『鎮守府決斗録』、久しぶりの投稿です。お待たせして本当にすみません。
その代わりではありませんが、今回はこれを含めて三話を三日にわたり連続投稿します。
ただし、初めの今話はデュエル要素ゼロの回です。デュエルだけでなく、海戦シーンも描きたかったもので……すみません。
残り二話ではちゃんとデュエルが入るので、どうかご容赦ください。
それでは、本編をどうぞ。
穏やかな風が、南海の上を流れる。天津風はツーサイドアップの銀髪を靡かせ、心地良さそうにその風を受けた。
「いい風ね」
「そう? いつもの海風と変わらないと思うけど」
天津風の隣を航行する島風は、僚艦の呟きに首を傾げる。
「そんなことないわ。今日のは、なかなかいい風よ」
「ふーん」
島風は、さして興味のない様子で相槌を打つ。いつものことなのか、天津風もそれに対して特に反応は示さない。
「そろそろ演習場に着くわね。二人とも、準備はいいかしら?」
そう言って、天津風は後ろに振り向く。彼女の問いに対して、そこにいた二人の少女は揃って頷いた。
「大丈夫。準備完了しているよ」
「いつでも始められるのです」
天津風の後方を航行しているのは、響と電。天津風は二人の返事に頷きを返すと、続けて全員へ停止の指示を出した。
「着いたわ。ここが演習場よ」
四人が立っているのは、泊地近くのひらけた海面。泊地の南方に位置し、高速で動き回っても大丈夫な広さがある。ショートランド泊地ではここを演習場に設定し、各種の訓練を行っているのだと天津風は語った。
「演習を始める前にもう一回聞くけど、二人とも艤装の調子はどう?」
「好調なのです。缶圧正常、電探その他もちゃんと機能しています」
「右に同じ。全力発揮可能だよ」
「島風は?」
「異常なーし。連装砲ちゃんも絶好調」
「了解。みんな、問題なさそうね」
艤装を装着して海上にいることからも分かるように、彼女たちがこれから行うのは洋上での演習である。しかし、今日の教官役は電と響ではなかった。
「では、これより洋上戦闘訓練を開始するわ。内容は、二対二の演習形式。主任教導官は私、副教導官は島風よ」
天津風は続けて、今回の経緯を簡単に説明する。
「泊地を出る前にも話したけど、この訓練は二人にデュエル指導をしてもらってるお礼って位置づけよ。教えてもらってばかりじゃ悪いから、私たちからも二人に教えられるものを教えようと思って」
「そのお返しが戦闘訓練ってのも、味気ないけど」
「まぁ、それは否定しないわ」
茶化す島風に、天津風が苦笑を返す。
「でも、実用性は折り紙つきよ。ここでの戦闘経験を基にみんなで作った、実戦由来の海戦術なんだから。サーモン海以外の戦闘でも、きっと役に立つわ」
「口で説明するよりも体験する方が早いと思うから、まずは私と天津風と演習だよ。全力でやるから、覚悟してね」
「演習海域は、ショートランド島の周辺。島の周りであれば、この演習場の外でも構わないわ。時間は無制限で、ルールは何でもあり。自分の持つ技を全部使って、相手を倒す。それだけよ」
質問はあるかしら、という彼女の確認に、電と響は首を横に振る。
「なら、早速始めましょう。今から五分間でお互いに好きな場所へ移動して、その後、演習開始よ。解散!」
天津風の声を合図に、四人は二組に分かれて行動を開始する。まずは、双方ともに相手から距離を取ることを考えて反対の方角を目指す。天津風と島風は泊地の方向へ、響と電は沖合へ。
「響ちゃん。私たちの作戦はどうしますか?」
横隊を作って航行しながら、電は響に問いかける。こちらの旗艦は、派遣部隊の旗艦でもある響が務める。
「天津風たちは、この海域で日々、深海棲艦と戦っている。地の利も戦闘経験も、相手に分がある。だから、下手に動かずにまずは相手の動きを待とうと思う」
「でも、沖には身を隠す場所がありませんよ。待ち伏せしようにも、相手から丸見えなのです」
「私は、最初から待ち伏せをする気はないよ」
「どうしてですか? 相手の方が強いなら、奇襲をしないと勝ち目がないと思うのです」
「確かにそうだけど、恐らくあの二人に奇襲は通じない。このサーモン海では、いつどこで敵と遭遇するか分からない。彼女たちは、そういう環境で戦闘経験を積んできている。突発的な遭遇戦や待ち伏せに対応する能力は、私たちの想像以上に高いはずだ。そんな相手に奇襲を仕掛けようとしても、見破られて逆に背後を取られてしまうのがオチだ」
「じゃあ、どうするのです?」
「ここで、相手が来るを待つ」
「えっ!」
響の言葉に、電は目を丸くする。
「それって、何もしないということですか?」
「そう言うこともできる。だけど、何もしないことこそが、私たちにとっては最善の策なんだ」
怪訝な顔をする電に、響は「電。私たちは普段、トラックでどんな訓練をしていたかな」と尋ねる。
「トラックでの訓練、ですか?」
唐突な問いに困惑の度合いを深めつつも、電は言われた通りに母港での訓練を思い返す。
「トラックでは、泊地に来寇した敵艦隊に雷撃戦を仕掛ける訓練をしていたのです。航空戦力で制空権を確保した後に、私たち水雷戦隊が突撃して敵戦力を減殺。最後に主力の重巡戦隊の砲雷撃で残敵を掃討するのが、いつもの流れなのです」
「その時の周りの地形はどうだったか、覚えているかい?」
「地形も何も、ただ広い海が広がっているだけなのです。たくさんの島があるサーモン海と違って、トラック泊地の周囲には島がありませんから、当然……」
そこで、電は響の言わんとしていることに気がつく。
「響ちゃん、この場所って!」
「そう」
電の反応に、響は微笑を浮かべる。
「ここは、周囲で最もひらけていて、トラックの環境に一番近い。ここなら普段の訓練内容を活かすことができるし、遮蔽物がないから奇襲を受ける心配もない。私たちにとって、この場所は最も勝機がある戦場なんだ」
「最初から、そのつもりだったんですね」
「もちろん。たとえ相手が上手だと分かっていても、勝利を諦める気はないよ」
「同感なのです」
顔を見合わせて頷き合った二人は、行足を止めて後方へ体を向ける。移動を開始してから、もうじき五分が経つ。二人は、いつ敵が現れてもいいように臨戦態勢をとった。
一分、二分……波と風の音だけが聞こえる中、刻々と時間が過ぎてゆく。ともすれば日光浴でもしたくなる陽気だが、二人の周囲だけは張り詰めた弦のような空気が漂っていた。
「……来ませんね」
電が、呟くような声で言う。響も同じくらいの声でそれに答える。
「向こうも、こちらが攻めるのを待っているのかもしれない。自分たちのホームグラウンドで、待ち伏せを仕掛ける作戦なのかも」
「だとすると、我慢比べですね」
「ああ。幸い、演習時間は無制限だ。相手が痺れを切らすまで、いくらでも待たせてもらおう」
それからさらに時間が経ち、演習開始から一時間になろうかという頃。電と響は、ほぼ同時に顔色を変えた。
「電探に感! 距離一万四千メートル、数四、十時方向! 速力三五ノット、真っ直ぐこっちに向かってきています!」
「こちらも捉えた。四つの反応のうち、三つは残り一つよりも小さい。これは恐らく、島風と連装砲たちだね」
二人は、電探の反応があった方角に体を向け、戦闘準備を整える。
「合戦用意! 対艦戦闘。砲戦、魚雷戦用意」
「了解。対艦戦闘。砲戦、魚雷戦用意」
命令を復唱した後、電は響に質問する。
「響ちゃん。この後は、どうやって戦いますか?」
「現在の彼我の戦力比は二対一。局地的ではあるけれど、こちらが数的優位に立っている。これを活かして、島風を挟撃しよう。いくら島風の足が速くても、二方向からの攻撃をかわし続けるのは難しいはずだ。天津風の姿が見える前にできるだけ島風にダメージを与え、可能であれば各個撃破に持ち込む」
「島風ちゃんの連装砲は、どうしますか?」
「基本、無視して構わない。有効弾を食らわないようにだけ注意しつつ、島風を集中攻撃する。自律行動が可能とはいえ、司令塔である島風が倒れれば、連装砲たちもまともに動けなくなるだろうからね」
「分かりました」
「まずは、前進して島風と距離を詰める。相手の動きに変化はないから、そのままいけば、じきにすれ違うことになる。電は、すれ違う直前に急転舵して丁字の態勢をとって、島風の頭を押さえてくれ。私は島風の背後に回り込んで、挟み撃ちをする。いいかい?」
「はい」
「じゃあ、いくよ。全艦、最大戦速!」
二人の艤装が唸りを上げ、その力を解放する。停止状態から、一気に全速力へ。頬に当たる風の勢いがどんどん増していき、少女の髪を暴れさせる。全速の三四ノットに達する頃には、敵との距離も随分と縮まっていた。
「島風ちゃんは、まだ速力を上げていませんね。こちらの逆探は相手のレーダー波を捉えているので、向こうも私たちを見つけているはずなのですが……。四〇ノットの高速が島風ちゃんの武器なのに、どうして三五ノットで航行しているのでしょう? それに、天津風ちゃんの動きも気になります」
「島風が速度を抑えているのは、燃料節約のためじゃないかな。いくら高速艦といっても、全速航行を続けていたら、あっという間に燃料切れになってしまうし。交戦直前までは、燃料消費を極力抑えようとしているんだと思う。
天津風のことは……分からない。単に、二手に別れて索敵しているだけなのか、それとも、別働隊として私たちの背後を突くつもりなのか……。とりあえず、今は彼女の存在を警戒しつつ、島風の撃破に全力を注ごう。各個撃破に成功すれば、天津風がどこにいようと問題ではなくなる」
電探上の島風は、依然として速力三五ノット、針路一八〇度――こちらと正対する針路で進んでいる。彼我の距離はなおも減少し、やがて、電探だけでなく肉眼でも敵の姿を捉えられるになった。
「敵艦発見! 距離三千五百メートル、十二時方向!」
水平線上に現れた黒点を指し、電が叫ぶ。胡麻粒のように見えていたそれは、次第に大きさを増し、人の形をなしていく。
「敵艦一隻と、その周囲に三つの小物体を確認。電探の反応通りです。的速は――」
三十五ノット、そう報告しようとした電の表情が、凍りつく。直後、彼女は狼狽をあらわにした顔で左を振り向き、上擦った声で告げた。
「敵艦隊分裂! 島風ちゃんの後方から新たな艦影が出現! 距離三三〇〇。天津風ちゃんと思われます!」
その報告に反応を示す余裕は、響にはなかった。彼女もまた、目の前で起きた信じられない光景に心を支配されていた。
「敵艦隊増速! 速力三五ノットから増大、両艦ともに四〇ノットに達す!」
今度の報告にも、響は沈黙を貫く。電がさらに敵の動向を語ろうとした時、響はおもむろに口を開いた。
「謀られたよ。電」響の声音には、悔しさが滲んでいた。
「敵は、最初から二人いたんだ。電探上で一人に見えるよう偽装して油断を誘い、逃げられない距離まで近づいたところで正体を現す。……私たちは、まんまと罠に嵌められたんだ」
「えっ? 最初から二人? それに、偽装って?」
どういうことです、と電は響に問いかける。
「先頭の一人にぴったりとくっつくようにして、後ろにもう一人が隠れる。そうすると、電探には一人分の反応しか映らない。私たちの電探が――島風たちのも、同じ型だけど――遠距離での探知精度に難があるのを上手く利用した作戦だ」
「そんな!」
響の返答に、電は絶句する。
自分たちは上手く立ち回っていると思っていた。相手に分がある環境下で、少しでも自軍に有利な状況を作り出し、敵をそこへ引き込んだ。戦闘面での練度差を、巧みに埋めたつもりだった。けれど、すべては相手の掌で踊らされているだけに過ぎなかった。
「だとしたら、これからどうすればいいのです?」
「残念だけど、それを考えている時間はない。最初の打ち合わせ通り、このまま相手との距離を詰める。ただ、電は転舵のタイミングを変更して、私と一緒にしてほしい。挟み撃ちが望めなくなった以上、下手に隊を分けると各個撃破される危険がある」
「分かりました」
「転舵の方向は、私が右、電が左。針路が交錯するから、衝突しないように注意して。それから、主砲撃ち方用意。距離一八〇になったら砲撃開始だ」
「私たちの主砲の最大射程ですね」
「ああ。当然、命中率は期待できないけれど、それは気にしなくていい。反航戦、それも正面からの撃ち合いじゃ、元から有効弾は期待できない。これは、相手の行足を鈍らせるのが目的だから」
「はい」
電が頷いた頃には、敵は既に目と鼻の先。響が言った距離180メートルに入っていた。
「撃ち方始め!」
電と響が、同時に砲撃を開始する。音速の二倍以上の速度で撃ち出された砲弾は、発射とほぼ同時に着弾し、鮮やかな色がついた水柱を立ち上げる。しかし、水柱の位置はいずれも島風たちの後方。二人はすぐさま弾着結果を反映した修正射を放とうとするが、その前に鋭い風が彼女らの横を駆け抜ける。
「艦隊、百八十度一斉回頭!」
敵艦隊とすれ違ったことを認識した瞬間、響が回頭命令を発する。直前の打ち合わせ通り、二人は左右から「m」の字を描くような軌道で急旋回を行い、追撃態勢に入る。しかし、
「なっ!?」
既に、視線の先に島風たちの姿はなかった。
「こっちだよ~!」
声とともに、響の目の前に水柱が出現する。回避の間もなくそこへ突っ込む羽目になった彼女は、手の甲で乱暴に海水を拭いながら、左後方を振り返る。
「島風……!」
「二人とも、動きがおっそーい。そんなんじゃ、私たちにはついてこれないよ?」
連装砲を従える島風が、挑発的な笑みを浮かべる。いつもならそれに対して何かしら言葉を返すところだが、今の響にはそれだけの余裕はなかった。
「今すれ違ったばかりなのに……この短時間で、どうやってその位置へ?」
「普通に旋回しただけだよ」
「そんな馬鹿な。いくら君が高速艦だからといっても、そんなに小回りは効かないはず。それに、速度が上がればその分旋回半径だって……」
「そういう考えでいるから、私に追いつけないんだって」
笑みを浮かべたままの島風が言う。
「それは、教科書の中のお話。確かに理屈はそうだし、私の旋回半径もデータ上ではもっと大きいよ。でもね、
「だけど、理由はあるはずだ。まさか、魔法を使ったわけでもないだろう?」
「私に一発でも当てたら、教えてあげるよ。当てられれば、だけど」
島風の口元に滲む挑発の色が深まる。これには、響も顔色を変えずにはいられなかった。
「……言ってくれるじゃないか。こうなったら、こちらも引き下がるわけにはいかないな」
いつもと同じ冷静な――しかし、確かに熱を帯びた口調で響は言う。直後、彼女は上体を捻り、島風に向け発砲した。
不意打ちを狙った一撃は、彼女の希望とは裏腹に敵を捉えることはない。逆に、三基の連装砲から猛烈な反撃が加えられる。六本の水柱が立て続けに発生し、滝のような海水が響を打ちつけた。
「くっ……」
水柱が立ったことから分かる通り、砲弾はすべて響から外れている。しかし、命中していないから被害がゼロかというと、そうでもない。
自艦の間近で炸裂した砲弾は、命中していなくとも飛散する弾片によって身を傷つける。一つ一つのダメージは大したことないが、それが積み重なると、最悪の場合は艤装の機能停止までも引き起こす。特に、装甲防御をほとんど持たない駆逐艦はそうなる危険性が高い。駆逐艦にとっては、至近弾といえども大きな脅威である。
今は演習弾で撃ち合っているため、弾片被害を心配する必要はない。飛び散るものは、着弾確認用の塗料だけ。それでも、やはり水柱は生まれるので、その崩壊に巻き込まれれば姿勢を崩したりする恐れがある。「前」は、こんな心配は無用だったのに――と、響は心中で今の自分の体に対する数少ない不満を呟いた。
「夾叉を確認! 連装砲ちゃん、射撃諸元そのままで砲撃続行――」
「させません!」
力強い声とともに、連装砲の一基が橙色に染め上げられる。着弾の衝撃で大きくよろめいたその一基は、速度を急激に低下させそのまま戦列から落伍した。
「命中! 連装砲一基、大破なのです」
砲撃を命中させた電が喜色を滲ませ報告する。しかしその直後、今度は彼女が塗料の洗礼に見舞われた。
「きゃあっ!?」
背後からの二連射。電の隙を的確についた一撃は、彼女の主缶と主砲に命中し、茶色の塗料を撒き散らす。被弾の衝撃を感知した艤装は、演習前の設定に従い、これが実弾だった場合の被害想定に基づき出力を低下させる。航行不能こそ免れたものの、電の速力は半分近くに落ち、戦闘から取り残されてしまった。
「仲間の援護は大事だけど、よそ見してたらダメよ」
「今の砲撃は、天津風ちゃんが?」
答えは分かりきっているが、尋ねずにはいられない。案の定、天津風の返事は電が予想した通りのものだった。
「ええ、もちろん。私も島風と同じように、あなたたちとすれ違った後に回頭して後ろについていたのよ。本当は同航で撃ち合いするつもりだったけど、背中がガラ空きだったから一本取らせてもらったわ」
至近距離での併走という好条件にありながら、主砲を潰された電は天津風を攻撃することができない。魚雷は全弾残っていたが、射界の都合で真横の敵は狙えない。天津風はそれも踏まえてこの位置を占めているに違いなかった。
「私はこれから、島風と響を追いかけるわ。悪いけど、ちょっとの間だけ一人で待っててね。それじゃ」
そう言い残して、天津風は速力を上げる。しかし、電も指を咥えてそれを見送るつもりはなかった。
「発射管一番から六番、撃ち方用意。目標、天津風ちゃん。雷速最大に調定。全発射管、用意よし。……
天津風に聞こえないよう小声で唱えてから、電は渾身の一撃を放つ。
暗殺者の繰り出す暗器の如く、六本の魚雷が音もなく海中を疾駆する。当の天津風がこれに気づく気配はない。彼女は既に電を無力化したと判断し、警戒を解いているようであった。魚雷は見る間にその無防備な背中へ迫り、天津風がようやく振り向いた時にはもはや手遅れな位置に達していた。
たとえ今から天津風が舵を切っても、魚雷の魔の手から逃れることはできない。六本の雷跡は互いに一定の間隔を作って散開しており、天津風が変針しても必ず一本ないし二本が命中するように調整されている。装甲の薄い駆逐艦を仕留めるには、それだけあれば充分。この雷撃によって、天津風は戦闘不能に陥る……はずだった。
次の瞬間、大きな水柱が上がり天津風の姿を隠す。しかし、それを目にした電の顔に浮かんだのは、歓喜ではなく驚愕だった。
今回の戦闘では、魚雷も砲弾と同様に演習用のものを使用している。演習用魚雷は標的に命中してもその下を潜り抜けるだけで、決して炸裂はしない。だからこの水柱は、何か別の事が起こったことを示していた。
電は、その答えを知っていた。水柱が上がる直前、彼女は天津風がある行動をとったのを目撃していた。
天津風は、魚雷の接近を確認すると、おもむろに円筒形の物体を取り出してそれを幾つか投下した。そして、直後にその位置で水柱が立ち上った。
天津風が投下した物体は、電もよく見慣れているものだ。だが、それはこの場で使うものではなかったし、そのようなことは考えたこともなかった。
しかし、電がそれ以上思考を巡らすことは許されなかった。彼女はふと自分の足元に四本の航跡が伸びているのを発見し、それが意味するところを理解する前に艤装が全機能を停止した。
「……完敗、ですね」
苦笑いを浮かべ、電は呟く。
演習の結果は、「島風」中破(本人は小破。連装砲二基が大破)、「天津風」損害軽微、「響」大破(航行不能につき降伏)、「電」沈没。天津風、島風組の勝利であった。
◆◇◆◇
「二人ともお疲れ様。念のため聞くけど、怪我はない?」
演習終了後、再び四人が集合したところで天津風が口を開く。電と響は、彼女の問いに揃って頷きを返す。
「まずは、演習の感想を聞こっか。どうだった?」
「完敗なのです。それしか言葉がありません」
溜息をつきながら、電は島風に答える。響も頷いてそれに同意する。
「私も同じ感想だよ。まるで歯が立たなかった」
「まあ、そうだよねー。二人とも、全然手応えなかったもん」
「改めて言われると、やっぱり落ち込むのです……」
「こら島風。悪気がないのは分かってるけど、言い方には気をつけないと」
島風にやんわりと注意した天津風は、誤解を生まない言葉で二人の戦いぶりを講評する。
「演習の結果だけを見ると一方的に映るかもしれないけど、私は二人の技量が劣っていたとは思っていないわ。二人の戦いからは、普段から一生懸命訓練しているのが感じられた」
「でも、君たちの相手にはならなかった」
「ええ、そうね。だけどそれは、戦い方を間違えていたせいだと、私は思うわ」
「戦い方を、間違えていた……?」
そうよ、と天津風は頷き、島風に顔を向ける。
「ねぇ、島風。二人の戦い方を見て、何か気になったところはある?」
「うーん、そうだね」
島風は少し考えてから、その問いに答える。
「二人の戦い方は、まだ艦娘の戦い方じゃなかったかな」
島風の言葉に、電と響は怪訝そうに眉を寄せる。二人とも、彼女の言わんとしていることが理解できないようであった。
島風も、その様子を察して説明を加える。
「二人ともよく戦ってたんだけど、まだまだ動き方が『
「
呟く電の眉間には、依然として皺が刻まれている。具体的な説明をさらに求められた島風は、再度口を開いた。
「二人の動き方がフネのままだっていうのは、『昔』の記憶に囚われているっていう意味。電も響も、主砲は主砲、魚雷は魚雷としてか使ってなかったよね? それが、『
「『艦娘』の戦いは、それとはどう違うのですか?」
「あなたは、その答えをもう見ているはずよ」
「電が、ですか?」
不意に口を挟んだ天津風の方を向き、電は首を傾げる。
「ええ。ついさっき、私の後ろでね」
そのヒントをきっかけとして、電の脳裏にある光景が甦る。
「さっきの爆雷……!」
「正解」
微笑を浮かべ、天津風は頷く。
「爆雷? 水上艦同士の演習で、どうしてそんな物が?」
不思議そうにする響に、電は答える。
「天津風ちゃんからの砲撃を受けて速力が落ちた後、電は天津風ちゃんが島風ちゃんの援軍に向かうのを防ぐために、雷撃をしたのです。天津風ちゃんはそれに気づいていなかったので、魚雷は真後ろから命中するはずだったのですが……その直前に、すべて迎撃されてしまったのです」
「迎撃? 回避ではなくて?」
「はい」
頷いた電は、防楯の裏側に収められている円筒形の物体を取り出す。
「その時に天津風ちゃんが使ったのが、この爆雷だったのです」
「爆雷だって?」
響は眉を上げ、電が持つ爆雷をまじまじと見つめる。
「だけど、爆雷は海中の潜水艦を攻撃するための兵器のはず。これで魚雷を防ぐことなんてできるのかい?」
「だからー、フネだった時の常識に囚われちゃダメなんだってば」
島風が響に言う。
「確かに、爆雷の本当の使い方はそうだよ? でも、だからって爆雷を対潜攻撃にしか使わないんじゃ、フネと一緒じゃん。今の私たちは艦娘。自分の頭で考えて、それを実行することができるんだよ。だとしたら、この特徴を目一杯活かして、軍艦の常識からかけ離れた戦い方をしてこそ、艦娘らしいとは思わない?」
「特に私たちは常に少数で敵と戦わないといけないから、戦力差を覆すための作戦をあれこれ考えているの。爆雷を使った魚雷回避術は、その一つ。爆雷が対潜攻撃にしか使えないのはもったいないから、起爆装置を改良して海面近くでも炸裂させられるようにしたのよ」
「二人が密着しながら航行して私たちの電探を欺いたのも、同じというわけか」
「そういうこと。武器、地形、気象、果ては自分の拳まで。ある物は何でも使え、がうちのモットーよ」
「そうそう。だからさ、ずっと気になってたんだけど――」
島風が、右腕を上げて人差し指を伸ばす。そして、その指先を電の背中に向けた。
「どうして『それ』、使わないの?」
「は?」
島風の問いに、電は頓狂な声を上げる。首を回して自分の背中を見てみるが、そこにある物といえば、茶色の塗料にまみれた艤装だけだ。
電が属する特Ⅲ型の艤装構成では、背部艤装は内部に主機と主缶を収め、さらに主砲と魚雷発射管の懸架台としての役割も果たしている。そのため電は最初、島風がこれらの武装のことを言っているのかと思ったが、よく考えると、主砲も魚雷も、背中というよりは体の左右の位置にある。島風の指先は明らかに背中に向けられているので、それとは違うものを指しているらしい。しかし、背部艤装の本体は機関部が収められた最重要装置であり、戦闘以前に洋上航行そのものに欠かせない存在だ。戦闘に使う使わないという次元の話ではない。電は、島風が何を指して話しているのか、まるで見当がつかなかった。
「えっと……どれ、ですか?」
仕方なく、電は島風に問い返す。それを聞いた島風は、呆れた様子で電の背部艤装――の、下に吊られている物体を指し示した。
「だーかーらー。これだってば。この錨!」
「えっ、これですか!」
「気づいてなかったの!?」
驚く電に、島風の方も目を丸くする。
「そんなに大きな錨ならいくらでも使い道はあるのに、どうして使わないのかずっと不思議だったんだけど。今まで、そういう風に考えたことはなかったの?」
「はい。まったく……。雷ちゃん――トラックにいる電のお姉ちゃんは時々錨を振り回しますけど、基本的には砲雷撃で戦っています。私自身は、錨を武器に使おうと思ったことは一度もないのです」
「ウソでしょ!」
叫んだ島風は、自らを落ち着けるように天を仰ぎ、溜息をつく。
「……ということは、当然、その錨をどうやって戦闘に使うかも分からないってことだよね」
「なのです……」
「まあ、無理もないかー。話を聞くと、トラックでやってる訓練は、昔の漸減邀撃作戦と何も変わらない感じだし。そういう場所で過ごしてたら、錨を武器として見れないのも当然ね」
島風は電に慰めの言葉をかけてから、彼女の錨を借り受ける。
「それじゃ、ここで新しい戦い方をみっちり教え込んであげる。まずは、二人に質問を」
そう言って、島風は二人に問いを投げかける。
「二人の艤装で一番強力な武器は、何だと思う?」
電と響は、すぐにはその質問に答えず黙考する。そして、ややあってから電が先に口を開いた。
「やっぱり、魚雷でしょうか。私たちの魚雷は、当たり所が良ければ重巡だって一撃で行動不能にできるのです」
「ぶっぶー」
しかし、島風から返ってきたのは否定の声。
「だとしたら、主砲ですか? でも、駆逐艦の主砲弾は装甲の厚い敵艦にはほとんど効果が――」
「……その錨、だと言いたいんだね」
電の言葉の途中で、響が答えを口にする。島風はそれに「正解」と笑みを見せた。
「どうして分かったのです、響ちゃん?」
「これまでの話の中で、島風は『艦』とは違う『艦娘』としての戦い方を強調している。そして、質問の直前にあった錨の話。この二つから、彼女は私たちの錨に強い可能性を感じていることが読み取れる。だとしたら、この質問の答えは彼女が注目している錨であると考えるのが妥当だ。初歩的な推理だよ、電」
「やるねー、響」
嬉しそうな表情を浮かべる島風は、二人に続けて言う。
「今から二人に、この錨が持つ力を見せてあげる。天津風、ちょっと手伝ってもらっていい?」
「いいけど、何をするのかしら?」
「私と天津風で、一対一の戦闘。私の連装砲ちゃんを全員貸すから、天津風はそれと自分の武装を合わせて私を倒しにきて。私は、この錨で戦うから」
「えっ! そんなの、無茶なのです!」
「まあ、いいから見てて」
軽い調子で電を宥めた島風は、天津風と距離をとって向かい合う。
この勝負では審判を設けていないため、戦闘開始のタイミングは二人次第となる。互いに間合いを測るように暫し睨み合った後、先に動いたのは天津風だった。
「連装砲全基! 交互撃ち方、撃ち方始め!」
天津風の号令とともに、島風から貸し出された連装砲三基と、彼女自身が持つ連装砲一基が砲門を開く。四基の砲塔から一発ずつ放たれた砲弾は、島風の前後を挟むようにして水柱を上げた。
「へぇ。借り物なのに初弾夾叉とは、やるじゃない」
「伊達にあなたのタイプシップをやってるわけじゃないのよ。それより、そこにいつまでも突っ立っていたら危ないと思うけど?」
「それもそうだね。それじゃ!」
島風が機関を始動させ、回避行動をとる。天津風はそれを追って砲弾を釣瓶撃ちする。各砲塔に備わる二門の砲を交互に射撃させているため、弾量は少ないが手数は多い。普段から島風の高速に慣れていることもあって、天津風の攻撃は命中弾こそないが島風を補足し続ける。
「流石は、速きこと島風の如しね。でも、逃げてばかりじゃ勝てないわよ」
そう言っている最中にも、天津風は砲撃の精度を確実に向上させていく。一弾ごとに鋭さを増す攻撃。そして遂に、天津風が勝負に出た。
絶え間ない砲音に隠れるようにして、圧縮空気の噴出音が鳴る。二人の戦闘を注視しながらもその音を聞きつけた響は、天津風が背負う魚雷発射管から魚雷が忽然と消えていることに気がついた。
響は目を皿のようにして海面を見回し、やっとのことで薄っすらと伸びる雷跡を発見した。魚雷の針路は、島風の予想針路にドンピシャリ。先ほどの演習において、島風の旋回圏が額面性能以上に小さかったことを考慮しても、これを避けることは不可能だ。
「面舵一杯、前進一杯!」
魚雷に気づいた島風は舵を切って回避を試みる。しかし、天津風の砲撃に気を取られていたせいで、既に魚雷は至近距離に迫っている。今の舵角で回頭を続けても被雷は免れない。転舵直後にそれを察した彼女は、間髪入れずに次の手を打った。
「右舷後進一杯ッ!」
「何だって!」
島風の叫びを耳にした響は、目を丸くして声の主を見る。
「島風は正気なのか? 前進一杯にするだけでも機関にかなりの負荷をかけるというのに、そこからいきなり後進一杯にするなんて。これじゃ、たとえ魚雷をかわせても、下手したら機関故障で航行不能に……」
響の懸念をよそに、島風はドリフトのような軌道を描いて旋回半径を縮める。それを見た響は「そうか」と合点がいった様子で呟いた。
「これが、島風の旋回半径が予想以上に小さかった理由。島風は演習の時も、この手を使って私たちの背後を取ったのか」
しかし、その秘策を用いてもなお、彼女が魚雷の魔手から逃れることは叶わない。今、島風と手合わせしているのは、彼女の僚艦の天津風。日頃から小隊を組み、互いに性格や戦法を熟知し合っている相手だ。当然、島風がこうすることを織り込んだ上で雷撃しているだろうし、事実、彼女は未だに迫る魚雷をかわしきれずにいる。
もはや、命中は時間の問題。響は心中でそのように結論づける。だが次の瞬間、彼女は信じられない光景を目の当たりにした。
「そっ、おりゃあぁっ!」
魚雷命中まで残り数秒という時、島風は右手に持っていた錨を勢いよく海面に突き立てた。錨は島風の動きに急制動をかけ、同時にそれを中心として、彼女に鋭い右旋回を行わせた。
その機動は、先ほどよりもさらに急激なものだった。天津風の雷撃もこの動きまでは想定しておらず、四本の雷跡は島風の左を虚しく過ぎ去っていった。
「やっぱり。そんなことだろうと思ったわ」
響とその隣の電が絶句しているのをよそに、天津風はさして驚く様子もなくこの結果を受け止める。彼女は冷静に連装砲たちへと指示を出し、島風の連装砲三基を主に向けて突撃させた。
「三方向からの同時砲撃。いくら機敏に動いてみせても、これを避け続けるのは至難の業よ。今度はどうするつもりかしら?」
楽しげに尋ねる天津風。島風はその問いに、不敵な笑みを浮かべて応じた。
「避け続ける? そんなこと、端からする気ないよ」
「じゃあ、どうするの?」
「こうするんだよ!」
最大戦速、という叫び声を合図に、島風の体が一気に加速する。彼女は接近する連装砲の間を容易くすり抜け、天津風の懐へと一直線に突進した。
相手を追い込むために前進させた連装砲は、今やただの遊兵にすぎない。一瞬のうちに火力の過半を戦力外とされた天津風は、一転して窮地に立たされた。しかし。
「忘れてないかしら? 私の砲は、まだ残っているのよ」
天津風は、肩から下げている自分の連装砲を島風に向ける。そして、突進してくる彼女へ、その砲弾を放った。
突進中の島風は、天津風の砲撃を察知しても、回避行動をとる余裕がない。針路を変えようと意識する頃には、既に砲弾は目の前に迫り、舵が効く前に命中することだろう。だから彼女は、この場でできる唯一の手段を使用した。
「せいやあぁっ!」
島風が、右手を逆袈裟に振り上げる。一か八かの心で振るわれた錨は、絶妙な角度で砲弾と接触し、その針路を微妙に変化させて命中進路の外へと追いやった。そして、島風は勢いをそのままに天津風の懐に飛び込み、上段に構えた錨を打ち下ろした。
が、その一撃は、天津風を捉えることなく終わる。彼女の身を案じて寸前で止めたわけではない。島風本人が、自らの身を守るために止めなければならなかったのだ。
「……ふう。流石に今のは、冷や汗が出たわ」
息をつく天津風の両手は、連装砲を前に突き出している。その砲身が当てられているのは、島風の喉元。演習弾とはいえ、天津風がその気になれば、島風に致命的な傷を負わせることができる。
「これは、引き分けってところかしら。異存はない?」
「うん。ないよー」
二人は同時に自分の武器を下ろし、臨戦態勢を解く。天津風は深い息を吐くと恨めしげな目を島風に向けた。
「それにしても島風。最後の攻撃は少し危険すぎるんじゃない? 一歩間違えてたら、私は骨折どころじゃ済まなかったわよ」
「それを言うなら、天津風だって。あの距離で撃たれたら、いくら演習弾でも大惨事だよ」
「私がそんなミスすると思ってるの?」
「天津風こそ、私がそんなに間抜けに見える?」
言葉だけ聞けば剣呑な会話だが、二人の口元には笑みが見える。ほどよいところで掛け合いを止めると、二人は電たちへと体を向けた。
「とまあ。これが、この武器の正しい使い方だよ」
錨を肩に担いだ島風が、自信たっぷりの口調で言う。
「正しい、のでしょうか……?」
「もっちろん! ただ艤装にぶら下げておくよりも、こうやって使う方がずっと戦いに役立つでしょ。戦場では、自分と味方が生き残ることが最優先。その役に立つなら、正しいに決まってるよ」
というわけで、と島風は錨を電に握らせる。
「さっそく特訓開始! この戦い方を身につければ、電たちも今よりずっと強くなれるよ!」
「い、今からですか?」
「さあさあ、張り切っていくよー、おーっ!」
島風は電の手を掴み、自分と一緒に拳を上げさせる。彼女の耳には、「ちょっと休憩を……」と訴える電の声は届いていないらしい。
「まずは錨の構え方から。……ああ、ダメダメ、そんなんじゃ。もっと踏ん張りを効かせないと。持ち上げただけでバランス崩してたら、とても武器として使いこなすなんてできないよ?」
「そ、そんなこと言われても……はわわっ!?」
「ありゃりゃ。この分だと、電は筋トレからスタートだね」
盛大に尻餅をつく電に、島風は溜息混じりの苦笑を漏らす。
結局、その日の残り時間は全てこの指導に費やされ、電と響は腕が上がらなくなるまで錨を振り回させられたのだった。
暁「なんというか、まぁ……ご愁傷様ね」
雷「何あれ楽しそう! 羨ましいわ!」
電「……暁ちゃんと雷ちゃん。二人で見事に反応が分かれましたね」
雷「あんな戦い方があるなんて! 内地やトラックだと、艦娘なのに肉弾戦なんて異常だってみんな言うからやめてたけど……やっぱり、私の戦い方は間違ってなかったのね!」
電「雷ちゃん、目がとても輝いているのです……」
響「ていうか、本音はあれを主戦法にしたかったのか。知らなかった」
雷「私も前から変だと思っていたのよ。使えるものが手元あるのに、どうしてみんな使わないんだろうって。そりゃあ、手の平サイズの錨とかだったら、私も使い道はないって思うわよ? だけど、私たちの錨は振り回すのにちょうどいい大きさなんだもの。これを使わない手はないわ!」
暁「やれやれ、これだからお子様は……。いい、雷? 敵に近づくっていうことは、それだけ危険も増すということよ。距離が近いと、同じ大きさの砲弾でも威力が上がるし、雷撃の回避も難しくなるわ。そういう危険を無視して突っ込むのは、賢いやり方じゃない。猪突猛進は、レディーのすることじゃないわ」
響「あの暁が、大事なところで噛まなかった……!?」
暁「聞こえてるわよ、響!」
響「なっ!? 声には出していなかったはずなのに」
暁「しっかり口の外に出ていたわ。まったく、失礼な妹ね」
響「不覚だった……」
暁「ああもう。響のせいで、何を話していたんだか忘れちゃったわ。とりあえず、次回予告だけして終わらせましょ。電、お願いしてもいい?」
電「はい」
雷「次回はどうなるのかしら? まさか、架空デュエル小説なのにこのまま海戦修行が続いたりしないわよね?」
電「それは杞憂で済みますよ。次回はちゃんとデュエルもあるのです。けど……」
雷「けど?」
電「敵艦見ゆとの警報に接し、出撃するショートランド艦隊。私たちも一緒に迎撃に向かうのですが……。次回『悪しき英雄』。デュエル・スタンバイなのです」