鎮守府決斗録   作:石田零

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14 春瀬の奥の手

春瀬 LP3000 手札4枚 

<フィールド魔法>

Sin World

<モンスター>

神竜騎士フェルグラント(ATK2800、ORU×0)

Sinサイバー・エンド・ドラゴン(ATK4000)

<魔法・罠>

スキルドレイン

 

天龍 LP4000 手札2枚

<モンスター>

なし

<魔法・罠>

伏せ×1枚

 

鈴谷 LP1200 手札3枚

<モンスター>

E・HERO アブソリュートZero(DEF2000)

<魔法・罠>

伏せ×1枚

 

 

 

「俺のターン」

 

 このデュエルで三度目となる春瀬のターン。

 春瀬の場には、フィールド魔法と二体のモンスター、そして発動中のスキルドレイン。対する天龍・鈴谷組の場には、合わせて一体のモンスターと二枚の伏せカード。カードの数だけを見ればほぼ互角の状況だが、実際は、スキルドレインで相手のモンスター効果を封じる春瀬が優位に立ってデュエルを進めていた。

 

「そろそろ俺も本格的に攻めるとしよう。手札からサイクロンを発動。破壊するのは……天龍の伏せカードだ!」

 

 暴風が天龍のフィールドを襲い、そこに伏せられていたカードを巻き上げる。荒々しい風に呑み込まれたカードは木の葉のように弄ばれ、千々に切り刻まれて破壊された。

 

「『ピンポイント・ガード』か……。なるほど、そいつでこのターンの攻撃を凌ごうとしていたんだな」

 

「くっ……」

 

 伏せカードを割られた天龍は呻きを漏らす。

 これで、天龍のフィールドは完全に無防備。壁モンスターのない状況で唯一の恃みとしていた伏せカードを失った現在、春瀬の攻撃を受ければ天龍の敗北は必至だった。

 

「まずは天龍、お前から退場してもらおうか。せめてもの情けだ、一撃で倒してやる。Sin サイバー・エンド・ドラゴンで、天龍にダイレクトアタック!」

 

 鋼鉄の巨龍が必殺の一撃を放つべく首をもたげる。その瞬間、二人の横から別の声が割り込む。

 

「待った! トラップ発動、『強制脱出装置』」

 

 

《強制脱出装置》

通常罠

(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 

 

「鈴谷! 助かったぜ」

 

 鈴谷の助太刀に、天龍は喜色を浮かべる。

 春瀬のモンスターを一体手札に戻せば、残るモンスターは一体。ダイレクトアタックを受けることに変わりはないが、Sin サイバー・エンド・ドラゴンを戻してもらえばこのターンでの敗北は避けられる。

 生存への期待を胸に、天龍は鈴谷が対象のモンスターを指名するのを待つ。しかし、鈴谷が口にしたのは、天龍にとって予想外の名前だった。

 

「私は、アブソリュートZeroを手札に戻す」

 

「なっ……!? おい、鈴谷! お前なに考えてるんだ!」

 

 今にも掴みかかりそうな剣幕で天龍は鈴谷に詰問する。

 

「自分のモンスターを戻すなんて、正気か!? そんなことしても――」

 

「大丈夫だよ」

 

 天龍の言葉を遮り、鈴谷は微笑む。

 

「ほら、あれを見て」

 

 鈴谷は、春瀬のフィールドを指し示す。彼女に促されてそこへ視線を向けた天龍は、目に入った光景に驚きの表情を浮かべた。

 

「提督のモンスターが……凍ってる!?」

 

「そ!」と鈴谷が頷く。

 

「これが、アブソリュートZeroの効果。このカードがフィールドから離れた時、相手モンスターをすべて破壊する。これはフィールドで発動する効果じゃないから、スキルドレインも効かないよ!」

 

 足元から凍り始めた春瀬のモンスターは、たちまち全身を氷に覆われ、巨大な氷像となる。二体の氷像は僅かの間、その美しい姿を人々に見せつけたが、すぐに自重に耐えかねて崩壊し、フィールドから消えた。

 

「おおっ! やるじゃねぇか、鈴谷!」

 

「ふっふーん。まあねー」

 

 誇らしげに胸を反らし、天龍に答える鈴谷。しかし、二人のぬか喜びは長くは続かなかった。

 

「なかなかやるな……。ならば、メインフェイズ2でエクストラデッキの『スターダスト・ドラゴン』を除外し、手札から『Sin スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚。そして『ゾンビキャリア』を通常召喚する。レベル8のSinスターダストに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング! シンクロ召喚、『神樹の守護獣―牙王』!」

 

 

《Sin スターダスト・ドラゴン》

効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

このカードは通常召喚できない。

自分のエクストラデッキから「スターダスト・ドラゴン」1体を

ゲームから除外した場合のみ特殊召喚できる。

「Sin」と名のついたモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

このカードが表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃宣言できない。

フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、表側表示で存在するフィールド魔法カードは効果では破壊されない。

 

《ゾンビキャリア》

チューナー・効果モンスター

星2/闇属性/アンデット族/攻 400/守 200

(1):このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚デッキの一番上に戻して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

《神樹の守護獣-牙王》

シンクロ・効果モンスター

星10/地属性/獣族/攻3100/守1900

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードは、自分のメインフェイズ2以外では相手のカードの効果の対象にならない。

 

 

「さらに俺は墓地のゾンビキャリアの効果を発動。手札を一枚デッキの上に戻すことで、墓地から特殊召喚する。俺はゾンビキャリアを守備表示で特殊召喚。カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

 

「また攻撃力3000超えのモンスターかよ……。提督のデッキ、火力がおかしいだろ」

 

 春瀬のモンスターを一掃したのも束の間、直後に登場した新手を見て天龍は意気消沈する。しかし、自分のターンになってドローした彼女は、失った士気を即座に取り戻した。

 

「どうやら、オレにもまだツキはあるみたいだな」

 

 不敵な笑みを浮かべる天龍。警戒する春瀬に向かって、彼女は人差し指を突き出す。

 

「提督! 大型モンスターの召喚は、あんたの専売特許じゃないってことを教えてやるぜ。オレは、手札から魔法カード『死者蘇生』を発動!」

 

 

《死者蘇生》

通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

「オレは、自分の墓地に存在するホープを蘇生対象に選択する。蘇れ、希望皇ホープ!」

 

 雄叫びとともに、再びホープが天龍のフィールドに現れる。しかし、その攻撃力は2500。大型モンスターと呼ぶには、少し物足りない。

 

「それがお前の大型モンスターか? ランク4の攻撃力2500では、残念ながらそうは言えないな」

 

「んなこたぁ分かってるよ。もちろん、これで終わらせはしねえ。オレは、手札の『RUM―リミテッド・バリアンズ・フォース』を捨てて、ホープをランクアップさせる!」

 

「RUMを発動せずに、ランクアップだと? そんなモンスターなんて――」

 

 そう言いかけて、春瀬は一つの心当たりを思い出す。

 

「そうか、あいつか……!」

 

「気づいたみてぇだな。オレは、ランク4のホープ一体でオーバーレイネットワークを再構築。ランクアップ・ハイパーエクシーズ・チェンジ! 現れろ、『No.99 希望皇龍ホープドラグーン』!」

 

 

《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》

エクシーズ・効果モンスター

ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000

レベル10モンスター×3

このカードは手札の「RUM」魔法カード1枚を捨て、自分フィールドの「希望皇ホープ」モンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。

(1):1ターンに1度、自分の墓地の「No.」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードを対象とするモンスターの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

 

「攻撃力4000! 天龍もやるじゃん!」

 

 召喚されたホープドラグーンを仰ぎ、天龍が歓声を上げる。

 

「やれ、ホープドラグーン! 牙王に攻撃だ!」

 

「く、牙王がこうもあっさりと……」

 

 

春瀬 LP3000→2100

 

 

「どうだ! 鈴谷、お前も一発決めてやれ」

 

「もっちろん! 私のターン!」

 

 ドローしたカードを見た鈴谷は、「お?」と声を上げた。

 

「ふふっ。目には目を、歯には歯を。私もサイクロンを発動! 破壊するのは当然、スキルドレイン!」

 

 先ほど天龍のカードを破壊したものと同じ風が、春瀬のフィールドに吹き荒れる。スキルドレインが破壊されたことで、鈴谷と天龍のデッキはようやく枷から解き放たれた。

 

「ここでサイクロンか……。嫌なカードを引いてくれる」

 

「運も実力のうち、って言うじゃん? ……さてさて。邪魔なスキルドレインもなくなったし、ここからが鈴谷のデッキの本領発揮だよ。私はE・HEROブレイズマンを通常召喚。ブレイズマンの効果で融合を手札に加える。さらに『E―エマージェンシーコール』を発動、二枚目のオーシャンを手札に!」

 

 

《E・HERO ブレイズマン》

効果モンスター

星4/炎属性/戦士族/攻1200/守1800

「E・HERO ブレイズマン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「融合」1枚を手札に加える。

(2):自分メインフェイズに発動できる。

デッキから「E・HERO ブレイズマン」以外の「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送る。

このカードはターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない。

 

《E-エマージェンシーコール》

通常魔法

(1):デッキから「E・HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 

「いくよ! 私は融合を発動して、ブレイズマンとオーシャンを融合。もう一度おいで、アブソリュートZero!!」

 

 鈴谷のフィールドに再び現れる絶対零度の戦士。氷を操るHEROは眼前の敵を睨むと、全身から闘志ならぬ冷気をほとばしらせた。

 

「アブソリュートZeroで、ゾンビキャリアに攻撃。瞬間氷結(Freezing at moment)!」

 

 強烈な凍気を浴びせられたゾンビキャリアが一瞬にして凍結し、細氷となって砕け散る。守備表示であったためにダメージを受けなかったのは、春瀬にとってせめてもの救いだった。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド。さっきまでさんざん苦戦させられた分、これからたっぷりお返ししてあげるよ!」

 

 一巡前のターンと打って変わって、春瀬は窮地に立たされる。

 他を圧する力強い姿を君臨させていた彼のモンスターは今や影も形もなく、代わりに天龍と鈴谷の切り札が肩を並べている。デュエルの流れをコントロールしていたスキルドレインも破壊され、彼の場には一枚の伏せカードがあるのみだった。

 どんなに有利な盤面を築いていても、常に次のターンには逆転される可能性が存在する。それがデュエルモンスターズの恐ろしいところであり、また、醍醐味でもある。春瀬はそれを今、身をもって感じていた。

 

「俺のターン」

 

 春瀬はデッキトップに手をかける。そこにあるのは、前のターンに彼がゾンビキャリアの効果でデッキの一番上に戻したカード。だから、彼はそれがどんなカードか知っている。

 知っているから、彼は口角を吊り上げて笑みをこぼした。

 

「俺がドローしたカード。それは、『RUM―七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)』だ!」

 

 顔面に笑みを張りつけたまま、春瀬は引いたカードを天龍と鈴谷に見せる。その行動に対して、二人は戸惑いの表情を浮かべる。

 

「あ……うん」

 

「自分のカードを相手に見せるなんて、なに考えてるんだよ。自棄になったか?」

 

「すぐに分かるさ、すぐにな……。メインフェイズ。俺は手札から、たった今ドローしたRUM―七皇の剣を発動する!」

 

「なに!?」

 

 春瀬の宣言に、天龍が驚きの声を上げる。

 

「自分フィールドにエクシーズモンスターがいないのに、ランクアップだと? そんなのできるわけねぇだろ」

 

「確かに。普通のRUMはそうだ。だが、七皇の剣は凡庸のRUMにあらず。このカードは特定のエクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚し、そのモンスターを素材としてランクアップをおこなう!」

 

「なんだって!」

 

「七皇の剣の効果で、俺はエクストラデッキから『No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)』を特殊召喚。さらにランク8のタキオン・ドラゴン一体でオーバーレイネットワークを再構築。カオスエクシーズ・チェンジ! 逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ。永遠を超える竜の星! 顕現せよ、『CNo.107 |超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》』!」

 

 

《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)

通常魔法

自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる。

「CNo.」以外の「No.101」~「No.107」のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、

自分のエクストラデッキ・墓地から特殊召喚し、そのモンスターと同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」と名のついたモンスターをその特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

「RUM-七皇の剣」の効果はデュエル中に1度しか適用できない。

 

《No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

レベル8モンスター×2

自分のバトルフェイズ開始時に1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの効果は無効化され、その攻撃力・守備力は元々の数値になる。

この効果を適用したターンのバトルフェイズ中に相手のカードの効果が発動する度に、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000ポイントアップし、このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

《CNo.107 |超銀河眼の時空龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》》

エクシーズ・効果モンスター

ランク9/光属性/ドラゴン族/攻4500/守3000

レベル9モンスター×3

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果はターン終了時まで無効になり、このターン、相手はフィールド上のカードの効果を発動できない。

また、このカードが「No.107 銀河眼の時空竜」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●自分フィールド上のモンスター2体をリリースして発動できる。

このターンこのカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。

 

 

 フィールドに降臨する金色(こんじき)の龍。その攻撃力は、かの『青眼の究極龍(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)』と並ぶ4500。その数値を見た天龍と鈴谷は、驚愕に目を見開く。

 

「ネオタキオンの効果を発動。このカードのカオスオーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことで、ターン終了時までフィールド上のカード効果をすべて無効化し、相手の効果の発動を封じる」

 

「鈴谷の伏せカードが!」

 

 どんな罠を仕掛けても、発動できなければ存在しないも同然。鈴谷を守る唯一の砦であったはずのセットカードは、フィールドにありながら無用の長物と化してしまった。

 

「この状況で攻撃されたら……」

 

「いや。まだ攻撃はしない。俺はランク9のネオタキオン一体で、さらにオーバーレイネットワークを再構築。現れろ、新たなる光の化身! 『ギャラクシーアイズ FA(フルアーマー)・フォトン・ドラゴン』!」

 

 

《ギャラクシーアイズ FA(フルアーマー)・フォトン・ドラゴン》

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/光属性/ドラゴン族/攻4000/守3500

レベル8モンスター×3

このカードは「ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン」以外の自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事ができる。

(1):1ターンに1度、このカードの装備カードを2枚まで対象として発動できる。

そのカードをこのカードの下に重ねてX素材とする。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

 

「攻撃力4000……? せっかく召喚したネオタキオンより、ランクも攻撃力も低いモンスターを、どうしてわざわざ……」

 

 腑に落ちない表情で眉を寄せる天龍。彼女のその疑問は、次の瞬間に解消される。

 

「FA・フォトン・ドラゴンの効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使い、フィールド上の表側カード一枚を破壊する。俺はホープドラグーンを選択する!」

 

「くっ、そういうことか……!」

 

 自身の時を止められたホープドラグーンに、身を守る術はない。逃れる間もなく破壊され、天龍のフィールドはカラになる。

 これで、天龍と鈴谷、二人のどちらもが攻撃を受ければ敗北する状況に追い込まれた。

 

「いくぞ。バトルフェイズだ」

 

 春瀬の宣言に、二人が身構える。彼が選んだのは――

 

「俺は、FA・フォトン・ドラゴンでアブソリュートZeroに攻撃。壊滅のフォトン・ストリーム!」

 

 強烈な破壊力を秘めた光線がFA・フォトン・ドラゴンの口から発射される。アブソリュートZeroも全力をもって応戦するが、力の差はいかんともしがたく、無残にも敗れ去る。

 そして、攻撃力の超過分の数値は、戦闘ダメージとなって鈴谷を襲う。

 

「きゃあああっ!」

 

 

鈴谷 LP1200→0

 

 

 ライフがゼロになったことで、鈴谷は戦線から落伍する。しかし、彼女はただ敗北したわけではなかった。

 

「変則ルールにより、味方プレイヤーが残っている場合は、敗北したプレイヤーの効果処理もおこなう。アブソリュートZeroの効果により、俺のモンスターはすべて破壊される」

 

 勝利の雄叫びを上げようとした寸前、氷像となって崩壊するFA・フォトン・ドラゴン。これで春瀬のフィールドは再びガラ空きとなった。

 

「鈴谷……お前が作ってくれたチャンスは無駄にしないぜ。次のターンで、必ず――」

 

「なにを勘違いしているんだ?」

 

「え?」

 

「まだ俺のバトルフェイズは終了していないぜ」

 

 春瀬の言葉に、天龍は「なに言ってるんだよ」と反論する。

 

「提督のフィールドには、もうモンスターはいないじゃねえかよ。追加の攻撃なんて、できるわけないだろ」

 

「それはどうかな。リバースカード、オープン! 『リビングデッドの呼び声』!」

 

 

《リビングデッドの呼び声》

永続罠

(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

 

「このカードの効果により、俺は墓地からモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。さあ蘇れ! CNo.107 超銀河眼の時空龍!」

 

 地を震わす咆哮とともに、三つ首の龍が再び姿を現わす。今はまだバトルフェイズ中。ネオタキオンは攻撃が可能だ。

 

「とどめだ。ネオタキオンで天龍にダイレクトアタック! アルティメット・タキオン・スパイラル!」

 

「ぐわああっ!」

 

 

天龍 LP4000→0

 

 

 無傷だった天龍のライフポイントが、一撃で根こそぎ奪われる。二人のライフが尽きたことにより、春瀬の勝利が確定した。

 

「クソッ、負けた!」

 

 悔しげな表情で天龍は地面に拳を打ちつける。

 

「終わってみれば、提督のライフは残り2100……半分も削れてねぇ」

 

「しかも、そのうちの1000ポイントはスキルドレインの発動コストだからね。二人がかりでたった900ダメージしか与えられなかったとか、マジ恥ずかしいし……」

 

「そう落ち込むなって。二人とも、よくやった。特に鈴谷は、初めてであれだけ戦えるなら十分以上だ」

 

「今は提督のその優しさがつらいよ……」

 

 地面に座り込んだ鈴谷が沈んだ声で答える。

 

「そうか……。なら、少し厳しくいくか」

 

 春瀬は二人に自分の方を向くように言うと、「お前たちは、自分たちの敗因はなんだと思う?」と尋ねた。

 

「敗因……?」

 

 春瀬の問いに、天龍と鈴谷は顔を見合わせる。

 

「……それはやっぱり、鈴谷たちの実力が提督より下だったから?」

 

「提督のスキルドレインで俺たちの動きが邪魔されたことも大きかったと思うぜ」

 

 二人の答えを聞いた春瀬は一つ頷き、

 

「その考え方が、お前たちの敗因だ」

 

「えっ?」

 

「どういうことだよ?」

 

 問いかける鈴谷と天龍に対して、春瀬は逆に問い返す。

 

「お前たち、デュエル中に俺の手札枚数を確認したことはあるか?」

 

「いや、ないけど……」

 

「そこが、敗因の一つだ」

 

 春瀬は地面に十個の長方形を描き、二人に示す。

 

「このデュエルを始める前、俺は自分の初期手札を十枚にすることをお前たちに提案し、お前たちはそれを受け入れた。それが間違いだった。よく見てろ」

 

 彼は、地面に描いたカードのうち五枚に斜線を入れていく。

 

「最初のターン。俺は五枚のカードを使ってターンエンドした。通常の手札枚数なら、もう手元にカードは残ってないはずだ。だが、俺の手札にはなおも五枚のカードがあった。なぜだ?」

 

「提督の手札が最初に十枚あったから」

 

「そうだ」と春瀬は頷く。

 

「おかげで、アブソリュートZeroの効果で一回モンスターが全滅した時もすぐに牙王を呼ぶことができた。もしも初期手札が五枚だったら、あの場で牙王をシンクロ召喚することはできなかった。そうなると、たとえライフが8000あったとしても態勢を立て直せずに負けていただろうな」

 

「……ということは、鈴谷たちはデュエルを始める前から負けてたってこと……?」

 

「そこまでは言わんさ。あくまで敗因の一つにあった、というだけだ。より戦術的な面には、お前たちが考えた敗因もあるだろう」

 

「でも、提督は引きも良かったじゃん。最高のタイミングでいいカードをドローしたし。セブンスワン、だっけ? やっぱ実力の差は引きにも出てくるんだね」

 

「鈴谷。あれは運じゃないぞ」

 

「えっ?」

 

「あれを発動する一つ前の俺のターンを思い出してみろ。俺はゾンビキャリアを復活させるためになにをした?」

 

「手札を一枚デッキの一番上に……ああっ!」

 

「そういうこと。デュエルに勝つには運も大切だが、あらゆる手段を使って偶然を必然に近づけることこそが重要だ。鈴谷のHEROデッキも、融合を引き当てるまでのんびり待ったりはしないだろ?」

 

「……はぁ、提督にはまだまだ勝てそうにないよ」

 

「どんなことだって、最初から完璧にできるやつなんていないさ。と言うより、これが初めてデュエルだっていう相手に負けたら俺の心が折れる」

 

「あはは、確かにそれもそうだね」

 

 元気を取り戻したらしい鈴谷は、立ち上がって背を伸ばした。

 

「提督へのリベンジは私の課題にしとくよ。いつか、一対一のデュエルで勝ってみせるから!」

 

「楽しみにしてる。お前はどうだ、天龍。もう立ち直ったか?」

 

「そんな心配されなくても、最初から落ち込んでなんかいねぇよ。オレの頭にあるのは、あんたに勝つことだけだ」

 

「なら良かった。鈴谷と合わせて期待してるぞ」

 

「任せときな。提督のレベルなんざ、すぐに追い抜いてやらぁ。……おい、鈴谷。今度はオレとデュエルだ。提督には負けたが、お前には負けねえぜ」

 

「いいね。私も負けたままじゃ悔しいと思ってたところだよ」

 

「そいつはご愁傷様だな。これから悔しさがより深まるぜ」

 

「それはどうかな。油断してると、足元をすくわれるよー?」

 

 軽口をかけ合う二人から静かに離れ、春瀬は電たちの隣へと移動する。二人がさっそくデュエルを始めるのを、彼は他のメンバーと一緒に眺めるのだった。

 

 




雷「七皇の剣(セブンス・ワン)……あれが、奥の手の正体だったのね」

暁「たった一枚でエクシーズ召喚できるなんて、すごいわね。ちょっと強すぎるんじゃない?」

響「そうでもないよ。発動にはいろいろと制約が課されているからね。たとえば、通常のドローで引いた時でないと発動できないから、それ以外だと役立たずになってしまう」

雷「司令官のデッキのゾンビキャリアは、その弱点を補う手でもあるのね」

電「定番の方法の一つで、作者さんも持っているデッキの一つでよく使っているそうなのです」

暁「それにしても盛り上がったわね。三人とも、白熱したデュエルだったわ」

雷「でも、あんなに派手にやっちゃって大丈夫かしら? 私たち、かなり目立ってたと思うんだけど」

電「……残念ですが、来週は雷ちゃんの予想通りになるらしいのです」

雷「ええっ、そんなぁ!」

響「デュエルの噂を聞きつけた誰かが、私たちの司令室にやってくるらしい。次回『取材はデュエルで』。お楽しみに」
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