わし様と友達な羅刹の物語、なお戦争後   作:メイシュトロ

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魔サイドの皆さん「知らん……何それ……怖……というか同類扱いされるのは流石に冤罪過ぎるんだけどなんで同族食べてんだよアイツ!!!」


インドラが羅刹に再会した日(後編)

インドラがクベーラに話を聞きに行くため場を離れていた頃、カルナはアルジュナに討たれて死んだ。

 

 

だが、やはりその後エラッタに死体を食われた為カルナも天には昇れなかった。

エラッタの話はスーリヤも共有を受けていた為カルナがこの戦場で死ぬのならそういう事もあるだろうと覚悟はしていたが、実際にそれをされると腹立たしい事この上無い。

血にまみれた遺体を、エラッタが化けた鳥たちが啄んでいく……。

 

その光景を見て頭がカッと燃えるような感情に包まれたが、周囲の神々からはたしなめられた。

 

「チャンドラ様も我慢なさったのですよ、あなたも我慢なさってください」

「今あなたが戦場に出られたら滅茶苦茶です!!!」

「インドラ様が今色々調べてくれているようですので、インドラ様が帰って来てからにしましょうそういうのは」

 

インドラを待てと神々は口に出す。

それが正しいのはスーリヤにも分かってはいたが居てもたってもいられず、魔神の類にあの異様な羅刹は貴様たちの差し金かと聞いて回った。

 

 

「同族を食い潰す奴が私の化身であってたまるか!侮辱してるのか!」

「いや本当に知らない……なんなんだよそのエラッタって羅刹」

「半端に人間ぽくて気味悪いしなんであんなに色々取り込んで破綻してないんだ……キショイ……」

「魔からしてもちょっとアレは……なんなんだ状態なんですけど!」

 

 

ちなみに悪魔カリに聞いてみたところ、カリも良く分かっていないようだったしなんなら自分の化身であるドゥリーヨダナが食われて「あれ?化身とあの羅刹の子友達じゃないの?ちょっと!?」となっていた。

 

……つまるところ、神々も魔も全員何がなんだか分からなかったし、その上で色々食われて囚われて、化身も転生体も返ってこないとなると段々と事態の不味さに拍車がかかってきた。

 

普通の人間だから食べていいとは言わないが、神々や魔の化身というのも返ってこない場合影響がデカい。

故に食べて弔われず天にも昇れぬというのは相当困った事態になってきた。

 

人減らしの戦争が終わるまでは……と、神々はなんとか耐え、アシュヴァッターマンの夜襲も終わり、ようやく終わりが来た!

だがそれでもスーリヤは神々に止められた、せめてインドラ様を待ってくださいと。

怒れるスーリヤが何をしでかすか分からないため、インドラというストッパーが居る状態にしてから事を動かして欲しかったのだ。

 

 

ほんの少し、言う事は聞いた。もっともな話だったからだ。

 

だが、結局途中でスーリヤは耐えられなくなり戦争後のエラッタに突撃しに行った。

 

 

「……で、テメェにビビったエラッタが蛇に化けて地中に逃げ、後を追えなくなったと」

「面目ない」

 

太陽らしく輝く様はそのままに、怒りと取り逃がした情けなさで今までに見ぬくらいにスーリヤは憔悴していた。

 

気持ちは分かるからこの際スーリヤに何も言わないでおく事にしたが、それにしても面倒な事になったとインドラは悩む。

エラッタはカウラヴァ側の者達と普通に仲良くし普通に違和感なく紛れ込んでいたようだった、すなわち人に紛れ込まれたら探し出すのはとても難しいという事になる。

 

更に悪い事に。

 

 

「インドラ様、スーリヤ様、今は人の世界も状況が状況なので恐らく神々が長時間降りられますと影響が……」

 

 

天女がそう告げる。

あれだけの戦争があったのだから戦争後の乱れは当たり前であるが、乱れた状況というのはあらゆる影響が受けやすい。崩れた砂の城は補強するまで雷雨による濡れも直射日光による渇きにも弱いだろう。

本来ならばもう少し余裕があるはずでそれを想定して戦争後どうにかする予定だったが、エラッタが引き起こした事件の影響が広がりすぎたせいでそれも難しくなった。

エラッタはその特性的に探し出すなら時間がかかりそうであるが、かといってインドラやスーリヤが直接それをするとなると人界への影響がモロに出過ぎて戦後の脆い社会の中で致命傷になりかねない。

 

……しかし、今の状況は放置できない。

戦死者が見つからず、鳥に化けたエラッタが遺品を遺族に返しながら自分が食べた事を告げて回るという狂った行動をしたせいで人の世は嘆きに満ちている。

死んだ者達の弔いもできないのだからそれも仕方あるまい。

 

「……仕方ない。神オレの息子たちに頼むしかないか」

 

本当ならばこんなとんでもない状況でさらに負担をかけることはしたくはなかった。

アルジュナにも、その家族にも。

だが本当にそうは言ってられ無い事態になった、人に紛れ込むのが得意でなんでもかんでも死体を食べるあの羅刹を放置したら国そのものが齧り取られる。

 

死んだ者達は悉く天に昇れず輪廻の輪にも戻れぬだろう。

 

なんなら、アルジュナが死んだ時その死体を遠慮なくエラッタは食べるだろうことを考えたらインドラは腹が立ってきた。

本当ならば自分の手で雷を落としてやりたかった。

 

一大プロジェクトが終わったかと思えば、エクストラステージが発生して頭の痛い話だったがもうあとはパーンダヴァに任すしかない。

 

 

 

こうして、スーリヤ経由でパーンダヴァにエラッタの話を告げ、捕獲作戦が開始される。

結果論で言えば捕まえることができ、焼き殺す事で食われて囚われた魂も天に昇れた。

 

……だが。

 

焼け落ちた骨が小さな鳥に化けて飛び立つ。

 

「っ!テメェ、まだそんな余力があったか!」

 

ビーマが叫び、それと同時に五王子全員が捕まえようと追いかけるが鳥は人込みの中を飛ぶせいで人が壁となり上手く捕まえられない。

天からも一連の流れをインドラは見ておりエラッタを無事射抜き捕らえたシーンなど「さすが我が息子」だと感心していたが、エラッタを逃がすのはあまり良くない。

もっとも、肉体のほとんどを失った為もう元のようには戻れないだろうが……それでもだ。

なのでパーンダヴァがとらえやすいようにとせめて手伝いをしてやろうとも思ったが、雷を落とすにしても周囲に人が多い場所を飛んでいるため下手に落とせば周囲への被害が甚大になる。

 

 

「悪知恵の働く鳥め」

 

 

人込みの中をフラフラと飛ぶ鳥は余力も無さそうだったが、タチの悪さを五王子も天も知っていた為決して油断はできなかった。

 

F1カーに下町の路地裏をロースピードで走らせるような曲芸がごとき、小さな雷が小鳥の尾羽を焼いた。

それでも小鳥はなんとか逃げおおせた。

 

 

 

 

 

だが、尾羽の焼けた鳥だなんてわかりやすい目印ができたのだから、もう何も悪さは出来ないだろう。

神も魔も総じて何がなんだか分からないと、戦争とは別のところで大混乱を起こした羅刹エラッタはこうして一連の悪行にようやく幕を閉じた。

 

これには、人も神も魔も全員が安堵の息を吐いていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

「……というのが、当時の天界の動きだな」

 

 

インドラは話を終えて、マスターにそう語る。

 

 

「なんというか、とにかく全員大混乱だったんだなってのは伝わりました」

「むしろ神オレのような神々よりも魔の方が自分の身内から訳分からないのが出てきたからか怯えていたように見えたな」

「羅刹でも同族喰いしたら恐れられるんですね……まあ人間でもアルバート・フィッシュとか恐怖のシリアルキラーって感じだし、そういう事かあ」

 

人間だって人肉を食べる奴なんてシリアルキラーのイメージが強いだろう。

魔からしたってそこは同じだと考えると、奇妙な親近感さえ出てくる。

 

「あそこまで大それたことをやるのだから、誰かしらの化身じゃないの?って皆思ってたんだよねー」

「そう思っていたら特に何にも関係ない一般通過羅刹パンピーだったってところです」

 

ヴァジュラ達すらそういうのだから、当時の大混乱っぷりはやはりすごかったんだなとマスターは改めて思った。

 

「サーヴァントとして制御されてる以上生前のような滅茶苦茶は出来ないとは思うが、目は離し過ぎるなよ?アイツより強い羅刹が居たとして、アイツよりもタチの悪い奴はおらん」

 

インドラの忠告とも呼べる言葉にマスターは苦笑いを浮かべた。

それはもうずっと知っている話ではあるけど、召喚された関係者が大体口を揃えてそう言うものだから。

だけどマスターは、羅刹であり羅刹より悍ましき者であったとしても折り合いをつけたりして今を過ごすことはできるのだと知っている。

 

マスターもマスターで、多数の魔なり人なり神なりと過ごしてきたのだから今さらだ。

だからエラッタがあのタチの悪い要素をそのままに、どこか妥協点を見つけて生きられるのだと信じてるし実際そうなった。

 

だからこのカルデアでは、エラッタはただちょっと健啖家でマスター大好きなだけのしがない羅刹なのだ。

 

 




本編はこれで終了、後はオマケで掲示板方式の話投稿する予定です
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