鎮守府決斗録   作:石田零

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44 日月の輪

「先攻はあんたに譲るわ。教導隊のお手並み拝見よ」

 

「分かりました。では、いきます」

 

 曙の言葉を受けて、電は自分のターンを開始する。

 本人はあのように言っているが、実際のところは、彼女のデッキが後攻向きだというのが先攻を譲った理由だろう。とはいえ、電は初めから曙に先攻、後攻の選択権を与えるつもりだったので、相手の意図を知った上でそれに乗る。

 

「私は、モンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンドなのです」

 

「……それだけ?」

 

 電の攻勢に備え身構えていた曙は、肩透かしを食らった様子で言う。

 

「電。あんた、あたしのこと舐めてるの?」

 

「いいえ」

 

 眉を寄せる曙に、電ははっきりとした否定を返す。

 

「電は、この先、常に相手への敬意を忘れずにデュエルしていくと誓いました。それは、誰が相手でも同じです。電は、今も決して手を抜いてはいません。これは、次のターンへの布石。曙ちゃんに全力の攻撃をお見舞いするための下準備なのです」

 

「なら良かったわ。勝った時に、今のは本気じゃなかったとか言い訳されたくないから」

 

「そう言うということは、私に勝つ自信があるのですね」

 

「当然。最初から負ける気で戦って、何の意味があるのよ。どんな勝負だろうと、あたしはいつでも勝つつもりよ」

 

「確かにそうですね。では見せてください、曙ちゃんの本気のデュエルを!」

 

「言われなくても。あたしのターン!」

 

 電は初めの段階で曙のデュエル相手に指名されたため、彼女のデッキ構築には関わっていない。そのため、曙の使うカードはほぼすべて、彼女にとって初見のものとなる。曙は一体どのような戦術を繰り出してくるのか。期待と警戒が入り混じった眼差しで、電は対戦相手を見る。

 

「あたしは手札から『太陽の神官』を特殊召喚。さらにチューナーモンスターの『スーパイ』を通常召喚するわ」

 

「チューナーモンスター……ということは、曙ちゃんも潮ちゃんと同じシンクロデッキですか」

 

「その通り。あたしは、レベル5の太陽の神官に、レベル1のスーパイをチューニング! シンクロ召喚!」

 

 連なる星が輝きを増し、一筋の光となる。その光に誘われるようにして、曙の場に四つ首の龍が降り立つ。

 

「現れなさい、夜を統べる龍。『月影龍クイラ』!」

 

 

《スーパイ》

チューナー(効果モンスター)

星1/地属性/悪魔族/攻 300/守 100

フィールド上のこのカードがカードの効果によって墓地へ送られた時、デッキから「太陽の神官」1体を特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃力が倍になり、このターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。

 

《太陽の神官》

効果モンスター

星5/光属性/魔法使い族/攻1000/守2000

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキから「赤蟻アスカトル」または「スーパイ」1体を手札に加える事ができる。

 

《月影龍クイラ》

シンクロ・効果モンスター

星6/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

「スーパイ」+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが攻撃対象に選択された時、攻撃モンスターの攻撃力の半分の数値分だけ自分のライフポイントを回復する。

また、フィールド上のこのカードが破壊された場合、自分の墓地の「太陽龍インティ」1体を選択して特殊召喚できる。

 

 

「あんたが何を仕込んでいようと、あたしには関係のないことよ。あたしは、月影龍クイラで裏守備モンスターに攻撃!」

 

「私が伏せていたモンスターは『電池メン-ボタン型』。このカードがリバースしたことで、デッキから『電池メン-角型』を守備表示で特殊召喚します」

 

 

《電池メン-ボタン型》

効果モンスター

星1/光属性/雷族/攻 100/守 100

リバース:デッキから「電池メン-ボタン型」以外のレベル4以下の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを1枚ドローする。

 

《電池メン-角型》

効果モンスター

星4/光属性/雷族/攻1000/守1000

「電池メン-角型」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「電池メン」モンスター1体を手札に加え、このカードの攻撃力・守備力を元々の倍にする。

(2):自分エンドフェイズに発動する。

このカードを破壊する。

 

 

「角型の効果で、私はデッキの『充電池メン』を手札に加えます。さらにボタン型が戦闘破壊されたことで、カードを一枚ドローします」

 

「ちっ……面倒なモンスターね」

 

 戦闘には勝ったが、攻撃前と比べて相手モンスターの数は変わらず、手札はむしろ増えている。攻撃をかけたはずが却って相手を利することなり、曙は苦い顔をする。

 

「あたしはカードを二枚伏せる。これでターン終了よ」

 

「私のターン。さあ、いきますよ。まずは、角型をリリースして充電池メンをアドバンス召喚。その効果により、デッキから『電池メン-単三型』を特殊召喚します。そして!」

 

 電は手札から引き抜いた一枚のカードをディスクに叩きつけるようにして発動する。

 

「速攻魔法『地獄の暴走召喚』! このカードの効果により、デッキに眠る残り二体の単三型を特殊召喚します!」

 

 

《充電池メン》

効果モンスター

星5/光属性/雷族/攻1800/守1200

このカードの召喚に成功した時、手札・デッキから「充電池メン」以外の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上の雷族モンスターの数×300ポイントアップする。

 

《電池メン-単三型》

効果モンスター

星3/光属性/雷族/攻 0/守 0

自分フィールド上の「電池メン-単三型」が全て攻撃表示だった場合、「電池メン-単三型」1体につきこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。

自分フィールド上の「電池メン-単三型」が全て守備表示だった場合、「電池メン-単三型」1体につきこのカードの守備力は1000ポイントアップする。

 

《地獄の暴走召喚》

速攻魔法

相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。

その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。

相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

 

 

「この効果でモンスターを特殊召喚できるのは、私だけではありません。曙ちゃんも、自分の場にいるモンスター一体と同じ名前のモンスターを、可能な限り特殊召喚することができます。が……」

 

 電は、含みのある表情で笑みを作る。

 

「特殊召喚できるのは、デッキと墓地にいるモンスターだけ。エクストラデッキの中のモンスターは、特殊召喚の対象外です」

 

「それって結局、あたしはモンスターを特殊召喚できないってことじゃない。……ったく、期待させておいて何よ。要するに、最初から自分だけモンスターを展開するつもりだったんでしょ」

 

「そんなことはないのです。たとえ曙ちゃんがモンスターを特殊召喚できる状態だったとしても、電は今と同じことをしていたのです」

 

「ふーん。本当かしら」

 

「本当なのです。なぜなら……」

 

 電は、さらにもう一枚の魔法カードを発動する。

 

「相手モンスターが何体になろうと、電には関係ないからです。魔法カード『漏電(ショートサーキット)』を発動!」

 

 

漏電(ショートサーキット)

通常魔法

自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが3体以上存在する場合に発動できる。

相手フィールド上のカードを全て破壊する。

 

 

「このカードは、自分のフィールドに『電池メン』が三体以上いる時に、相手フィールド上のカードをすべて破壊することができます。これで、曙ちゃんのカードを一掃します!」

 

「やっぱり、あたしにモンスターを並べさせる気なんてないじゃないの!」

 

 曙の抗議を無視して電は電撃を見舞い、彼女のフィールドを焼け野原にする。後に残ったものは、電が従える四体の電池メンのみ。

 これぞ、電の十八番である一撃必殺のコンボ。相手もモンスターを呼び出せる暴走召喚のデメリットを、漏電の全体除去で帳消しにした上で、大量展開したモンスターによる総攻撃を行う。その攻撃力の合計値はしばしば一万を超え、現に今も合計12,000にも達する攻撃力を持つモンスターたちが電のフィールドに並んでいる。この威力の前では、4000のライフポイントなど風の前の塵に等しい。電もまた、ここで曙のライフを消し飛ばす気でいた。

 

「バトルです。私は、四体の電池メンで曙ちゃんにダイレクトアタ――!」

 

 しかし、攻撃を命じる電の声は途中で切れる。彼女の目が、信じがたい光景を捉えたからだ。

 

「単三型が、二体に減ってる……!?」

 

 驚きの色を顔に残したまま、電は考えられる唯一の可能性へと視線を転じる。

 

「曙ちゃん。何をしたんですか?」

 

「別に。あたしは何もしてないわよ」

 

 涼しげに答えた曙は、そのままの表情でつけ加える。

 

「あたしは何もしていない。ただあんたが自分で、あたしのモンスターの効果を発動させただけ。あたしの場に伏せられていた、『アーティファクト-モラルタ』の効果を」

 

「伏せていた? モンスターを?」

 

 曙の言葉を聞き、電は困惑をあらわにする。

 

「曙ちゃんの伏せカードがあったのは、魔法・罠ゾーンだけ。でも、モンスターカードをそこに置くことはできないのです。仮にそんなことをしても、デュエルディスクは反応せずにエラー表示が出るだけのはず……」

 

「鈍いわね、あんた」

 

 電の混乱を、曙は一笑に付す。

 

「エラーが出なかったからこそ、あたしはこうして効果を発動できているんじゃない。アーティファクト-モラルタは、魔法カードとして魔法・罠ゾーンにセットできる効果を持っているのよ。そして、その状態で相手ターン中に破壊された場合、このカードを特殊召喚して、さらに相手のカード一枚を破壊することができる。あんたの電池メンが一体減ったのは、これが理由ってわけ」

 

「魔法カードとして場に出せるモンスター!? そんなカードがあるなんて……」

 

「へぇ。教導隊の一員でも、知らないカードはあるのね。なるほど、響がすべてのカードを完璧に把握することは至難の業だと言っていたけど、どうやら本当みたいね」

 

 余裕の表情を浮かべる曙は、電に「どうする?」と尋ねる。

 

「モラルタが持っている効果は、今説明したので全部よ。残っているモンスターで攻撃すれば倒すことができるけど」

 

「そんなの、決まっているのです。私は充電池メンでアーティファクト-モラルタに攻撃!」

 

 だが、電の意に反して彼女のモンスターは動かない。

 

「曙ちゃん、また……!」

 

「当然。あたしがこのままバカみたいに攻撃を食らうと思っていたの?」

 

 そう言った曙の前に、新たなカードが現れる。

 

「あたしが伏せていた、もう一枚のカード。速攻魔法『アーティファクト・ムーブメント』。このカードは相手の手で破壊された場合、次の相手のバトルフェイズを飛ばすことができるわ」

 

 

《アーティファクト-モラルタ》

効果モンスター

星5/光属性/天使族/攻2100/守1400

このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンにセットできる。

魔法&罠カードゾーンにセットされたこのカードが相手ターンに破壊され墓地へ送られた時、このカードを特殊召喚する。

相手ターン中にこのカードが特殊召喚に成功した場合、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選んで破壊できる。

 

《アーティファクト・ムーブメント》

速攻魔法

フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊し、デッキから「アーティファクト」と名のついたモンスター1体を選んで魔法カード扱いとして魔法&罠カードゾーンにセットする。

また、このカードが相手によって破壊された場合、次の相手のバトルフェイズをスキップする。

 

 

「……私はこれで、ターンエンドなのです」

 

 必殺のコンボを決めたはずが、相手に傷一つ付けられなかった上、逆に自分のモンスターを失う始末。電は悔しさを滲ませた声で曙にターンを明け渡す。それを引き継いだ曙は、対照的な勢いでカードをドローした。

 

「今度はこっちの番よ! あたしは手札から『赤蟻アスカトル』を通常召喚。さらに、レベル5のモラルタに、レベル3のアスカトルをチューニング。シンクロ召喚! 降臨せよ、太陽の化身! 『太陽龍インティ』!」

 

 

《赤蟻アスカトル》

チューナー(効果モンスター)

星3/地属性/昆虫族/攻 700/守1300

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地のレベル5モンスター1体を選択して特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、そのターンのエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

 

《太陽龍インティ》

シンクロ・効果モンスター

星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2800

「赤蟻アスカトル」+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを破壊したモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

また、フィールド上のこのカードが破壊された場合、次のターンのスタンバイフェイズ時、自分の墓地の「月影龍クイラ」1体を選択して特殊召喚できる。

 

 

 先ほどのクイラと同じく四つの頭を持つ龍が曙のフィールドに出現する。クイラの全身が蒼月を思わせる深い青色に覆われていたのに対し、インティが纏うのは紅色。さながら燃え盛る太陽の如く、インティの体はまばゆく輝く。

 

「バトルよ。あたしはインティで単三型に攻撃!」

 

 現在の単三型の攻撃力は2000。このままインティの攻撃が通れば戦闘破壊することができる。が、しかし。

 

「そうはさせません。私は手札の『オネスト』の効果を発動! このカードを捨てることで、単三型の攻撃力をインティの攻撃力分アップさせます!」

 

 

《オネスト》

効果モンスター

星4/光属性/天使族/攻1100/守1900

(1):自分メインフェイズに発動できる。

フィールドの表側表示のこのカードを手札に戻す。

(2):自分の光属性モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。

 

 

 光の加護を得た単三型はインティの攻撃を受け流し、反撃の電撃を見舞う。電撃はインティの体の中心にある太陽を貫き、その生命活動を停止させる。

 

「太陽龍インティ、撃破です!」

 

 華麗な返り討ちを決めた電は、どうだといった様子でガッツポーズを作る。しかしその直後、戦闘に勝利した単三型も突如爆発し、破片を電の頭上に降り注がせた。

 

「きゃあっ!」

 

 この事態を予期していなかった電は、不意の爆発に対して即応できず、爆発の衝撃をもろに受けてしまう。爆風により地面に叩きつけられた彼女は、顔をしかめつつ状況の把握を試みる。

 

「確かに、戦闘には勝ったはずなのに……。一体、何が……」

 

「太陽龍インティの効果よ」

 

 電が求めていた答えは、彼女の対戦相手から示された。

 

「燃える太陽を壊しておいて、無傷で済むはずがないでしょ。インティを戦闘破壊したモンスターは破壊され、さらにその攻撃力の半分が相手へのダメージとなる。返り討ちに遭うのは予想外だったけど、ただじゃやられないわ」

 

 

曙 LP4000→2000

電 LP4000→1500

 

 

 モンスターを失った曙は、カードを一枚伏せてターンを終える。今が攻め時と電は攻勢に出ようとするが、その前に曙の声が響く。

 

「あんたのスタンバイフェイズに、墓地のインティの効果を発動! あたしの墓地に存在する月影龍クイラを攻撃表示で特殊召喚するわ!」

 

 曙の場に月の龍が蘇る。これで電は当初予定していたダイレクトアタックを決めることができなくなってしまったが、彼女は冷静に敵へ対処する。

 

「なら……、私は電池メン角型を通常召喚。その効果を使って、デッキの『燃料電池メン』を手札に加えます。そして、その燃料電池メンを特殊召喚。さらに効果を発動します」

 

 燃料電池メンは、味方の電池メン一体と引き換えに、相手のカード一枚を手札に戻すことができる。電が狙うのは、もちろんクイラ。

 

「私は角型をリリースして、クイラを手札に戻します。これで二度目の復活はできません!」

 

「そんなこと許すと思う? トラップ発動、『デストラクト・ポーション』! クイラを破壊して、その攻撃力分のライフを回復するわ」

 

 

《燃料電池メン》

効果モンスター

星6/光属性/雷族/攻2100/守 0

自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上の「電池メン」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。

相手フィールド上のカード1枚を選択して持ち主の手札に戻す。

 

《デストラクト・ポーション》

通常罠

自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

 

曙 LP2000→4500

 

 

 電の効果をかわしつつ、曙は半減していたライフポイントを回復させる。電としてはせっかく削ったライフを元に戻された形となるが、憂慮すべきことはそれだけではない。

 

「インティは、破壊された時にクイラを特殊召喚した。ということは、もしかしてクイラも……」

 

「その通りよ。クイラは破壊された時に墓地の太陽龍インティを特殊召喚できる。しかも、今度は今すぐに。さっきみたいなタイムラグは存在しないわ」

 

「私は、単三型を守備表示に変更。ターンエンドです」

 

 攻撃力2500のクイラならともかく、インティが出てきては成す術がない。電は歯噛みしつつターンを終える。

 

「あたしのターン。あたしは『アポカテクイル』を召喚。そして、インティで燃料電池メンを、アポカテクイルで単三型を攻撃よ」

 

「くぅっ……!」

 

 

《アポカテクイル》

効果モンスター

星4/光属性/雷族/攻1800/守1200

自分フィールド上にチューナーが存在する場合、フィールド上のこのカードのレベルは5として扱う。

フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地の「太陽の神官」1体を選択して特殊召喚できる。

 

電 LP1500→600

 

 

「……元から勝つ気ではいたけど、正直こうも順調にいくとは思ってなかったわ。まさか、このまま終わりなんてことはないわよね」

 

「安心してください」

 

 少しばかり拍子抜けした表情の曙に、電は答える。

 

「電にも、教導隊の意地がありますから。負けてあげる気はさらさらありません」

 

 電は、曙からも見えるように人差し指を立てる。

 

「教導隊らしく、曙ちゃんに一つ教えてあげます。デュエルの勝敗は、最後の最後まで分かりません。どんなに自分が優勢だったとしても、あるいは劣勢だったとしても、次の瞬間には立場が逆転しているかもしれない。それがデュエルなのです」

 

「つまり、あんたはこの状況から逆転してみせると?」

 

「はい」

 

 曙の問いに、電はしかと頷く。

 

「デュエリストとデッキは、一心同体。勝ちたいという強い気持ちがあれば、デッキは必ず、その想いに応えてくれます」

 

「そういう精神論は、あまり好きじゃないんだけど」

 

「確かに、にわかには信じがたい話かもしれません。でも、これは事実なのです。曙ちゃんも、これから何度もデュエルをしていけば分かると思います」

 

 だから、と電は声を強める。

 

「まずは電が、最初の実例を見せてあげます。私の、ターンッ!」

 

 引いたカードを確かめた電は、口元を小さく綻ばせる。

 

「うそ……まさか本当に、引き当てたっていうの?」

 

「そのまさかなのです。私は魔法カード『帝王の烈旋』を発動します。そして、これが私の待ち望んでいた一枚。通常魔法『充電器(バッテリーチャージャー)』!」

 

 

《帝王の烈旋》

速攻魔法

「帝王の烈旋」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(1):このターン、アドバンス召喚のために自分のモンスターをリリースする場合に1度だけ、

自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドのモンスター1体をリリースできる。

 

充電器(バッテリーチャージャー)

通常魔法

500ライフポイントを払う。

自分の墓地から「電池メン」という名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 

電 LP600→100

 

 

「私は500ポイントのライフと引き換えに、墓地の角型を復活させます。そして、角型の効果で二枚目の充電池メンを手札に加えます。この充電池メンを、曙ちゃんのインティをリリースしてアドバンス召喚!」

 

「あたしのモンスターを!? どうしてそんなことが……」

 

「帝王の烈旋を発動したターン、私はアドバンス召喚する時に一度だけ、相手モンスターをリリースに使うことができるのです。インティがクイラを蘇らせる効果が発動するのは、破壊された時だけ。それ以外の方法で墓地に送れば、二体のループコンボを止めることができます。そして私は、召喚した充電池メンの効果で、デッキから燃料電池メンを特殊召喚します」

 

「燃料電池メン……そいつの効果で、残ってるあたしのモンスターを手札に戻すつもりね」

 

「はい。私は角型をリリースして、アポカテクイルを手札に戻します」

 

 これにより、曙の場からモンスターの姿が消える。彼女のライフポイントは初期値を超える4500を残しているが、対する電の下には三体の電池メンが肩を並べている。その合計攻撃力は、7500。

 

「覚悟はいいですか? 私は三体の電池メンで曙ちゃんにダイレクトアタック!」

 

「ぐっ、くうぅっ!」

 

 

曙 LP4500→0

 

 

 三体のモンスターによる一斉攻撃が曙のライフを根こそぎ奪い去る。

 実戦ではないとはいえ、これだけの量のダメージを受ければ相応の衝撃が発生する。しかし、曙は膝をつきながらも気合でその場に踏みとどまった。

 

「狙ったカードを本当に引き当てて逆転するなんて……。これが、あんたの言った、デッキが想いに応えるということなのかしら」

 

「はい。今のドローは、電が『引き当てた』というよりも『引き寄せた』もの。電の願いをデッキが聞き届けて、あの場で引きたかったカードを引かせてくれたんです」

 

「やっぱり、現実離れした話だわ」

 

「否定はしません」

 

 苦笑いを浮かべつつ電は答える。

 

「でも、この世界で戦っていると、そのうち嫌でも信じざるを得なくなります。トラックには、電よりもずっと引きの強いデュエリストが何人もいるのです。響ちゃんもそうですし、同じ教導隊の天龍さんなんかは、ここぞという場面では物語の主人公みたいに必要なカードを引き寄せてくるのです」

 

「何よその理不尽な引きの強さ……」

 

「電も、あれには何度もやられました。でも、天龍さんのデュエルは真っ直ぐで清々しいので、たとえ負けても気分は悪くなりません」

 

「それも信じがたい話ね。今のあたしは、あんたに負けて、悔しくてたまらないってのに」

 

「それは当たり前の気持ちなのです。電も、負けたら当然悔しいです。だから次は負けないように、デッキを改良したり戦い方を見直したりします……が、それを言えるのは仲間同士でのデュエルの時だけなのです」

 

「敗北イコール沈没……これがD型艦とのデュエルだったら、あたしは今頃海の底ね」

 

 溜息をつく曙に、電は優しく声をかける。

 

「そうならないために、私たちがいるのです。みんなのデュエルの腕を上げて、D型艦との戦いに生き残れる艦娘を一人でも多くする。それが教導隊の使命なのです。お望みなら、曙ちゃんのこともしっかり鍛えてあげますよ」

 

「もちろん。断る理由がないわ。すぐにあんたに追いついて、リベンジしてやるんだから」

 

「それは楽しみなのです。でも、今日はこのくらいにしておきましょう。デッキ構築からデュエルまで一気にやったので、頭も体も疲れているはずです。航海の疲れもまだ残っているでしょうから、まずはゆっくり休んでください」

 

 そう言って、電は曙に手を差し伸べる。実際に疲労は溜まっているらしく、立ち上がった曙は電の言葉に素直に従う素振りを見せる。

 

「明日からは、曙ちゃんと潮ちゃんにもショートランドの子たちと同じ教導に参加してもらいます。ここのみんなも個性的なデッキを使うので、勉強になりますよ」

 

「分かったわ」

 

「では、また明日なのです。今日はお疲れ様でした」

 

「こちらこそ。礼を言うわ」

 

 傍らに歩み寄った潮とともに、曙はその場を去る……が、不意に足を止めると、後ろを振り向いた。

 

「電」

 

「はい」

 

「今のデュエル。全力で挑んでいったあたしに、あんたも全力で応えてくれた。だから、負けたのは悔しいけど後味は悪くなかったわ。こういう戦い方も、ちゃんとできるのね。あんたのこと、少し見直した」

 

 こうした言葉がくるのを予想していなかった電は、それに対する反応が遅れる。その間に曙は再び足を進め始める。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 どうにか口にした礼を背中に受け、曙は建物の角の向こうに消える。それを見送った電の脇を、響が小突く。

 

「良かったね、電」

 

「はい」

 

 響の言葉に、電は笑顔で頷く。

 

「デュエルには、その人物の人柄が表れる。電のこと、少しは曙に理解してもらえたようだね」

 

「でも、まだこれからなのです。曙ちゃんとの距離を縮められるように、もっと頑張るのです」

 

「その調子だ。じゃあまずは、今後の教導の計画を練り直しにいこう。明日からは曙たちも加わるからね」

 

「はいなのです」

 

 歩き出した響の後に続いて電も足を踏み出す。新たな思いを胸に、彼女は姉とともに鎮守府庁舎へと戻っていった。

 




雷「曙ったら、初めてのデュエルなのにけっこうやるじゃない。これは手強い相手になりそうね」
響「そうだね。だけど裏を返せば、D型艦と戦う上では頼もしい味方になるということさ」
雷「これは私たちもうかうかしてられないわね。もっと腕を磨かなきゃ」
暁「暁だって負けないわよ」
電「はわわ……みんなすごいやる気なのです」
響「私たちも気合を入れないとね。次回は教導も後半、一対一から先に進めてタッグデュエルの指導をするよ。次回『シンクロ・パニック』。デュエル・スタンバイ」
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