鎮守府決斗録   作:石田零

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38 ゼロと2分の1の戦い

時津風 LP4000 手札5枚

<モンスター>

なし

<魔法・罠>

なし

 

雪風 LP4000 手札5枚

<モンスター>

なし

<魔法・罠>

なし

 

 

 

「えーっと。先攻プレイヤーは、デュエルディスクの表示ランプが光った方だから……あたしか。それじゃ、あたしのターン」

 

 先攻を得たのは時津風。彼女は手札を眺めて唸った後、考えを固めて動き出す。

 

「あたしは『ダーク・グレファー』を通常召喚。そして、そのモンスター効果を発動。手札の『インフェルニティ・ネクロマンサー』を捨てて、デッキの『インフェルニティ・デーモン』を墓地へ送るよ。さらに、魔法カード『簡易融合(インスタントフュージョン)』を発動! ライフを1000払って、レベル5以下の融合モンスターを特殊召喚する。出番だよ、マブラスちゃん!」

 

 

《ダーク・グレファー》

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1700/守1600

(1):このカードは手札からレベル5以上の闇属性モンスター1体を捨てて、手札から特殊召喚できる。

(2):1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を捨てて発動できる。

デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。

 

簡易融合(インスタントフュージョン)

通常魔法

「簡易融合」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):1000LPを払って発動できる。

レベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、エンドフェイズに破壊される。

 

《マブラス》

融合モンスター

星4/風属性/鳥獣族/攻1300/守 900

「タイホーン」+「邪炎の翼」

 

時津風 LP4000→3000

 

 

 時津風の場に、筋骨隆々とした男と、金色の鶏冠を持つ鳥が並ぶ。ダーク・グレファーはともかく、マブラスの方はお世辞にも高い戦闘力を持っているとは言えないが、雪風が気を緩める様子はない。

 

「二体のモンスターは、両方ともレベル4。ということは、時津風が狙っているのは……」

 

「その通り! あたしは、レベル4のダーク・グレファーとマブラスで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚、『ラヴァルバル・チェイン』!」

 

 

《ラヴァルバル・チェイン》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/炎属性/海竜族/攻1800/守1000

レベル4モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●デッキからカード1枚を選んで墓地へ送る。

●デッキからモンスター1体を選んでデッキの一番上に置く。

 

 

「あたしは、チェインの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで、デッキの一番上に好きなモンスターを置くことができる。あたしが選ぶのは、『インフェルニティ・デーモン』。カードを二枚伏せて、ターン終了だよ」

 

 二枚の伏せカードを出したことにより、時津風の手札は0枚となる。外野からデュエルを観戦している響は、それを見て眉を寄せた。

 

「一ターン目で、手札をすべて使い切ったか……」

 

「それって、まずいことなの?」

 

 天津風が、響の表情に気づいて問いかける。響は「いいや」と否定しつつも、「ただ」と付け加える。

 

「手札のカードには、相手の動きに対する反撃手段としての意味合いもある。それが無いということは、自分は予備戦力を持っていないと公言しているようなものだ。頼れるものは、今の場にあるカードだけ。その布陣を突破されたら、そのまま押し切られてしまう可能性が高い」

 

「時津風が手札を全部伏せたのは、あの二枚が強力な罠カードだからかもしれないわ。それに、カードを出し惜しみしたせいで相手の攻撃を防ぎ切れなかったら、元も子もないんじゃない?」

 

「その意見も、もっともだ。だから、最初に答えたように、これを悪手だと言い切ることはできない。時津風の選択が吉と出るか凶と出るか、その答えは雪風の引き次第だ」

 

「それに……」時津風に目を向けた響は、そこで言葉を止める。

 

「それに?」

 

 急に口を閉ざした響の横顔を、天津風は怪訝そうに覗く。その視線に気づいた響は、天津風を一瞥した後、時津風に視線を戻し、

 

「時津風の、あの表情。もしかしたら、彼女は何かを狙っているのかもしれない」

 

「それって、自分の手札をわざと0にしたってこと?」

 

「確証はないけどね。いずれにせよ、目の離せない戦いになりそうだ」

 

 二人が会話をしている間に雪風のターンが始まり、彼女は場にカードを並べ始める。

 

「いきますよ! 私は、永続魔法『セカンド・チャンス』を発動。続けて、通常魔法『カップ・オブ・エース』を発動します」

 

 

《セカンド・チャンス》

永続魔法

自分がコイントスを行った場合、その処理時に1度だけ、コイントスを最初からやり直す事ができる。

「セカンド・チャンス」の効果は1ターンに1度しか適用できない。

 

《カップ・オブ・エース》

通常魔法

コイントスを1回行う。

表が出た場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。

裏が出た場合、相手はデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 フィールドの中央に、まばゆく光る黄金の杯が出現する。よく見ると、杯の底には一枚の金貨があり、錨の絵が彫られているのが確認できた。

 

「カップ・オブ・エースは、コイントスの結果によって効果が変わるカードです。これからその効果を決めるコイントスをします」

 

 杯の底にあった金貨がゆっくりと浮上し、空中で回転して表裏の両面を双方のプレイヤーに見せる。

 

「このコインには、海軍の象徴である錨と桜の絵柄が彫られています。表が錨、裏が桜です。表が出れば雪風が、裏が出れば時津風がカードを二枚ドローできます。いいですね?」

 

「……いいよー」

 

「それでは、コインを投げますよ。……それっ!」

 

 雪風の掛け声をともに、ソリッドビジョンのコインが宙を舞う。軽やかな金属音を立てて再び杯の底に落ちたコインが上に向けていたのは……錨の図柄。

 

「出たのは表! よって雪風は、カードを二枚ドローします。そして、手札から永続魔法『機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)』を発動し、さらに『可変機獣 ガンナードラゴン』を通常召喚します」

 

 

機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)

永続魔法

機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、そのモンスターより攻撃力の低い、同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》

効果モンスター

星7/闇属性/機械族/攻2800/守2000

(1):このカードはリリースなしで通常召喚できる。

(2):このカードの(1)の方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

 

 

「レベル7のモンスターを、リリースなしで召喚!? 響と電は、レベル5以上のモンスターを出す時にはリリースが必要だって言ってたのに」

 

「その通りですよ、時津風。ほとんどの上級モンスターは、自分のモンスターをリリースしないと召喚できません。ですが、このガンナードラゴンは特別に、リリースなしでも召喚できる効果を持っているんです。その代わり、リリースなしで召喚した場合には攻撃力と守備力が半分になってしまいますが」

 

「てことは、攻撃力は1400かぁ。それなら全然怖くないや。驚かさないでよ、もうー」

 

 安堵の息をつく時津風だったが、その直後に彼女は再び驚かされることとなる。

 

「バトルです。私は、ガンナードラゴンでラヴァルバル・チェインに攻撃!」

 

「えっ!?」

 

 攻撃宣言した雪風を、時津風は信じられない表情で見つめる。

 

「何考えてるの雪風? 今のガンナードラゴンは攻撃力が半分になってるって、自分で言ってたじゃん。忘れたの?」

 

「いいえ。しっかりと覚えていますよ」

 

「なら、どうして?」

 

「すぐに分かりますよ」

 

 体の左右に装備された砲身を振り上げながら、ガンナードラゴンがチェインに突進する。その姿はかなりの迫力があるが、いかんせん攻撃力が半減している身、見た目とは裏腹にあっさりと返り討ちにあう。

 

 

雪風 LP4000→3600

 

 

「ガンナードラゴンが破壊された瞬間、さっき発動した機甲部隊の最前線の効果を発動! デッキから、ガンナードラゴンより低い攻撃力の機械族モンスターを特殊召喚します」

 

「これが雪風の狙いってこと? でも、この効果で呼び出せるのは、攻撃力1400のガンナードラゴンよりもさらに弱いモンスターだけ。結局、チェインを倒すことはできないよ」

 

「いいえ。できます」

 

「えっ?」

 

「機甲部隊の最前線が参照するのは、墓地での攻撃力。つまり、破壊されたモンスターの元々の攻撃力が基準の数値になります」

 

「ガンナードラゴンの元々の攻撃力は2800。ということは……」

 

「私が特殊召喚できるのは、それより低い攻撃力のモンスター。来てください、『リボルバー・ドラゴン』!」

 

 

《リボルバー・ドラゴン》

効果モンスター

星7/闇属性/機械族/攻2600/守2200

(1):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

コイントスを3回行い、その内2回以上が表だった場合、そのモンスターを破壊する。

 

 

 その名の通り、リボルバー型の頭部を持った機械竜が雪風のフィールドに出現する。リボルバー・ドラゴンは重い金属音を鳴らして撃鉄を起こすと、黒光りする銃口をラヴァルバル・チェインへと向けた。

 

「バトルフェイズ中の特殊召喚なので、リボルバー・ドラゴンは攻撃が可能です。私は、リボルバー・ドラゴンでチェインに攻撃!」

 

 雪風の命令と同時にリボルバー・ドラゴンが発砲する。巨大な弾丸に貫かれたチェインは、胴の中心に大きな穴を開けて爆散した。

 

 

時津風 LP3000→2200

 

 

「メインフェイズ2で、私はカードを三枚セット。ターンエンドです」

 

「あたしのターン! あたしは、ドローした『インフェルニティ・デーモン』の効果を発動!」

 

 ドローするなり、時津風はそのカードを雪風に向けて公開する。

 

「インフェルニティ・デーモンは、自分の手札が0枚の時にこのカードをドローした場合、特殊召喚できる。そして、特殊召喚に成功した時に自分の手札が0枚だったら、デッキから『インフェルニティ』カードを一枚手札に加えることができる。あたしは、インフェルニティ・デーモンを特殊召喚して、デッキの『インフェルニティガン』を手札に。そして、そのインフェルニティガンを発動!」

 

 

《インフェルニティ・デーモン》

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1200

(1):手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、このカードを相手に見せて発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「インフェルニティ」カード1枚を手札に加える。

この効果は自分の手札が0枚の場合に発動と処理ができる。

 

《インフェルニティガン》

永続魔法

1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。

また、自分の手札が0枚の場合、フィールド上のこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついたモンスターを2体まで選択して特殊召喚する。

 

 

「あたしは、インフェルニティガンの効果を発動。自分の手札が0枚の時にこのカードを墓地へ送ることで、墓地のインフェルニティを二体まで特殊召喚できる。あたしはこの効果を使って、墓地の『インフェルニティ・ネクロマンサー』と、もう一体の『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚! そして、インフェルニティ・デーモンの効果で、デッキから『インフェルニティ・ビートル』を手札に加えて、そのまま通常召喚!」

 

「モンスターがいない状態から、一気に四体も……」

 

「これくらいで驚いてもらったら困るよ雪風。本番はこれから。あたしは、インフェルニティ・ビートルの効果を発動! 自分の手札が0枚の時、このカードをリリースすることで、デッキから別のビートルを二体特殊召喚できる。そして、あたしはレベル4のデーモンに、レベル2のビートルをチューニング! シンクロ召喚、『メタファイズ・ホルス・ドラゴン』!」

 

 

《インフェルニティ・ネクロマンサー》

効果モンスター

星3/闇属性/悪魔族/攻 0/守2000

このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。

また、自分の手札が0枚の場合、このカードは以下の効果を得る。

1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

《インフェルニティ・ビートル》

チューナー(効果モンスター)

星2/闇属性/昆虫族/攻1200/守 0

自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースする事で、デッキから「インフェルニティ・ビートル」を2体まで特殊召喚する。

 

《メタファイズ・ホルス・ドラゴン》

シンクロ・効果モンスター

星6/光属性/幻竜族/攻2300/守1600

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した場合、そのS素材としたチューナー以外のモンスターの種類によって、以下の効果をそれぞれ発動できる。

●通常モンスター:このターンこのカードは自身以外のカードの効果を受けない。

●効果モンスター:このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

その効果を無効にする。

●Pモンスター:相手フィールドのモンスター1体を相手が選び、自分はそのコントロールを得る。

このターンそのモンスターは攻撃できない。

 

 

「メタファイズ・ホルスの効果発動。効果モンスターを使ってこのモンスターをシンクロ召喚した時、フィールド上のカードを一枚選んで、効果を無効にできる。あたしが無効にするのは、機甲部隊の最前線! これで、リボルバー・ドラゴンがやられても次のモンスターは呼べないよ。さらに、あたしはレベル6のメタファイズ・ホルス・ドラゴンに、もう一体のインフェルニティ・ビートルをチューニング!」

 

 幽玄なる輝きをまとう竜と、地の底より這い出でし甲虫。共鳴し合った二体のモンスターの魂は、煉獄への扉を開く。

 

「地獄と天国の(はざま)、煉獄よりその姿を現せ! シンクロ召喚! 出でよ、『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』!!」

 

 

《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》

シンクロ・効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守3000

闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

 

 大地を割り、一柱のドラゴンが現世に現れる。全身を覆う硬い皮膚の色は、どす黒い血を連想させる暗い赤。煉獄より訪れたとされる竜は、彼の地で苦しみを受けた者たちの怨念を吐き出すかのように、低くおぞましい雄叫びを上げた。

 

「あたしは、インフェルニティ・ネクロマンサーの効果を発動。手札が0枚の時、一ターンに一度、墓地のインフェルニティを特殊召喚できる。あたしが特殊召喚するのは、インフェルニティ・デーモン。特殊召喚されたデーモンの効果で、デッキから『インフェルニティ・バリア』を手札に。そして、カードを一枚伏せてから、バトルフェイズ!」

 

 時津風の場には、最上級モンスターのオーガ・ドラグーンを筆頭に、合計四体のモンスター。対する雪風が従えているのは、リボルバー・ドラゴンのみ。

 

「オーガ・ドラグーンでリボルバー・ドラゴンを戦闘破壊すれば400ポイント、その後で二体のインフェルニティ・デーモンで直接攻撃すれば3600ポイントの戦闘ダメージが入る。この連続攻撃で、あたしの勝ちだよ!」

 

「そう上手くいけばいいですけどね」

 

「その様子だと、何か考えてるみたいだね。でも無駄だよ。あたしは、オーガ・ドラグーンでリボルバー・ドラゴンに攻撃!」

 

「トラップ発動、『モンスターBOX』! 相手モンスターの攻撃時にコイントスを行い、成功すればそのモンスターの攻撃力を0にします」

 

 頭上から突如として大きな箱が落下してきて、リボルバー・ドラゴンを隠す。その中に入ったリボルバー・ドラゴンは、間一髪で攻撃をかわすことに成功したと思われたが……

 

「させるかあっ! オーガ・ドラグーンの効果発動。自分の手札が0枚の時、一ターンに一度、魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する!」

 

 オーガ・ドラグーンの鋭い爪が、モンスターBOXを千々に切り裂く。しかし、雪風もこの程度の妨害では屈しない。

 

「なら、次はこのカードです。永続罠『安全地帯』! リボルバー・ドラゴンを、戦闘と効果による破壊から守ります!」

 

「あたしもトラップ発動、『インフェルニティ・ブレイク』! 墓地のインフェルニティ・ビートルを除外して、安全地帯を破壊!」

 

「そうはさせません! 三枚目のリバースカードを発動、『宮廷のしきたり』! その効果により、他の永続罠を破壊から守ります!」

 

 

《モンスターBOX》

永続罠

相手モンスターの攻撃宣言時、コイントスを1回行い裏表を当てる。

当たった場合、その攻撃モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで0になる。

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。

または、500ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。

 

《安全地帯》

永続罠

フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターは相手のカードの効果の対象にならず、戦闘及び相手のカードの効果では破壊されない。

また、そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できない。

このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

そのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

《インフェルニティ・ブレイク》

通常罠

自分の手札が0枚の場合に発動できる。

自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を選択してゲームから除外し、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

《宮廷のしきたり》

永続罠

このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーは「宮廷のしきたり」以外のフィールド上に表側表示で存在する永続罠カードを破壊できない。

「宮廷のしきたり」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

 

【Chain1:モンスターBOX Chain2:オーガ・ドラグーン Chain3:安全地帯 Chain4:インフェルニティ・ブレイク Chain5:宮廷のしきたり】

 

 

 矢継ぎ早に繰り出されるカード効果の応酬。五つものチェーンを組み上げた攻防の結果、雪風はモンスターBOXの発動こそ無効にされたものの、安全地帯の維持に成功し、自分のモンスターを守り抜くことができた。彼女にとって最善の展開ではないが、どうにか許容範囲に入る内容だ。

 

「む~、粘られたかぁ。だけど、戦闘ダメージは受けてもらうよ」

 

 

雪風 LP3600→3200

 

 

「あたしはこれで、ターンエンド」

 

「私のターン。リボルバー・ドラゴンの効果発動! コイントスを三回行い、表が二回以上出たら、相手モンスターを一体破壊します!」

 

「待った! あたしはカウンター罠『インフェルニティ・バリア』を発動! リボルバー・ドラゴンの効果の発動を無効にして、破壊するよ」

 

 

《ブローバック・ドラゴン》

効果モンスター

星6/闇属性/機械族/攻2300/守1200

コイントスを3回行う。その内2回以上が表だった場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。

この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。

 

《インフェルニティ・バリア》

カウンター罠

自分フィールド上に「インフェルニティ」と名のついたモンスターが表側攻撃表示で存在し、自分の手札が0枚の場合に発動する事ができる。

相手が発動した効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

 

「安全地帯があるので破壊はされませんが、効果の発動は止められてしまいましたか……。なら、私は『ドラゴンフライ』を通常召喚。そして、ドラゴンフライでインフェルニティ・デーモンに攻撃します」

 

 ドラゴンフライの攻撃力は1400。攻撃力1800のインフェルニティ・デーモンに敵うはずもなく、当然の如く戦闘破壊される。

 

 

雪風 LP3200→2800

 

 

「これって、さっきのガンナードラゴンと同じ動き……。もしかして、また何か企んでるの?」

 

「ご名答です。私は、ドラゴンフライの効果を発動。デッキから『一撃必殺侍』を特殊召喚します」

 

 

《ドラゴンフライ》

効果モンスター

星4/風属性/昆虫族/攻1400/守 900

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

効果モンスター

星4/風属性/戦士族/攻1200/守1200

このカードが戦闘を行う場合、ダメージ計算の前にコイントスで裏表を当てる。

当たった場合、相手モンスターを効果によって破壊する。

 

 

「私は、一撃必殺侍でオーガ・ドラグーンに攻撃! そしてこの時、一撃必殺侍の効果を発動します!」

 

 雪風の場に、再びコインが現れる。それを見た時津風は、「げっ」と眉をひそめた。

 

「そのモンスターの効果って、まさか、コイントス……?」

 

「はい。このカードが戦闘をする時にコイントスを行い、当たれば相手モンスターを効果によって破壊することができます」

 

「うえぇ~っ!」

 

 あどけなさの残る顔を歪め、時津風は嫌悪の表情を見せる。その様子を遠目に見ていた響は、隣の天津風に問いかけた。

 

「……天津風。どうして時津風は、あんなに嫌そうな顔をしているんだい?」

 

「電も不思議なのです。まるで、最初から自分のモンスターが破壊されるかのような反応なのです。コイントスが成功するかどうかは、半々の確率なのに」

 

「半々なんかじゃないからよ」

 

「えっ……?」

 

 戸惑いの色を浮かべる電を見て、天津風は「そういえば、まだ二人には話していなかったわね」と気づく。

 

「脈絡のないことを聞くようで悪いけれど、響と電は、雪風が『前世』でどんな渾名で呼ばれていたか、知っているかしら?」

 

「えっと、確か……」

 

 少し考えたあとで、電は答える。

 

「『奇跡の駆逐艦』、でしたよね」

 

 もう一つ存在した二つ名については、今は知らないふりをしておく。

 

「ええ。本人の力はもちろんのことだけれど、信じられないほどの強運にも恵まれて、雪風はあの戦いを生き延びたわ。そして、その強運は、今のあの子にも受け継がれているのよ」

 

「雪風ってね、すっごく運がいいの。酒保でアイスを買えばいっつも当たり棒が出るし、戦場では滅多に弾が当たらないし。この前なんか、雪風を狙った敵の砲身内で砲弾が暴発して、そのまま弾薬庫に引火して沈んだりしたんだよ」

 

「そんなことまで……。確かに、そういうことも、絶対に起こり得ないとは断言できないが……」

 

 島風が語る逸話に、普段は冷静な響も驚きをあらわにする。そのような奇跡が起こる確率は、皆無と言っていいほどの低さだ。仮に彼女が同じ状況を再現しようとしたら、命が幾つあっても足りないだろう。

 

「とまぁ、こんな感じだから、雪風に運勝負を挑むのは無謀なことなのよ。最初から負けが決まっている戦いをするようなものだから。前にみんなでトランプとか、運が絡むゲームを夜通しやったこともあったけど、やっぱり雪風の独り勝ちだったわ」

 

「ということは、もしかして、デュエルモンスターズも……?」

 

「恐らくは、ね」

 

 ちょうどその時、デュエルフィールドの方から何かが破壊される音が聞こえた。四人が視線を移すと、案の定、時津風のオーガ・ドラグーンが真っ二つに切断されていた。

 

「……やっぱりね」

 

 天津風が感心と呆れの混じった息をつく。その後、リボルバー・ドラゴンの攻撃によってインフェルニティ・ネクロマンサーも破壊してから、雪風はターンを終了した。

 

「いつものことだけど、雪風ってホントに運強いよね~。正直、勝てる気しないんだけど」

 

 苦笑いを浮かべる時津風だが、ドローしたカードを確認すると、その表情は自信に満ちたものへと変わる。

 

「でも、デュエルは運だけの勝負じゃないからね。運の強さでは敵わなくても、他のところで挽回するよ」

 

「その様子だと、いいカードを引いたみたいですね」

 

「まーね。まずはカードを一枚セット。そして、さっきから伏せていたもう一枚の伏せカードを発動。通常魔法『ZERO-MAX』!」

 

 

《ZERO-MAX》

通常魔法

自分の手札が0枚の場合、自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して発動する事ができる。

選択したモンスターを特殊召喚し、特殊召喚したモンスターの攻撃力より低い攻撃力を持つ、フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行う事ができない。

 

 

「このカードの効果で、あたしは墓地のインフェルニティ・ネクロマンサーを特殊召喚。さらに、復活したネクロマンサーの効果を発動! 墓地のインフェルニティ・ビートルを特殊召喚するよ。そして、レベル3のネクロマンサーとレベル4のデーモンに、レベル2のビートルをチューニング!」

 

 暗い光を放つ九つの星が集い、時津風の場に新たなモンスターを呼び寄せる。現れたのは、闇をも凍てつかせる冷気をまとう、最強の氷龍。

 

「破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚! 目覚めよ、『氷結界の龍 トリシューラ』!」

 

 

《氷結界の龍 トリシューラ》

シンクロ・効果モンスター

星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000

チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚まで選んで除外できる。

 

 

 三叉の槍の名を冠した三つ首の龍が、吹雪を伴い降臨する。オーガ・ドラグーンのような禍々しさこそ備えてはいないが、その巨体から発せられる威圧感は同等のものだ。雪風は、強大な力を秘めているであろう敵に警戒の表情を向ける。

 

「トリシューラの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、相手の手札・フィールド・墓地のカードを一枚ずつ除外する。あたしが除外するのは、リボルバー・ドラゴンと墓地のガンナードラゴン、そして一枚だけ残ってる雪風の手札!」

 

 手札、フィールド、墓地、三ヶ所に存在するそれぞれのカードが、氷の槍に貫かれる。三枚のカードは瞬時に凍結し、二度と覚めることのない悠久の眠りへと落ちる。

 

「まだ終わりじゃないよ。もう一体の厄介なモンスターも、このターンで倒してあげる。あたしは、さっきドローして伏せたカードを発動! 魔法カード『ソウル・チャージ』!」

 

 

《ソウル・チャージ》

通常魔法

「ソウル・チャージ」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

(1):自分の墓地のモンスターを任意の数だけ対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚し、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000LPを失う。

 

 

「ソウル・チャージは、自分の墓地に存在するモンスターを好きなだけ特殊召喚できる魔法カード。あたしは、墓地のインフェルニティ・デーモンとネクロマンサーの二体を特殊召喚するよ」

 

「でも、そのカードには代償があったはずですよね」

 

「へぇ。よく知ってるね、雪風」

 

「響さんから、デッキを組む時は禁止・制限カードに気をつけるようにと言われましたから。現在の禁止・制限リストに載っているカードは一通り把握するようにしたんです」

 

「なるほどね。確かに、雪風の言う通りだよ。ソウル・チャージを発動したターン、あたしは攻撃することができない。さらに、特殊召喚したモンスター一体につき1000ポイントのライフを失う」

 

 

時津風 LP2200→200

 

 

 時津風のライフが、一気に敗北寸前の数値にまで落ち込む。しかし、ライフの減少に反比例して、彼女の威勢は強まりを見せる。

 

「でも、ライフがいくら減ろうと関係ないよ。あたしは、特殊召喚されたインフェルニティ・デーモンの効果を発動。デッキから『インフェルニティ・リベンジャー』を手札に加える。そして、このリベンジャーを通常召喚。さらに、レベル3のネクロマンサーとレベル4のデーモンに、レベル1のリベンジャーをチューニング!」

 

「レベル8のシンクロ召喚……また、オーガ・ドラグーンを?」

 

「ぶっぶー。外れ~」

 

 小さく舌を出し、時津風は雪風の予想を否定する。

 

「あたしが使うレベル8のシンクロモンスターは、オーガ・ドラグーンだけじゃないんだよ。出でよ、永劫の檻より解き放たれし魔の竜! 『インフェルニティ・デス・ドラゴン』!」

 

 

《インフェルニティ・リベンジャー》

チューナー(効果モンスター)

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

このカードが墓地に存在し、自分の手札が0枚の場合、「インフェルニティ・リベンジャー」以外の自分フィールド上のモンスターが相手モンスターとの戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、このカードを墓地から特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したこのカードは、その戦闘によって破壊された自分のモンスターの元々のレベルと同じレベルになる。

 

《インフェルニティ・デス・ドラゴン》

シンクロ・効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2400

闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択した相手モンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

 

 

 トリシューラの隣に、漆黒の肌の竜が現れる。「(デス)」の名に違わず、その体色は黄泉への道を思わせる暗さを有し、全身からは生気を奪う瘴気が放たれている。となれば、このモンスターが持つ効果もおおよそ察しがつく。

 

「……なるほど。デス・ドラゴンの効果を使って、一撃必殺侍を破壊するつもりですね」

 

「正解。あたしはデス・ドラゴンの効果を発動! 自分の手札が0枚の時、相手モンスター一体を破壊して、その攻撃力の半分のダメージを与えることができる。破壊するのは、もちろん一撃必殺侍!」

 

「くっ……」

 

 

雪風 LP2800→2200

 

 

「ここでダイレクトアタックを決めればあたしの勝ち……なんだけど、あたしはこのターン、バトルフェイズを行えないからね。これでターンエンドだよ」

 

 雪風の場にモンスターはおらず、手札も0枚。場に出されている永続魔法と罠も、この劣勢を直接覆す効果は持っていない。ライフはまだ半分以上残っているが、時津風の場に並ぶモンスターの数を見れば、それが気休めにもならないことは明らかだs。文字通り、絶体絶命の状況。しかし、ここまで追い込んでもなお、時津風は勝利の確信を抱けずにいた。

 

「普通なら、ここまでやれば、そろそろ勝てる気もしてくるんだろうけど……なーんか、嫌な予感がするんだよねぇ……」

 

 デュエルの行方は、雪風のドローにかかっている。彼女が何のカードを引くかは、純粋な確率の問題、極言すれば運次第だ。そして、運の勝負になった場合の雪風の勝率は――

 

「私のターン。ドローっ!」

 

 雪風が、ドローカードを確認する。彼女の口元がふっと緩んだ時、時津風は自分の予感が的中したことを悟った。

 

「来ました! 私の、逆転の切り札が! 私は、『時の魔術師』を攻撃表示で召喚!」

 

 

《時の魔術師》

効果モンスター

星2/光属性/魔法使い族/攻 500/守 400

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

コイントスを1回行い、裏表を当てる。

当たった場合、相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

ハズレの場合、自分フィールドのモンスターを全て破壊し、自分は表側表示で破壊されたモンスターの攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受ける。

 

 

 懐中時計のような形をしたモンスターが、雪風の場に現れる。小柄な雪風の腰に届くかどうかといった背丈の低さが示す通り、レベルは2、攻撃力は500と基本的な能力値は低い。しかし、その右手には、先端に「当」の字とドクロのマークが描かれたルーレットを取り付けた杖が握られていた。

 

「時の魔術師の効果発動! タイム・マジック!」

 

 雪風の掛け声を受けて、時の魔術師が持つ杖のルーレットが回り始める。ルーレットの文字盤は複数に分割されており、そのうちの半分に「当」の文字が、残り半分にドクロのマークが描かれている。現在回転している針が止まった位置によって、発動する効果が決定されるのだろう。

 

「タイム・マジックは、これから行うコイントスの結果によって効果が変わります。コイントスに成功すれば、相手のモンスターをすべて破壊できます。ただし、失敗すれば自分のモンスターがすべて破壊され、さらに攻撃力の合計の半分のダメージを受けます」

 

「もし効果が成功したら、あたしのモンスターが全滅して、ダイレクトアタックが……」

 

「はい。一発逆転で、私の勝ちです。気持ちの準備はいいですか? いざ、運命のコイントス!」

 

 このデュエルで何度目かの登場となるコインが、宙を舞う。陽光を反射して煌めくそれを、その場にいる全員が注視する。生唾を飲み込む時津風の目の前に落下したコインの上面は――

 

「表……」

 

「コイントスは成功です! よって、相手モンスターをすべて破壊します!」

 

 時の魔術師が杖を振り上げ、時津風の場に時空の渦を生み出す。渦は時津風のモンスターたちを呑み込んで一瞬のうちに遥かなる年月を経過させ、その姿を化石に、さらにはそれを風化させて跡形もなく消し去った。

 

「バトルフェイズです。私は、時の魔術師でダイレクトアタック!」

 

「うわぁっ!」

 

 

時津風 LP200→0

 

 

 時の魔術師に殴られ、時津風が尻餅をつく。彼女のライフが尽きたことでデュエルは終了し、同時にソリッドビジョンも消滅した。

 

「楽しいデュエルでしたよ、時津風。ありがとうございます」

 

「こちらこそ。でも、勝てなかったのは悔しいなー。すごく悔しいー」

 

 雪風に手を貸してもらい立ち上がった時津風は、満足げな表情を浮かべつつもその中に悔しさを滲ませる。

 

「二人とも、お疲れ様なのです。どちらも個性的なデッキで、見ていて面白いデュエルでした」

 

「うん。こういう戦い方もあるのかと、私たちも勉強になったよ」

 

 それぞれの感想を口にしながら、電と響が歩み寄る。時津風は彼女たちに振り向くと、二人に対して問いを投げた。

 

「ねえねえ、二人とも。あたしが勝つチャンスって、どこかになかったのかな? 途中までは、いい感じに戦えてると思ったんだけどなー」

 

「ふむ。時津風が勝つチャンス、か」

 

「そうですね……」

 

 二人は、デュエルの経過を思い返して暫し黙考する。その後、先に口を開いたのは電だった。

 

「結果論になってしまいますけど、一つ、心当たりがあるのです」

 

「本当?」

 

 電の返答に、時津風は強く食いつく。

 

「結果論でも何でもいいよ! どこどこ? あたしが勝てるチャンスって、どこにあったの?」

 

「え、えっと……」

 

 予想外に強い時津風の反応に、電は思わずたじろぐ。が、どうにか態勢を立て直して彼女の問いに答える。

 

「電がチャンスがあったと思うのは、時津風ちゃんがソウル・チャージを発動したターンなのです。あの時、時津風ちゃんは復活したインフェルニティ・デーモンの効果で、インフェルニティ・リベンジャーを手札に加えましたよね。そこで手札に加えるカードをインフェルニティ・バリアにしていれば、時の魔術師の効果を防ぐことができたのです」

 

「でも、それだと一撃必殺侍は残っちゃうよ? それが嫌だから、あたしはああいう風にしたんだけど」

 

「確かに、この方法では、そのターン中に一撃必殺侍を倒すことはできません。でも、一度のバトルフェイズでモンスターが攻撃を行えるのは、基本的に一回だけ。だから、たとえ一撃必殺侍が生き残ったとしても、次のターンで破壊される時津風ちゃんのモンスターは一体だけなのです。しかも、これは戦闘破壊ではありませんから、ダメージは発生しません。時津風ちゃんは落ち着いて、次のターンにとどめの総攻撃を仕掛ければいいのです。見たところ、時津風ちゃんのデッキは展開力が高そうですから、次のドローによっては、本当に勝つことができていたかもしれませんよ」

 

 電の説明を聞いた時津風は、デッキの一番上にあるカードを確認する。そのカードは、効果モンスターの「インフェルニティ・ミラージュ」。自分の手札が0枚の時、自身をリリースすることで墓地の「インフェルニティ」二体を特殊召喚できるモンスターである。仮に次のターンを迎えていれば、このカードを起点とした大量展開からシンクロやエクシーズによって一撃必殺侍を無力化し、電の言うように勝利を掴むことができていただろう。

 

「本当だ……。あ~、失敗した~!」

 

「仕方ないのです。雪風ちゃんの一撃必殺侍が大きな脅威であったのは、本当のことですから。電も、今は外からデュエルを眺めているからこう言うことができていますが、時津風ちゃんと同じ場所にいたら、冷静な判断ができているかは分かりません。それよりも、癖の強いデッキを最初から使いこなしていて、時津風ちゃんは凄いのです」

 

「同感だよ。デュエルでは普通、いかに手札の消耗を抑えるかが重要なんだけれど、まさか、その手札をゼロにし続けて戦うとはね。イレギュラーもいいところだ。デッキの癖の強さを踏まえれば、今の戦いぶりは充分すぎるくらいさ」

 

「細かいプレイングについては、経験を積んで身につけていくしかありませんから、焦らず学んでいきましょう。時津風ちゃんのデッキは電と同じように一撃必殺型ですから、さっきのように、そのターン中に攻めきれないことが分かっている場合は、相手の反撃に備えて動くことも必要です。自分の準備が整うまで、どうやって相手の攻撃を防ぐか。次からは、攻めるだけではなく、このことも意識してデュエルしてみてください」

 

「はーい!」

 

「雪風のデッキにも、何かアドバイスをもらえませんか?」

 

「うーん……雪風ちゃんのデッキも、時津風ちゃんに劣らず個性的なので、アドバイスするのも難しいですね。響ちゃんは、何かありませんか?」

 

 尋ねられた響は、顎に手を当てて少し考えてから口を開く。

 

「そうだね。細かい部分ではあるけれど、幾つか改良できそうなところは見つけたよ」

 

「是非、教えてほしいです!」

 

 雪風の頼みを、響は「もちろん」と快諾する。

 

「アドバイスに入る前に、まずはデッキ構築について少しコメントしよう。自分の運の強さを活かしてギャンブルカードを主軸に据えるコンセプトは、良い発想だと思う。ギャンブルカードが持つリスクをあまり気にせずに、その強力な効果を使うことができるからね。それに、この種のカードを使うデュエリストは少ないから、相手の意表を突くこともできる。雪風だからできる、雪風にしかできない戦い方だ」

 

 響はそこで一息つき、本題に入る。

 

「これから話すのは、苦手な相手に対処して、デッキの持ち味を最大限に活かすための方法だ。雪風のデッキに必要だと思うのは、破壊耐性を持つ相手への対処法と、モンスター効果封じへの対策だね」

 

「破壊耐性と効果封じ、ですか」

 

「ああ。今のデュエルを見る限り、雪風のデッキはモンスター効果で相手を倒していくのを主戦法としているように感じる。リボルバー・ドラゴンや、一撃必殺侍のようにね。雪風の強運を加味すればこれらの効果はほぼ確実に成功するから、ほとんどのモンスターは難なく倒せるだろう。でも、破壊耐性を持つ相手にはその方法が通じない。特に、その相手が高攻撃力のモンスターだった場合には、戦闘破壊もできずにお手上げになってしまう。だから、破壊耐性を持った相手にも対処できるカードが必要だ」

 

 次に、と響は話を続ける。

 

「効果封じへの対策が必要な理由だけど、これは一つ目とほぼ同じだ。一撃必殺侍やリボルバー・ドラゴンは、効果を無効化されたら、レベルの割に攻撃力が低いだけのモンスターに成り下がってしまう。モンスターBOXがあれば攻撃力の低さもある程度は補うことができるけれど、相手が都合よく攻撃してくれるとは限らないし、効果を無効化されていたら自分から攻めることはできなくなる。こうした事態に陥った場合にも戦えるような工夫が必要だね」

 

「なるほど……。運次第でそうした状況を突破できるカードも入ってますが、もっと確実に対処できるカードも入れた方がいいですね」

 

「うん。けど、もし試してみて合わないと感じたら、このアドバイスは迷わず捨ててしまって構わないよ。雪風の運の強さなら、今投入されているそのカードだけでも充分かもしれないし。何より、そのデッキのことを一番理解できるのは、他ならぬ君自身だ。自分の感覚を信じて、デッキを組んでいってほしい」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

 行儀良く一礼する雪風に、響は微笑して応じる。

 

「さて。二人へのアドバイスも済んだことだし、次の試合に移ろうか。お待たせ、最上さん」

 

 響は、この場でただ一人、まだデュエルを行っていない人物へと顔を向ける。

 

「いよいよボクの番だね。楽しみだけど、少し緊張するな」

 

「へーきへーき! 緊張なんて、デュエルを始めたらすぐに吹き飛んじゃうよ」

 

 明るい声で、時津風が最上に言う。

 

「待たせてしまったお詫び、というわけではないけれど、最上さんの対戦相手は好きに選んでもらおうと思う。デュエルを済ませてない人は、もう他にはいないからね。お望みとあれば、私たち教導隊も相手をするよ」

 

「流石に、初めてのデュエルでそれは荷が重いかな。遠慮しておくよ」

 

 苦笑いを浮かべて響の申し出を辞退した最上は、同僚の四人の中から相手役を選び出す。

 

「決めた。ボクの相手は、雪風にしてもらおう。いいかい?」

 

「もちろんです」

 

 最上の指名を、雪風は笑顔で快諾する。時津風はそんな彼女に羨ましげな視線を向けるが、口を開く前に天津風に観戦位置まで連行される。

 

「雪風だけ二戦目……。羨ましいな~、羨ましい~」

 

「人数が奇数なんだから仕方ないでしょ。今日はまだ何度もデュエルする予定になってるんだから、細かい順番なんか気にしないの。それよりも、二人のデュエルをしっかり見て研究しなさい。次に雪風とデュエルした時、彼女に勝つ方法が見つかるかもしれないわよ」

 

「そうそう。天津風も、私のデュエルをよーく研究することだね」

 

「このっ……! さっき勝ったからって、調子に乗って……」

 

「三人とも。そろそろデュエルが始まるようだよ」

 

 響の言葉で、騒いでいた三人はデュエル場に視線を集中させる。外野から熱い眼差しを注がれながら、本日三度目の決闘の幕が開かれた。

 




暁「今回も、よく分からないカードの動き方してる人がいるんだけど……。何なの? ショートランドの艦娘って、ああいう子ばっかりなの?」

電「そういうわけではないと思うのです……たぶん」

雷「時津風も時津風だけど、雪風のデッキもたいがいよね。あのデッキ、私には回せる気がしないんだけど」

響「あそこまでギャンブル性の強いデッキは、そうそう見かけないね。カードの引きと、効果発動のためのギャンブル。勝つためには、二重の運の要素を制する必要がある。彼女の強運があってこそ、真価を発揮するデッキだと言えるよ」

雷「その強運を見せつけられた直後に、自分から勝負を挑むなんて……。最上さんは勇気あるわね」

暁「当然よ! 自分より強い相手に挑戦していってこそ、真のデュエリストなんだから!」

電「……暁ちゃん。それだと、最上さんが雪風ちゃんより弱いと言ってることになってしまいますが……」

暁「あっ……」

雷「あらあら。暁は最上さんのこと、そんな風に見てたのね。最上さんが聞いたら、きっと悲しむわ」

暁「ち、違うの! 今のは、そういうつもりで言ったわけじゃなくて!」

雷「本当かしら?」

暁「ほ、本当よ! ホントに本当っ!」

響「やれやれ、今日もうちの姉妹は元気がいいね。それでは、収集がつかなくなる前に次回予告を。次回、『巨人を討て』。デュエル・スタンバイ」
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