしやがって。ちゃんと生きてやがったか」

憎まれ口を叩きながらも、その目には隠しきれない安堵の色が浮かんでいた。そして彼は、カイの放つオーラの「質」が、出発前とはまるで別物になっていることに気づき、眉をひそめる。それは、ただ強くなったというだけではない。まるで、一つの大きな迷いを断ち切った人間だけが持つ、一点の曇りもない覚悟のオーラだった。

 

カイはガドに軽く頷きを返すと、まっすぐに自室へと向かった。

やるべきことは決まっている。

ベッドに腰を下ろし、精神を集中させる。脳内に、あの広大なスキルツリーが展開された。

レベルは40に到達し、試練の報酬として得た5ポイントを加えた結果、カイの所持スキルポイントは35という、これまでにないほどの膨大な数値になっていた。

 

彼はもう迷わない。

『キリングマシーン』、『ガーディアンソウル』、そして『不動の精神』や『修羅の肉体』といった、禁断のデメリット付きスキル。それらの選択肢が、彼の心を揺さぶることはもはやなかった。

矛に特化すれば、いずれそれ以上の矛に打ち砕かれる。

盾に特化すれば、いずれそれを貫く矛に敗れる。

何かを捨てて歪な怪物になれば、その捨てた部分が致命的な弱点となる。

 

(俺の戦い方は、一つじゃない)

カイは己が道を明確に認識していた。

(俺は敵を喰らい、その力を武具として奪い、状況に応じて無限の札を使い分ける。トリッキーに、クレバーに、そして時には圧倒的な暴力で。それこそが、天才じゃない俺が、この世界の怪物たちと渡り合うための唯一の戦術)

 

彼の意識は、一直線に一つのキーストーンスキルへと向かっていた。

【スペシャリスト系】:『ウェポン・マスタリー』

【消費SP: 2】

【効果:ドロップした念具にオーラを注ぎ込むことで、その武器に秘められた潜在能力を一時的に「覚醒」させ、強力なアクティブスキルとして使用できる】

 

【『ウェポン・マスタリー』を取得しますか? YES/NO】

カイは心の中で、力強く「YES」と念じた。

 

その瞬間、彼の全身を全く新しい力の概念が駆け巡った。

それは、オーラ総量が増えたり、身体能力が向上したりするのとは、根本的に違う感覚だった。

まるで脳内に新しい回路が焼き付けられるように、これまでただの「モノ」として認識していた念具たちとの間に、見えない繋がりが生まれたのだ。

彼の意識の中で、これまでに手に入れた全ての念具が淡い光を放ち始めた。それは、ただのアイテムではない。一つ一つが、倒してきた敵の能力や特性を受け継いだ、いわば「魂の欠片」。その欠片たちが持つ秘められた「声」が、カイには聞こえるような気がした。

 

【スキルポイントが 35 -> 33 に減少しました】

【新たな能力カテゴリ『武器スキル』が解禁されました】

 

カイはゆっくりと目を開けた。

そして、迷うことなく部屋を飛び出し、裏手の個人練兵場で素振りをしていたドウセツ老師の元へと向かった。

 

「師範!」

カイの気迫に満ちた声に、老師はゆっくりと振り返る。

「キーストーンスキル『ウェポン・マスタリー』を取りました!」

その言葉に、老師は満足げに頷いた。

「うむ。お前らしい、良い選択だ。その力がどれほどのものか…早速試してみるといい」

 

カイは力強く頷くと、腰に下げていた最も付き合いの長い相棒…『岩猪の牙』のナイフを抜き放った。

「ええ!」

彼はナイフを構え、目の前にそびえる、幹の太さが大人の胴回りほどもある大木を見据える。

これまでなら、このナイフでこの木を斬り倒すには、オーラを纏わせた上で、何度も何度も打ち付ける必要があっただろう。

だが、今は違う。

カイはナイフの柄を強く握りしめ、新たに得た力『ウェポン・マスタリー』の能力を意識した。

体内のオーラをナイフへと注ぎ込む。すると、ナイフそのものが熱を帯び、まるで脈動するかのように、ドクンドクンとオーラの鼓動を始めた。

 

(…見える!)

カイには、ナイフの奥に眠る岩猪の荒々しい魂のイメージが見えた。

その魂を解き放つ。

「――獣咬(ビーストバイト)ッ!!」

 

カイがスキル名を叫んだ瞬間、ナイフから黒いオーラが奔流のように溢れ出し、その先端に巨大な獣の顎を形成した。半透明でありながら、その牙一本一本が、鋼鉄のような鋭さと質量を感じさせる。それはもはや、ナイフという範疇を超えた、純粋な破壊の概念そのものだった。

カイは、そのオーラの顎を一切の迷いなく大木へと振り下ろした。

 

ゴシャァッ!!!

 

これまで聞いたこともないような、凄まじい破壊音。

オーラの顎は、大木の硬い幹を、まるで熟した果実を噛み砕くかのように、いとも容易く食いちぎった。抵抗は無に等しかった。木片が爆ぜるように四散し、一瞬遅れて、切り口から上ががらんどうになった大木の上半分が、ズシンという地響きを立てて地面に倒れ伏した。

切り口は、まるで巨大な獣に噛み千切られたかのように、無残にささくれ立っている。

 

「おお…!」

その光景を目の当たりにしたドウセツ老師が、感嘆の声を漏らした。

「凄い威力じゃな…。ただ斬るのではない。対象の構造そのものを、オーラの顎で粉砕するか。大木を一撃で食いちぎる威力…! これほどの力が、あの小さなナイフに眠っていたとはな…!」

老師ほどの達人であっても、そのあまりの破壊力には驚きを隠せないでいた。

 

カイ自身も、またその威力に驚愕していた。自分の手の中で、これほどの力が生まれたことが信じられなかった。

だが、感嘆に浸っている暇はない。

「師範、まだです!」

カイは腰のポーチからもう一つの武器を取り出した。

盗賊団の頭領からドロップし、ガドもその力を認めた、純粋な強化系のための念具『闘拳(ナックルダスター)』。

彼はそれを両拳に嵌めると、今度は練兵場の隅に鎮座する、軽自動車ほどの大きさの巨石へと向き直った。

 

「なるほどな、こいつはこういうスキルか!!」

カイが『闘拳』にオーラを注ぎ込むと、先ほどのナイフとは全く違う反応が返ってきた。ナイフが「魂を解き放つ」感覚だったとすれば、こちらはまるでダムの限界点まで水を注ぎ込むように、オーラをひたすらに「溜め込む」感覚だった。

『闘拳』が、注ぎ込まれるオーラの圧力に耐えかねるように、キィィンという甲高い共鳴音を発し始める。カイの拳を中心に、空気がビリビリと震え、地面の小石がカタカタと揺れた。

これは溜めが必要なスキル。だが、その分、その威力は獣咬の比ではない。

 

オーラのチャージが臨界点に達した。

カイの拳は、もはや直視できないほどの眩い光の塊と化していた。

彼はその力を解放する。

「――星砕き(メテオブレイク)ッ!!」

 

カイの拳が、巨石へと叩き込まれた。

音は、一瞬消えた。

全ての音が、凝縮されたオーラの光の中に吸い込まれていく。

そして次の瞬間、世界が爆ぜた。

 

ゴォォォォォォォンッ!!!

 

凄まじい轟音と衝撃波が、練兵場全体を揺るがした。ドウセツ老師が、咄嗟にオーラで身を守らなければ、その余波だけで吹き飛ばされていたかもしれない。

巨石があった場所には、もはや何も残っていなかった。

いや、違う。巨石は、巨大なクレーターの中心で、その原形を一切留めない、ただの砂と塵へと完全に変貌していたのだ。

それは破壊ではない。

消滅。

存在そのものを、この世から抹消するような絶対的な一撃。

 

砂塵が晴れ、クレーターの中心に立つカイの姿が現れる。

その光景を見て、ドウセツ老師はただ深く息を吐いた。

「…うむ。素晴らしい一撃だ…!!!」

その声には、もはや単なる感嘆ではなかった。弟子が手に入れた、あまりにも強大すぎる力への畏怖と、そして一抹の懸念のようなものが入り混じっていた。

 

カイは、ぜえぜえと肩で息をしていた。

二つの強力な武器スキルを連続で使用したことで、彼のオーラは4分の1近くも消耗していた。

だが、その顔には、疲労を遥かに上回る確かな手応えと歓喜が浮かんでいた。

これが俺の選んだ道。

これが『ウェポン・マスタリー』。

俺はもう迷わない。この力で、俺の道を切り開いていく。

カイは、塵と化した巨石の残骸を見つめながら、固く、固く拳を握りしめた。

彼の本当の戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

カイ:最新ステータス

【名前】カイ

【LV】40

【EXP】15200 / 18000

【POP(潜在オーラ量)】20000

【AOP(顕在オーラ量】1500

【SP(スキルポイント)】33

 

【称号】王子軍特別協力者, 洞窟の試練を越えし者

 

【念能力系統習熟度】

 

強化系:C+

(純粋な肉体強化や攻防力に影響。ガドとの修行で向上)

 

放出系:D

(オーラの射程や操作精度に影響。ビンセント戦で課題が明確に)

 

変化系:E+

(オーラの性質変化の多様性に影響。まだ未知数)

 

操作系:D-

(オーラによる命令の複雑さに影響。今後の課題)

 

具現化系:B

(ドロップする念具の安定性や性能に影響。潜在的な才能が高い)

 

特質系:A+

(固有能力『狩人の対価』の性能や拡張性に直結する、彼の根幹)

 

【スキル一覧】

 

◆キーストーンスキル

 

ウェポン・マスタリー LV1

 

┣ 獣咬(ビーストバイト) - [武器スキル]

 

┗ 星砕き(メテオブレイク) - [武器スキル]

 

◆アクティブスキル

 

スティールスキン LV1

 

ブリンク LV1

 

【武具庫(アーマリー)】

 

[武器] 岩猪の牙(N), 闘拳(R), 影縫いの針(R), 使い古された鉄の短剣(N)...etc

 

[防具] 不動の具足(R), 盗賊の革鎧(N), 盗賊の革篭手(N), 盗賊のすね当て(N)...etc

 

[装飾] チャージングブレス(R), 幻惑耐性の護符(N), 筋力増強の腕輪(N)...etc

 

[特殊] 後悔のオーブ(L)

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