鎮守府決斗録   作:石田零

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 発売から一週間たちましたが、遂にタッグフォーススペシャルが発売されましたね。
 我が愛しのレイちゃんのボイスがないのは悲しいですが、いろんなキャラとデュエルできるのは楽しいです。CPUはときどき変なプレイやらかしますけど。……おい十代、どうしてサブマリンロイドの召喚に神警を使った。
 まあ、世間話はさておき。第十三話をお楽しみください。


13 2on1

「鈴谷……お前、どっから出てきたんだよ!?」

 

 春瀬と天龍の間に、突如割り込む形で現れた鈴谷。そんな彼女に向けて、天龍が当然の疑問をぶつける。

 

「ん、そこのフェンスの上から」

 

「そこ、って……運動場を囲むフェンスの上じゃねえか。どうやって登ったんだよ?」

 

「ワイヤーとかいろいろ使って、ね。腕は疲れるし、けっこう大変だったよ」

 

「全然気づかなかったぞ……」

 

「みんなデュエルに夢中だったからねー。響にだけは、途中で感づかれちゃったけど」

 

「そうなのか!?」

 

 鈴谷の告白を聞き、その場の全員の視線が響に集中する。

 

「響ちゃん。本当なのです?」

 

 電の問いに、響は「うん」と首肯する。

 

「どうして教えてくれなかったのよ?」

 

「鈴谷さんが内緒にしてって身振りをしたてたから、知らせるのは悪いかと思って」

 

「ほんと助かったよー。先に見つかっちゃったら、驚かせられないもんね」

 

「お前は、俺たちを驚かせるためだけにフェンスの上まで登ったのか……」

 

「そだよ」呆れ顔の春瀬の言葉にも、鈴谷はごく普通の調子で返す。

 

「だって、普通に出てくるだけじゃつまんないじゃん」

 

「そういう問題か……?」

 

 春瀬の疑問はスルーして、鈴谷は彼の腕を掴む。

 

「さっ、提督には鈴谷とデュエルしてもらうよ!」

 

「ちょっと待て、提督と戦うのはオレが先だ」

 

 話を進めようとする鈴谷を、天龍が制止する。

 

「えーっ、天龍はさっきまでさんざんデュエルしてたじゃん。鈴谷はまだ誰ともデュエルしてないんだから、譲ってよ~」

 

「ダメだ。ていうかお前、どうして自分のデュエルディスク持ってるんだよ?」

 

 天龍は鈴谷の左腕を指さす。彼女の腕には、天龍、春瀬のものとは別の、三台目のデュエルディスクが装着されていた。

 

「ああ、これ? ここに来る途中で、執務室に完成したディスクを届ける途中の明石さんとばったり会ってね。今は執務室に誰もいないから、鈴谷が代わりに受け取っておいたの」

 

 天龍の質問に答えた鈴谷は、再び春瀬をデュエルに誘う。

 

「提督~。鈴谷の初デュエル、つき合ってよ」

 

「だから、提督とはオレが先にデュエルするって言ってるだろ」

 

「いいじゃん別に~。譲ってってば」

 

「断る」

 

「譲って!」

 

「嫌だ!」

 

「――なら、一緒にやるか?」

 

 春瀬の提案に、二人は「えっ?」と揃って振り返る。

 

「このまま押し問答を続けていても、埒が開かないだろう。いっそのこと、二人同時に俺とデュエルするのはどうだ?」

 

「それって、鈴谷と天龍の二人で提督と戦うってこと?」

 

 鈴谷の問いに、春瀬は「そうだ」と頷く。

 

「鈴谷は構わないけど……。でもいいの、提督? 自分で言うのもなんだけど、鈴谷のデッキもけっこう強いと思うよ?」

 

「そうだぜ。オレの実力は、ついさっき目の前で見ただろ? オレは自分の力で提督に勝ちたいんだ。二対一だから負けたなんて、言い訳されるのはごめんだぞ」

 

「心配するな。俺だって、敗北必至の戦いを自分から挑むほどバカじゃない」

 

「ってことは、提督は鈴谷たちに勝つ自信があるの?」

 

「これでも、デュエル歴はけっこうあるんでな。見くびってもらっちゃ困る」

 

 自信ありげな笑みを見せ、春瀬が答える。それを聞いた鈴谷は「ほぅ」と片眉を上げた。

 

「面白いね。その勝負、乗った! 天龍は?」

 

「愚問だな」

 

 答える代わりに、天龍はデュエルディスクを構える。

 

「あとから後悔してもしらねえぜ、提督」

 

 天龍に続き、鈴谷と春瀬もディスクを起動させる。三人は互いに距離をとり、ちょうど三角形を作る形に向かい合う。

 

「普通のデュエルと違って、この勝負は二対一の変則タッグ形式だ。そのため、このデュエルは通常のルールに変更を加えた特殊ルールでおこなう。いいな?」

 

「まさかとは思うけど、自分に都合のいいルールを作ったりしないよね?」

 

 口元に笑みを作りつつ、鈴谷は春瀬に釘を刺す。春瀬は「まさか」とそれを否定する。

 

「大口叩いておいて、そんなことをしたら笑い者だ。ただし一つだけ、俺の初期手札はお前たち二人分の十枚にさせてもらう」

 

「手札を?」

 

 春瀬の言葉に、鈴谷は首を傾げる。

 

「ライフじゃなくていいのか? 4000のライフなんて、二対一じゃすぐになくなっちまうぜ」

 

「心配するな。そう簡単にやられはしない」

 

「やれやれ。鈴谷たちも甘く見られたもんだねぇ」

 

「けっ、まったくだ。いいぜ、好きにしな」

 

 二人が同意し、春瀬の提案は承諾される。

 

「あとは、デュエルの進行についてだ。ターンは俺から始まり、お前たち二人に移る。どちらが先にやるかは二人に任せる。ドローは二人目から、攻撃は三人目から可能。そして、お前たちは互いのフィールドと墓地のカードを、自分のカードとして各種の素材・コスト・効果対象に選択することができる。通常のルールとの相違点は以上だ。質問はあるか?」

 

「いいや」

 

「鈴谷もないよー」

 

「よし。では、始めよう」

 

 

「「「デュエル!!」」」

 

春瀬 LP4000

天龍 LP4000

鈴谷 LP4000

 

 

「俺のターン。俺は手札から、フィールド魔法『Sin World』を発動する」

 

 

《Sin World》

フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、自分のドローフェイズ時に通常のドローを行う代わりに発動する事ができる。

自分のデッキから「Sin」と名のついたカード3枚を選択し、相手はその中からランダムに1枚選択する。

相手が選択したカード1枚を自分の手札に加え、残りのカードをデッキに戻してシャッフルする。

 

 

 春瀬の魔法が発動した瞬間、周囲の景色に変化が生じる。地面、空、建物……あらりとあらゆるものの色が反転していき、青空が広がっていた運動場は、瞬く間にネガのような色調の世界へ変貌した。

 

「な、なにこれ!?」

 

「これが俺のフィールド魔法、Sin Worldだ。ここは、生まれながらに罪を背負った世界……。ここが、俺たちの戦いの場所となる」

 

 春瀬は手札から二枚のカードを抜き、続けてモンスターゾーンに置く。

 

「俺は、デッキの『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』をゲームから除外し、『Sin 青眼の白龍』を特殊召喚。さらに『神獣王バルバロス』を通常召喚する」

 

 

《Sin 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

このカードは通常召喚できない。

デッキから「青眼の白龍」1体を除外した場合に特殊召喚できる。

「Sin」と名のついたモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃宣言できない。

フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。

 

《神獣王バルバロス》

効果モンスター

星8/地属性/獣戦士族/攻3000/守1200

このカードはリリースなしで通常召喚できる。

この方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力は1900になる。

また、このカードはモンスター3体をリリースして召喚できる。

この方法で召喚に成功した時、相手フィールド上のカードを全て破壊する。

 

 

「えっ、レベル8のモンスターって通常召喚には2体のリリースが必要なんじゃないの!?」

 

「バルバロスはリリースなしで召喚することもできる最上級モンスターだ。ただし、その代償として元々の攻撃力は1900に下がる」

 

「……なぁんだ、結局普通のレベル4モンスターと同じじゃん。驚いて損した」

 

 春瀬の説明を聞いた鈴谷は、ほっと胸を撫で下ろす。しかし、彼女の共闘相手はそれに異を唱える。

 

「いや、違う」

 

「どういうこと、天龍?」

 

「攻撃力は問題じゃない。バルバロスのレベルは、Sin青眼と同じ8。同レベルのモンスターを並べたってことは――」

 

「さすが、エクシーズ主体のデッキを使ってるだけあって察しが早いな。その通り。俺は2体のレベル8モンスターでオーバレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 春瀬のモンスターが光の玉となり、異空間で重なり合う。交わった魂は姿を変え、新たなモンスターとして生まれ変わる。

 

「現れろ、巨竜の鎧を纏いし騎士。『神竜騎士フェルグラント』!」

 

 

《神竜騎士フェルグラント》

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/光属性/戦士族/攻2800/守1800

レベル8モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

このターン、対象のモンスターは効果が無効になり、このカード以外の効果を受けない。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「高ランクのエクシーズモンスターを、1ターン目から……」

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 デッキの要となるフィールド魔法に、有力なモンスターと伏せカード。これだけの布陣を揃えながら、初期手札を十枚とした春瀬の手には、まだ五枚のカードが残っている。しかし、彼と対峙する二人にとっては、相手の手札よりも目の前の敵モンスターが脅威に映った。

 

「さあ、どっちからくる?」

 

「オレからいくぜ! ドロー!」

 

 二番手をとったのは、天龍。自身もエクシーズを使う彼女は、春瀬のモンスターを脅威と見てそれを排除するために動き出す。

 

「オレは『ガガガマジシャン』を通常召喚。そして手札の『カゲトカゲ』の効果を発動、このカードを特殊召喚する」

 

「レベル4のモンスターが2体……くるか」

 

「オレは、レベル4のモンスター2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚、『No.39 希望皇ホープ』!」

 

 

《ガガガマジシャン》

効果モンスター

星4/闇属性/魔法使い族/攻1500/守1000

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に1から8までの任意のレベルを宣言して発動できる。

エンドフェイズ時まで、このカードのレベルは宣言したレベルになる。

「ガガガマジシャン」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

このカードはシンクロ素材にできない。

 

《カゲトカゲ》

効果モンスター

星4/闇属性/爬虫類族/攻1100/守1500

このカードは通常召喚できない。

自分がレベル4モンスターの召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚できる。

このカードはシンクロ素材にできない。

 

《No.39 希望皇ホープ》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000

レベル4モンスター×2

自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

そのモンスターの攻撃を無効にする。

このカードがエクシーズ素材の無い状態で攻撃対象に選択された時、このカードを破壊する。

 

 

「さっそくエースモンスターの登場か。だが、ホープの攻撃力ではフェルグラントに届かない。強化をしても、このターンに攻撃することはできないぞ」

 

「へっ、なにも攻撃だけがモンスターを破壊する手段じゃねえ。攻撃できなくても相手を倒す手段はあるんだよ! オレは手札から、『RUM(ランクアップマジック)―バリアンズ・フォース』を発動!」

 

 

RUM(ランクアップマジック)-バリアンズ・フォース》

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い「CNo.」または「CX」と名のついたモンスター1体を、選択したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

その後、相手フィールド上にエクシーズ素材が存在する場合、相手フィールド上のエクシーズ素材1つを、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

 

「なるほど。ホープをホープレイVにランクアップさせ、その効果でフェルグラントを破壊する算段か」

 

「ああ! そして次のターンで鈴谷が攻撃力1200のモンスターを出せば、ダイレクトアタックで俺たちの勝ちだ! だから言ったろ、ライフを二人分にしなくていいのかって」

 

 春瀬の言葉に、得意げに答える天龍。しかし。

 

「残念だが、その作戦は成功しない。天龍の魔法にチェーンして、フェルグラントの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使ってホープの効果を無効にし、このターンあらゆるカード効果を受けなくする!」

 

「なにっ!?」

 

「RUMは、特定のモンスター1体を対象として発動するカード。対象のモンスターが途中でその効果を受けなくなった場合、ランクアップは不発に終わる。……ランクアップしたホープは確かに脅威だが、ならばそれを封じればいい。ランクアップしなければ、ホープは少々厄介なモンスターにすぎない」

 

「くっ……。オレはこれでターンエンドだ」

 

 自らの目論見を破られた天龍は、打つ手なくエンド宣言をする。その後を継ぐのは、これが初めての実戦となる鈴谷。

 

「私は手札の『沼地の魔神王』の効果を発動。このカードを墓地へ捨てることで、デッキから『融合』を手札に加える。そして、『E・HERO(エレメンタルヒーロー) エアーマン』を召喚。その効果で『E・HERO シャドー・ミスト』を手札に加えるよ」

 

 

《沼地の魔神王》

効果モンスター

星3/水属性/水族/攻 500/守1100

(1):このカードは、融合モンスターカードにカード名が記された融合素材モンスター1体の代わりにできる。

その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。

(2):自分メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。

デッキから「融合」1枚を手札に加える。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) エアーマン》

効果モンスター

星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカード以外の自分フィールドの

「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。

●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

《E・HERO シャドー・ミスト》

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1000/守1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。

(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 

「……なるほど。鈴谷のデッキはHEROか」

 

 鈴谷が使った二枚のカードを見て、春瀬が呟く。

 

「もうバレちゃったかー。まぁ、融合にHEROとくれば分かっちゃうよね。私は融合を発動! フィールドのエアーマンと手札のシャドー・ミストを融合する!」

 

 風と闇、異なる力を持つ二人の戦士が一つに交わる。そこから現れる戦士は――

 

「出番だよ、『E・HERO Great TORNADO』!」

 

 

《E・HERO Great TORNADO》

融合・効果モンスター

星8/風属性/戦士族/攻2800/守2200

「E・HERO」モンスター+風属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動する。

相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。

 

 

「Great TORNADOの効果発動、相手フィールドの全モンスターの攻守を半分にする! 同時に、シャドー・ミストの効果でデッキから『E・HERO ブレイズマン』を手札に加えるよ」

 

「くっ……」

 

 僅かに表情を歪ませ、春瀬は応戦する。

 

「フェルグラントの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで、ターン終了時までフェルグラント自身にあらゆる効果に対する耐性を与える!」

 

 

【Chain1:Great TORNADO Chain2:シャドー・ミスト Chain3:フェルグラント】

 

 

 残り一度の効果を使い、春瀬はフェルグラントの弱体化を回避する。せっかく融合召喚したモンスターの効果を不発にされてしまった鈴谷だが、不思議と彼女の顔に落胆の色はない。

 

「当然そうするよねぇ。でも、これでフェルグラントの効果は使い切ったよ」

 

「……やっぱり、これが狙いか」

 

 苦い顔を作る春瀬。彼には、鈴谷の次の行動が見えていた。

 

「自身に効果を使ったフェルグラントは、カードの効果で強化することもできない。そこをGreat TORNADOで攻撃し、相打ちにするつもりだな」

 

「うーん。それも考えたんだけどね……」

 

 しかし、鈴谷は春瀬の言葉に同意しない。

 

「そしたら、鈴谷のフィールドもガラ空きになっちゃうじゃん? だからこうするよ。『融合解除』を発動!」

 

「融合解除だと?」

 

 

《融合解除》

速攻魔法

フィールド上の融合モンスター1体を選択してエクストラデッキに戻す。

さらに、エクストラデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚できる。

 

 

「私はGreat TORNADOの融合を解除して、エアーマンとシャドー・ミストを特殊召喚。そして、もう一回エアーマンの効果を発動!」

 

「させるか! トラップ発動、『スキルドレイン』」

 

 

《スキルドレイン》

永続罠

1000ライフポイントを払って発動できる。

このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての効果モンスターの効果は無効化される。

 

春瀬 LP:4000→3000

 

 

「スキルドレインの効果で、フィールド上のモンスターの効果はすべて無効になる。当然、エアーマンの効果も無効だ」

 

「ぐぬぬ……」

 

 効果の発動を阻止され、鈴谷は悔しげな表情を浮かべる。

 

 融合を解除してしまった今、鈴谷のモンスターでフェルグラントを倒すことはできない。仕方なく、鈴谷は守りを固めることにする。

 

「私は、エアーマンとシャドー・ミストでオーバーレイ。『No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング』を守備表示でエクシーズ召喚して、ターンエンド」

 

 

《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/地属性/岩石族/攻 0/守3000

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

ターン終了時まで、このカードの守備力を0にし、攻撃力を3000にする。

このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。

また、エクシーズ素材の無いこのカードは、攻撃された場合ダメージステップ終了時に攻撃表示になる。

「No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

 見るからに堅そうなダイヤの甲羅を持つ蟹が鈴谷のフィールドに現れる。その守備力は3000。かの青眼の白龍の攻撃さえ防ぎきる数値である。もちろん、フェルグラントの剣では歯が立たない。

 

「俺のターン」

 

 ドローした春瀬は、浮かない顔の鈴谷に話しかける。

 

「考えたな、鈴谷」

 

「なにが?」

 

「前のターン、融合解除を発動したのはエクシーズ召喚に繋げるためだったんだな。レベル4の戦士族モンスター2体……おおかた、エクスカリバーを呼んで、フェルグラントを一方的に戦闘破壊するつもりだったんだろう」

 

「当たり。でも、提督がスキルドレインを発動したせいで全部水の泡だよ」

 

 首肯した鈴谷は、恨めしげな視線を春瀬に向ける。

 

 「(ヒロイック)(チャンピオン) エクスカリバー」は、オーバーレイ・ユニットを二つ使うことで攻撃力を4000まで上げることができるモンスターである。もしも鈴谷の作戦が成功していたら、春瀬は一気に1200ポイントのダメージを受けているところだった。

 

「それは悪いな。代わりといってはなんだが、俺がいいものを見せてやる」

 

「……なんか、嫌な予感がするんですど」

 

「なに言ってる。お前が出したかった攻撃力4000のモンスターだぞ。俺はエクストラデッキの『サイバー・エンド・ドラゴン』を除外し、『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』を特殊召喚!」

 

 

《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》

効果モンスター

星10/闇属性/機械族/攻4000/守2800

このカードは通常召喚できない。

自分のエクストラデッキから「サイバー・エンド・ドラゴン」1体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚できる。

「Sin」と名のついたモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

このカードが表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃宣言できない。

フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。

 

 

「攻撃力4000!? ちょ、提督! なんてモンスター呼んでんの!?」

 

「言っただろ? いいもの見せてやるって。前のターンでお前が出し損ねた攻撃力4000のモンスターだ」

 

「そんなの全然嬉しくないし!」

 

「そうか、残念だな。まあ、せっかく呼び出したことだし、存分に暴れてもらうとしよう」

 

 露骨に嫌そうな顔をする鈴谷をよそに、春瀬はバトルフェイズに移行する。

 

「Sinサイバー・エンドでダイヤモンド・クラブ・キングに攻撃!」

 

 三つ首の機械龍が強力な光線を放ち、鈴谷のモンスターを一瞬で消滅させる。守備力3000を誇るダイヤモンド・クラブ・キングも、攻撃力4000の前では川原の石よりも脆かった。

 

「シャドー・ミストが墓地に送られた時、その効果を発動。デッキから『E・HERO オーシャン』を手札に加える」

 

「まだ俺の攻撃は終わってないぞ。続けてフェルグラントで鈴谷にダイレクトアタック!」

 

「きゃっ!」

 

 

鈴谷 LP:4000→1200

 

 

「鈴谷、大丈夫か!?」

 

 フェルグラントの斬撃を受けて鈴谷が倒れる。しかし彼女の身体にケガはなく、すぐにその場に立ち上がった。

 

()ったた……。ソリッド・ビジョンっていっても、ダメージが大きいとそれなりに衝撃がくるんだね。天龍も気をつけて。ケガはしないけど、演習弾くらいは痛いから」

 

「ああ、分かった」

 

 スカートの埃を払いつつ言う鈴谷に天龍は頷く。春瀬はその後、カードを一枚伏せてエンド宣言をし、天龍にターンが移る。

 

「スキルドレインがある限り、こっちはなにもできやしねえ……。まずはあれを破壊しないとな。オレは魔法カード『サイクロン』を発動する!」

 

「対象に選ぶのは、もちろんスキルドレインだ。邪魔なカードにはさっさと消えてもらうぜ」

 

「そうはさせない。カウンター罠『魔宮の賄賂』」

 

 

《サイクロン》

速攻魔法

(1):フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

《魔宮の賄賂》

カウンター罠

相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

相手はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「これにより、サイクロンの発動は無効。代わりにお前は1枚ドローできる」

 

「ちっ、やっぱり簡単に破壊させてはくれねぇか。ならこれはどうだ。『RUM―ヌメロン・フォース』を発動!」

 

 

《RUM-ヌメロン・フォース》

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い「CNo.」と名のついたモンスター1体を、選択した自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

その後、この効果で特殊召喚したモンスター以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を全て無効にする。

 

 

「さっきはフェルグラントに邪魔されたが、今回はその心配もねえ。そして、ヌメロン・フォースでランクアップさせればスキルドレインの効果も無効になる。今度こそ、ホープレイVの効果をくらってもらうからな!」

 

「それを俺が許すとでも思ったか? トラップ発動、『Sin Claw Stream』。ランクアップ前のホープを破壊する!」

 

 

《Sin Claw Stream》

通常罠

自分フィールド上に「Sin」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。

相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。

 

 

「ランクアップ前にホープが破壊されたことにより、ヌメロン・フォースの効果は不発。悪いが、そうやすやすとこのカードを割られるわけにはいかないんでな」

 

「くっ……オレはカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

「私のターン。私はE・HEROオーシャンを召喚。さらに『ミラクル・フュージョン』を発動!」

 

「また融合召喚……今度はなにを呼ぶつもりだ?」

 

 数多くあるE・HEROの融合モンスターの姿を思い浮かべ、春瀬は警戒の表情をみせる。

 

「私は、フィールドのオーシャンと墓地のシャドー・ミストを除外して融合! 現れろ、絶対零度の戦士! 『E・HERO アブソリュートZero』!」

 

 

《E・HERO アブソルートZero》

融合・効果モンスター

星8/水属性/戦士族/攻2500/守2000

「HERO」と名のついたモンスター+水属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在する「E・HERO アブソルートZero」以外の水属性モンスターの数×500ポイントアップする。

このカードがフィールド上から離れた時、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

 

 

 水と闇、二つの力を束ねて現れたのはE・HEROの中でも屈指の戦闘力を誇る戦士。水の力を司るアブソリュートZeroだ。

 とはいえ、その表示形式は守備表示。見た目の力強さと裏腹に、そこから戦意は感じられない。しかし、春瀬は油断のない目を鈴谷のモンスターへ向ける。

 

「アブソリュートZeroか。厄介なモンスターを呼び出してくれたもんだ」

 

「やっぱり、提督はZeroの効果を知ってるみたいだね。どう? これで迂闊には攻撃できないでしょ」

 

 笑みを浮かべつつ言う鈴谷だが、内心はそうでもない。

 アブソリュートZeroが持つ破壊効果は極めて強力だが、裏を返せばZeroの強みはその一点のみである。破壊耐性を持っていたり、破壊効果を上回る展開力を有する相手には分が悪い。

 そして春瀬のデッキは、そのうちの後者の要素を一部含んでいる。Zeroを戦闘破壊して破壊効果を使用されても、そのあとで新たなSinモンスターを召喚すれば戦線を維持できる。その新手をさらに倒すのも不可能ではないが、それには少なくない負担が必要だった。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド。さ、提督のターンだよ」

 

 心の内を春瀬に悟られないよう、鈴谷は余裕ある態度をとるように努める。そうしながら、彼女の双眸は春瀬の一挙手一投足を注意深く見張る。

 

「俺のターン」

 

 春瀬がデッキの上に指を置く。鈴谷が注視する中で、彼がカードをドローした。

 

 




雷「へぇ、鈴谷さんのデッキはHEROなのね」

電「かっこよくて、なんだか強そうなのです」

響「そうだね。それに鈴谷さんなら、どこかの赤い服を着た少年のように『ガッチャ!』とか言っても違和感なさそうだ」

暁「なんの話よ、それ?」

響「……なんでもない。さて、司令官は厄介なアブロリュートZeroをどう攻略するのかな」

雷「強引に話題を逸らしたわね……。けど確かに、司令官がどうやって二人を相手にするのかは気になるわ」

暁「司令官は自信満々だったけど、本当に大丈夫かしら?」

電「来週は三人のデュエルの後編なのです。次回『春瀬の奥の手』。お楽しみに、なのです」
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