執筆中のものが完成し、どうにか今年中の投稿に間に合わせることができました。
今回はタッグデュエルで長文になったため、二話構成となります。このあと時間を空けて、今日中に後編も投稿します。
2016年中の投稿は今回と次回でラストとなります。なので、この場を借りて年始の挨拶を。
本年中は、本作をご愛読いただき、ありがとうございました。
相変わらずの更新速度になると思いますが、来年も『鎮守府決斗録』をどうぞよろしくお願いします。
それでは皆様、よいお年を!
電が曙たちとの和解に成功した翌日。ショートランド泊地では、気持ちも新たに決闘教導が実施された。
新しくなったのは心の面だけではない。教導を受ける面々の中には、実際に二人の生徒が新たに加わっていた。
「教導を始める前に、紹介しよう。今日から君たちと一緒に教導を受けることになった、曙と潮だ」
紹介とはいっても、既に互いの面識はできている。一応の挨拶が済むと、話は早速本題へと移る。
「これまでは一対一の形式でデュエルをしてきたけれど、今日はタッグデュエルに挑戦してもらおうと思う。まだ実例はないけれど、D型艦とのデュエルでもタッグ形式が行われないとも限らない。特殊な形式のデュエルにも慣れておくのが目的だ」
「名前からも分かると思いますが、タッグデュエルではパートナーとの連携が重要になります。互いのデッキの性格をしっかりと把握して、上手に連携を取るよう心がけてください」
「潮たちにはいきなりタッグデュエルから始めてもらうことになるけど、昨日の君たちの戦いぶりなら心配はいらない。まだ慣れない中で大変だろうけど、そう遅れはとらないはずだ」
「へえ~。かなりの高評価じゃん。そんなに強いの、この二人?」
時津風の問いに、響は頷く。
「昨日、曙は電とデュエルして、彼女を残りライフ100ポイントまで追いつめた。潮にいたっては、私がフォローしたとはいえ、電に勝利している。初心者だと舐めてかかると、痛い目を見るよ」
その言葉を受けて、ショートランド組の間にどよめきが起こる。
腐っても鯛、という言い方をすると失礼になるが、電は教導隊の一員。昨日はあんなことがあったため、万全の調子でなかったことは疑いないが、それでも初心者が楽に勝てるような相手ではない。そんな彼女を相手にそれだけの戦績を残すことが如何に困難であるか。多少のデュエル経験を積んできた天津風たちには、そのことが実感をもって理解できた。
「響。それ、本当なの?」
「なら、確かめてみるかい」
いまだ信じきれない様子の時津風に、響は言う。
「ここで私が言葉を尽くすよりも、実際にデュエルした方が話が早い。自分自身の目で、彼女たちの実力を確かめてごらん」
「いいねー、それ。ならあたしの相方は……島風!」
「えっ。私?」
指名された島風は、きょとんとした顔で時津風を見返す。
「雪風じゃなくていいの?」
「さっき電がタッグデュエルはパートナーとの連携が大事って言ってたでしょ。息が合うのはもちろん雪風なんだけど、デッキの種類は島風の方が近いから一緒に戦いやすそうだなーと思って」
「そういうことなら。いいよ、付き合ってあげる」
島風は一歩前に出ると、時津風と並んで曙たちと対峙する。
実のところ、響はくじ引きなどで適当にペアを決める予定でいたのだが、ここで邪魔を入れるのも無粋というものだ。彼女は、このまま四人にデュエルをやらせる方向に考えを変える。
「タッグデュエルでは、各プレイヤーが別々のライフとフィールドを持って戦う。そして、味方のフィールドと墓地のカードは、自分のカードとして各種の効果の対象やコストに使うことができる。ここまではいいかい?」
四人が頷くのを確認した響は、彼女たちが最も気にしているであろう勝利条件について説明する。
「デュエルの勝敗は、どちらか一方のペアが全滅した時に決定する。途中でライフが尽きたプレイヤーのフィールドに残っているカードは、その相方が引き継ぐ。だから、一人を倒したからって気を抜かないようにね」
これで、伝えるべきことは語り終えた。あとは、闘技の開幕を告げる号砲を鳴らすだけ。
「四人とも、準備はいいかな。それじゃ……デュエル開始っ!」
島風 LP4000
時津風 LP4000
曙 LP4000
潮 LP4000
「先攻はもらうわ、私のターン!」
開戦とともに間髪入れずに動いたのは島風。持ち前の速さで先攻を獲得すると、場にカードを並べ始める。
「私は魔法カード『調律』を発動。デッキから『クイック・シンクロン』を手札に加えた後、デッキの一番上のカードを墓地へ送る。さらに『増援』を発動して『ドッペル・ウォリアー』を手札に加えるよ。
私は手札の『ジェット・シンクロン』を捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚。続いて『ジャンク・シンクロン』を通常召喚して、その効果を発動。墓地のジェット・シンクロンを特殊召喚する。そして、自分の墓地からモンスターが特殊召喚されたことで、私は手札のドッペル・ウォリアーを特殊召喚することができる」
速きこと島風の如し。海軍一を誇る彼女の俊足は、デュエルの場においても変わらない。瞬く間に三体のモンスターを展開した彼女は、それらを土台にさらなる展開へと繋げていく。
「私は、レベル2のドッペル・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング。『
私はこのトークンの一体と、同じレベル1のジェット・シンクロンで『フォーミュラ・シンクロン』をシンクロ召喚。この瞬間、ハイパー・ライブラリアンの効果で私はカードを一枚ドローする。さらに、フォーミュラ・シンクロンの効果でもう一枚ドロー。そして、残った一体のトークンにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング。『ドリル・ウォリアー』をシンクロ召喚して、また一枚ドロー」
《調律》
通常魔法
(1):デッキから「シンクロン」チューナー1体を手札に加えてデッキをシャッフルする。
その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
《クイック・シンクロン》
チューナー・効果モンスター
星5/風属性/機械族/攻 700/守1400
このカードは「シンクロン」チューナーの代わりとしてS素材にできる。
このカードをS素材とする場合、「シンクロン」チューナーを素材とするSモンスターのS召喚にしか使用できない。
(1):このカードは手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。
《ジャンク・シンクロン》
チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
《ドッペル・ウォリアー》
効果モンスター
星2/闇属性/戦士族/攻 800/守 800
(1):自分の墓地のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。
自分フィールドに「ドッペル・トークン」(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する。
《ジェット・シンクロン》
チューナー・効果モンスター
星1/炎属性/機械族/攻 500/守 0
「ジェット・シンクロン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「ジャンク」モンスター1体を手札に加える。
(2):このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚墓地へ送って発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
《
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。
このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。
《フォーミュラ・シンクロン》
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星2/光属性/機械族/攻 200/守1500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体
(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
(2):相手メインフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
《ドリル・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星6/地属性/戦士族/攻2400/守2000
「ドリル・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
このカードの攻撃力を半分にし、このターンこのカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
手札を1枚捨ててこのカードをゲームから除外する。
次の自分のスタンバイフェイズ時、この効果で除外したこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
その後、自分の墓地のモンスター1体を選んで手札に加える。
「おー、回る回る~。初心者相手なのに容赦ないねぇ」
「何なのよ、これ……」
「えっ、えっ?」
息もつかせぬ連続召喚を前に、これが初見の対戦相手二人は呆然と立ち尽くす。一方、相方の戦術を把握している時津風は、三人の表情を見比べながら苦笑気味の笑いをこぼす。
相変わらずの回りぶりを見せている島風のデッキだが、これでも以前よりも回転力は落ちている。デュエルモンスターズのルール改訂により、キーカードが使用禁止となったためなのだが……これを教えたら、二人は一体どんな顔をするだろうか。時津風は好奇心からそれを試そうとするが、二人の絶望顔を想像して思いとどまる。
「私はドリル・ウォリアーの効果を発動。手札を一枚捨てることで、次のターンまでこのカードを除外する。このターンは、これで終了だよ」
島風がエンド宣言をしたことで、二番手の曙へとターンが回る。途端、彼女の目に闘志が甦る。
「初っ端から見せつけれくれるじゃない。だけど、シンクロ召喚はあんただけのものじゃないのよ。あたしは『太陽の神官』を特殊召喚。さらにレベル3の『赤蟻アスカトル』を召喚して、レベル5の太陽の神官にチューニング! 現れなさい、『太陽龍インティ』!」
《太陽の神官》
効果モンスター
星5/光属性/魔法使い族/攻1000/守2000
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキから「赤蟻アスカトル」または「スーパイ」1体を手札に加える事ができる。
《赤蟻アスカトル》
チューナー(効果モンスター)
星3/地属性/昆虫族/攻 700/守1300
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地のレベル5モンスター1体を選択して特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、そのターンのエンドフェイズ時に墓地へ送られる。
《太陽龍インティ》
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2800
「赤蟻アスカトル」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを破壊したモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。
また、フィールド上のこのカードが破壊された場合、次のターンのスタンバイフェイズ時、自分の墓地の「月影龍クイラ」1体を選択して特殊召喚できる。
島風の連続シンクロに負けじと、曙も自らのエースモンスターを召喚する。しかし、島風には脅威を覚えた様子はなく、むしろ笑みを浮かべてそれを迎える。
「この瞬間、ハイパー・ライブラリアンの効果が発動! 相手がシンクロ召喚した時、カードを一枚ドローする」
「なっ!? 相手のシンクロ召喚でもドローできるっていうの!」
「そうだよ。だから曙たちがシンクロ召喚すればするほど、私の手札も潤うってわけ」
「何よそれ!」
曙と潮のデッキは、ともにシンクロモンスターが主力だ。しかし、島風のハイパー・ライブラリアンは、シンクロ召喚が行われるたびに彼女の手札を増やすという。これでは、いくら自分の戦力を整えてもその意味が薄れてしまう。それどころか、島風のデッキの回転力を加味すればむしろマイナスかもしれない。
かといって、自軍の布陣を整えないわけにはいかない。相手を利すると分かっていても、そうした行動を取らざるを得ない。曙が叫びたくなるのも無理はなかった。
「このっ……。あたしはカードを二枚伏せて、ターンエンド」
「あたしのターン!」
続いて、ターンは島風のペアである時津風へと移る。
ショートランド泊地の艦娘の実力は、前の島風のターンで身に沁みている。その一員である時津風は、果たしてどのような戦術を繰り出してくるのか。曙が注視する先で、時津風は――
「うげぇぇ……」
自分の手札を、心底嫌そうな顔で眺めた。
「なぁにこれぇ……。こんな手札じゃ、全然満足できない~」
端目にも明らかなテンションの低さを見せながら、時津風はだるそうにカードをディスクの上に置く。
「あたしはモンスターをセット。さらにカードを二枚伏せて、ターンエンド」
「ちょっと待った! そのエンドフェイズに罠カード『アーティファクトの神智』を発動するわ。その効果で、デッキから『アーティファクトーモラルタ』を特殊召喚。さらに、モラルタが相手ターン中に特殊召喚されたことで、島風のハイパー・ライブラリアンを破壊する!」
《アーティファクトの神智》
通常罠
デッキから「アーティファクト」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
「アーティファクトの神智」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
また、このカードが相手によって破壊された場合、フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。
《アーティファクト-モラルタ》
効果モンスター
星5/光属性/天使族/攻2100/守1400
このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンにセットできる。
魔法&罠カードゾーンにセットされたこのカードが相手ターンに破壊され墓地へ送られた時、このカードを特殊召喚する。
相手ターン中にこのカードが特殊召喚に成功した場合、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選んで破壊できる。
曙は横を向き、潮に声をかける。
「潮! 邪魔なモンスターは潰したから、思う存分暴れなさい!」
「うん!」
今回のタッグルールでは、このターンから攻撃が可能となる。力強く頷いた潮は、曙の言葉に応えて攻勢を開始した。
「私は、『切り込み隊長』を召喚。隊長の効果で、手札の『トラパート』を特殊召喚します。そして、レベル3の切り込み隊長にレベル2のトラパートをチューニング! シンクロ召喚、『ゴヨウ・チェイサー』!」
《切り込み隊長》
効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻1200/守 400
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。
手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。
《ジュッテ・ナイト》
チューナー(効果モンスター)
星2/地属性/戦士族/攻 700/守 900
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して表側守備表示にする。
《ゴヨウ・チェイサー》
シンクロ・効果モンスター
星5/地属性/戦士族/攻1900/守1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードの攻撃力は、このカード以外のフィールドの戦士族・地属性のSモンスターの数×300アップする。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。
そのモンスターの攻撃力を半分にして自分フィールドに特殊召喚する。
「へぇ、曙だけじゃなくて潮もシンクロ使いなんだ。だから私にドローされないよう、先にハイパー・ライブラリアンを破壊したってわけね」
「私は永続魔法『一族の結束』を発動します。これにより、ゴヨウ・チェイサーの攻撃力は800ポイント上がって2700となります!」
《一族の結束》
永続魔法
(1):自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。
「バトルです! ゴヨウ・チェイサーで、島風さんのフォーミュラ・シンクロンに攻撃!」
「フォーミュラ・シンクロンだけじゃどうにもならないね。大人しく戦闘破壊されるよ」
「ではここで、ゴヨウ・チェイサーの効果を発動します。倒したフォーミュラ・シンクロンを、自分の場に特殊召喚します。私はさらにカードを二枚伏せ、ターン終了です」
「私のターン」
先のターンとは打って変わり、島風の場にモンスターはいない。スタンバイフェイズにドリル・ウォリアーは除外ゾーンから帰還するが、それでもモンスター数は一体のみ。三体のシンクロモンスターが肩を並べて終えた一ターン目と比べると、寂しさは否めない。しかし、フィールドを見渡す島風の顔は、楽しげな表情に彩られている。
「……二人ともやってくれるじゃん。電相手にいい勝負したっていうのは、本当みたいだね」
一泊の間を置き、「なら」と島風は続ける。
「これには、どう対応する? まずは除外ゾーンから戻ってきたドリル・ウォリアーの効果で、墓地のハイパー・ライブラリアンをエクストラデッキに戻す。続いてジャンク・シンクロンを召喚して効果を発動、墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚。そして、レベル2のドッペル・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング! おいで、『アクセル・シンクロン』!」
「ジャンク・シンクロンにドッペル・ウォリアー……。さっきから大量にドローしてはいたけど、両方二枚目を手札に持ってるとは。電の言う通り、引きの強い奴はごろごろいるのね」
「まあねー。けど、私なんてまだ序の口だよ。このくらいで驚いてちゃ、雪風とデュエルしたら腰を抜かしちゃうかもね」
「できれば知りたくない情報だったわ。ところで、ドッペル・ウォリアーの効果は発動しなくていいの? 前のターンは、トークンを召喚してたけど」
「うん。今回は、トークンを呼ぶとむしろ邪魔になっちゃうから。その代わりに、アクセル・シンクロンの効果を発動するよ。デッキのジェット・シンクロンを墓地へ送って、そのレベルと同じ数だけアクセル・シンクロンのレベルを上げる」
「これでアクセル・シンクロンのレベルは6。ドリル・ウォリアーと合わせてレベル6のモンスターが2体……てことは」
「ぶっぶー」
曙の予想を、島風は途中で否定する。
「私はエクシーズ召喚はしないよ。ていうか、エクストラデッキにそんな余裕ないし。私が使うのは、シンクロ召喚だけ」
「対戦相手の私に、そんなこと言っていいの?」
「うん。どうせ、何度かデュエルしたら気づかれるし。相手がD型艦ならまだしも、同じ艦娘相手に隠すことじゃないよ。
それじゃバトルフェイズ。ドリル・ウォリアーで曙のモラルタに攻撃!」
その名の通り、巨大なドリルを構えた戦士が曙のモンスターを粉砕する。が、彼女のフィールドにはまだエースモンスターのインティが残っている。一方の島風のフィールドには、他に攻撃可能なモンスターはおらず、場にいる二体のステータスもインティに及ばない。
だが、それは島風とて百も承知であった。
「本当の攻撃はここからだよ。私は手札から速攻魔法『リミットオーバー・ドライブ』を発動! 自分のシンクロモンスター2体を使って、新たなシンクロモンスターを呼び出す!」
「バトルの最中にシンクロ召喚ですって! シンクロ召喚ができるのは、メインフェイズ中だけじゃなかったの!?」
「曙おっそーい。そんな考え方じゃ、私のデュエルにはついてこれないよ」
小馬鹿にするような笑みを作った島風は、高らかに自らの切り札の名を叫ぶ。
「私はドリル・ウォリアーとアクセル・シンクロンをエクストラデッキに戻す。そして降臨せよ!『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!!」
《アクセル・シンクロン》
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻 500/守2100
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分は「アクセル・シンクロン」を1ターンに1度しかS召喚できない。
(1):1ターンに1度、デッキから「シンクロン」モンスター1体を墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを上げる。
●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを下げる。
(2):相手メインフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
《リミットオーバー・ドライブ》
速攻魔法
「リミットオーバー・ドライブ」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドのSモンスターのチューナー1体とチューナー以外のSモンスター1体をエクストラデッキに戻して発動できる。
そのモンスター2体のレベルの合計と同じレベルのSモンスター1体を、召喚条件を無視してエクストラデッキから特殊召喚する。
《シューティング・クェーサー・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000
シンクロモンスターのチューナー1体+チューナー以外のシンクロモンスター2体以上
このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。
このカードはこのカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。
1ターンに1度、魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する事ができる。
このカードがフィールド上から離れた時、「シューティング・スター・ドラゴン」1体をエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
「レベル12、攻撃力4000……! なるほど、これがあんたの切り札ってわけね」
「正解。私はクェーサーでインティを攻撃! 天地創造撃 ザ・クリエーションバースト!」
「くっ……」
曙 LP4000→3000
爆散したインティから飛び散った火の粉が曙の頭上に降り注ぐ。が、それを浴びる曙の口元には、エースモンスターを失ったにも関わらず得意げな笑みが浮かぶ。
「だけどこの瞬間、太陽龍インティの効果が発動するわ! このカードが戦闘で破壊された時、相手モンスターを道連れにして、さらにその攻撃力の半分のダメージを与える!」
「そんな効果があったんだ。倒されてもタダではやられない、ってわけね」
「余裕ぶっていられるのも今のうちよ。あたしはあんたのクェーサーを破壊して、2000ポイントのダメージを与える!」
「残念だけど、そうはいかないよ。私はシューティング・クェーサー・ドラゴンの効果を発動! 一ターンに一度、あらゆる効果の発動を無効にして破壊する!」
インティの残した炎が敵を呑み込もうとするが、島風のクェーサーはそれをいともたやすく退ける。
当てが外れた曙は渋面を作り、対する島風は得意げにする。島風はそのままターンを終了させるが、予想外の抵抗が彼女を襲う。
「ちょっと待った! 私は永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動して、墓地のモラルタを蘇生するわ」
「蘇生? このタイミングで?」
島風は一瞬、訝しげな表情を浮かべたが、すぐに相手の意図に気づき、顔色を変える。
「今は私のエンドフェイズ……てことは、特殊召喚されたモラルタの効果が!」
「そう。あんたのクェーサーは、さっき無効化能力を使い切ったばかり。この破壊を防ぐことはできないわ」
「確かに、曙の言う通りだよ。だけど、私もクェーサーの効果を発動! このカードがフィールドを離れた時、エクストラデッキから『シューティング・スター・ドラゴン』を特殊召喚できる。おいで、シューティング・スター・ドラゴン!」
《リビングデッドの呼び声》
永続罠
(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。
《シューティング・スター・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守2500
シンクロモンスターのチューナー1体+「スターダスト・ドラゴン」
以下の効果をそれぞれ1ターンに1度ずつ使用できる。
●自分のデッキの上からカードを5枚めくる。
このターンこのカードはその中のチューナーの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。
その後めくったカードをデッキに戻してシャッフルする。
●フィールド上のカードを破壊する効果が発動した時、その効果を無効にし破壊する事ができる。
●相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外し、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。
エンドフェイズ時、この効果で除外したこのカードを特殊召喚する。
「そんな効果まで持ってただなんて……。本当に面倒なモンスターね」
島風を守るように現れた第二のドラゴンを、曙は忌々しげに睨む。
「そいつがいなけりゃ、あんたにダイレクトアタックをくれてやれたのに。あたしのターン、あたしは『スーパイ』を召喚。そしてレベル5のモラルタにレベル1のスーパイをチューニング。シンクロ召喚、『月影龍クイラ』!」
《スーパイ》
チューナー(効果モンスター)
星1/地属性/悪魔族/攻 300/守 100
フィールド上のこのカードがカードの効果によって墓地へ送られた時、デッキから「太陽の神官」1体を特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃力が倍になり、このターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
《月影龍クイラ》
シンクロ・効果モンスター
星6/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
「スーパイ」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが攻撃対象に選択された時、攻撃モンスターの攻撃力の半分の数値分だけ自分のライフポイントを回復する。
また、フィールド上のこのカードが破壊された場合、自分の墓地の「太陽龍インティ」1体を選択して特殊召喚できる。
「バトルよ。あたしはクイラで、時津風の裏守備モンスターに攻撃!」
時津風が出していたのは、守備力2000の『インフェルニティ・ネクロマンサー』。当然、攻撃力2500のクイラの攻撃には耐えられず破壊される。
「あたしはカードを一枚セット。ターンエン――」
「待った待った~! あたしはここでトラップ発動、『インフェルニティ・インフェルノ』!」
「トラップですって!?」
時津風の発動宣言に、曙は表情を硬くする。ついさっき自分が島風に対して同じ行動を取ったことも影響し、彼女の警戒感は一気に高まる。緊張の中で聞いた、その効果は――
「あたしは自分の手札を二枚捨てる。そして、同じ枚数だけデッキから『インフェルニティ』モンスターを墓地へ送るよ。あたしが選ぶのは、『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ビートル』」
《インフェルニティ・インフェルノ》
通常罠
自分の手札を2枚まで捨てる。
その後、この効果で捨てた枚数分だけデッキから「インフェルニティ」と名のついたカードを墓地へ送る。
「……それだけ?」
効果処理が終わったあと、曙は気の抜けた声を出す。
「ほぇ?」
「いや、だから。カードの効果よ。本当にたったそれだけなの? 墓地へ送られたカードの効果とかは……」
「ないよ」
曙の問いに、時津風は即答する。その顔は、なぜそんな当たり前のことを聞くのかと言っているようだ。
「じゃあ、あんたは自分の手札をただ捨てただけってこと? 意味分かんない……墓地肥やしにしても、効率悪すぎるわよ。手札がなくちゃ、墓地にカードがあっても結局何もできないじゃない」
「何もできない、ねぇ……」
曙の言葉を聞いた時津風は、くくくっ、とこらえるような笑いを漏らす。
「何よ」
「ううん。何でもないよ」
口の端に笑みを含みながら、時津風は答える。
「そうそう。何でもない何でもないー。だって、すぐに思い知るんだから」
「は? それって、どういう意味――」
「さあ。曙、潮」
曙の言葉を遮り、時津風が二人の名を呼ぶ。彼女たちは、その声が先ほどまでと違う色を帯びていることに気づく。
「このデュエル、本番はここからだよ。あたしがちゃんと、満足できるデュエルにしてよね」
不敵な、ともすれば邪悪とも見える笑みを口元に刷き、時津風はカードをドローする。彼女はそれを一瞥するや否や、すぐさま場に伏せる。これで、時津風の手にあるカードは、前のターンから持っている一枚だけとなった。
「あたしは『インフェルニティ・ミラージュ』を通常召喚して、効果を発動。このカードをリリースすることで、墓地から『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚する。そしてこの瞬間、特殊召喚されたデーモンの効果が発動。デッキから永続魔法『インフェルニティガン』を手札に加える。もちろん、この魔法カードもすぐに発動させるよ。さらにネクロマンサーの効果で、墓地からチューナーのモンスターの『インフェルニティ・ビートル』を特殊召喚する」
《インフェルニティ・ミラージュ》
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。
自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースし、自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついたモンスター2体を選択して発動できる。
選択したモンスターを特殊召喚する。
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻 0/守2000
このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。
また、自分の手札が0枚の場合、このカードは以下の効果を得る。
1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。
《インフェルニティ・デーモン》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1200
(1):手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、このカードを相手に見せて発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「インフェルニティ」カード1枚を手札に加える。
この効果は自分の手札が0枚の場合に発動と処理ができる。
《インフェルニティガン》
永続魔法
1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。
また、自分の手札が0枚の場合、フィールド上のこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついたモンスターを2体まで選択して特殊召喚する。
《インフェルニティ・ビートル》
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/昆虫族/攻1200/守 0
自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースする事で、デッキから「インフェルニティ・ビートル」を2体まで特殊召喚する。
「チューナーモンスター……! マズい!」
「チューナー」という言葉に曙は血相を変え、即座に伏せていたカードを発動させる。
「トラップ発動、『激流葬』! 互いのモンスターをすべて破壊する。シンクロ召喚なんてさせないわ」
岩をも砕く激しい水流が四人のモンスターを押し流す。が、翼を広げそこから逃れる竜が一体。
「時津風の邪魔はさせないよ。私はシューティング・スター・ドラゴンの効果を発動! 一ターンに一度、あらゆる破壊効果を無効にして、そのカードを破壊する!」
「くっ。これじゃ、あいつのシンクロ召喚を止められない……」
カードの発動を妨害され、歯軋りする曙。そこへ、彼女のパートナーから援護射撃が放たれる。
「速攻魔法『皆既日蝕の書』! すべてのモンスターを裏守備表示にします!」
《激流葬》
通常罠
(1):モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。
フィールドのモンスターを全て破壊する。
《皆既日蝕の書》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズに、相手フィールドの裏側守備表示モンスターを全て表側守備表示にし、その後、この効果で表側守備表示にしたモンスターの数だけ相手はデッキからドローする。
【Chain1:激流葬 Chain2:シューティング・スター・ドラゴン Chain3:皆既日蝕の書】
「シンクロ召喚を行うためには、素材となるモンスターが表側表示でないといけません。モンスターを破壊することができなくても、裏側にしてしまえばシンクロ召喚は封じられます」
「ありがと潮。あんた、いい仕事してくれたわ」
「タッグデュエルだもん、当然だよ。力を合わせて、一緒に勝とう」
「もちろん」
互いに目配せをして、頷き合う二人。時津風は、その様子を不機嫌そうに見る。
「むううぅ……せっかく満足しようと思ったのにぃ~! こんなんじゃ、全然満足できない~。不満足、不満足~!」
「満足満足うるさいわね。あんたはターンを続けるの、終わらすの?」
「……ターンエンド。二人とも、覚えときなよ」
このターンの終了時に皆既日蝕の書の効果は切れ、裏守備表示にされていた島風と時津風のモンスターは再び姿を現す。それと同時に、二人は表側に戻ったモンスターの数と同じだけ――すなわち、島風は一枚、時津風は三枚のカードをドローする。
「任せたわよ潮。この調子で一発かましてやりなさい」
次の攻撃を担うパートナーへ、曙が檄を飛ばす。しっかりとそれに頷き返した潮は、反撃の狼煙を上げるように力強くカードをドローした。
雷「うわ……。島風ったら、初心者相手に容赦ないわね」
暁「だけど、曙たちも意外と頑張ってるじゃない。さすが、電と互角に戦っただけのことはあるわ」
雷「厄介なクェーサーもしっかり処理してるし。ていうか島風のクェーサー、出るたびにすぐ除去されてる気がするけど……」
電「そう言われれば……。前に出た時も、召喚された次のターンに天津風ちゃんにバウンスされていたのです」
響「ああいう制圧系大型モンスターは、倒すべき相手として絵になるからね」
暁「響。そういう発言しちゃっていいの?」
響「一人前のレディーは細かいことを気にしちゃいけないよ。レディーなら広い心で受け流して、立派に次回の予告をするものさ」
暁「そうね、その通りだわ!」
雷「(この姉、ちょろすぎるわ……!)」
暁「次は潮の反撃からスタートね。デュエルの勝敗も気になるけど、時津風はいつになったら満足できるのかしら。次回『満族の逆襲』。デュエル・スタンバイ!」