鎮守府決斗録   作:石田零

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27 黒魔術と炎

 時は少し遡り、響と陽炎がデュエルをしていた頃――

 鎮守府庁舎内にある春瀬の執務室では、不知火が電の手を借りながらデッキ構築をおこなっていた。

 

「春瀬少将のメモによると、あと必要なのは、このカード……。電、これはどの箱に?」

 

「そのカードなら、右端の箱に入っているのです。確かこのあたりに……あっ、あったのです」

 

「ありがとうございます。この一枚を加えれば……よし、完成です」

 

 電から受け取ったカードを手にした不知火が、満足げな表情で頷く。彼女の前には、40枚のカードを束ねた小さな山と、それより枚数の少ないもう一つの束が置かれていた。

 

「これで、私のデッキは完成しました」

 

「お疲れ様なのです」

 

 デッキを完成させた不知火に、電がねぎらいの言葉をかける。

 

「これで、不知火ちゃんもデュエリストの仲間入りですね」

 

「ええ。このデッキも、不知火の希望通りの戦い方ができそうです。春瀬少将には、いいカードを教えてもらいました」

 

「でも、本当に良かったのですか?」

 

「何がです?」

 

「デッキのことなのです。実戦で勝つために安定性を求める不知火ちゃんの考えは理解できるのです。それを否定する気は電にはありません。だけど、それでもやっぱり、自分の好きなカードで戦ったほうが楽しいと思うのです」

 

「そう言われても……。講堂で春瀬少将に話したように、不知火には特に好みのカードはありませんから」

 

「なら、ここで探してみませんか?」

 

 笑顔を向けて、電は誘いの言葉をかける。

 

「見ての通り、この部屋には司令官さんが集めたカードがたくさんあるのです。これだけあれば、きっと不知火ちゃんが気に入るカードも見つかると思うのです」

 

 電の誘いに、しかし不知火は芳しくない反応を示す。

 

「確かに、その考えには一理ありますが……しかし、カードが多いと逆に探しにくいのでは?」

 

「別に、全部を見る必要はないのです。適当な範囲を決めて、そこを探すだけでもいいのですよ」

 

「その範囲は、どうやって決めるのですか?」

 

「難しく考えなくていいのです。そうですね……不知火ちゃんは名前に『火』の字が入っているので、炎属性のカードを見てみるのはどうでしょう?」

 

「炎属性、ですか」

 

「電も、不知火ちゃんの気に入りそうなカードがないか一緒に探すのです。だから、ちょっと試してみませんか?」

 

 不知火はすぐには答えを返さず、思案顔をする。不安げな面持ちで電が返事を待つ中、ややあって不知火は頷いた。

 

「……分かりました。電の提案を受けましょう」

 

「ありがとうなのです、不知火ちゃん。それじゃあ早速、カードを探すのです!」

 

 電は、炎属性モンスターが集められた箱を不知火の前に置くと、その蓋を開けた。

 

「この箱に入ってるカードは全部、炎属性のモンスターなのです。きっと、不知火ちゃんにぴったりのカードも見つかるのです」

 

 二人は箱に手を入れてカードの束を取り出すと、それに目を通し始める。

 炎属性はデュエルモンスターズの中でも少数派に分類される属性だが、それでも二人で見るには充分すぎる種類のカードがある。当然ながら箱の中には同じカードが複数枚あり、レア度の低いカードほどその枚数が多くなっている。普段から電たちが中身を適宜整理しているので比較的探しやすくなってはいるが、やはり手間のかかる作業に違いはなかった。

 

「不知火ちゃん、こんなカードはどうですか?」

 

「これですか……。すみませんが、このカードは不知火の好みには合いません」

 

「なら、これはどうです?」

 

 電は不知火に似合いそうなカードを見つけてはそれを提示し、そのたびに不知火は首を横に振る。そのようなやり取りを何回か続けていると、不意に不知火が声を漏らした。

 

「どうかしましたか?」

 

 顔を上げた電は、不知火が手に持った一枚のカードに視線を落としているのを目にした。不知火は電の顔を見ると、彼女にそのカードを差し出した。

 

「電。このカードなのですが――」

 

◆◇◆◇

 

 そして現在、鎮守府講堂。不知火は完成したデッキを携えて黒潮と対峙していた。

 

「先攻は不知火か。さあ、全力でかかってきい!」

 

「無論です」

 

 答えた不知火は、手札の一枚をディスクのモンスターゾーンに置く。

 

「私は、『ヴォルカニック・ロケット』を召喚。その効果でデッキから『ブレイズ・キャノン・マガジン』を手札に加えます。カードを一枚伏せてターン終了です」

 

 

《ヴォルカニック・ロケット》

効果モンスター

星4/炎属性/炎族/攻1900/守1400

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキ・墓地から「ブレイズ・キャノン」と名のついたカード1枚を選んで手札に加える事ができる。

 

 

「……ん?」

 

 不知火が召喚したモンスターを見て、春瀬は僅かに眉を寄せる。

 

「どしたの、提督? なにか気になるとこでもあった?」

 

「いや、大したことじゃない。不知火の使うカードが俺の勧めたものとは違っていたから、少し驚いてな」

 

「へぇー。どうして変えたんだろう」

 

「ああ、それなら……」

 

 春瀬と鈴谷のやり取りを耳にした電が、二人の会話に入り込む。

 

「執務室で、不知火ちゃんの好みに合うカードが見つかったのです。司令官さんに教えてもらったデッキも組んでいたのですけど、気に入るカードがあったので、不知火ちゃんはそっちを自分のデッキにしたのです」

 

「なるほど。そういうことか」

 

「残念だったね、提督。せっかく勧めたのに使ってもらえなくて」

 

「ま、いいさ。どうせデュエルするなら、やっぱり自分の好きなカードで戦った方が楽しいに決まってる。不知火もそういうカードを見つけられたのなら、俺はそれで満足だ」

 

 春瀬たちの声は、デュエルをする二人のもとにも届いている。それを聞いた黒潮は、ニヤニヤと笑いながら不知火を眺めた。

 

「あれれ、おかしいな~? 確かさっきまで、自分の好みでデッキを作るのには否定的やったはずやけど~?」

 

「……不知火に、何か落ち度でも?」

 

 微かに頬を赤らめながら、不知火は憮然とした表情で応じる。

 

「いやいや、別にそんなのないで~? ただ、好きなカード見つかって良かったなぁ、と思うてな~」

 

「っ……、いいから、早くターンを進めてください」

 

「やれやれ、不知火はせっかちさんやなあ」

 

 口元に笑みを浮かべたまま、黒潮はカードをドローする。

 

「ほな、いくで! うちは『魔導召喚士 テンペル』を召喚。さらに魔法カード『ヒュグロの魔導書』を発動して、ターン終了時までテンペルの攻撃力を1000アップ!」

 

 

《魔導召喚士 テンペル》

効果モンスター

星3/地属性/魔法使い族/攻1000/守1000

自分が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動した自分のターンのメインフェイズ時、このカードをリリースして発動できる。

デッキから光属性または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体を特殊召喚する。

この効果を発動するターン、自分は他のレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。

 

《ヒュグロの魔導書》

通常魔法

自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。

このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

「ヒュグロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

「これでテンペルの攻撃力は2000。不知火のモンスターの攻撃力を上回ったで。バトル、テンペルでヴォルカニック・ロケットに攻撃や!」

 

 

不知火 LP4000→3900

 

 

「さらにヒュグロの魔導書の効果発動! このカードの効果を受けたモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキから『魔導書』魔法カードを一枚手札に加えることができる。うちは『グリモの魔導書』を手札に加える」

 

「攻撃力の上昇にサーチ効果とは……便利なカードですね」

 

「へへん、ええやろ? けどまだ終わらんで。メインフェイズ2に、うちはテンペルの効果を発動。このカードは、魔導書を発動したターンにリリースすることで、デッキから光または闇属性でレベル5以上魔法使い族を特殊召喚できる。うちはテンペルをリリースして――出番やで、『ブラック・マジシャン』!!」

 

 

《ブラック・マジシャン》

通常モンスター

星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100

魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。

 

 

 黒潮の場に、紫色の衣装を身にまとった魔術師が現れる。ブラック・マジシャン――デュエルモンスターズ黎明期から活躍し、現在でも高い知名度を誇る、このカードゲームを代表するモンスターの一体だ。

 

「このカードは、うちらの執務室でデュエルモンスターズの説明した時にも見せたよな。覚えとる?」

 

「ええ。ブラック・マジシャン……黒潮のエースモンスターですね。まさか、これほど早く召喚するとは」

 

「エースの速攻召喚はデュエルの基本や。このくらいで驚いてたらあかんで? うちはカードを一枚伏せて、ターン終了」

 

「待ってください。黒潮のメインフェイズ終了時に永続罠『ブレイズ・キャノン・マガジン』を発動します。その効果により、手札の『ヴォルカニック・バレット』を捨ててデッキからカードを一枚ドローします」

 

 

《ブレイズ・キャノン・マガジン》

永続罠

「ブレイズ・キャノン・マガジン」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのカード名は、魔法&罠ゾーンに存在する限り「ブレイズ・キャノン-トライデント」として扱う。

(2):自分および相手メインフェイズにこの効果を発動できる。

手札の「ヴォルカニック」カード1枚を墓地へ送り、自分はデッキから1枚ドローする。

(3):自分および相手メインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。

デッキから「ヴォルカニック」カード1枚を墓地へ送る。

 

《ヴォルカニック・バレット》

効果モンスター

星1/炎属性/炎族/攻 100/守 0

このカードが墓地に存在する場合、自分のメインフェイズ時に1度、500ライフポイントを払う事で、デッキから「ヴォルカニック・バレット」1体を手札に加える。

 

 

「ほな、うちは改めてターンエンドや」

 

「私のターン、ドロー。私は墓地のヴォルカニック・バレットの効果を発動。ライフを500ポイント払い、デッキから同名カードを一枚手札に加えます。そしてブレイズ・キャノン・マガジンの効果を使い、いま手札に加えたバレットを捨てて一枚ドローします」

 

 

不知火 LP3900→3400

 

 

 カードをドローした不知火は、「さて」と黒潮を見る。

 

「黒潮。悪いですが、このデュエルはここで終わりです」

 

「ほう。いきなり勝利宣言か?」

 

「はい」

 

 黒潮の問いに、不知火は頷く。

 

「不知火には、このターンで決着をつける方法があります。まずはフィールドのブレイズ・キャノン・マガジンを墓地へ送り、手札から『ヴォルカニック・デビル』を特殊召喚します」

 

 

《ヴォルカニック・デビル》

効果モンスター

星8/炎属性/炎族/攻3000/守1800

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に表側表示で存在する「ブレイズ・キャノン-トライデント」1枚を墓地へ送った場合に特殊召喚できる。

相手のバトルフェイズ中、相手フィールド上にモンスターが攻撃表示で存在する場合、相手はこのカードに攻撃をしなければならない。

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、相手フィールド上のモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

「ヴォルカニック・デビルは、自分フィールド上の『ブレイズ・キャノン-トライデント』を墓地へ送ることで特殊召喚できるモンスター。ブレイズ・キャノン・マガジンは名前をブレイズ・キャノン-トライデントとして扱う効果を持っているので、その条件を満たすことができます。さらに私は、墓地のブレイズ・キャノン・マガジンを除外してその効果を発動します」

 

「なっ、墓地からトラップやと!? ていうかそのカード、効果詰め込みすぎとちゃうん?」

 

「それは不知火の管轄外です。文句は、このカードを作ったデザイナーに言ってください。私は、ブレイズ・キャノン・マガジンの効果でデッキの『ヴォルカニック・バックショット』を墓地へ送ります。そして、バックショットが墓地へ送られたことで相手に500ポイントのダメージを与えます。さらにその効果にチェーンして、バックショットのもう一つの効果を発動します」

 

 

《ヴォルカニック・バックショット》

効果モンスター

星2/炎属性/炎族/攻 500/守 0

このカードが墓地へ送られた時、相手ライフに500ポイントダメージを与える。

このカードが「ブレイズ・キャノン」と名のついたカードの効果によって墓地へ送られた場合、手札・デッキから「ヴォルカニック・バックショット」2体を墓地へ送る事で、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。

 

 

「ヴォルカニック・バックショットは、『ブレイズ・キャノン』と名のついたカードの効果で墓地へ送られた場合、同名カード二枚を墓地へ送ることで相手モンスターをすべて破壊することができます。私はデッキから同名カード二枚を墓地へ送り、この効果を発動します」

 

「この効果が通ればうちのフィールドは焼け野原……そこをヴォルカニック・デビルで攻撃するつもりやな」

 

「その通りです。バックショット三枚分の効果ダメージとヴォルカニック・デビルの直接攻撃で、合計ダメージ量は4500。一撃で黒潮のライフをゼロにできます」

 

「確かにそれが決まればワンショットキルやな。けど、そう簡単にやらせるわけないやろ! リバースカード発動、永続罠『永遠の魂』!」

 

 

《永遠の魂》

永続罠

「永遠の魂」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):以下から1つを選択してこの効果を発動できる。

●自分の手札・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。

●デッキから「黒・魔・導」または「千本ナイフ」1枚を手札に加える。

(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。

(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。

自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

【Chain1:バックショット(500ダメージ) Chain2:バックショット(相手モンスター破壊) Chain3:永遠の魂】

 

 

「このカードがフィールドにある限り、うちのブラック・マジシャンは相手のカード効果を受けない。当然、不知火のモンスター効果も効かへんで!」

 

「ですが、効果ダメージは受けてもらいます。墓地へ送られたバックショットは三枚。まずは一体目の分です」

 

 

黒潮 LP4000→3500

 

 

「さらに、デッキから墓地へ送られた二体のバックショットの効果も発動します。500ポイントのダメージが二体で、合わせて1000ポイントのダメージです」

 

「おわっ、あちちっ!」

 

 

黒潮 LP3500→2500

 

 

 大量の火の粉に降りかかられ、黒潮はその場で右往左往する。しかし、それを見る不知火はくすりともせずにターンを進める。

 

「私はさらに、手札から『ヴォルカニック・エッジ』を通常召喚」

 

 

《ヴォルカニック・エッジ》

効果モンスター

星4/炎属性/炎族/攻1800/守1200

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

相手ライフに500ポイントダメージを与える。

この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

 

 

「バトルフェイズ。ヴォルカニック・デビルでブラック・マジシャンに攻撃です」

 

「くっ、うちのブラマジが……」

 

 

黒潮 LP2500→2000

 

 

「まだ続きます。ヴォルカニック・エッジで黒潮に直接攻撃!」

 

「それは通さんで。うちは永遠の魂の効果を発動! 一ターンに一度、自分の手札・墓地にあるブラック・マジシャン1体を特殊召喚できる。うちはたった今、戦闘破壊されたブラマジを攻撃表示で特殊召喚!」

 

「ヴォルカニック・エッジの攻撃力では、ブラック・マジシャンは倒せない……。私は攻撃を中断、メインフェイズ2でカードを二枚伏せ、ターン終了です」

 

「うちのターンやな。ドロー! ライフは半分になってしもたけど、デュエルはまだまだこれからや。まずは、発動中の永遠の魂の効果を使わせてもらうで」

 

「黒潮の墓地に二枚目のブラック・マジシャンはいない……。ということは、手札の中に?」

 

「ちっちっちっ。それが違うんやなぁ」

 

 舌を鳴らしながら片手の人差し指を左右に振り、黒潮は不知火の推測を否定する。

 

「永遠の魂の効果は、ブラック・マジシャンを呼び寄せるだけじゃないんやで。このカードは、ブラック・マジシャンを特殊召喚する代わりに、一ターンに一度、ブラマジ専用の魔法カードを手札に加えることができるんや。うちはその効果を使って、デッキから『黒・魔・導(ブラック・マジック)』を手札に加える」

 

「そんな効果まで……。なるほど、そのカードはブラック・マジシャンの専用サポートカードというわけですね」

 

「それにしても」と不知火は続ける。

 

「黒潮のカードも、効果の詰め込み具合は大概のものじゃないですか? 人のことは言えませんよ」

 

「あはは、それを言われると厳しいなぁ。ま、あれや。隣の芝生はなんとやら、ってやつや」

 

 不知火の指摘を、黒潮は苦笑いで誤魔化す。

 

「けど、今はそれより自分の身を心配したほうがええで。うちは手札から魔法カード『黒・魔・導(ブラック・マジック)』を発動!」

 

 

黒・魔・導(ブラック・マジック)

通常魔法

自分フィールド上に「ブラック・マジシャン」が存在する場合に発動できる。

相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

「このカードは、自分フィールドにブラック・マジシャンがいる時にだけ使える専用カードや。この効果で、不知火の魔法・罠カードは全部破壊する!」

 

「なっ、全部!?」

 

 黒潮の言葉に、不知火は驚きの表情を浮かべる。

 

「ならせめて、このカードだけは無駄にしません。トラップ発動、『リビングデッドの呼び声』。墓地のヴォルカニック・バックショットを攻撃表示で特殊召喚します」

 

 

《リビングデッドの呼び声》

永続罠

(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

 

「ブラック・マジックの効果でリビングデッドの呼び声は破壊され、一緒にバックショットも破壊されます。ですが、バックショットが墓地へ送られたことで相手に500ポイントのダメージを与えます」

 

 

黒潮 LP2000→1500

 

 

「さすが不知火。やっぱり、ただでは転ばんね。うちはグリモの魔導書を発動。デッキからヒュグロの魔導書を手札に加える。そして、ブラマジを対象にヒュグロを発動、攻撃力を1000アップや! さらに手札から『魔導戦士 ブレイカー』を通常召喚するで」

 

 

《グリモの魔導書》

通常魔法

デッキから「グリモの魔導書」以外の「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。

「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

《魔導戦士 ブレイカー》

効果モンスター

星4/闇属性/魔法使い族/攻1600/守1000

(1):このカードが召喚に成功した場合に発動する。

このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。

(2):このカードの攻撃力は、このカードの魔力カウンターの数×300アップする。

(3):このカードの魔力カウンターを1つ取り除き、フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

その魔法・罠カードを破壊する。

 

 

「ブレイカーの元々の攻撃力は1600やけど、このカードに乗っている魔力カウンター一つにつき攻撃力が300アップする。ブレイカーは召喚時に自分に魔力カウンターを一つ乗せる効果があるから、今の攻撃力は1900や。バトル! まずはブラック・マジシャンでヴォルカニック・デビルを攻撃!」

 

「くっ……」

 

「強化したモンスターが相手モンスターを戦闘破壊したことで、ヒュグロのもう一つの効果が発動。デッキから二枚目のグリモを手札に加える。さらにブレイカーでヴォルカニック・エッジに攻撃、撃破!」

 

 

不知火 LP3400→2900→2800

 

「うちはカードを一枚伏せて、ターンエンド。さ、不知火のターンやで」

 

「私のターン。ドロー」

 

 引いたカードを確認した不知火は、そのカードと手札の内容を見比べる。

 

「この戦況を覆せるカードは、今の手札にはない……。ということは、ドローしたこのカードに懸けるしかありませんね。魔法カード『貪欲な壺』を発動します」

 

 

《貪欲な壺》

通常魔法

(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。

そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。

その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

「私は墓地の『ヴォルカニック・バックショット』三枚と『ヴォルカニック・バレット』、『ヴォルカニック・ロケット』の合計五枚をデッキに戻し、二枚ドローします」

 

「ここで手札増強カードとは、いい引きしとるなぁ。けど、そう都合よく逆転のカードまで引き寄せられるかいな?」

 

「引けるか、ではありません。引いてみせます。……ドロー!」

 

 不知火はデッキから引いた二枚のカードを見ると、その口元をほんの僅かに綻ばせた。

 

「……きました」

 

「なんやて!?」

 

「黒潮。この勝負、今度こそ私がもらいます。まずは速攻魔法『サイクロン』を発動。破壊するのは、黒潮の伏せカードです」

 

「永遠の魂を破壊せんでええんか?」

 

「はい。そのカードは、今の不知火にとって脅威ではありませんから」

 

 答えた不知火は、続けて一枚のカードをディスクのモンスターゾーンに置く。

 

「私は、『召喚僧サモンプリースト』を召喚。サモンプリーストの効果を発動し、手札の『ブレイズ・キャノン』を墓地へ送り、デッキから『ヴォルカニック・ロケット』を特殊召喚します。さらにヴォルカニック・ロケットの特殊召喚に成功したことで、デッキから『ブレイズ・キャノン・マガジン』を手札に加えます」

 

「レベル4のモンスターが二体……くるか?」

 

「ご明察。私は、レベル4のサモンプリーストとヴォルカニック・ロケットで、オーバーレイ! エクシーズ召喚、『ラヴァルバル・チェイン』!」

 

 

《サイクロン》

速攻魔法

(1):フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

《召喚僧サモンプリースト》

効果モンスター

星4/闇属性/魔法使い族/攻 800/守1600

(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。

このカードを守備表示にする。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。

(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。

デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

《ラヴァルバル・チェイン》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/炎属性/海竜族/攻1800/守1000

レベル4モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●デッキからカード1枚を選んで墓地へ送る。

●デッキからモンスター1体を選んでデッキの一番上に置く。

 

 

「ありゃ?」

 

 不知火が召喚したモンスターを見て、黒潮は頓狂な声を上げる。

 

「攻撃力1800……? 強力なモンスターが出てくるかと思って身構えとったけど、そのモンスターじゃ、ブラマジどころかブレイカーすら倒せへんで」

 

「心配無用です。不知火は、端から戦闘で勝つ気はありません」

 

「えっ? なら、どうやってうちに勝つつもりなん?」

 

「それは今からお見せします。私はチェインの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを一つ使い、デッキから三枚目の『ブレイズ・キャノン・マガジン』を墓地へ送ります。そして、墓地のマガジンの効果を発動。このカードを除外して、デッキの『ヴォルカニック・バックショット』を墓地へ送ります」

 

「なっ、これってもしかして――」

 

「気づきましたか」

 

 微笑を浮かべ、不知火が言う。

 

「私はここで、ヴォルカニック・バックショットのもう一つの効果を発動。デッキから二枚の同名カードを墓地へ送り、相手モンスターをすべて破壊します。もっとも、ブラック・マジシャンは効果耐性がついているので破壊できませんが……それが無意味であることは、もう理解していますね?」

 

「ヴォルカニック・バックショットは、墓地へ送られると相手に500ダメージを与える。それが三枚ってことは……」

 

「そうです。黒潮、あなたの残りライフと同じ1500ポイントのダメージを与えます」

 

「そんなぁー!」

 

 

黒潮 LP1500→0

 

 

「うーん、負けてもうたか。勝てると思ったんやけどなぁ」

 

「いい勝負でしたよ、黒潮。実際、永遠の魂のサポートを受けたブラック・マジシャンは厄介でしたし」

 

「だからブラマジの相手はせんで、直接うちのライフを削りにきたってわけか」

 

「ええ。不知火のデッキは元々バーンデッキの要素も強いので、今回はその特性にも助けられました」

 

「ライフポイントは戦闘で削るもんやと思っとったから、これは予想外やったわ。なぁ、司令はん。バーンデッキへの対策は、どうしたらええん?」

 

 春瀬に顔を向け、黒潮は尋ねる。

 

「そうだな……。対策カードを入れるとするなら、罠カードの『ホーリーライフバリアー』や『レインボー・ライフ』がいいだろう。どちらも手札一枚のコストはかかるが、戦闘と効果の両方のダメージを無効にしたり、回復に変えたりすることができる」

 

「おお、それは便利なカードやな。他にも何かあるんか?」

 

「あとは、エクストラデッキに入るモンスターの中にも効果ダメージを防ぐことができるカードがあるぞ。シンクロではレベル8の『ブラックフェザー・ドラゴン』、エクシーズではランク4の『Em(エンタメイジ)トラピーズ・マジシャン』だな。召喚のための手間はかかるが、この二枚にはメインデッキを圧迫しない利点もある」

 

「ふむふむ……。うちが使うとしたら、どっちのモンスターがええやろか?」

 

「黒潮のデッキなら、どちらでも大丈夫だ。レベル4を並べられるギミックを入れればトラピーズ・マジシャンはすぐに出せるし、ブラックフェザー・ドラゴンもレベル1のチューナーとブラマジで簡単にシンクロ召喚できる。ただ、トラピーズ・マジシャンの方が魔法使い族のサポートカードを共有できる点でより相性がいい。酒保で売ってるパックで当たるから、あとで入ってるパックを教えよう」

 

「おおきに、司令はん」

 

「ま、対策としてはこんなところだな。なんにせよ、バーンデッキが相手の時はとにかく短期決戦だ。デュエルが長引くほど、相手にライフを焼き尽くされる可能性が上がるからな」

 

「分かったで。不知火、あんたもなにか聞きたいことがあったら司令はんに質問してみたらどうや?」

 

「そうですね……。では、春瀬少将。私のデュエルに改善点はありましたか?」

 

「不知火は、確か今日が初めてのデュエルだったよな。それを考えると充分すぎる内容だ。あえて課題を挙げるとするなら、最初の総攻撃の時にもう少し伏せカードに注意すべきだったことと、ヴォルカニックが得意な破壊効果への耐性を持つ相手への対処、この二つだ」

 

「はい」

 

「とはいえ、状況によっては相手に伏せカードがあっても攻撃するしかないこともある。だから、これについてはそれほど気にしなくていい。それに対して、破壊耐性を持つ相手への対処はデッキの性格上避けられない課題だから、考えておいたほうがいい」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 軽く頭を下げた不知火は「ああ、それから」と言葉を加える。

 

「自分の選んだカードでデュエルするというのは、楽しいものですね。それを教えてくれたことにも感謝します」

 

「どういたしまして」

 

 微笑とともに言う不知火に、春瀬も笑みを浮かべて答える。と、そこへ、講堂内のスピーカー越しに独特の抑揚を持つラッパの音が聞こえてきた。

 

「お、もうそんな時間か」

 

 ラッパの音を聞いた春瀬がスピーカーを見上げる。

 

十八時(ヒトハチマルマル)。夕食の時間なのです」

 

「そんなに時間が経っとんたっか。デュエルしてて気づかんかったわ」

 

「それじゃ、今日はこれでお開きとしよう。みんな、お疲れ様」

 

「えーっ! 夕立もデュエルしたかったっぽい!」

 

「焦らなくても、そのうち嫌というほどやってもらうことになるさ。腹が減ってはなんとやら、今はひとまず夕食に行こう。確か、今日の献立には肉じゃががあったはずだぞ。急がないと、お代わり争奪戦に間に合わないかもしれないな」

 

「肉じゃが!? それなら、こうしちゃいられないっぽい!」

 

 夕食のメニューを聞いた夕立は、目の色を変えて脱兎の如く駆け出す。それを、時雨が苦笑しながら追いかけていく。

 

「司令はん。うちらもモタモタしとれんで?」

 

「そうそう。鈴谷も肉じゃが食べたいし。早く行こうよ」

 

「そうだな。俺は講堂の鍵を閉めていくから、みんなは先に行ってていいぞ」

 

「やったー! さてさて、それでは食堂に突撃いたしましょー!」

 

 元気のいい掛け声を上げた鈴谷を先頭に、残りの艦娘たちも講堂を出ていく。春瀬も講堂の施錠を完了すると、彼女たちの後を追って食堂へと向かっていった。

 




響「黒潮のデッキは【ブラック・マジシャン】、不知火は【ヴォルカニック】か……。一応、タイトルが二人のデッキのヒントになっていたんだね」

電「ちなみに、不知火ちゃんのデッキは読者の方からの提案を採用させてもらったものなのです。この場を借りて、改めてお礼を言わせてもらうのです」

暁「こういう交流が生まれるのも、小説投稿サイトの面白さかしら」

雷「そうね。作品への意見・感想はもちろん、こういったことも遠慮なく感想欄に寄せてほしいわ」

暁「それで、初めての教導は今回で終わったわけだけど、次回はどうなるのかしら?」

響「次回も、私たち教導隊の出番だよ。今回と同じように、タイトルが内容のヒントになってる。次回『駆逐と重巡、最強の第六決戦!』。デュエル・スタンバイ」
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