現パロス   作:かゆ、うま2世

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名前は迷ったけどやっぱ〇〇に好きな名前を当てはめて読んでくれよな
評価は5人で色がつくので乞食します


バイオリニストに出会う

セイレンス、というバイオリニストがいる

いや、僕が知ってるのは名前と、突如現れたらしい謎の激うまバイオリニスト。ということだけだ。諸事情あって、そういう流行りには疎いし───そんな僕でも知っているあたり、とんでもない知名度だ

あ、あととんでもなく美人

 

 

「ワタシの事を、覚えているか?」

 

 

実物は画面越しに見るよりも美人だなぁ、なんて思いながらあれよあれよと洒落たカフェに連れ込まれたのがほんの十数分前。一応女性であるはずだけど、僕より圧倒的に力が強かった

 

 

「ええっと、セイレンスさん、ですよね?」

「そうだが、セイレンスはいわゆるペンネームだ。ワタシの本名はヘレクトラ……しかし、そうか。覚えていないのか」

 

 

へぇー、本名はヘレクトラって言うんだ。とんでもないこと知っちゃったかもなー……なんて思いながらも、運ばれてきたオレンジジュースに手をつける

本当はコーヒーでも飲めればカッコよかったんだろうけど、卒業を控えたとはいえ未だ中坊の僕には背伸びしたってまだ早かった

 

 

「……ええっと、僕は記憶喪失だったりするのでしょうか」

「ある意味ではそうとも言えるが、今のキミの身体にはなんら異常は起きていない。むしろ、おかしいのはワタシの方だ」

 

 

何を言ってるのかはよくわからないので、理解するのはとりあえず諦めることにした。ジュースの味はよくわかんない。緊張してるせいだろう。何でもないように振る舞ってるけど、セイレンス……ヘレクトラさんの瞳には隠しきれない執着じみたものが見え隠れしている

 

 

「キミに出会えてよかった。良ければ名前を聞かせてくれないか?キミの口から、名前を聞きたい」

「……アムールです」

「そうか。いい名前だな」

 

 

ヘレクトラさんは目を細めて微笑んでいる。美人に微笑まれたからと言って、緊張が解れるわけでもなし。セイレンスという社会的立場がある以上、変なことはしないと思うけど……

 

 

「ところで、キミは一人で何をしていたんだ?」

「あぁ、バイト先を探していて」

「……バイト?すまないが、年齢は?」

「15です」

「まだ中学生じゃないか。雇えないだろう、法律的に」

「何も面接行ってきたわけじゃないですよ、春から働かなきゃいけませんから、良さそうなところにあたりつけて見に行ってみただけなんです」

「春から?」

「学費を稼がなきゃいけないし、一人暮らしの生活費も……」

 

 

話せば話すほど、ヘレクトラさんの表情が苦いものへと変わっていく。そりゃそうだ、ヘレクトラさんは僕のことを知ってるみたいだけど、誰かにするような話でもないだろう

 

 

「と、ごめんなさい。人に話すことでもなかったです」

「いや、もっと話してくれ。高校の学費だろう?両親はどうした?」

「…………ヘレクトラさんに関係ありますか、それ。減るもんじゃないし話してもいいですけど、聞いてて面白いものじゃないと思いますよ」

「それでもだ、何があったか聞きたい」

「…………わかりましたよ」

 

 

あまり思い出したくない過去だけど、そうまでして聞きたいなら、仕方ない

 

 

「ホストにハマった母と、酒とギャンブルに狂った父。そんだけの、よくある話……で、終わればよかったんですけど。ある日大喧嘩の末に父が母を殺めまして、僕も危うく殺されるところで……何とか父を殺して、なんやかんや施設に入って今までのほほんと生きてます」

「……そう、か」

「そんだけですよ。面白いものでもなかったでしょう?だから言ったのに」

 

 

ヘレクトラさんの表情は酷く沈んでいる こんな話、聞く価値なんてあるわけがないのに。何が聞きたいんだろ、この人

 

 

「……今は、どうだ?何かに脅かされることなく暮らしているのか?」

「んー、中学も施設も治安が良いとは言えませんから、まぁそこそこって感じですかねー」

「────よし、わかった。キミのことはワタシ達で引き取ろう」

「はい?」

 

 

ひきとる、引き取る───引き取り手の無い子供を預かる施設だし、引き取り手が現れればすぐにでも出ていけるだろう。それがなくても、僕が施設を出るのはそう遠いことじゃなかったが

 

 

「引き取るって、ちょっと……別に困ってるわけじゃないし……」

「困ってはいなくとも、今よりはいい生活ができる。生活費も、学費のことも心配は無用だ。これでも、ワタシはそこそこ裕福だからな」

「うう、聞けば聞くほど断る理由が無い……」

 

 

……というか、ちょっと待て。今、ワタシ"達"と言わなかっただろう。まさか、ヘレクトラさん以外にも引き取る人がいると?

 

 

「その、ワタシ達とは?」

「キミには金織卿……アグライアの元に住んでもらおうと思っている。心配するな、ワタシは隣室に住んでいる」

「あ、アグライア……って、あのアグライア!?」

 

 

ファッションデザイナーだ、それも有名なんてもんじゃない。正直服には疎いけど、それでも知っているぐらい……つまりは、セイレンスさんと同じくその界隈外の人間にも名が知れている存在だ

 

 

「ええっと、待ってください。アグライアさんが僕を引き取って、ヘレクトラさんが隣に住んでて…?ていうか、アグライアさんも僕のこと知ってるんです?」

「あぁ、きっと喜ぶだろう。周りにいるのはワタシだけではないし、皆キミの為に全力を尽くす。安心して暮らすと良い」

「あ、頭がこんがらがってきた……そりゃ、ありがたいですけど悪いです、そんなの。僕みたいなの………人殺しですよ?」

 

 

どう言う訳か僕を知ってて、だからこそ助けようとしてくれる。でも、僕はこの人達の助けを受けられるような人間じゃない。人殺しで、ゴミみたいなやつ

 

 

「関係ないさ」

「あります。殺されかけた時、逃げるより先に殺す選択肢が思い浮かんだんですから」

「そうしなければ、キミは死んでいただろう。キミは身を守ったんだ」

「でも……」

「………少し、考える時間が必要か?」

「…そう、ですね」

 

 

とりあえず時間がもらえるなら、ありがたい。これからの生き方を決めるのに、ちょっとぐらい考える時間が欲しい

 

 

「なら、スマホはあるか?ないなら買いに行こう」

「買いに行こうって…スマホぐらいありますよ……連絡先ですよね?」

「…………その、随分と古い機種だな。見たところかなり使い込んでいるようだが」

「動くんだからいいじゃないですか」

「………はぁ、新しいものを買いに行こうか」

「わざわざ買わなくても、今使ってるやつで大丈夫」

「いいから来い」

「は、はぁい……」

 

 

薄くなったジュースを飲み干して、そのままヘレクトラさんに連れられスマホを買いに行った。カフェに続いてスマホの代金も払ってくれたけど、迷いなく一番高いの買っててちょっと怖い……

 

 

「安心しろ、全てワタシが払う。それと連絡先は全て入れておいたから、確認しておいてくれると助かる」

「ほんとに買っちゃったよ………どうしよ…急に梯子外されたりしないよね……?」

「………キミはワタシを何だと思っているんだ。そんなひどいことはしない」

「いや、だって……ねえ?」

「……まぁいい。何かあれば遠慮なく連絡をくれて構わないし、スマホが壊れたり無くしたりしてもすぐに新しいものを手配しよう」

「なにからなにまですみません……?」

「……その謝罪は何に対するものだ?ワタシはキミの為になることをしているのだから、謝罪される謂れはない」

 

 

頭に向かって伸びてきた手を、出来るだけさりげなく動いて避ける。……いや、別に避けなくても良かったんだけど、なんか反射的にやっちゃったな

 

 

「そろそろ帰らないと……それじゃヘレクトラさん、また───」

「あぁ、待て。キミの施設は外泊を認めているか?」

「え?そりゃ言えば大丈夫でしょうけど……そもそも俺にはそんなに関心ないし」

「………そうか。なら、考える時間だ──今晩は、アグライアの部屋に泊まろう」

「はい?」

 

 

──────────────────

 

 

 

「連絡は受けていましたが、こうして会うと……ふふ、ゆっくりしていってくださいね、アムール」

「久しぶ──あ、違った。んじゃこれからよろしくね、アムっち!」

「あたちはトリビー!」

「ボクはトリアン!」

「あたしはトリノンです…」

「「「よろちくね!」」」

「頭痛くなってきた………」

 

 

いくら何でも話が早すぎる。それもこれもヘレクトラさんの連れ込み力が高すぎるせいだ。カフェ、スマホ、アグライアさんの家……やっぱバイオリニストって筋肉使うんだろうか

 

 

「体調不良か?」

「いや、その、何と言うか……はぁ、もういいや。よろしくお願いしまー!」

 

 

こうなりゃやけだ。アグライアさんの家……というかタワマンの部屋だったけど、人類の9割は入れないところを楽しむしかない

アグライアさんの部屋、とは言いつつも色んな人がいるようで。『黄金裔♡ファミリー』とかいう訳の分からないグループから推測するに、銀髪のどこか猫っぽい人がサフェル、赤髪のちびっ子3人組がトリビー、トリアン、トリノン……

 

 

「早速夕食にしましょうか。少し待っていてください」

「あ、手伝いま────」

「こらー!お客さんは働くの禁止だぞ!」

 

 

トリビーズに捕まり、ソファに押し込まれていく。すぐに座らされた。うわすごい柔らかい。絶対高いやつ

 

 

「ここに住むようになるまでは、アムちゃんはお客さんだからな!」

「あたちたちから逃げられると思わないでよ!」

「すぐにできますから、ゆっくりしていてください」

「そう言う訳だ。大人しくしていろ」

「ヘレクトラさんは?」

「つまみ食いをしてからキッチンを出禁にされた」

 

 

遠い目をするヘレクトラさんから視線を外し、しょうがないからソファに背中を預ける。両手と正面にしがみついて僕を捕まえたトリビーズ…正直動こうと思えば動けるけど、こんなちっちゃい子達相手に下手なことできないし

 

 

「まぁ、そう気負うな。キミの家になるかも知れない場所だからな」

「……そう、ですね」

 

 

環境的には最高級だ、これ以上望めないぐらいに。この家で穏やかに暮らしていければどんなにいいだろうか

菓子、私物、金───お世辞にも治安の良い施設じゃなかったから、奪われない為には戦うしかなかった。秩序を保とうとする大人はいない。最悪死にさえしなければどうでもいいのだろう

 

 

「アムちゃん、どっか悪いのか?」

「ええっと…トリアンちゃんか。悪くないけど、何で?」

「だって、辛そうな顔してたぞ!」

 

 

服の下だからしょうがないけど、引っ付いてるところがモロに痣だからちょっと痛い。まぁ、顔に出てるとしたら痛みはその理由の百分の一もないぐらいだけど

 

 

「ちょっと考え事してただけだよ。心配してくれてありがとう」

「ほんとか?ほんとのほんとか?」

「嘘ついたらめっ!だよ!」

「お話は聞きますから、何でもおっしゃってくださいね」

「あはは、お姉さんだなぁ」

 

 

ヘレクトラさんに視線を向けても、ただ穏やかな笑みを返されるだけ。何も話さずにいられるなら、僕のことはその方がいい

 

 

「ご飯できたよ〜。アムっちも座った座った!」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 

サフェルさんに促されて、トリビーズとヘレクトラさんを連れて椅子に座った。湯気の立っているシチューだ。年明け前の寒い時期にはぴったりだろう。暖かい部屋で暖かい料理を食べながら、のんびりと過ごす……

 

 

『いただきます』

 

 

皆で声を合わせて、同じ食卓を囲む。冷たくない、腐ってない、奪われることもない、普通の食事

 

 

「………………」

 

 

シチューをすくって、口に運ぶ。溢さないように、ゆっくりと

おいしくて、暖かかった。温度と味だけじゃない、人の温もりを感じられた

 

 

「お口に合えばいいのですが」

「……美味しいです。すごく」

「それは良かった」

 

 

アグライアさんは小さく笑った後、僕をじっと見つめてきた。別嬪すぎて目を逸らしちゃったけど、それでもじっと見つめてくるから、いたたまれなくなって食事を食べ進める

美味しい。暖かい。本当に、本当に暖かい───

 

 

「わ!アムちゃん泣いてるぞ!どっか痛いのか!?」

「え───あ、うそ。いや、違くて。ほんとに、ちがうんです」

 

 

涙は見せない。弱みになるから。泣いてる間に奪われる、殴られる。だから涙は閉じてきた、のに

どうして、止まらないんだろう

 

 

「ライアのご飯は美味しいけどさー、泣くほど?泣くほど美味しい?」

「そう言うことではないでしょう、セファリア。……ここにはあなたを傷つける人はいませんから、安心してください」

「……その、酒でも飲むか?」

「未成年に勧めないでください」

「アムちゃん!ハンカチ!」

「あ、ありがとう」

 

 

トリビーズから渡されたハンカチを受け取って、涙を拭いて……拭いきれなかった分は服の袖で拭き取る。綺麗なハンカチなのに汚しちゃったな

 

 

「まぁまぁ、アムっちがここに住まなくても、いつでも来ていいからさ。毎日泣いたっていいんだから」

「アムールさんは泣きませんよ。泣く暇がないぐらい、笑っててもらいますから」

「ボク達も頑張るぞ!」

「あたちたちも!」

 

 

暖かい人達だ、本当に。僕なんかがここにいてもいいのかなって思えるぐらいに

 

 

「ありがとう、ございます」

 

 

涙は止まらないけど、せめて笑顔だけは崩さないようにした。その方が、僕も皆も嬉しいだろうから

 

 

 

──────────────────

 

 

 

流石に悪いからと片付けだけは手伝わせてもらい、その後にすぐさま風呂に通され、どういうわけかサイズがぴったりのパジャマが用意されていて……

 

 

「何で?」

「編みました」

「編んだ!?」

 

 

サイズは?とか、いつだよとか色んな疑問はある。けれども流石はアグライアさん製、とんでもなく着心地が良かった

着心地の良い服、柔らかいソファ、暖かい部屋に人……隣に座るアグライアさんに、底知れない安心感を感じる

 

 

「さて、どうだった?」

「ヘレクトラさん」

 

 

アグライアさんの反対側、僕を挟むようにヘレクトラさんはソファに座った。風呂上がりなのか、頬はほんのり赤くて、パジャマも少しだけはだけている

 

 

「……ちゃんと着てください。アムールも見ているのですよ」

「ん?ああ……ワタシは見られても平気だが…」

「僕が困るのでちゃんと着てください…」

「にゃはは、アムっちも男の子だね〜」

 

 

どこか不服そうにはだけた服を直しているヘレクトラさんを横目に、今日一日を思い返す。道端で偶然ヘレクトラさんに出会って、それが全ての始まりだった。あの家より、あの施設よりも、よっぽど───

 

 

「……まぁ、その、暖かかったです、すごく」

「そうか」

「…!ふふ……」

 

 

頭に向かって伸びてきた手を、今度は避けない。ヘレクトラさんの柔らかな指が髪の間を這うのは、ちょっとくすぐったくて気持ちいい

 

 

「アムール」

「……アグライアさん?」

 

 

横目で見ると、アグライアさんも僕に向かって手を伸ばしている……どうしよ、僕の頭はそんなに広くない。でも、2人共笑顔だし……

 

 

「な、なんですか……?」

「ふふ……」

 

 

アグライアさんは僕の頭を優しく撫でてくれた。そしてそのまま手を滑らせて、頬や顎の下をくすぐってくる。猫か僕は

 

 

「じゃあたしも〜」

「あたちたちも!」

「ボクたちも!」

「あたしたちも……」

「わ、わ、髪ボサボサになっちゃう……」

 

 

サフェルさんにトリビーズも集まってきて、僕の髪の毛はぐちゃぐちゃになった。それでも皆笑顔だから……本当に、暖かいな

 

 

「あはは……ふぁ…あたしもう眠いや……ライア、あたしもう寝るけど、アムっちの寝る場所どうするの?」

「全然その辺の床で大丈夫なんで……」

「大丈夫なわけがないだろう……」

「私と一緒に眠りましょうか」

「え、いや、そんな……」

「ふふ、家主としての命令ですよ」

 

 

そうまで言われれば何も言えることはなく、おそらく拒否してもヘレクトラさんが連れて行くだろうし、本当にアグライアさんと一緒に寝るしかないらしい

 

 

「今度はあたしと一緒に寝てもいいよ〜。それじゃアムっち、おやすみ!」

「「「また明日!」」」

 

 

そういって一足先に寝室へ向かったサフェルさんとトリビーズ。僕たちも向かうべきか、とアグライアさんに視線を向ければ、「髪を整えてからですよ」と優しく笑ってくれた

ヘレクトラさんはずっと僕の手の甲を指でなぞってる。くすぐったいし何してるんだこの人

 

 

「綺麗な髪をしていますから、大切にしましょう。癖がついてしまわないように───」

「……その、怖くないんですか」

 

 

───ずっと、聞きたかったことだ

サフェルさんはともかく、トリビーズの前でするのは憚られた。だから、今聞くしかない

 

 

「聞いてるんですよね、僕の経歴」

 

 

過程がどうあれ、事情がどうあれ、僕の手は一人の血に染まっている。人殺しと積極的に関わりたい人間なんていないだろう

物珍しさか、記事のネタか、日頃の鬱憤をぶつける為か……相手から僕の元にやってきた人たちは、大体この辺が理由だった

 

 

「あなたは、私たちを傷つけるのですか?」

「……しませんけど」

「であれば、怖いことなど何もありません」

 

 

アグライアさんの言葉と、僕の手の甲を滑るヘレクトラさんの指の動きは連動していない。だけど、どちらも止まってはくれない

 

 

「ワタシと出会った時から、キミには常に遠慮があった。キミの経歴を加味しても、ワタシの目に映るキミは…人を思いやる事ができ、自分の身も守る事ができる強い人間だ。尊敬こそすれ、恐れるような相手ではない」

「……」

 

 

アグライアさんに頭を引き寄せられ、ヘレクトラさんの指は首筋へと滑ってくる。ぞわぞわして、なんだかいけないことしてるみたいだったけど、どれもこれも、一貫して暖かかった

 

 

「………いいん、でしょうか。僕みたいなやつ、こんな、こんなに幸せな…」

「悪いことなどあるはずがありませんよ」

「過去は、深海のようなものだ。潰れてしまうなら、その前にワタシ達が引き上げてみせる」

 

 

じん、と胸の奥に熱が灯る

 

 

「アムール」

 

 

2人の声が、僕の心臓を暖かく包む。ゆらゆらと揺れる何かが目元からこぼれたけれど、2人が拭いてくれて……それが涙だと分かったのは、アグライアさんに抱き締められてからだ

 

 

「大丈夫。大丈夫ですよ」

「……っ、う……あ……」

「ここにはキミを傷つけようとするものなどいない。安心して眠るといい」

 

 

暖かい、暖かい───僕はここにいていいんだって、そう思わせてくれる暖かさ

 

 

「一緒にいましょう。私が、あなたを守ります」

「涙なら、いくらでも拭おう。キミがもう、泣かなくていいように」

「あ───ありがとう、ございます……っ!」

 

 

2人の背中に手を回して、泣きじゃくる僕を2人は優しく宥めてくれた。本当の親でもないのに、本当の家族みたいに

いつの間にか涙は止まっていて、でも胸の中の暖かさはそのままだった

 













「では素晴らしい提案をしよう、お前も現パロを書かないか?」
「見ればわかる、お前の強さ、柱だな?その創作意欲練り上げられている。至高の領域に近い」
「杏寿郎、なぜ俺がオンパロス二次創作を読んだ後辛くなるか教えてやろう」
「オンパロスだからだ、運命が決まっているからだ、どうせ皆死ぬからだ」
「現パロを書こう、杏寿郎。そうすれば幸せな世界を書くことができる」
「どれだけ幸せな日常を描いても、いずれ皆死んでいく。俺は辛い、耐えられない!」
「ケリュドラにセイレンス、千に分かたれたトリスビアス、アグライアの人間性、もう取り返しがつかない」
「現パロであればまばたきする間に治る、そんなもの現パロならばかすり傷だ」



「ああ…素晴らしい創作意欲だ」
「あれほどの不穏パロスを見ながらその気迫、その精神力、一分の隙もないプロット」
「やはりお前は現パロを書け、杏寿郎!」
「俺と永遠に創作し続けよう!
「死ぬ…皆が死んでしまうぞ杏寿郎!」
「現パロを書け…現パロを書くと言え!」
「お前は選ばれし強き者なのだ!」


「逃げるな卑怯者!!」
「逃げるなァ!!!」
「カスライナは負けてない!鉄墓を誕生させなかった!戦い抜いた!守り抜いた!」
「お前の負けだ!!カスライナの!!」
「勝ちだ!!!」

主人公の名前いる?

  • いる
  • いらん
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