鎮守府決斗録   作:石田零

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29 怒れる天使

古鷹 LP1300 手札1枚

<モンスター>

大天使ゼラート(ATK2800)

<魔法・罠>

安全地帯(対象:ゼラート)、伏せ1枚

 

加古 LP3400 手札2枚

<フィールド魔法>

天空の聖域

<モンスター>

シャインエンジェル(ATK1400)

<魔法・罠>

なし

 

暁 LP4000 手札0枚

<Pゾーン>

宝玉の守護者(スケール2)、宝玉の先導者(スケール5)

<モンスター>

宝玉獣 アンバー・マンモス(ATK1700)

宝玉獣 トパーズ・タイガー(ATK1600)

宝玉獣 アメジスト・キャット(ATK1200)

<魔法・罠>

宝玉獣 ルビー・カーバンクル(永続魔法扱い)

 

響 LP3900 手札4枚

<フィールド魔法>

炎王の孤島

<モンスター>

炎王神獣 ガルドニクス(ATK2700)

<魔法・罠>

なし

 

 

 

「今度はこっちの番だ。あたしのターン、ドローッ!」

 

「加古さんのスタンバイフェイズに、私は前のターンに破壊されたバロンの効果を発動。デッキから『炎王の急襲』を手札に加える」

 

 暁の総攻撃を凌ぎ、やってきた加古のターン。響のカードの効果処理が終わると、彼女はさっそく反撃の狼煙を上げた。

 

「さあ、いくぜ。あたしは魔法カード『増援』を発動。デッキから『E・HERO(エレメンタルヒーロー) プリズマー』を手札に加える。そして、そのプリズマーを召喚して効果発動!」

 

 

《増援》

通常魔法

(1):デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) プリズマー》

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1700/守1100

(1):1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体をデッキから墓地へ送って発動できる。

エンドフェイズまで、このカードは墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。

 

 

「プリズマーは、エクストラデッキの融合モンスターを相手に見せることで、そこにカード名が記されているモンスターをデッキから墓地に送り、その名前をコピーすることができる。あたしはエクストラデッキの『キング・もけもけ』を見せて、デッキの『もけもけ』を墓地へ送る。これで、プリズマーの名前はエンドフェイズ時まで『もけもけ』に変わる」

 

「名前をコピー? そんなことして、なんの意味があるのかしら?」

 

「すぐに分かるさ。あたしは永続魔法『怒れるもけもけ』を発動。そしてバトルフェイズ、シャインエンジェルでトパーズ・タイガーに攻撃だ!」

 

「えっ!?」

 

 加古の攻撃宣言を聞いた暁は、驚きの声を上げる。

 

「私のフィールドには、アメジスト・キャットもいるのに……なのにどうして、攻撃力の高いトパーズ・タイガーを攻撃するの? まさか、オネスト!?」

 

 しかし、暁の警戒とは裏腹に加古がオネストを発動することはなく、シャインエンジェルはあっけなく返り討ちにされる。それを見て、暁はさらに困惑の度合いを深めた。

 

「普通に戦闘破壊された……? 今のは、ただの自爆だったってこと?」

 

「いいや、暁。油断したらダメだ」

 

 暁の隣から、響がたしなめる。

 

「シャインエンジェルは、戦闘破壊をきっかけにしてデッキからモンスターを特殊召喚できる。おそらく、今の攻撃はその効果の発動を狙ったもの。天空の聖域の効果でダメージを受けないことを利用して、自発的にシャインエンジェルの効果を使うつもりだ」

 

「けど、その効果で特殊召喚できるのは、攻撃力1500以下のモンスターでしょ? そのくらいの攻撃力じゃ、どうにもならないわよ」

 

「確かに。攻撃力では私たちのモンスターの敵じゃない。でも、攻撃力が低いモンスターは、その代わりに強力な効果を持っている。きっと、その効果を武器に攻撃を仕掛けてくるつもりだ」

 

「いったい、どんなモンスターを……」

 

 暁と響が注視する先で、加古はデッキから特殊召喚するモンスターを選び出す。そのモンスターは――

 

「あたしはシャインエンジェルの効果で、こいつを攻撃表示で特殊召喚するぜ。来いっ、『もけもけ』!」

 

 

《もけもけ》

通常モンスター

星1/光属性/天使族/攻 300/守 100

何を考えているのかさっぱりわからない天使のはみだし者。

たまに怒ると怖い。

 

 

「……え?」

 

「……はい?」

 

 フィールドに現れたモンスターを見て、二人はきょとんとした表情を浮かべる。

 加古が呼び出したのは、四角い形をした白いモンスター。頭の両脇に小さな翼があるから天使……なのだろうが、その姿からはとてもそう思えない。

 はんぺんのような胴体と、そこに直接描かれたやる気のない顔。その容姿は、一般的な可愛らしく純真な天使のイメージからは、かけ離れている。天界にいるよりも、居間でオヤジのように寝転がりながらテレビを見ている方が似合いそうな天使だ。

 

「攻撃力300?」

 

「しかも、呼び出した『もけもけ』は通常モンスター……。効果モンスターならまだしも、あんなカードでなにをしようというんだ?」

 

「なにを、って……なにもできるわけないでしょ。もしかして、加古さんってデュエル下手なのかしら?」

 

「流石にそんなことはないはず……。きっと、なにか……」

 

 響は加古の狙いを探ろうと考えを巡らす。しかし、その矢先に暁が「あっ!」と短い叫びを上げた。

 

「響、あれ見て! もけもけが!」

 

「なっ!?」

 

 暁に促されて視線を転じた響は、水色の瞳を丸くする。

 

「もけもけの体が、真っ赤に……!?」

 

「怒れるもけもけの効果発動!」

 

 驚く二人を前に、加古が声を張る。

 

「あたしのフィールドに『もけもけ』がいる時に自分の天使族モンスターが破壊された場合、『もけもけ』の攻撃力はターン終了時まで3000になる!」

 

 

《怒れるもけもけ》

永続魔法

「もけもけ」が自分フィールド上に表側表示で存在している時、自分フィールド上の天使族モンスターが破壊された場合、このターンのエンドフェイズまで自分フィールド上の「もけもけ」の攻撃力は3000になる。

 

 

「攻撃力3000だって!?」

 

「あたしのもけもけは、普段はボケーッとしてるけど本当は仲間思いの優しいヤツなんだ。だから、仲間を傷つける相手は許さない。シャインエンジェルの仇、ここで取らせてもらう!」

 

「いやいやいや! そっちが勝手に攻撃してきて自爆したんでしょ!?」

 

「無駄だよ、暁。もけもけはシャインエンジェルが破壊された後に特殊召喚された。彼に私たちの事情は分からない」

 

「響はなんで相手のモンスターに感情移入してるのよ!? ていうか――」

 

 暁は、加古のもう一体のモンスターを指さす。

 

「どうしてプリズマーまで怒ってるのよ!?」

 

 加古のフィールドには現在、もけもけとプリズマー、合計二体のモンスターが存在している。そのうち、もけもけが怒りに身を震わせていることは知っての通りだが、なぜか無関係のはずのプリズマーまでもが全身を真っ赤にして激しい怒りの感情を表していた。

 

「忘れたのか? あたしはさっき、プリズマーの効果を発動してカード名を『もけもけ』に変えた。そう!! 今のコイツは、身も心も『もけもけ』になっているのさッ!」

 

「どんな状態よ、それ!?」

 

「さあ、覚悟はいいか? バトル、まずは『もけもけ』となったプリズマーでガルドニクスを攻撃!」

 

 

響 LP3900→3600

 

 

「ガルドニクスの効果発動。このカードが戦闘破壊された時、デッキから同名カード以外の『炎王』モンスターを特殊召喚する。『炎王獣 ガルドニクス』を守備表示で特殊召喚!」

 

「守備表示じゃダメージは与えられない。なら、もけもけでアメジスト・キャットに攻撃だ!」

 

「アンバー・マンモスの効果発動! 他の宝玉獣が攻撃された時、このカードに攻撃対象を変更するわ」

 

「けど、どの道こっちの勝ちだ。ダメージは受けてもらうぜ」

 

「ひゃっ!」

 

 

暁 LP4000→2700

 

 

「あたしはカードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「私のターン」

 

「響!」

 

 響にターンが移った直後、暁が彼女に声をかける。

 

「巻き添えをくらっても、私は大丈夫。だから、私のことは気にしないで、ガルドニクスでもなんでも呼びなさい!」

 

「暁……」

 

 響は数秒、暁を見つめ、それから「分かった」と頷く。

 

「ありがとう、暁。それじゃ、遠慮なくやらせてもらうよ」

 

 最初からそのつもりだったけど、という一言は胸の奥に秘めておく。

 

「ええ、やっちゃいなさい!」

 

「任せてくれ。私は『熱血獣士ウルフバーク』を召喚。その効果で墓地のバロンを守備表示で特殊召喚する。レベル4のウルフバークとバロンでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! 飛び立て、『鳥銃士カステル』!」

 

 

《熱血獣士ウルフバーク》

効果モンスター

星4/炎属性/獣戦士族/攻1600/守1200

自分の墓地の獣戦士族・炎属性・レベル4モンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

「熱血獣士ウルフバーク」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

《鳥銃士カステル》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/風属性/鳥獣族/攻2000/守1500

レベル4モンスター×2

「鳥銃士カステル」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを裏側守備表示にする。

(2):このカードのX素材を2つ取り除き、このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを持ち主のデッキに戻す。

 

 

「カステルの効果発動。このカードのオーバレイ・ユニットを二つ取り除くことで、フィールド上の表側表示のカードを1枚、デッキに戻す。私は安全地帯を選択する!」

 

「なるほど! 安全地帯さえなくなれば、ゼラートも破壊される。考えたわね、響!」

 

 響の意図を察した暁が表情を明るくする。しかし、

 

「させません! カウンター罠『神罰』! カステルの効果を無効にして破壊します」

 

 

《神罰》

カウンター罠

フィールド上に「天空の聖域」が表側表示で存在する場合に発動する事ができる。

効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

 

 加古の背後にある聖域から放たれた稲妻が、響のモンスターを焼き尽くす。目論見を崩された響は、苦い顔で古鷹の発動したカードを見る。

 

「ノーコストのカウンター罠……なんてカードだ」

 

「一応、条件はありますよ。神罰は、フィールドに天空の聖域が存在していないと発動できない。けど、ゼラートの時と同じで、加古がフィールド魔法を発動してくれているから問題解決です」

 

「……いいコンビネーションだね、二人とも」

 

「それはもちろん、姉妹艦だからね」

 

 笑顔で答える古鷹に、響と暁は顔を見合わせ……それから気まずそうに視線を逸らす。

 

「……コホン。なら、次の手でいこう。私は『炎王円環』を発動。フィールドの炎王獣ガルドニクスを破壊して、墓地の炎王神獣ガルドニクスを特殊召喚する」

 

 

《炎王炎環》

速攻魔法

自分のフィールド上及び自分の墓地の炎属性モンスターを1体ずつ選択して発動できる。

選択した自分フィールド上のモンスターを破壊し、選択した墓地のモンスターを特殊召喚する。

「炎王炎環」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

「バトル。ガルドニクスで、プリズマーに攻撃!」

 

「くっ。プリズマーは戦士族だから、天空の聖域でダメージを消すことはできない……よく分かってるな、響」

 

 

加古 LP3400→2400

 

 

「メインフェイズ2に、私は炎王の孤島の効果を発動。フィールドのガルドニクスを破壊して、デッキから三枚目のバロンを手札に加える。そして、手札から魔法カード『炎王の急襲』を発動。デッキから『ネフティスの鳳凰神』を特殊召喚する」

 

 

《ネフティスの鳳凰神》

効果モンスター

星8/炎属性/鳥獣族/攻2400/守1600

このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

「私はこれでターンエンド。エンドフェイズ時、急襲の効果で特殊召喚したネフティスは破壊される」

 

「私のターン。確かここで、響ちゃんのモンスターの効果が発動するんだっけ」

 

「そうだよ。私はガルドニクスの効果を発動。このカードを墓地から特殊召喚して、他のモンスターをすべて破壊する。安全地帯にいるゼラートは、残念ながら破壊できないけれどね」

 

「てことは、破壊されるのはあたしと暁のモンスターだけか。あたしのもけもけがぁ~」

 

「それはどうかしら?」

 

 嘆きの声を漏らす加古に、暁が言う。

 

「私は、宝玉の守護者のペンデュラム効果を発動! 1ターンに一度、自分の宝玉獣を効果による破壊から守るわ!」

 

 ガルドニクスの炎がフィールドを覆う中、不可視の障壁が暁のモンスターを包む。その結果、響、暁、古鷹のモンスターは場に残り、加古のモンスターだけが炎に呑み込まれた。

 

「どう、響? 言ったでしょ、私は大丈夫だって」

 

「そうだね。流石は暁だ」

 

 得意げな顔で笑いかける暁に、響は笑みを返しつつ同意する。

 

「けど、暁。まだ古鷹さんの攻撃は残っているよ。ガルドニクスは守備表示だから、おそらく彼女は暁のモンスターを狙ってくる」

 

 響の言葉に身構える暁だが、古鷹は攻撃の矛先を意外な方向へと向ける。

 

「バトルフェイズ。私はゼラートでガルドニクスに攻撃!」

 

「ガルドニクスに?」

 

 驚く響の前でガルドニクスが破壊される。しかし表示形式は守備表示のため、彼女にダメージはない。

 

「私はガルドニクスの効果を発動。デッキから『炎王獣 ヤクシャ』を守備表示で特殊召喚する」

 

 

《炎王獣 ヤクシャ》

効果モンスター

星4/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200

自分フィールド上に表側表示で存在する「炎王」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊された場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

また、このカードが破壊され墓地へ送られた場合、自分の手札・フィールド上のカード1枚を選んで破壊できる。

「炎王獣 ヤクシャ」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「守備表示のモンスターを倒しても、ダメージは与えられない。それが分かっていながら、どうして……」

 

 古鷹の意図を読み取れず、響は眉を寄せる。その答えは、直後に明らかとなる。

 

「メインフェイズ2で、私はゼラートの効果を発動。手札の光属性モンスター、『天空の使者 ゼラディアス』を墓地に捨てて、相手モンスターをすべて破壊します!」

 

「くっ、そういうことか……!」

 

 ようやく相手の狙いを理解した響は、渋面を作る。

 

「そういうことって、どういうことよ響?」

 

「ガルドニクスは、効果で破壊されると次のターンに復活する。それを阻止するために、古鷹さんはダメージを与えられないのを承知でガルドニクスを攻撃したんだ」

 

「ご名答」

 

「けど、私もただでは転ばないよ。破壊されたヤクシャの効果を発動、このカードが破壊された時、自分の手札・フィールドのカードを1枚破壊できる。私は手札のバロンを破壊する」

 

「私はこれで、ターン終了です」

 

「私のターン!」

 

 自分のターンとなった暁は、真剣な面持ちでデッキに視線を落とす。

 

「私の手札はゼロ、フィールドにはモンスターもいない……。このドローで、すべてが決まる」

 

 暁は、デッキの一番上のカードに手をかける。

 

「最初に脱落なんて、まっぴらごめんよ。宝玉獣(あなた)たちだってそうでしょ? なら、このドローで応えてみせなさい!」

 

 右手に力を込め、暁はカードをドローする。そのカードを確認した暁は、「よし!」と頷いた。

 

「いくわよ! 私は手札から――」

 

「ちょっと待ってくれ、暁。スタンバイフェイズ時に私はバロンの効果を発動。デッキから二枚目の炎王炎環を手札に加える」

 

「…………」

 

「割り込んで悪いね。さあ、ターンを続けてくれ……って、どうしたんだい暁?」

 

 暁が自分を睨みつけているのに気づいた響は、小首を傾げて彼女に尋ねる。

 

「別に。どうもしないわよ」

 

 そっぽを向いて答えた暁は、気を取り直してドローしたカードを発動する。

 

「私は魔法カード『レア・ヴァリュー』を発動! 自分の魔法・罠ゾーンの『宝玉獣』を1枚墓地へ送ることで、デッキから2枚ドローできる。ただし、墓地へ送る宝玉獣は相手が選ぶわ」

 

「つってもなぁ……どれを選べばいいんだ? 全部同じに見えるよ」

 

「そう見えるけど、たぶん違う」

 

 困り顔の加古に、古鷹が言う。

 

「さっきから暁ちゃんのモンスターを見てたけど、みんな破壊されても墓地へいかずに、魔法・罠ゾーンに置かれてた。きっと、そのことには何か意味があると思うの。たとえば……そこからフィールドに特殊召喚できるとか」

 

「なるほど! 言われてみれば、確かにそうだな。なら、特殊召喚されると厄介なモンスターを選ぶか。厄介な奴は……ダイレクトアタックができるアメジスト・キャットか?」

 

「うん。私もそれでいいと思うよ」

 

「なら、アメジスト・キャットを選択だ!」

 

「分かったわ。代わりに、私は2枚ドローよ」

 

 暁は、再び自分のデッキに真剣な眼差しを送る。

 

「こんなとこで負けたくない……だから、絶対に逆転のカードを引いてみせるわ。ドロー!」

 

 ドローした二枚のカード。その片方に目を留めた暁は、それをディスクに差し込んだ。

 

「きたわ! 私は通常魔法『宝玉の導き』を発動! その効果で、デッキから『宝玉獣 ルビー・カーバンクル』を特殊召喚するわ!」

 

 

《宝玉の導き》

通常魔法

自分の魔法&罠カードゾーンに「宝玉獣」と名のついたカードが2枚以上存在する場合、デッキから「宝玉獣」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 

《宝玉獣 ルビー・カーバンクル》

効果モンスター

星3/光属性/天使族/攻 300/守 300

このカードが特殊召喚に成功した時、自分の魔法&罠カードゾーン上から「宝玉獣」と名のついたカードを可能な限り特殊召喚できる。

このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。

 

 

「ルビー・カーバンクルの効果発動! このカードが特殊召喚に成功した時、自分の魔法・罠ゾーンにある『宝玉獣』を可能な限り特殊召喚できる。もう一度現れなさい! アンバー・マンモス、トパーズ・タイガー、ルビー・カーバンクル!」

 

「マジかよ! 古鷹の言った通り、魔法・罠ゾーンの宝玉獣を召喚しやがった!」

 

「可能性は考えてたけど、まさか本当にやるなんて……」

 

 宝玉獣特有の展開方法を目の当たりにし、古鷹と加古は驚きの色をあらわにする。だが、二人は驚いてばかりもいられない。

 

「……って、いけない! このままじゃ加古が!」

 

「バトルフェイズ。トパーズ・タイガーとアンバー・マンモスで、加古さんにダイレクトアタック! 今度こそ、これで終わりよ!」

 

 語気を強め、暁が攻撃宣言を下す。主の命令を受けて二体の宝玉獣が動き出す寸前、加古はデュエルディスクのスイッチを押した。

 

「そうはさせないぜ。バトルフェイズ突入前にトラップ発動、『威嚇する咆哮』! その効果によって、このターン中の攻撃を封じる」

 

 

《威嚇する咆哮》

通常罠

このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。

 

 

 不意にどこからともなく恐ろしい雄叫びが轟き、暁のモンスターを怯ませる。二度に渡り必殺の一撃を防がれた暁は、膨れっ面でエンド宣言をした。

 

「あたしのターン。ドロー」

 

 むくれ顔の暁とは反対に、総攻撃をかわした加古は上機嫌だ。彼女はドローしたカードを確認すると、その顔に大きな笑みを浮かべた。

 

「ふふふ……。暁。悪いが、お前にはここでリタイヤしてもらうぜ」

 

「なんですって?」

 

 加古の言葉に、暁は表情を険しくする。その問いに答える代わりに、加古はドローしたばかりのカードをディスクに置いた。

 

「あたしは手札から魔法カード『トライワイトゾーン』を発動! 墓地に眠る三体のもけもけを特殊召喚する!」

 

 

《トライワイトゾーン》

通常魔法

自分の墓地に存在するレベル2以下の通常モンスター3体を選択して発動する。

選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

 

 

 加古のフィールドに、もけもけが再び姿を現す。加古はすぐさま、復活したもけもけに攻撃を命じる。

 

「バトルだ! 一体目のもけもけで、トパーズ・タイガーに攻撃!」

 

 もけもけがトパーズ・タイガーに突進するが、攻撃力で劣る前者は当然の如く返り討ちに遭う。しかし、自分のモンスターが負けたにも関わらず加古は笑みを、反対に戦闘に勝利した暁は苦い表情を浮かべた。

 

「天空の聖域の効果により、天使族モンスターの戦闘によって発生する戦闘ダメージはゼロになる。そして」

 

「……怒れるもけもけの効果で、残った二体のもけもけの攻撃力が上がるってわけね」

 

「その通り。天使族モンスターのもけもけが破壊されたことで、二体のもけもけの攻撃力はターン終了時まで3000になる!」

 

 暁の残りライフは2700。トパーズ・タイガーとアンバー・マンモスが攻撃された場合の戦闘ダメージとちょうど同じ数値だ。響のライフは3600残っているが、壁モンスターがいないため、二体の攻撃を受ければやはりライフがゼロになる。つまり……

 

「この攻撃を受けたら、私たちのうち一人は確実に負ける……!」

 

「さぁて、どっちを攻撃しようか」

 

 加古もこの状況を理解しているようで、暁たちの反応を楽しむ様子を見せている。しかし、彼女の選択は早くに決まっていたらしく、すぐに考えるそぶりをやめて戦闘を再開した。

 

「決めた! あたしが攻撃するのは――」

 

 加古は、真っ直ぐに伸ばした人差し指を、その相手に突きつける。

 

「暁だっ!」

 

「っ!!」

 

 指を向けられた暁は、表情を強張らせて一歩後ずさる。

 

「暁にはこのデュエルで二回もやられかけたからな。お返ししとかないと気が済まないぜ。いけっ、もけもけ! トパーズ・タイガーとアンバー・マンモスを攻撃だ!!」

 

「きゃああっ!」

 

 

暁 LP2700→0

 

 

「暁!!」

 

 二体分のダメージを受けて、暁の体は後方へ吹き飛ばされる。それと同時に彼女のライフはゼロとなり、デュエルから脱落する。

 

「ふぅー、スカッとしたぜ。あたしはこれでターンエンドだ」

 

「私のターン」

 

 ドローした響は、対戦相手の二人に微笑を向けた。

 

「さて。お二人には悪いけれど、私たちはここで勝たせてもらうよ」

 

「へぇ、面白いこと言うじゃないか」

 

 響の言葉に、加古は眉を動かす。

 

「いいぜ。できるもんなら、やってもらおうじゃねえか!」

 

「もちろん、そのつもりさ」

 

 頷いた響は、手始めに墓地に眠る一体のモンスターの効果を発動させる。

 

「スタンバイフェイズ次に、私は墓地のネフティスの鳳凰神の効果を発動。効果で破壊されたこのカードは、次の自分のスタンバイフェイズに墓地から特殊召喚できる。蘇れ、ネフティスの鳳凰神!」

 

「スタンバイフェイズに復活って、ガルドニクスみたいな効果だな……てことは!?」

 

「そう。このカードも、自身の効果で特殊召喚した時に発動する効果がある。それは、フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する効果!」

 

 ネフティスの羽ばたきによって発生した炎の旋風がフィールドを席巻する。それはこれまで戦いの舞台となっていた孤島や神殿をも塵に変え、すべてを無に帰した。

 

「安全地帯がフィールドを離れたことで、古鷹さんのゼラートも破壊される。もっとも、炎王の孤島が破壊されたことで、私のモンスターも全滅するけどね」

 

 けど、と響は手札から一枚のカードを場に出す。

 

「私には、まだ通常召喚の権利が残されている。私は二体目のヤクシャを召喚。そして、バトルフェイズ。ヤクシャで古鷹さんにダイレクトアタック!」

 

「ああっ!」

 

 

古鷹 LP1300→0

 

 

「まだ私のバトルフェイズは終了していないよ。速攻魔法発動、炎王円環! その効果でバロンを破壊し、墓地からこのカードを特殊召喚する」

 

 響はディスクの墓地ゾーンから排出されたカードを手に取ると、高らかな宣言とともにモンスターゾーンに置いた。

 

「永劫を生きる不死鳥よ、戦いの輪廻に終止符を打て! 現れろ、炎王神獣ガルドニクス!!」

 

 火の粉を振り撒いて出現したのは、響のエースモンスター。無限の転生を繰り返す聖獣が、この戦いの区切りをつけるため地上に舞い降りた。

 

「天空の聖域は破壊されているから、もう天使族モンスターの戦闘ダメージをなくすことはできないよ。いけ、ガルドニクス! もけもけに攻撃だ!」

 

 炎をまとったガルドニクスが急降下し、もけもけを跡形もなく消し去る。そして、二体の攻撃力の差――加古の残りライフと同じ2400ポイントのダメージが彼女に与えらえた。

 

「どわあっ!」

 

 

加古 LP2400→0

 

 

「勝負あった! このデュエル、暁さん・響さんタッグの勝利です!」

 

 いつの間にか審判のような位置にいた青葉が、デュエルの勝者を宣言する。デュエルディスクを収納した四人は、互いに向かい合って試合後の握手を交わした。

 

「いや~、まさか本当に二人まとめてやられちまうとはなぁ。響、お前凄いな!」

 

「うんうん。暁ちゃんの攻撃も激しかったよね。ガルドニクスの効果に巻き込まれないように工夫もしてたし。それに比べて加古ったら……」

 

「なっ、あたしもしっかりやってたじゃん!? 暁の総攻撃は二回とも乗り切ったし!」

 

「でも、一人だけガルドニクスの効果に対応できてなかったよね」

 

「うぐっ……」

 

「けど、コンビネーションは古鷹さんたちの方が上手(うわて)だったと思うよ。フィールド魔法を共用して、互いのデッキの力を最大限に引き出していた。タッグデュエルの戦い方がどういうものか、教えてもらったよ」

 

「まあ、結局は負けちゃったけどなー。けど、次は負けないぞ」

 

「私も加古も腕を磨いてくるから、またデュエルしてね」

 

「もちろん。私たちも、それまでにタッグとしての戦い方を身につけておくよ」

 

「それじゃあ、そろそろ移動しようか。雷ちゃんたちを待たせたら悪いし」

 

「そうだね」

 

 古鷹の言葉に従い、響は脇で待っている雷たちのもとへ向かう。……が、ふと暁がついてこないことに気づいて立ち止まった。

 

「暁?」

 

 振り返った響は、憮然とした表情で突っ立つ暁に歩み寄る。

 

「どうしたんだい? なんだか浮かない顔をしているけど」

 

「……別に」

 

 暁は表情を変えずに答えると、足早に歩き出す。

 

「ほら、次のデュエルが始まるんでしょ。そこにいると邪魔になるわよ」

 

「あ、うん……」

 

 暁の様子に戸惑いながら、響はその後を追う。それと擦れ違いでデュエルスペースに入った雷と電は、それを見て溜息を漏らすのだった。

 




雷「ひとまず、一戦目はこっちの勝ちね」

電「けど、暁ちゃんと響ちゃんの間には、少し不穏な空気が流れてしまったのです……」

響「あとがきにも顔を出さないし……。暁、どうしたんだろう……?」

雷「ねぇ響。もしかして、気づいてないの?」

響「何にだい?」

雷「……なんでもないわ。電、次回予告をお願いできる?」

電「はい。次は、私と雷ちゃんのタッグデュエルなのです。次回『青葉、見ちゃいます!』。デュエル・スタンバイなのです」
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