「バトルよ。レインボー・ドラゴンで電にダイレクトアタック! オーバー・ザ・レインボーッ!!」
暁の声に合わせ、レインボー・ドラゴンが口から光線を放つ。眩い光の筋は、暁と対峙する電へと一直線に伸び、彼女の体を呑み込んだ。
「はにゃああっ!」
光線の直撃を受けた電は、勢いよく吹き飛ばさて背中から地面に落ちる。同時に、電のライフがゼロになってデュエルが終了し、レインボー・ドラゴンをはじめとしたソリッドビジョンの映像が消滅する。
「はう……負けてしまったのです」
背中をさすりながら、電は上体を起こす。
「でも酷いのです、暁ちゃん。レインボー・ドラゴンの攻撃力なら普通にダイレクトアタックするだけで勝てるのに、わざわざ攻撃前に効果を使って攻撃力を上げるなんて……。おかげで、思い切り吹き飛ばされてしまったのです」
「あはは、ごめんごめん。せっかく効果が使えそうだったから、使っておこうと思って。けど、いい経験になったんじゃない? 攻撃力8000のダイレクトアタックをくらうなんて、滅多にできないわよ」
「そんなもの、頻繁にあったら困るのです……」
溜息混じりに電はぼやく。デュエルを観戦していた雷も苦笑いでそれに同意する。
「確かに、たとえ演習でもそんな攻撃は受けたくないわね。まぁ、それはともかく。いい感じみたいね、暁の新デッキ」
「ええ。バッチリよ!」
暁はVサインを雷に向ける。
「それもこれも、響が手伝ってくれたおかげだわ。ありがとね、響」
「どういたしまして。けど、私がしたのはあくまでアドバイスだけ。それをデッキとしてまとめ上げたのは、暁の力だよ」
微笑を浮かべて、響は答える。
「私から見ても、いい具合に仕上がっていると思うよ。前のデッキよりも、確実に戦術の幅が広がってる。あとは、できるだけ多くの相手と戦って微調整をしていくだけだ」
「そうね。改造したデッキでは、まだ姉妹以外と戦ってないし。どこかに暇そうな艦娘はいないかしら」
暁はきょろきょろと辺りを見回す。と、少し離れた所を歩いている二人組の姿を見つけた。
「いたわ! あれは、時雨と白露ね」
暁の視線の先では、黒色のセーラー服を着た艦娘が二人並んで歩いている。暁は二人に駆け寄ると、単刀直入に要件を述べた。
「時雨! 白露! デュエルしましょ!」
「デュエル? 今ここでかい?」
「ええ」
時雨の問いに、暁は頷く。
「デッキの改造をしたから、テストプレイに付き合ってほしいの。二人とも、時間はある?」
「平気だよ」
「あたしもオッケー!」
「よかった。そしたら、最初の相手は――」
「はいっ! 白露が一番!」
「分かったわ」
暁と白露はデュエルディスクを構えて対峙する。しかし、
「暁。ちょっと待って」
暁を追ってきた響が、二人のデュエルを止める。
「なに、響?」
「このデュエル、私も混ぜてもらえないかな?」
「それって、タッグデュエルってこと? でも、あなたのデッキは……」
「大丈夫だよ、暁」
浮かない顔の暁に、響は笑みを向ける。
「実は私も、新しいデッキを作ってたんだ。タッグデュエルにも対応できるデッキをね。だから、前のように巻き添えをくらう心配はないよ」
「そうだったの? 初耳だわ」
「当然だよ。突然違うデッキを使って皆を驚かそうと、内緒で作っていたからね。それで、どうだろう? 私も一緒に戦わせてくれるかな」
「私は歓迎よ。響がどんなデッキを作ったのか、見てみたいし。白露と時雨はどうかしら?」
「いいよー」
「僕も異議なし。むしろ、待ち時間がなくなって嬉しいよ」
「決まりね。それじゃ、改めてタッグデュエルの開始よ! 準備はいい?」
暁の問いかけに、他の三人が一斉に頷く。直後、戦いの火蓋が切って落とされる。
「「「「デュエル!!」」」」
暁 LP4000
響 LP4000
白露 LP4000
時雨 LP4000
「ターンも白露が一番! あたしのターン!」
先陣を切ったのは白露。彼女は五枚の手札を一瞥すると、その中の一枚を場に出す。
「あたしは『ミスティック・パイパー』を召喚!」
《ミスティック・パイパー》
効果モンスター
星1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードをリリースして発動する。
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
この効果でドローしたカードをお互いに確認し、レベル1モンスターだった場合、自分はカードをもう1枚ドローする。
「ミスティック・パイパー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
「ミスティック・パイパーの効果発動。このカードをリリースして、デッキからカードを一枚ドローする。それがレベル1モンスターだったら、さらにもう一枚ドローできるわ」
白露はデッキからカードを引く。そのカードはソリッドビジョンで場に投影され、暁たちにも公開される。
「あたしが引いたのは、レベル1の『黄泉ガエル』。よって、もう一枚ドロー。あたしはこれでターンエンド」
「次は私のターンよ。ドロー!」
暁・響ペアの一番手は暁。彼女は数秒間手札を見て戦術を組み立てた後、カードを場に出す。
「私は、『召喚僧サモンプリースト』を召喚。この時、サモンプリーストは自分の効果で守備表示になるわ。さらに私は、サモンプリーストのもう一つの効果を発動。手札の魔法カード『融合』を捨てて、デッキから『宝玉獣 サファイア・ペガサス』を特殊召喚する。そして、サファイア・ペガサスの効果を使って、デッキの『宝玉獣 ルビー・カーバンクル』を魔法・罠ゾーンに置くわ」
《召喚僧サモンプリースト》
効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻 800/守1600
(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。
このカードを守備表示にする。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。
(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。
デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。
《宝玉獣 サファイア・ペガサス》
効果モンスター
星4/風属性/獣族/攻1800/守1200
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札・デッキ・墓地から「宝玉獣」と名のついたモンスター1体を永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。
このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。
「まだいくわよ。私は、レベル4のサファイア・ペガサスとサモンプリーストでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚、『ラヴァルバル・チェイン』!」
《ラヴァルバル・チェイン》
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/炎属性/海竜族/攻1800/守1000
レベル4モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●デッキからカード1枚を選んで墓地へ送る。
●デッキからモンスター1体を選んでデッキの一番上に置く。
「サモンプリーストに、ラヴァルバル・チェイン……。どちらも新しく見るモンスターだね。前に夕立と戦った時は、宝玉獣しか使っていなかったはずだけど」
暁が呼び出したモンスターを眺め、時雨は微かに眉を上げる。
「確かに、あの時はそうだったわね。けど、それは昔の話よ。一人前のレディーは、常に自分を磨き続ける。レディーのデッキは、日々進化しているのよ!」
得意顔で答える暁。実際には、先日の一件があるまでロクにデッキの改良をしていなかったのだが、そこを指摘すると面倒なので、響たちは黙っておく。
「私は、チェインの効果を発動。このカードのオーバーレイ・ユニットを一つ使うことで、デッキのカード1枚を墓地へ送るわ。私は『宝玉獣 アメジスト・キャット』を墓地へ。カードを一枚伏せて、ターン終了よ」
「僕のターンだね。僕は、永続魔法『
《
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、自分の手札または墓地からレベル4以下の「雲魔物」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
墓地から特殊召喚した場合はこのカードを破壊する。
「このカードの効果によって、僕は一ターンに一度、自分の場にモンスターがいない時に、手札か墓地から『
《
効果モンスター
星1/水属性/悪魔族/攻 0/守 0
このカードは特殊召喚できない。
このカードの戦闘によって発生するお互いのプレイヤーへの戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘によって破壊された場合、このカードを破壊したモンスターのレベルの数だけフォッグカウンターをフィールド上に表側表示で存在するモンスターに置く。
《
効果モンスター
星4/水属性/天使族/攻 900/守 0
このカードは戦闘によっては破壊されない。
このカードが表側守備表示でフィールド上に存在する場合、このカードを破壊する。
このカードの召喚に成功した時、フィールド上に存在する「雲魔物」と名のついたモンスターの数だけこのカードにフォッグカウンターを置く。
このカードに乗っているフォッグカウンターを2つ取り除く事で、フィールド上のモンスター1体を破壊する。
時雨のフィールドに、二体のモンスターが立て続けに現れる。「雲魔物」の名前通り、二体の体は共に雲で形成されている。
「キロスタスは、召喚時に場の『雲魔物』モンスターの数だけ、自身にカウンターを置くことができる。自身を含めて、場にいる雲魔物は二体。よって、キロスタスには2つのカウンターが乗る。そしてキロスタスのもう一つの効果を発動。このカードのカウンターを2つ取り除くことで、場のモンスター1体を破壊する。対象はもちろん、ラヴァルバル・チェインだ」
「見た目の割に、あなどれない効果を持ってるのね。でも、いいのかしら? タッグデュエルでの攻撃は、次のターンから解禁される。攻撃力の低いモンスターを二体も並べていたら、響の攻撃で大ダメージを受けちゃうわよ」
「僕が何も対策していないと思ったかい? 僕はフィールド魔法『天空の聖域』を発動するよ」
《天空の聖域》
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、天使族モンスターの戦闘によって発生する天使族モンスターのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。
「このカードは……!」
時雨の背後に出現した神殿を見て、暁は声を上げる。
「前に、加古さんが使ってたカード……。確か、天使族モンスターの戦闘で発生するダメージをなくすフィールドだったはず。そうよね、響?」
「うん。そして、このカードを発動したということは、おそらく……」
「時雨のモンスターは、天使族ってことね」
「へぇ。二人とも、このフィールドのことは知っていたんだね」
「前に第六司令室の教導をした時に、加古さんが使っていたのよ。あの人も天使族デッキを使っていたわ」
「なるほど。なら、このカードについて説明する必要はないね。僕はこれでターンエンドだ」
「私のターン。ドロー」
時雨のエンド宣言を聞き、響がカードを引く。そして、このターンから各プレイヤーの攻撃が可能となる。
「いよいよお披露目ね。見せてもらおうかしら、響の新デッキの実力というものを」
「もちろん。大事なデッキの初陣だ、最初から全力でいくよ」
響は手札を一枚引き抜き、デュエルディスクに差し込む。
「まずは、厄介なフィールド魔法から排除させてもらおう。私は魔法カード『氷結界の三方陣』を発動する」
《氷結界の三方陣》
通常魔法
手札の「氷結界」と名のついたモンスター3種類を相手に見せ、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して発動する。
選択した相手のカードを破壊し、自分の手札から「氷結界」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
「私は手札の『氷結界の虎将 ガンターラ』『氷結界の軍師』『氷結界の舞姫』を見せてこのカードを発動。天空の聖域を破壊し、さらに手札のガンターラを特殊召喚する」
「天空の聖域が、こうもあっさりと……。やるね、響」
「まだだよ。私は、氷結界の軍師を通常召喚。その効果を使い、手札の氷結界の舞姫を捨ててデッキから一枚ドローする」
《氷結界の虎将 ガンターラ》
効果モンスター
星7/水属性/戦士族/攻2700/守2000
1ターンに1度、自分のエンドフェイズ時に発動できる。
自分の墓地から「氷結界の虎将 ガンターラ」以外の「氷結界」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。
《氷結界の軍師》
効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻1600/守1600
1ターンに1度、手札から「氷結界」と名のついたモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
デッキからカードを1枚ドローする。
「相手のカードを破壊した上に、一気にモンスターを二体も……。響、あなたの新デッキもなかなかやるじゃない」
「まあね」
短く返事をした響は、バトルフェイズに移行する。
「バトル。ガンターラでキロスタスに攻撃」
「えっ、キロスタスに?」
響の攻撃宣言を聞いた暁は、驚きの表情を浮かべる。
「どうして白露に攻撃しないの? 白露のフィールドはガラ空きなんだから、二体でダイレクトアタックすれば一気に倒せるじゃない」
「だからこそ、だよ」
暁の疑問に、響が答える。
「白露も、自分のフィールドにカードがなければ、私のターンに攻撃を受けるのは分かってるはずだ。なんの考えもなしに、フィールドを空けておくとは思えない。つまり――」
「あたしは、手札の『虹クリボー』の効果を発動! このカードをガンターラに装備して、攻撃を封じる!」
響の言葉を遮り、白露が叫ぶ。それと同時に、時雨のモンスターに攻撃を仕掛けようとしていたガンターラは体を硬直させた。
「こういう風に、相手の攻撃を防ぐカードを手札に持っていると思ったのさ」
響は、動きを封じられたガンターラを指して言う。
「それに、キロスタスを放置していると、またカウンターを溜めて私たちのモンスターを破壊されるかもしれない。だから、早いうちに倒しておかないと。私は、氷結界の軍師でキロスタスに攻撃!」
もう一体のモンスターを使い、響は再び時雨のモンスターに攻撃する。今度は白露の妨害に遭うこともなく、攻撃を決めることに成功した。
時雨 LP4000→3300
時雨のライフが戦闘ダメージによって削られる。しかし、響の顔に先制の喜びはなかった。
「これは……」
響の視線は、時雨のフィールドに注がれている。そこには、破壊したはずのキロスタスが平然と居座っていた。
「どういうことだ? 確かに、戦闘で倒したはずなのに」
「雲魔物の共通効果さ」
微笑を浮かべて、時雨が言う。
「『雲魔物』モンスターは、戦闘では破壊されない。いくら攻撃しても、キロスタスを倒すことはできないよ」
「……なるほど。まさしく、捉えどころのない雲みたいなモンスターだね。私はカードを一枚伏せて、ターンエンド。この時、ガンターラの効果を発動して、墓地の『氷結界の舞姫』を特殊召喚するよ」
《氷結界の舞姫》
効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻1700/守 900
自分フィールド上にこのカード以外の「氷結界」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
1ターンに1度、手札の「氷結界」と名のついたモンスターを任意の枚数見せる事で、相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを見せた枚数分だけ持ち主の手札に戻す。
最終的に三体のモンスターをフィールドに並べ、響のターンが終了する。そして、再び白露にターンが回る。
「あたしのターン。あたしは、『黄泉ガエル』を召喚。さらに、手札の『ワンショット・ブースター』と『ジェスター・コンフィ』を特殊召喚!」
「レベル1のモンスターが三体……響、これって!」
「ああ、間違いない。くるよ、暁!」
白露の場に同レベルのモンスターが並んだのを見て、暁と響は警戒を強める。果たして、白露が次に取った行動は、二人が予想した通りのものだった。
「いっくよー! あたしは、レベル1のモンスター3体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! おいで、『No.54 反骨の闘士ライオンハート』!」
《黄泉ガエル》
効果モンスター
星1/水属性/水族/攻 100/守 100
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。
《ワンショット・ブースター》
効果モンスター
星1/地属性/機械族/攻 0/守 0
自分がモンスターの召喚に成功したターン、このカードは手札から特殊召喚できる。
また、このカードをリリースして発動できる。
このターン自分のモンスターと戦闘を行った相手モンスター1体を選択して破壊する。
《ジェスター・コンフィ》
効果モンスター
星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚した場合、次の相手のエンドフェイズ時に相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと表側表示のこのカードを持ち主の手札に戻す。
「ジェスター・コンフィ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
《No.54 反骨の闘士ライオンハート》
エクシーズ・効果モンスター
ランク1/地属性/戦士族/攻 100/守 100
レベル1モンスター×3
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードは戦闘では破壊されない。
このカードの戦闘によって自分が戦闘ダメージを受けた時、受けた戦闘ダメージと同じ数値のダメージを相手ライフに与える。
また、このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
「攻撃力100……。一体、何をするつもりなのかしら」
「分からない。だけど、相手は三体の素材を要求するエクシーズモンスターだ。油断はできないよ」
二人は白露が呼び出したモンスターを注意深く見つめる。しかし、白露はそれを気にする様子もなく、マイペースにデュエルを続ける。
「それじゃ、バトルフェイズ! あたしは、ライオンハートでガンターラを攻撃!」
「なっ!? 攻撃力が100しかないのに、自分から攻撃? 本当に何を考えて――」
無謀とも思える攻撃に、暁は眉を寄せる。だが、彼女が疑念を口にし終える前に、隣から声が響いた。
「トラップ発動、『デモンズ・チェーン』! ライオンハートの攻撃と効果を、ともに封じるよ」
《デモンズ・チェーン》
永続罠
フィールドの効果モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、その表側表示モンスターは攻撃できず、効果は無効化される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。
「響、どうしてこのタイミングでそのカードを? 相手の攻撃力は100しかないのに」
「それが理由だよ」
響は暁に答え、言葉を続ける。
「攻撃力100のモンスターで攻撃なんて、普通では考えられない。だけど、白露は現にそれをおこなった……。ということは、その行動には何らかの意味があるはずだ。違うかい、白露?」
「響は鋭いねー」
白露は「当たり」と頷く。
「ライオンハートは、オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで、このカードの戦闘で発生するダメージを相手に受けさせる効果を持ってるの。それを使って響に大ダメージを与えようとしたんだけど……バレてたか」
「あからさまに怪しい攻撃だったからね。流石に、効果までは把握してなかったけど」
「むー、残念」
攻撃を止められた白露は、そのまま何もせずにターンを終了する。次は、暁のターンである。
「私は、メインフェイズ時に前のターンで伏せたカードを発動するわ。罠カード『
《
通常罠
(1):エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体をデッキから手札に加える。
その後、自分の墓地の「融合」1枚を選んで手札に加える事ができる。
「私は、エクストラデッキの融合モンスター『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を見せることで、そこに名前が書かれているモンスターカード『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を手札に加える。さらに、墓地の魔法カード『融合』も手札に戻すわ。そして、スケール4の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』とスケール2の『宝玉の守護者』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」
《宝玉の守護者》
ペンデュラム・効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1500/守1800
【Pスケール:青2/赤2】
(1):このカードがPゾーンに存在する限り、1ターンに1度、自分フィールドの「究極宝玉神」モンスター及び「宝玉獣」カードは効果では破壊されない。
【モンスター効果】
(1):自分の「宝玉獣」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、自分の手札・フィールドのこのカードをリリースして発動できる。
その戦闘を行う自分のモンスターは、攻撃力・守備力がダメージ計算時のみ元々の数値の倍になり、ダメージステップ終了時に破壊される。
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
【Pスケール:青4/赤4】
「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。
(2):自分エンドフェイズに発動できる。
このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。
「ペンデュラムスケールをセッティングしたプレイヤーは、一ターンに一度、二つのスケールの間にある数と同じレベルのモンスターを同時に召喚できる。私がセッティングしたスケールは2と4。よって、レベル3のモンスターが同時に召喚可能よ」
「これが、噂に聞くペンデュラム召喚……。来るのか?」
暁の布陣を前に、時雨は身構える。しかし、暁が取った行動は予想外のものだった。
「私は『宝玉獣 コバルト・イーグル』を通常召喚。そして、コバルト・イーグルでライオンハートに攻撃!」
白露 LP4000→2700
「暁、どうしてペンデュラム召喚をしなかったんだい? 僕は、てっきりそうするものかと思っていたけど」
「私の手札には、レベル3のモンスターがいなかったのよ。それに、今はペンデュラム召喚をするつもりでペンデュラムスケールをセッティングしたわけじゃないし」
「どういう意味だい?」
時雨の問いに答える代わりに、暁は行動でその理由を示す。
「メインフェイズ2で、私はカードを一枚セット。さらにエンドフェイズ時にペンデュラムゾーンのオッドアイズの効果を発動。このカードを破壊することで、デッキから『宝玉の先導者』を手札に加えるわ」
「なるほど。それが、暁の目的だったんだね」
「そういうこと。ちなみに、フィールドで破壊されたペンデュラムカードは墓地へ送られずに表向きの状態でエクストラデッキに加わるから、『死者蘇生』とかでオッドアイズを奪おうとしても無駄よ」
「ご忠告どうも。けど、生憎と僕の手札に蘇生系のカードは無いから、せっかくの忠告を活かす機会は無さそうだ。さて、僕のターン。僕は『雲魔物-タービュランス』を通常召喚するよ」
《
効果モンスター
星4/水属性/天使族/攻 800/守 0
このカードは戦闘では破壊されない。
このカードがフィールド上に表側守備表示で存在する場合、このカードを破壊する。
このカードが召喚に成功した時、フィールド上の「雲魔物」と名のついたモンスターの数だけこのカードにフォッグカウンターを置く。
また、このカードに乗っているフォッグカウンターを1つ取り除く事で、自分のデッキまたはお互いの墓地から「雲魔物-スモークボール」1体を選んで特殊召喚する。
「タービュランスは、召喚時に場の『雲魔物』モンスターの数だけ自身にフォッグカウンターを置く。場にいる『雲魔物』は、僕のキロスタス、ゴースト・フォッグ、タービュランスの三体。よって、タービュランスにカウンターを三つ置く」
「前のターンに召喚したキロスタスと同じ効果……ってことは、タービュランスにもカウンターを使った効果が?」
「その通り。タービュランスは、フォッグカウンターを一つ取り除くたびに、デッキまたは墓地から『雲魔物-スモークボール』を一体特殊召喚することができる。僕はその効果を二回使い、二体のスモークボールを特殊召喚。さらに、レベル1のスモークボール2体でオーバーレイネットワークを構築。『シャイニート・マジシャン』をエクシーズ召喚するよ」
《
通常モンスター
星1/水属性/天使族/攻 200/守 600
小さな小さな雲魔物の子供雲。ひとりぼっちが大嫌いで、仲間達とそよ風に乗ってゆらゆらと散歩をするのが大好き。
《シャイニート・マジシャン》
エクシーズ・効果モンスター
ランク1/光属性/魔法使い族/攻 200/守2100
レベル1モンスター×2
このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。
また、このカードを対象とする魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
「僕はもう一度タービュランスの効果を使い、デッキから三体目のスモークボールを守備表示で特殊召喚する。さらに魔法カード『トランスターン』を発動。タービュランスをリリースして、デッキから『雲魔物-ニンバスマン』を特殊召喚!」
《トランスターン》
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
墓地へ送ったモンスターと種族・属性が同じでレベルが1つ高いモンスター1体をデッキから特殊召喚する。
「トランスターン」は1ターンに1枚しか発動できない。
《
効果モンスター
星5/水属性/天使族/攻1000/守1000
このカードは戦闘によっては破壊されない。
このカードが表側守備表示でフィールド上に存在する場合、このカードを破壊する。
このカードを生け贄召喚する場合、自分フィールド上の水属性モンスターを任意の数だけ生け贄にできる。
このカードの生け贄召喚に成功した時、生け贄に捧げた水属性モンスターの数だけフォッグカウンターをこのカードに置く。
このカードの攻撃力はフォッグカウンター1つにつき500ポイントアップする。
タービュランスの体を構成する雲が形を変え、新たなモンスターへと生まれ変わる。これまで時雨が召喚してきた「雲魔物」モンスターは、いずれも雲の面影を残した姿をしていたが、このニンバスマンは完全に人型をしており、今までの雲魔物とは違う雰囲気を感じさせた。
「これで攻撃の準備は整った。僕はバトルフェイズに移行。まずは、ゴースト・フォッグで響のガンターラに攻撃」
「ガンターラに!?」
驚きの声を上げたのは、響だ。
「忘れたのかい、時雨? 君が発動した天空の聖域は、既に破壊されている。何を企んでいるのかは知らないけど、攻撃力ゼロのゴースト・フォッグで攻撃したら、君はダイレクトアタックと同じダメージを受けることになるよ」
「それはどうかな?」
時雨は、小さく笑みを浮かべて答える。
「ゴースト・フォッグは、このカードの戦闘で発生するダメージを打ち消す効果を持ってる。だから、どんなに攻撃力の高いモンスターに攻撃しても、僕がダメージを受けることはない」
「そして、『雲魔物』共通の戦闘耐性によって戦闘破壊もされないということか……」
「いいや。ゴースト・フォッグには、その耐性は存在しないよ。ほとんどの『雲魔物』モンスターは戦闘破壊への耐性を持っているけど、すべての雲魔物に耐性があるわけじゃないんだ」
時雨の言葉通り、ガンターラに突進したゴースト・フォッグは反撃を受けて四散する。ダメージこそ発生しないものの、自分のモンスターを無駄死にさせるような時雨の行為に対して、響は眉を寄せる。
「戦闘破壊への耐性が無いのなら、どうしてゴースト・フォッグで攻撃を仕掛けたんだい? いくらダメージを受けないからといって、モンスターゾーンを空けるためだけにモンスターを自爆させるのは感心しないな」
「怖い顔しないでよ、響。僕だって、そんな理由でモンスターに攻撃を命じたりはしないさ。この攻撃には、ちゃんと意味がある」
「意味?」
「そうだよ」
頷いた時雨は、「ゴースト・フォッグの効果発動」と宣言する。
「このカードが戦闘で破壊された時、戦闘相手のモンスターのレベルと同じ数のフォッグカウンターを場のモンスターに置く。ガンターラのレベルは7。よって、僕は7個のフォッグカウンターをキロスタスに置く」
「キロスタスは、カウンターを二つ使うことでモンスターを一体破壊する……。その発動コストを溜めるのが狙いだったのか」
「うん。だけど、それだけじゃないよ」
「え?」
「響、あれ見てっ!」
怪訝そうな顔をする響の横で、暁が叫ぶ。暁が指す方向を見た響は、視界に入ったものを見て絶句した。
「なっ……」
響が目にしたものは、時雨が召喚したニンバスマンだった。しかし、その姿は最早、先ほどまでとは別物と言って良いほどの変貌を遂げていた。
「な、なんなのよこれ……。さっきとは比べ物にならないくらい大きくなってるわよ」
「ああ。ざっと三倍……いや、四倍の大きさはある。一体、何が起こって……」
突然の事態に、暁と響は困惑をあらわにする。その様子を楽しそうに眺めながら、時雨は説明を行う。
「驚いているみたいだね。まぁ、無理もないか。これが、ニンバスマンの効果さ」
「ニンバスマンの……?」
響の問いに、時雨は首肯を返す。
「ニンバスマンは、元々の攻撃力1000に加えて、場のフォッグカウンター1個につき攻撃力を500上昇させる。今、この場に存在するフォッグカウンターはキロスタスに置かれている7個。よって、ニンバスマンの攻撃力は3500アップして4500となる!」
「攻撃力4500!? それって、あの『
ニンバスマンの攻撃力を聞いた暁が、驚愕の表情を浮かべる。それだけの攻撃力があれば、このあと時雨がどうするかは容易に想像がつく。
「僕のバトルフェイズはまだ終わっていない。僕は、攻撃力4500のニンバスマンで氷結界の軍師に攻撃!」
攻撃力4000以上の攻撃を耐えられるモンスターなど、そういない。響のモンスターは一撃の下に粉砕され、主である彼女のライフは大きく削られた。
「うあぁっ!」
響 LP4000→1100
「響っ!!」
衝撃に耐えかねて倒れた響へ、暁が心配そうな眼差しを向ける。響は「大丈夫」と答えつつ、立ち上がる。
「私のライフはまだ残ってる。ライフポイントが尽きない限りは、いくらでも戦いようはあるさ」
しっかりとした口調で、響は言う。
「自信ありげな様子だね、響。でも忘れてないかい? 僕はこのターンで君のモンスターを全滅させることができる。僕はキロスタスの効果を発動。フォッグカウンターを四つ取り除き、ガンターラと氷結界の舞姫を破壊する!」
二体のモンスターが破壊され、響のフィールドは更地となる。たった一ターンの間に、彼女は攻防の要となるモンスターたちを全て失ってしまったのだった。
「フォッグカウンターの数が減ったことで、ニンバスマンの攻撃力は2500にダウンする。僕のターンはこれで終わりだよ」
「……やれやれ。まったく、手酷くやってくれたね」
ターンが回ってきた響は、溜息を漏らしつつ苦笑を浮かべる。
「せっかく展開したモンスターを一ターンで全滅させられるなんて。反撃を受けても、一体くらいは残ると思っていたんだけど」
「僕たちを甘く見てもらったら困るね。これでも最近は、君たちの代わりに日々D型艦の相手をしているんだから。デュエル歴は少し短くても、経験では決して負けないよ」
「まさか、ここまま終わりってことはないよね。先輩?」時雨はここで、挑発的な微笑を響に向ける。
「もちろん。時雨こそ、あまり私を見くびらないでほしいね。不死鳥の名は伊達じゃない。この程度で手詰まりにはならないよ」
時雨の挑発に対して、響は静かに答える。しかし、暁はその奥に潜む感情を察知して釘を刺す。
「響。あまり熱くなったらダメよ」
「分かってる。ちょっと、お返しをするだけさ」
「充分熱くなってるじゃない……」
暁は呆れ顔で響を見る。その視線の先で、響はデッキの上に指を乗せる。
「いくよ。私のターン」
先輩デュエリストとしての意地を込め、響はカードをドローした。
暁「じゃーん! 改良された私のデッキはどう?」
雷「ちょっと暁! 私のセリフ取らないで!」
響「暁の新デッキお披露目回と思わせておいて、私の新デッキも一緒にお披露目だよ。どうだったかな?」
電「響ちゃんの新デッキは氷結界ですか……。そういえば、別の所でデュエルしている響ちゃんも、氷結界を使っていましたね」
響「某動画サイトの、赤い帽子をかぶった決闘者が提督をしている動画のことだね。一応、うちの作者も、氷結界は前から私のデッキ候補に入れていたんだけど……。同じ人物からイメージしていくと、考えが似てしまうのは仕方ないということで」
雷「それはそうと、暁のデッキは随分と変わったわね。前は、メインデッキは宝玉獣のみ、エクストラデッキはゼロって状態だったのに」
電「今考えると、それで夕立ちゃんのファーニマルに勝てたのが不思議なのです」
響「それに対して、今度のデッキは宝玉獣以外も色々入れてみたよ。今回お披露目した中での目玉は、やっぱりオッドアイズかな」
暁「オッドアイズは、デッキのPモンスターを手札に加えるためのサーチ要員ってところね。見ての通り融合も入ってるから、その気になればオッドアイズと融合させることもできるわ。ビーストアイズ、ルーンアイズ、ボルテックス、全部出せるわ!」
響「読者さんの中には、幾つか予想を立ててくれた人もいたね。そこで挙げてもらったカードも、次回以降で登場する予定だよ」
電「ということは、次回もまた新しいカードが出てくるのですね」
暁「当然よ。私のデッキには、まだ見せてない新しい切り札も入ってるんだから!」
雷「それは楽しみね。どんなカードか、とくと見せてもらおうじゃない」
暁「ええ。目をおっきくして、よーく見てなさい! 次回、『新たな切り札』。デュエル・スタンバイ!」