活動報告をご覧になった方はご存じと思いますが、当初は充分なストックが溜まってから定期連載を再開するという方針だったところを、ストックの生産ペースが悪いため不定期更新での連載再開に方針転換いたしました。
ひとまずは、現在完成している2話分を、今回と次回に分けて投稿します。
……とまぁ、前置きはこのくらいとして。
いざっ、デュエッ! \(`д´)ゝ
「……で、この廊下の突き当たりにあるのが酒保よ。ここは小さな基地だから、品揃えもあまり多くはないけれど」
「酒保の販売員は、誰が担当しているんだい? トラックでは明石さんが酒保を経営しているけれど、まさか彼女がここにもいるはずはないし」
「うちは人員が少ないから、常駐の販売員はいないわ。普段は酒保を閉じていて、販売する時だけ開けているの。酒保入口に用意されている申請書に、買いたい物と数量を書いて執務室に持っていくと、秘書艦が酒保の鍵を開けてくれるわ。そういう意味だと、その日の秘書艦が販売員ってことになるかしら」
「なるほど」
天津風の説明に、響は小さな頷きを返す。
電と響がショートランド泊地に到着した翌日。二人は、泊地内の案内を受けていた。案内役は、昨日彼女たちの出迎え役を務めた天津風である。
「庁舎の中は、だいたいこんな感じね。他に、何か聞きたいことはある?」
「いいや。特にないよ」
「天津風ちゃんの説明、とっても分かりやすかったのです」
「ありがとう。なら、次に移りましょうか。今度は外の施設を案内するわ。……と言っても、並んでる施設自体はトラックと変わらないと思うけど」
二人を後ろに連れ、天津風は鎮守府庁舎の外に出る。
正式名称は「ショートランド泊地」であるが、ここもトラック泊地と同様に通称では「鎮守府」と呼ばれている。鎮守府庁舎も、大きさ以外はトラックと同じ造りになっている。噂によると、規格化によって庁舎の設計コスト低減を図っているらしい。その狙いが成功しているかは知らないが、今回の二人のように、別の鎮守府に派遣された時にもそれほど戸惑いを感じずに済む点は、確かに便利であった。
「あれがうちの工廠。その隣がドックよ。で、向こうが一般艦船用の岸壁。いつもは、補給物資を積んだ輸送船の接岸に使われてるわ」
天津風が指さす方向を追って視線を左右に振りながら、響と電は敷地内を歩いていく。と、工廠の中から現れた人影が三人を見つけて声をかけてきた。
「あっ、あそこにいるの天津風じゃん。おーい!」
呼びかけられた天津風は、足を止めて振り返る。そして、こちらに駆け寄ってくる相手に向かって答える。
「時津風。それに雪風も。何か用?」
「んー、別に用はないんだけどね。天津風がトラックからのお客さんと一緒に歩いてるのが見えたから、何してるのかなーと思って」
「この泊地の案内をしてたのよ。昨日は軽い顔合わせくらいしかできてなかったから」
「なるほどなるほどー。でもさ、うちみたいな小さな基地、案内するほど広くないんじゃない? 外にある建物なんて、どの鎮守府も同じだし」
「まあね。ちょうど、あと少しで案内し終わるところよ」
天津風と会話をしているのは、ワンピース型のセーラー服を着た黒髪の少女。非常に小柄で、元気良くも幼げな言動と相まって、どことなく子犬のような雰囲気を感じさせる。彼女の名は、時津風。天津風と同じ陽炎型駆逐艦の十番艦であり、彼女のすぐ下の妹にあたる。
「響さん、電さん。おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
二人にそう問いかけたのは、時津風と同じ制服に身を包んだ少女。やはり小柄な体つきで、黒髪の時津風に対してこちらは茶色の髪を短く整えている。名前は雪風。服装から分かるように、彼女もまた陽炎型の一員である。彼女は陽炎型の八番艦であるため、九番艦の天津風にとっては一応姉となる。
「ああ。ゆっくり休ませてもらったよ」
「電もなのです」
「それは良かったです。長距離航海は、やっぱり疲れますからね」
四人は昨日、響と電が泊地司令官に到着の報告を行った際に顔を合わせているため、互いに顔と名前は認識している。しかし、その時は短い自己紹介をした程度で終わっており、まともな会話をするのはこれが初めてだった。
「あなたたちは、工廠で何をしてたの?」
「艤装の整備だよー」
天津風の問いに、時津風が答える。
「ほら、今日はあたしたちが当直の日じゃん? だから、工廠の妖精たちと一緒に艤装の調子を見てたんだよ」
「当直?」
「当直待機任務。深海棲艦が出てきた時にすぐ出撃できるように、待機しておく当番のことだよ。うちは人数が少ないから、あたしと雪風のペアと天津風と島風のペアで、交代でやってるんだ。トラックにはないの?」
「はい。トラックでは、時間ごとに哨戒部隊を出撃させて周辺警戒をしているのです」
「やっぱ人手の多いところは違うなぁー。うちもトラックくらい大きかったら、あたしも一日中当直してなくてもいいのに。いいないいなー」
「文句言わないの。うちは進攻のための拠点じゃなくて、あくまで敵の動きを掴むための拠点なんだから。兵力が少ないのは仕方ないわ」
「でも、いくらなんでも少なすぎでしょー。今の戦力は駆逐艦四と重巡一だけだよ? これじゃ敵が攻めてきたらひとたまりもないって。そうだ、響たちもトラックに帰ったら、うちの戦力をもっと増やすように言ってよ。しれぇにもいっつも言ってるんだけど、全然増えないんだよ。もー」
「響たちに頼んでも、たぶん変わらないわよ。それに、ここに増援が送られるってことは、敵の動きが活発化しているということ。うちは寂れてるくらいがちょうどいいのよ」
諭すような口調で、天津風は時津風に言う。彼女は続いて電たちに顔を向けると、ややきまりの悪そうな表情を作り、
「……とまぁ。こんな状態だから、もしかしたら、あなたたちにも手を貸してもらうことがあるかもしれないわ。デュエルの指導以外にも仕事を増やしてしまって申し訳ないんだけれど、その時は手伝ってもらってもいいかしら?」
「もちろんなのです」
「何もせずに居候しているのは、気がひけるからね」
「ありがとう。助かるわ」
頬を緩める天津風。その横から、時津風が会話に割り込む。
「そうそう。そのデュエル指導ってのは、いつ始まるの?」
「明日からだよ。今日一日は鎮守府内の把握と休養を兼ねて休ませてもらって、明日から本格的に教導を開始する。最初はデッキ構築で時間を使うから、君たちが実際にデュエルすることになるのは明後日以降になるかな」
「ふーん」
頷いた時津風は、何食わぬ顔でそのまま言葉を続ける。
「じゃあさ。今ここで二人のデュエルを見せてくれない?」
「はぁ!?」
真っ先に声を上げたのは、天津風だった。
「時津風。あなた、なに言ってるのよ」
天津風は、先ほど時津風が出てきた工廠を指さす。
「あなたは今日の当直なんだから、すぐ出撃できるように待機してないとダメじゃない。さっき自分でも言ってたでしょ」
「だって暇なんだもん」
それに、と時津風は続ける。
「工廠の近くにいれば平気平気。いざという時は、すぐに出れるって」
「そういう問題じゃ……」
「じゃあ、何? 天津風は、あたしと雪風に一日中ずーっとずーっと何もしないで待機してろって言うの? 天津風も待機中が暇なことくらい知ってるでしょ。なのに、それって酷くない? 拷問だよ、拷問!」
「ああ、もう……」
時津風に詰め寄られた天津風は、うんざりした様子で首を振る。
「だからって、あなたの都合ばかり押しつけないの。響たちだって、長旅で疲れてるのよ? そんな二人を休ませてあげないことこそ、酷いことじゃない」
「う~……」
時津風は頬を膨らませて天津風を睨むが、上手い反論を口にできない。このまま天津風が口論を制するかと思われた時、意外な援護射撃が放たれた。
「えっと……。電は、別に構わないのですけど……」
「えっ?」
おずおずと切り出された申し出に、天津風は驚きを、時津風は喜びを見せる。電は、響に意見を求める視線を送りつつ、先を続ける。
「昨日ゆっくり休ませてもらったおかげで、疲れはかなり取れているのです。デュエルするくらいは、問題ないのです」
「ああ。私も構わないよ」
「本当にいいの? 無理に時津風のわがままに付き合わなくても……」
「大丈夫なのです。無理はしていません」
「うん。それに、実際にデュエルを見てもらえば、明日からの参考になるかもしれないからね」
「やったーやったー! 二人とも、ありがとー!」
「それじゃあ、私はデュエルディスクを取ってくるから、少し待っていてくれ」
数分後、二人分のデュエルディスクを抱えた響が戻ってくる。電は響からディスクを受け取ると、それを左腕に装着し、自身のデッキを所定の位置に収める。
「さて、あとはデュエルができる場所を探すだけだけれど……。天津風。どこか、適度にひらけていて、多少暴れても平気な場所はあるかい?」
「暴れる、って……。デュエルって、そんなに危なっかしいものなの?」
「『実戦』では、ね。今は違うけれど、臨場感を高めるために多少の衝撃が発生したりするから、念のため」
「そうね……。それなら、さっき軽く紹介した一般艦船用の岸壁はどうかしら? コンテナ荷役用のクレーンはあるけれど、今は荷物も少ないし、それなりの広さがあるわ」
「いいね。そこにしよう。案内してくれるかい?」
天津風の先導で、一行は岸壁へと移動する。彼女の言う通り、岸壁には二基のガントリークレーンが建っているが、コンテナは隅に一山積まれているのみで、全体的に見ると広々としていた。
「なりゆきですることになった勝負とはいえ、やるからには勝たせてもらうよ。妹だからといって、手加減はしない」
「当然なのです。手を抜いて勝てるほど、電は甘い相手ではないということは、響ちゃんが一番よく知っているはずなのですよ」
二人は互いに慣れた様子で間合いをとり、デュエルディスクを構える。あとは、決闘の合図を鳴らすだけ。
「早速始めようか。時津風たちをあまり待たせるのも悪いし」
「そうですね。いきますよ――」
「「デュエル!!」」
電 LP4000
響 LP4000
「先攻は電なのです。私は、モンスターをセット。これでターン終了なのです」
「私のターン、ドロー。私はまず、二枚の永続魔法を発動するよ。発動するのは、『補給部隊』と『炎舞-「
《補給部隊》
永続魔法
(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動する。
自分はデッキから1枚ドローする。
《炎舞-「
永続魔法
「炎舞-「天璣」」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える事ができる。
(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの獣戦士族モンスターの攻撃力は100アップする。
《炎王獣 ヤクシャ》
効果モンスター
星4/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200
自分フィールド上に表側表示で存在する「炎王」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊された場合、このカードを手札から特殊召喚できる。
また、このカードが破壊され墓地へ送られた場合、自分の手札・フィールド上のカード1枚を選んで破壊できる。
「炎王獣 ヤクシャ」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
「バトルだ。私は、ヤクシャで裏守備モンスターに攻撃!」
燃え盛る棍棒を持った獣人が、裏側表示のカードを強く打ち据える。衝撃によって裏返り、表となったカードは――
「私が伏せていたのは、『電池メン-ボタン型』。そのリバース効果で、デッキから『電池メン-角型』を守備表示で特殊召喚するのです」
《電池メン-ボタン型》
効果モンスター
星1/光属性/雷族/攻 100/守 100
リバース:デッキから「電池メン-ボタン型」以外のレベル4以下の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを1枚ドローする。
《電池メン-角型》
効果モンスター
星4/光属性/雷族/攻1000/守1000
「電池メン-角型」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「電池メン」モンスター1体を手札に加え、このカードの攻撃力・守備力を元々の倍にする。
(2):自分エンドフェイズに発動する。
このカードを破壊する。
「電池メン-角型は、特殊召喚した時にデッキから『電池メン』モンスターを手札に加えることができるのです。私は『充電池メン』を手札に。そして、この効果を発動した角型は、攻撃力と守備力が倍になるのです。さらに、電池メン-ボタン型が戦闘で破壊された時、私はカードを一枚ドローできるのです」
「やっぱり、伏せていたのはボタン型だったか。電のデッキで、裏守備表示で出す意味のあるモンスターは、それくらいだからね」
「分かっていたなら、どうして攻撃したのですか?」
「とりあえずの様子見、といったところさ。放っておいても、次のターンには反転召喚されて同じことになっていただろうし。私はこれで、ターンエンドだ」
「私のターンですね」
電は、フィールドと自分の手札を見比べ、小さく笑みを作る。
「響ちゃんには悪いですけど、もしかしたらこのデュエル、ここで終わってしまうかもしれないのです」
「くるか……っ!」
勝利宣言に等しい電の言葉に、響は表情を固くする。
「私は、フィールドにいる角型をリリースして『充電池メン』を召喚するのです。充電池メンは、召喚に成功した時にデッキから『電池メン』モンスターを呼び出すことができます。私は、『電池メン-単三型』を攻撃表示で特殊召喚。そして、この特殊召喚に成功した時、手札から速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動するのです!」
《充電池メン》
効果モンスター
星5/光属性/雷族/攻1800/守1200
このカードの召喚に成功した時、手札・デッキから「充電池メン」以外の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。
このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上の雷族モンスターの数×300ポイントアップする。
《電池メン-単三型》
効果モンスター
星3/光属性/雷族/攻 0/守 0
自分フィールド上の「電池メン-単三型」が全て攻撃表示だった場合、「電池メン-単三型」1体につきこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
自分フィールド上の「電池メン-単三型」が全て守備表示だった場合、「電池メン-単三型」1体につきこのカードの守備力は1000ポイントアップする。
《地獄の暴走召喚》
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。
「地獄の暴走召喚は、自分が攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚した時に、同名モンスターを可能な限り特殊召喚できるカードなのです。その代わり、相手も自分のモンスターを一体選んで、同じように同名モンスターを可能な限り特殊召喚できるのです」
「私のフィールドにいるのは、ヤクシャだけ。私は、デッキから二体のヤクシャを守備表示で特殊召喚する」
「とはいえ……」と、響は電の手札を見る。
「この様子だと、私のモンスターが増えたところで、あまり意味はなさそうだけどね。電、君はもう、あのカードを手札に持っているんじゃないかい?」
「流石は響ちゃん。お見通しですね」
肯定の代わりに、電は手札から一枚のカードを場に出す。
「私は、魔法カード『
《
通常魔法
自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが3体以上存在する場合に発動できる。
相手フィールド上のカードを全て破壊する。
電のフィールドに並ぶ電池メンたちから溢れ出た電流が、響のカードを焼き尽くす。電撃の被害はモンスターゾーンだけでなく魔法・罠ゾーンにも及び、響の陣地は一瞬で丸裸となった。
「やっぱりね。だけど、私もタダでは転ばないよ。私は、破壊されたヤクシャの効果を発動。このカードが破壊された時、自分の手札・フィールドのカードを一枚破壊することができる。私が破壊するのは、手札の『炎王神獣 ガルドニクス』だ」
「ガルドニクス……」
響が墓地へ送ったカードを見て、電は目つきを険しくする。
「炎王神獣 ガルドニクス」――もはや響の代名詞になっていると言ってもよいこのモンスターは、カード効果によって破壊された場合、次のスタンバイフェイズにフィールドに特殊召喚される効果を持っている。そしてその時、フィールド上に存在する他のモンスターをすべて破壊する。便利なことに、この効果はフィールド以外で破壊された際にも使えるため、今のようにして発動条件を満たすこともできるのであった。
「でも、その効果が発動されるのも、次のターンまでデュエルが続いていた時の話なのです。このターンで決着をつけてしまえば、問題ありません。私は、四体の電池メンで響ちゃんにダイレクトアタック!」
電のモンスターの総攻撃力は12000。この攻撃がそのまま通れば、オーバーキルという言葉では済まない量のダメージが叩き込まれることとなる。
しかし、相手はトラック泊地でも指折りの実力を持つデュエリスト。これをまともに食らうほど間抜けではない。
「私は、手札の『速攻のかかし』の効果を発動。このカードを手札から捨てることで、攻撃を無効にしてバトルフェイズを強制終了させる」
《速攻のかかし》
効果モンスター
星1/地属性/機械族/攻 0/守 0
相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードを手札から捨てて発動できる。
その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。
「やっぱり、そう簡単には倒させてくれませんね……。私はカードを一枚伏せて、ターンを終了するのです」
「私のターン。このスタンバイフェイズ時、墓地に眠るガルドニクスの効果が発動する」
響のフィールドに、一本の火柱が立ち昇る。それを破って現れるのは、炎よりもなお深い赤色に身を包む神鳥。
「不死なる鳥よ。紅の翼翻し、立ちはだかる者を焼き払え! 出でよ、『炎王神獣 ガルドニクス』!!」
《炎王神獣 ガルドニクス》
効果モンスター
星8/炎属性/鳥獣族/攻2700/守1700
このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する。
また、このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから「炎王神獣 ガルドニクス」以外の「炎王」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。
「ガルドニクスの効果発動。このカードが自身の効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上の他のモンスターをすべて破壊する!」
ガルドニクスが巻き起こす炎の嵐に、電のモンスターが呑まれていく。これで、彼女の盾となるモンスターは全滅。一ターン前と同じ戦況が、両者の立場を逆にして再現される。
「目には目を、歯には歯を、ってね。今度はこちらが攻めさせてもらうよ。私は、『熱血獣士ウルフバーク』を通常召喚。このカードの効果を発動して、墓地のヤクシャを守備表示で特殊召喚する。そして、レベル4のウルフバークとヤクシャでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れろ、『魁炎星王-ソウコ』!」
《熱血獣士ウルフバーク》
効果モンスター
星4/炎属性/獣戦士族/攻1600/守1200
自分の墓地の獣戦士族・炎属性・レベル4モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
「熱血獣士ウルフバーク」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
《魁炎星王-ソウコ》
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/炎属性/獣戦士族/攻2200/守1800
獣戦士族レベル4モンスター×2
このカードをエクシーズ召喚した時、デッキから「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚をセットできる。
また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、獣戦士族以外のフィールド上の全ての効果モンスターの効果を相手ターン終了時まで無効にする。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分フィールド上の表側表示の「炎舞」と名のついた魔法・罠カード3枚を墓地へ送る事で、同じ攻撃力を持つレベル4以下の獣戦士族モンスター2体をデッキから守備表示で特殊召喚する。
「ソウコのエクシーズ召喚に成功した時、私はデッキから『炎舞』魔法・罠カードを一枚選んでセットすることができる。私は二枚目の『炎舞-「天璣」』をセットし、すぐにこれを発動。その効果により、デッキから二枚目のウルフバークを手札に加える。そして、天璣が発動している限り、私のフィールドに存在する獣戦士族モンスターは攻撃力が100アップする。発動中の天璣は一枚だから、獣戦士族のソウコは攻撃力が2200から2300に上がるよ」
二体の攻撃力の合計は5000。先ほどの電には及ばないが、それでも相手プレイヤー一人を仕留めるには充分な威力だ。
「バトル。私は、ソウコとガルドニクスで電にダイレクトアタック!」
「そうはさせないのです! 私は、響ちゃんがバトルフェイズに移る前に伏せカードを発動。罠カード『威嚇する咆哮』! これで、響ちゃんはこのターン攻撃宣言をすることができなくなったのです」
《威嚇する咆哮》
通常罠
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。
「上手くしのいだね。私はカードを一枚セットし、ターンエンド」
「私のターン。ドロー!」
引いたカードを手札に加えた電は、思案げな表情で眉を寄せる。彼女は少しの間、フィールドと手札を見比べて考え込んでいたが、一つ頷くと行動を開始した。
「本当は、準備が整うまでもう少し待っていたいけど……。ここは、響ちゃんのコンボが完成する前に攻めるのです。私は魔法カード『
《
通常魔法
500ライフポイントを払う。
自分の墓地から「電池メン」という名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
電 LP4000→3500
「角型の効果は、デッキから『電池メン』モンスターをサーチする効果……。どのカードを手札に加えるつもりだい、電?」
「私が選ぶのは、二枚目の充電池メンなのです。私は、角型をリリースすることで、この充電池メンをアドバンス召喚。その効果により、デッキから三体目の充電池メンを特殊召喚するのです。さらに、自分フィールドに『電池メン』が二体以上いることで、手札から『燃料電池メン』を特殊召喚!」
「燃料電池メンか……。これは少し、嫌な相手だね」
そう独語した響は、デュエルディスクのスイッチを押して伏せカードを発動させる。
「リバースカード、オープン。罠カード『激流葬』。このカードの効果により、フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊するよ」
《燃料電池メン》
効果モンスター
星6/光属性/雷族/攻2100/守 0
自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上の「電池メン」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。
相手フィールド上のカード1枚を選択して持ち主の手札に戻す。
《激流葬》
通常罠
(1):モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。
フィールドのモンスターを全て破壊する。
突如として噴出した激しい水流が、場にいるモンスターを押し流していく。先ほどガルドニクスが火の海を作り出した時と同じく、奔流は敵味方の区別なくあらゆるものを粉砕し、その存在を消し去った。
「身内で散々デュエルをしているせいで、お互いに、相手のデッキ内容はよく理解しているからね。燃料電池メンは、他の電池メンをリリースすることで場のカードを手札に戻すことのできるモンスター。その効果をガルドニクスに使われては堪らないから、先に対処させてもらったよ」
「……私はカードを一枚伏せて、ターン終了です」
「私のターン」
ドローフェイズを経て、スタンバイフェイズへ。ここで、再びガルドニクスの効果が発動する。
「たとえ、この世のすべてを沈める大水であろうとも、不死鳥の火を絶やすことはできない。いま再び目覚めよ、紅の神獣! 舞い上がれ、炎王神獣ガルドニクス!」
まだそこかしこに水が残る地面を一気に乾かすほどの熱を持つ火柱が、フィールドの中央にそそり立つ。火柱は徐々に巨鳥の姿を形作っていき、そして、
「トラップ発動!」
その声が響くとともに、雷に打たれて消滅した。
「何が!?」
前触れなく訪れた変事に、響は目を見開く。次いで彼女は、直前に聞こえた声の主へと視線を向ける。
「電!? 一体、何を……」
「ふふふっ。響ちゃんのこんなに驚いた顔、久しぶりに見たのです」
面白そうに笑った電は、「これなのですよ」と一枚のカードを指す。
「ガルドニクスの効果にチェーンして、このカードを発動させてもらいました。カウンター罠『神の警告』。この効果で、ガルドニクスの自己再生効果を無効にしたのです」
《神の警告》
カウンター罠
(1):2000LPを払って以下の効果を発動できる。
●モンスターを特殊召喚する効果を含む、モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。
それを無効にし、そのモンスターを破壊する。
電 LP3500→1500
「響ちゃんの言う通り、不死鳥の炎は簡単なことでは消えたりしないのです。でも流石に、神様の力には逆らえなかったようですね」
悪戯っぽい笑みを浮かべる電。しかし彼女はすぐに、表情を曇らせて溜息をつく。
「……とはいえ。電ができるのはここまでなのですけれど」
「どうやら、そのようだね」
平静を取り戻したらしい響は、常の口調でその言葉に同意する。
「神の警告を発動したことで、君のライフは1500になった。そして、君も知っての通り、私の手札にはその数値を上回る攻撃力を持つモンスターがいる」
「熱血獣士ウルフバーク……。その攻撃力は、1600」
「そう。さらに、天璣が発動していることで、攻撃力は1700にアップする。君のフィールドはガラ空き、手札もゼロ。私の記憶が間違っていなければ、墓地で発動する効果を持ったカードもないはずだけれど……違うかい?」
「……正解なのです」
「それなら、勝負ありだ。私はウルフバークを通常召喚。効果を使えばエクシーズ召喚にも繋げられるけど、その必要はもうないね。私はウルフバークで、電にダイレクトアタック」
電 LP1500→0
諦念を浮かべた顔で、電は両手を挙げる。そこへ響のモンスターの攻撃が加えられ、電のライフはゼロを刻んだ。
「はあ……。今回も、響ちゃんに勝てなかったのです」
デュエルディスクを収納携帯に戻しながら、電は再び溜息をつく。
「今回『も』って、いつも響には負けてるの?」
歩み寄る天津風に、電は弱り顔で答える。
「全敗というわけではないですけど……。でも、勝つ時よりは、負けてしまうことの方が多いのです」
「へぇ。響はデュエルが強いのね」
「はい。私たち姉妹の中では一番強いのです。トラック泊地全体で見ても、指折りの実力だと思いますよ」
「だからこそ、今回の教官役に選ばれたってことね。それほどの腕を持った相手に教えてもらえるとは、私たちも光栄だわ」
「そんな大層なものじゃないよ。電、私も褒められて悪い気はしないけれど、身贔屓もほどほどにね」
「謙遜することはないと思うのですよ。響ちゃん」
「いいから。こういうのは、あまり得意じゃないんだ」
そっぽを向いて言う響の頬は、仄かに赤みを帯びている。その横顔を見ながら、電たちは目を合わせて微笑する。
「……コホン。それで、明日からの教導についてだけれど」
電たちの視線に気づいてか、わざとらしい咳払いをして響は話題を移す。
「まずは、天津風たちに自分のデッキを作ってもらおうと思ってる。カードは既に輸送船に積まれて到着済みと聞いているけど、間違いないかい?」
「ええ、その通りよ。一応、あなたたちが来る前に各自で気になるカードを見繕ってもみたけど、ルールが分からないから、何が何だかサッパリだったわ」
「それは仕方ない。このゲームにおいて、何一つ知識のない状態でデッキを作るのは至難の業だからね。とりあえず、明日はそれぞれが選んだカードを持ってきてもらえるかな。それを基にして、デッキを作っていこう」
「分かったわ。ここにいない人には、私から伝えておくわね」
「よろしく頼むよ。ところで、泊地の案内の続きだけれど……」
「あー。それなら、さっきまでの内容で終わりよ。主立ったことは、全部紹介しちゃったし。あとは休むなり何なり、好きに過ごしてちょうだい」
「ならさ、ならさー! もっかいデュエル見せて――」
「時津風、あなたはさっさと持ち場に戻る! 当直任務中でしょ」
「うわーん! 天津風のイジワルー!」
「駄々をこねない! ……ちょっ、髪は引っ張らないでって。吹き流しが取れちゃうじゃない! ああ、もうっ。雪風!」
「はいはい。行きますよ、時津風」
天津風への抗議の声を上げながら、時津風は雪風に両脇を抱えられ運ばれていく。島風たちへの伝言のために天津風もその場を去った後、電は響に問いかける。
「響ちゃん。このあと、どうしましょうか?」
「んー、そうだね」
少し考えた後で、響は答える。
「部屋に戻って休むのもいいけれど……。どうせなら、もう一勝負しないかい?」
「またデュエルするのですか?」
「せっかくデュエルディスクを持ってきたのに、一試合だけで終わらすのはもったいないからさ。それに……」
響は、口角を上げて不敵な笑みを電に向ける。
「負けたままで、悔しくはないのかい?」
「……そう言われたら、引き下がるわけにはいきませんね」
電はデュエルディスクを再起動させ、響から距離を取る。
「今度こそ、負けないのです」
潮風の中で対峙する二人。岸壁に、再び決闘の掛け声が響いた。
電「読者の皆さん、大変お待たせしました。今回から『鎮守府決斗録』の連載が再開されます。更新を気長に待って頂いていた方々には、作者さんの代わりに心からお礼を申し上げるのです」
雷「惜しむらくは、今までみたいな定期更新じゃないということね」
電「事情は作者さんが活動報告や今回の前書きで説明している通りなので、そこはご容赦願いたいのです……。定期更新にこだわって休載が続くよりは、不定期でも連載を再開した方が良いという判断なのです」
暁「ところで、休載前の後書きだと、今回は現地の艦娘とデュエルのはずじゃなかった?」
電「最初はそのはずでしたが、休載中に構成が少し変わって、間に一話入れることになったのです」
暁「ふーん。それにしても、数日間の長距離航海してきた翌日なのに、いきなりデュエルって……しかも連戦。二人とも元気ねぇ」
響「だって当然だろう? デュエリストなら」
暁「ごめん響。私には、あなたの言うデュエリストがどんな存在なのか分からないわ」
雷「結局、二戦目はどっちが勝ったの?」
電「それは……」
響「秘密。どちらが勝ったかは、ご想像にお任せするよ」
雷「さては響、負けたわね? だから隠そうとしてるんでしょ」
響「さあ? どうだろうね」
雷「むう……。普段から表情を顔に出さないから、とぼけられると判断がつかないわね……」
暁「次回の内容は、このデュエルってこと?」
電「いいえ。次回からは、天津風ちゃんたちへの教導が始まるのです。さっそく、ショートランドの艦娘同士でデュエルしてもらうのです」
雷「向こうの艦娘は、どんなデッキを使うのかしら。気になるわね」
電「それは次回のお楽しみ、なのです。次回『準星を切り裂く鎌風』。デュエル・スタンバイなのです」