わし様と友達な羅刹の物語、なお戦争後   作:メイシュトロ

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最終的にパーンダヴァがなんとかしてくれるぜ!


パーンダヴァが違和感に気づいた日

おかしい、おかしい、おかしい。

戦場の亡骸が少なすぎる。

 

 

 

 

勝者であるパーンダヴァ側でも亡くなった者達への悲しみを抱えつつ、いつまでも遺体を放置する訳にはいかないと戦場で遺体の回収や火葬をしようとその腰を上げた。

 

しかし、見つからない。綺麗すぎるのだ。戦場が。

 

あれほどの戦争だ、あれ程の戦闘だ。

山のように遺体があってもおかしくないはずなのに、まばらに遺体が少しばかり転がっているだけだ。

困惑しつつもとにかく目に見える遺体だけでも回収し火葬し弔わなければいけない。

そうしなくては、この戦争で亡くなった者達も天に昇れない。

遺体を集めて火葬するため、遺族に伝える為、どこの誰の死体なのかを確認したり数えたりをしたが……どう考えても少ない。

 

……確かに、今にして考えてみれば戦争中も死体が不自然に少ないような気はした。

 

だが、それは獣が食ったりしたせいだろうと思っていた。

それにそれどころではなかったから目の前の敵に集中するしか無く気づいた人間も多少は居たが、すぐにそれは頭の片隅からも消えていった。

 

だが、戦争が終わった今見ていてもやはり死体が異様に少ない。

……獣だけじゃない、獣だけじゃこんなに綺麗に消えることは無いだろう。

 

 

 

 

何故?

 

 

 

 

……弔いがされぬ、と言う事は魂が天に昇れぬ、すなわち戦死者の安寧を導かれぬという事でもありよろしくない。

それ以前に、遺体が返ってこないともなれば自らの愛する者が本当に死んだのかどうかすら分からず受けれられず、いつまでたっても喪失から抜け出せぬ。

 

その喪失に囚われているのは息子たちの遺体が見つからぬパーンダヴァもだったし、夫たちの遺体が見つからぬカウラヴァも同じだった。

特にドゥリーヨダナの親であるドリタラーシュトラ王やガーンダーリー妃は息子が生きているのでは……と死を受け入れられていなかった。

 

 

 

 

そんな折、鳥たちが遺品を運んでくるという奇妙な事件が起きた。

 

それだけなら、まだ良かった。

 

 

 

 

問題はその鳥たちに「遺体はどこに?」と聞けば「僕が全て食べました」と返ってくる事だ。

 

 

 

 

その鳥たちが何者なのか、それは分からない。

 

それが真実であるというのなら……あの戦争で死に、未だ遺体が見つからない者達はあの奇妙な鳥たちの腹の中であり、最早弔えるような状態ではないという事だ。

遺族は絶望に包まれた、それはカウラヴァもパーンダヴァも関係ない。

なんとかして欲しいと両軍の遺族からの嘆願が五王子にも寄せられたが、どうにかしようにも手がかりが少なすぎる。

 

 

愛する人が死後の安寧すら得られぬ、あの辛い戦争の果てがこんなにも救いのない話でいいのか!?

 

 

そういった失意と絶望が王都を、国を包み込んだ頃。

 

 

アルジュナの前にスーリヤ神が現れた。

我が子を弔えぬという絶望に身を浸していた折に、その威光は現れた。

 

「スーリヤ神よ、何故……」

 

何故ここに?何故私に?

 

言いたい事は色々あった。

あるいはカルナの事だろうか……とも。

カルナはスーリヤの子である、ともすればカルナを討ったアルジュナに何か言いたい事でもあったのだろうかと身構える。

 

 

「お前は、いや……この国の人間はみな戦死者の遺体が返ってこない事に嘆いてる。相違ないな?」

「ち、違いありません」

「ならば、その遺体を何者が食らったのかを教えてやる。故……疾くそいつ捉えて生きたまま焼いて殺せ」

 

 

アルジュナは目を白黒させた。スーリヤがこの一連の騒動の正体が何者であるか知っているらしき事も、ソイツを生きたまま焼いて殺せと言い出した事にも。

 

 

「アレは大量の人間を食らい、その身に代えた。アレの肉体そのものが戦死者で出来ていると言っても過言ではない、故にアレを火葬してやれば食らいつくした者達の魂も天に上るだろう」

「……して、その”アレ”とは一体?」

 

 

もう、自らの大切なものたちが弔えるのならどんな手段だっていい。

それはきっとアルジュナもスーリヤも変わらない気持ちだったのかもしれない。

人でも神でも、我が子はかわいい。

たとえ死んだとしても、死後も愛する存在なのだ。

 

 

「羅刹だ。羅刹エラッタ、という者を探し出せ。ソイツが戦死者のほとんどを食らいつぶした。コイツをどうにかしない限り、弔いは出来ぬ。様々な動物や人に化けているだろうが探し出せ」

 

 

羅刹エラッタ、という名前を知らされたアルジュナは大急ぎで自らの兄弟や信用の出来る臣下に調べさせた。

 

 

調べたところによると、戦争よりもずっと前にドゥリーヨダナが招き入れた羅刹らしい。

羅刹らしからぬ温厚な性格で、少なくとも戦争が始まる前に人を食べているところは見た事無い。そんな存在。

話を聞く限りではとてもこの一連の事態の黒幕とは思えないのだが、スーリヤがこの異常事態を前にして適当なことを言うと思えない。

更に調査を進めていると、市政の中で不自然に遺体が消えて無くなる事件が発生していた。

 

 

……居るのか、羅刹エラッタが。

戦場だけじゃなく、市井の中に、人の中に、営みの中に。紛れ込んでいるのか!

 

 

それを知った瞬間アルジュナはゾッとした、不審な人物や獣の姿は目撃されておらずそれでも遺体のなくなる事件が起きる……と言う事は、エラッタは人間に化けているにしても相当うまく化けており、かつ人にバレないように溶け込む社会性が羅刹らしからず相当高いという事になる。

 

そんな大食い人食いのバケモノが人に紛れ込んでいる?気づかれず?

そんな事、放置したらどうなるのか火を見るよりも明らかだった。

 

早く、どうにかしなくては……。

 

そんな折、戦後処理で忙しい上にこんな事態が起きて心労が重くのしかかる兄三人を気遣ってかナクラとサハデーヴァが一計を案じた。

 

 

 

 

「サハデーヴァが囮になります。サハデーヴァが病で亡くなるという噂を流布し、遺体食らいの羅刹エラッタをおびき寄せるのです」

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