ターンプレイヤー:潮(メインフェイズ1)
島風
LP4000 手札5枚
<モンスター>
シューティング・スター・ドラゴン(DEF2500)
<魔法・罠>
なし
時津風
LP4000 手札3枚
<モンスター>
インフェルニティ・デーモン(DEF1200)
インフェルニティ・ネクロマンサー(DEF2000)
インフェルニティ・ビートル(DEF0)
<魔法・罠>
インフェルニティ・ガン、伏せ2枚
曙
LP3000 手札1枚
<モンスター>
裏守備表示1体
<魔法・罠>
リビングデッドの呼び声(対象不在)
潮
LP4000 手札2枚
<モンスター>
裏守備表示2体
<魔法・罠>
一族の結束、伏せ1枚
「潮。分かっているとは思うけど、今が攻め時よ。これを逃したら次はないわ」
「うん」
答えた潮は、曙に視線を向けて続ける。
「まず狙うべき相手は、島風さん。そうだよね」
「ええ。次にターンが回ってくるのは島風。そして、あいつに手札を持たせるとどうなるかは、さっきのターンで嫌というほど味わったわ。これ以上島風の好きにはさせられない。叩ける時に、全力で叩く」
できそうかと尋ねる曙に、潮は「大丈夫」と首肯する。
「そう。なら任せたわよ。しっかりやりなさい」
「うん。潮、いきます! 私は裏守備表示になっているゴヨウ・チェイサーとフォーミュラ・シンクロンを反転召喚。そして手札からレベル3の『不死武士』を通常召喚して、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング! 二体目のゴヨウ・チェイサーをシンクロ召喚します!」
《不死武士》
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1200/守 600
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードを墓地から特殊召喚できる。
この効果は自分の墓地に戦士族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
このカードは戦士族モンスターのアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。
「一族の結束の効果で、二体のゴヨウ・チェイサーの攻撃力は1900から2700へアップします。さらにそれぞれ、自身の効果によって攻撃力は3000となります。バトルです、私はゴヨウ・チェイサーでシューティング・スター・ドラゴンに攻撃!」
シューティング・スター・ドラゴンは、攻撃力3300を誇る大型モンスター。しかし、その守備力は2500にとどまる。並のモンスターが相手ならともかく、力を増したゴヨウ・チェイサーの攻撃を受け止めることはできず、破壊される。
「この『シューティング・スター・ドラゴン』は、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の効果で呼び出したから蘇生制限を満たしていない。ゴヨウ・チェイサーの効果で奪うことはできないよ」
「それは残念です。でも、私にはもう一体のゴヨウ・チェイサーの攻撃が残っています。島風さんにダイレクトアタック!」
「おぅっ!」
島風 LP4000→1000
「ったた……今のは、けっこう効いたなぁ」
ダメージの衝撃で尻餅をついた島風は、ぶつけた箇所を撫でながら立ち上がる。潮のエンド宣言の後、カードをドローした彼女は、横にいる時津風に話しかけた。
「ねぇ、時津風。あなたのモンスター、ちょっと借りていい?」
「えぇ~」
その頼みに、時津風はあからさまに嫌そうな顔を作る……が、島風の目を見て考えを変える。
「はぁ……ま、いいよー。けど、大事に使ってよね」
「もっちろん。私は魔法カード『戦士の生還』を発動、墓地のジャンク・シンクロンを手札に戻す。そして、そのジャンク・シンクロンを召喚して、効果で墓地のジェット・シンクロンを特殊召喚。ついでに手札にいるドッペル・ウォリアーも特殊召喚!」
頷いた島風は、嬉々として行動を開始する。彼女のフィールドは、瞬く間に再びモンスターで埋められていく。
「私はレベル2のドッペル・ウォリアーとレベル3のジャンク・シンクロンで、ハイパー・ライブラリアンをシンクロ召喚。続けて、ドッペル・ウォリアーの効果で特殊召喚したトークン一体とジェット・シンクロンで二体目のフォーミュラ・シンクロンをシンクロ召喚するよ」
「……そして、フォーミュラ・シンクロンとハイパー・ライブラリアンの効果で合計二枚のドロー、ね」
「そういうこと。そして、私はここでこのタッグデュエルの特別ルールを使わせてもらうよ。このデュエルでは、互いに味方のモンスターをシンクロ召喚の素材にすることができる。私は時津風のインフェルニティ・ネクロマンサーとインフェルニティ・ビートルでシンクロ召喚。レベル5、『ジャンク・ウォリアー』!」
《戦士の生還》
通常魔法
(1):自分の墓地の戦士族モンスター1体を対象として発動できる。
その戦士族モンスターを手札に加える。
《ジャンク・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動する。
このカードの攻撃力は、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする。
シンクロ召喚が行われたことにより、島風の手札はさらに一枚増える。しかし、彼女の目的は手札増強ではない。本命は、別にある。
「これで、私のフィールドにはシンクロチューナーを含む三体のシンクロモンスターが並んだ。準備は整ったよ」
「シンクロチューナー……まさか!」
何かに気づいた様子の曙へ、島風は得意げな顔を向ける。
「そのまさかだよ。さっきは魔法カードの力を借りたけど、今度は正真正銘、本物のアクセルシンクロを見せてあげる。私はレベル5のハイパー・ライブラリアンとジャンク・ウォリアーに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!
古の天空を彩る星々よ、神雨となりて世界を祓え! リミットオーバー・アクセルシンクロッ! 超来迎、『聖珖神竜 スターダスト・シフル』!!」
《聖珖神竜 スターダスト・シフル》
シンクロ・効果モンスター
星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000
Sモンスターのチューナー1体+チューナー以外のSモンスター2体以上
このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。
(1):自分フィールドのカードはそれぞれ1ターンに1度だけ戦闘・効果では破壊されない。
(2):1ターンに1度、相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。
その効果を無効にし、フィールドのカード1枚を選んで破壊する。
(3):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のレベル8以下の「スターダスト」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
まばゆい光を伴い、一柱の竜が島風のフィールドに降臨する。シューティング・クェーサー・ドラゴンとはまた別の、しかしそれに劣らぬ風格を持つ新たなモンスター。彼女の第二の切り札、スターダスト・シフルだ。
「今度も攻撃力4000……! あんた、どんだけ大型モンスター抱えてるの!?」
「いやー、それほどでも」
「褒めてないわよ!」
「そうなの? まあ、いいや。せっかくだから、もう一体の大型モンスターも見せてあげるよ。私は手札を一枚捨てることで、墓地のジェット・シンクロンを特殊召喚。このジェット・シンクロンと時津風のインフェルニティ・デーモンで、アクセル・シンクロンをシンクロ召喚するよ。さらに魔法カード『死者蘇生』で墓地のジャンク・ウォリアーを特殊召喚。そして、レベル5のジャンク・ウォリアーに同じレベル5のアクセル・シンクロンをチューニング!」
「アクセル・シンクロンもシンクロチューナー? てことは……」
「そう。このターン二回目、再びのアクセルシンクロォ! 現れろ、『スターダスト・ウォリアー』!」
《死者蘇生》
通常魔法
自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
《スターダスト・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星10/風属性/戦士族/攻3000/守2500
Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上
(1):相手がモンスターを特殊召喚する際に、このカードをリリースして発動できる。
それを無効にし、そのモンスターを破壊する。
(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。
その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。
(3):戦闘または相手の効果で表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できる。
エクストラデッキからレベル8以下の「ウォリアー」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。
レベル10以上の超重量級シンクロモンスターが二体、島風のフィールドに並び立つ。その光景を前に、対峙する曙と潮は驚愕より先に戦慄を覚える。
「バトルに入る前に、もう少しだけ戦力を増やしておこうかな。私は手札のモンスターを一枚捨てて、クイック・シンクロンを特殊召喚。このクイック・シンクロンとフィールドにいる残り一体のドッペル・トークンで、ドリル・ウォリアーをシンクロ召喚。いくよ、私はスターダスト・ウォリアーで曙の月影龍クイラに攻撃!」
「クイラの効果を発動! このカードが攻撃された時、相手の攻撃力の半分だけ自分のライフを回復させる」
「でも、それだけじゃ戦闘は止められないし、ダメージも消せないよ。クイラを撃破!」
曙 LP3000→4500→4000
「クイラは破壊された時、墓地から太陽龍インティを特殊召喚できる。私はインティを攻撃表示で蘇らせるわ」
「無駄無駄! 私はスターダスト・シフルでインティに攻撃!」
「忘れたの? インティには、戦闘破壊された時に相手を道連れにする効果があるのよ」
「もちろん覚えてるよ。でも、スターダスト・シフルがいる限り、私のカードは毎ターン一度、破壊を無効にすることができる」
「対策は万全ってわけね……」
「そういうこと。戦闘続行、インティを撃破――」
「させません! 私は永続罠『強制終了』を発動。効果対象を失っている曙ちゃんのリビングデッドの呼び声を墓地に送って、このバトルフェイズを終わらせます」
《強制終了》
永続罠
自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズを終了する。
この効果はバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。
「む~……。私はメインフェイズ2にドリル・ウォリアーの効果を発動。手札を一枚捨てて、このカードを次の自分のスタンバイフェイズまで除外する。ターンエンド」
「ありがと潮。助かったわ」
潮の罠カードがなければ、曙は島風の攻撃をすべて食らい、大量のライフを失っているところだった。危うく虎口を逃れた彼女は、僚艦に礼を言う。
「さっきの皆既日蝕の書といい、今回はあんたに助けてもらってばっかりね。これじゃあ、格好つかないわ」
芝居がかった嘆息をついた後、曙は表情を変えてカードを引く。
「あたしもそろそろ、この辺で見せ場を作るとするかしら。バトルよ、あたしはインティで島風のスターダスト・ウォリアーに攻撃!」
二体のモンスターの攻撃力は、ともに3000。本来ならこの場合は相討ちとなるが、スターダスト・シフルの効果により、スターダスト・ウォリアーは破壊を免れる。
しかし、それにも関わらず島風は苦々しい表情を浮かべる。
「私はインティの効果を発動! このカードが倒された時、バトル相手を破壊して、その攻撃力の半分のダメージを与える!」
スターダスト・ウォリアーに与えられた破壊耐性は、既に消費されている。島風がインティの猛火から逃れる術はない。
「戦闘で相討ちになっていれば、こんなことにはならずに済んだのに。破壊耐性が仇になったわね。やりなさい、インティ!」
「うおおおぅっ!」
島風 LP1000→0
炎に包まれたスターダスト・ウォリアーが爆散し、島風はその衝撃波を受けて吹き飛ぶ。一応は曙たちよりもデュエル歴の長いショートランド組から先に脱落者が出たことで、外野にはざわめきが広がった。
「どんなもんよ! 初心者だからって舐めてると、痛い目見るわよ」
島風にとどめを刺した曙は、ここぞとばかりに気を吐く。
「島風、負けるのもはっやーい」
口調を真似て茶化す時津風に、島風は「うるさい!」と返す。
「手抜いたつもりはなかったんだけどなぁ……。時津風、あとはお願い」
「はいはーい」
軽い調子で答え、時津風は曙たちと対峙する。
「最初に響が言ってたけど、このデュエルでは、脱落したプレイヤーの場に残ってるカードはパートナーが引き継ぐ。だから、島風のスターダスト・シフルはあたしがもらうよ」
「私はこれでターンエンドよ」
「それじゃいくよ。あたしのターン! このスタンバイフェイズに、島風から受け継いだドリル・ウォリアーはあたしのフィールドに戻ってくる。それと同時に、自分の墓地のカードを一枚手札に加える」
「なら私も、墓地のインティの効果を発動させてもらうわ。このスタンバイフェイズに、墓地に眠るクイラを特殊召喚する」
「待った! あたしはスターダスト・シフルの効果発動、インティの効果を無効にする!」
シフルが放つ光の波動を受け、実体化しかけていたクイラの姿が霧消する。目論見をつぶされた曙は、舌打ちして相手モンスターを見上げた。
「スターダスト・シフル……そいつもクェーサーみたいな能力を持っていたのね」
「もちろん。必要なシンクロ素材はクェーサーもシフルも同じなんだから。アクセルシンクロモンスターの力を舐めない方がいいよー」
その最中、潮の場で発動していた強制終了が前触れもなく砕け散る。潮が驚きの声を上げる中で、時津風は思い出したように言う。
「そうそう。言い忘れてたけど、スターダスト・シフルは相手の効果を無効にしたあと、フィールドのカードを一枚破壊できるんだよね。ってわけで、強制終了を破壊させてもらったよ」
強制終了が効果を発揮できるのは、バトルフェイズの間のみ。その前後では、なされるままに破壊されるしかない。
「さぁて……今日はここまで全然満足できなかったからね、思いっきり暴れるよ。あたしは『召喚僧サモンプリースト』を召喚。その効果で、手札の魔法カードを捨ててデッキから『ダーク・グレファー』を特殊召喚する。さらにグレファーの効果を発動、手札の闇属性モンスターを捨てることで、デッキにいる二体目のインフェルニティ・ネクロマンサーを墓地へ送る。そして、インフェルニティ・ガンの効果で、手札のインフェルニティ・デーモンを墓地へ。ドリル・ウォリアーの効果で手札に戻した一枚は、もう一回ドリル・ウォリアーを除外するためにまた捨てるよ」
「せっかく墓地から回収したカードを、また墓地に? どういうつもり?」
「簡単なことだよ」
時津風は曙の独り言を耳聡く聞き取り、それに答える。
「このデュエルの決着をつけるんだよ。もちろん、あたしたちの勝利でね」
彼女が浮かべた不敵な笑みに、曙と潮は警戒の念を募らせる。
「さあ、満足させてもらおっか! あたしはインフェルニティ・ガンのもう一つの効果を発動、このカードを墓地へ送る代わりに墓地のインフェルニティ・ネクロマンサーとインフェルニティ・ビートルを特殊召喚する。そして、レベル4のサモンプリーストにレベル2のビートルをチューニング! シンクロ召喚、『メタファイズ・ホルス・ドラゴン』!」
《召喚僧サモンプリースト》
効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻 800/守1600
(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。
このカードを守備表示にする。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。
(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。
デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。
《ダーク・グレファー》
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1700/守1600
(1):このカードは手札からレベル5以上の闇属性モンスター1体を捨てて、手札から特殊召喚できる。
(2):1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を捨てて発動できる。
デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。
《メタファイズ・ホルス・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星6/光属性/幻竜族/攻2300/守1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した場合、そのS素材としたチューナー以外のモンスターの種類によって、以下の効果をそれぞれ発動できる。
●通常モンスター:このターンこのカードは自身以外のカードの効果を受けない。
●効果モンスター:このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。
その効果を無効にする。
●Pモンスター:相手フィールドのモンスター1体を相手が選び、自分はそのコントロールを得る。
このターンそのモンスターは攻撃できない。
「メタファイズ・ホルスの効果発動。潮が発動してる一族の結束の効果を無効にするよ。さらに、ネクロマンサーの効果を発動して、墓地のビートルを復活させる。そして、レベル3のネクロマンサーとレベル4のグレファーに、レベル2のビートルをチューニング!
破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚! 目覚めよ、『氷結界の龍 トリシューラ』!」
《氷結界の龍 トリシューラ》
シンクロ・効果モンスター
星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上
(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。
相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚まで選んで除外できる。
九つの星が生み出した光を引き裂き、その内から姿を現したのは三つ首の龍。世のすべてを凍てつかせんばかりの冷気を従え、全身から荒々しい力をほとばしらせている。その威圧感は、ソリッドビジョンと理解していてもなお気圧されるほどだ。
「あたしはトリシューラの効果を発動! このモンスターが召喚された時、相手のフィールド・手札・墓地から一枚ずつカードを除外する!」
「三カ所同時にですって! そんなのありなの!?」
「ありなんだよねぇ、それが。あたしは曙の手札の片方と、墓地のインティ、そして潮のゴヨウ・チェイサー一体を除外!」
トリシューラの咆哮とともに猛吹雪が巻き起こり、時津風が指定した三枚のカードを凍りつかせる。カードの種類は多かれど、除外されたカードを再利用できるものは限られている。この三枚は、実質的にデュエル終了まで使用不可能になったと言っていいだろう。
「まだまだいくよ。あたしは伏せていた魔法カード『ダーク・バースト』を発動。墓地のインフェルニティ・ミラージュを手札に戻す。さらに、インフェルニティ・インフェルノを発動した時に墓地へ送っていた『ヘルウェイ・パトロール』の効果を発動。このカードを除外することで、手札からミラージュを特殊召喚。そしてミラージュの効果、自分をリリースしてネクロマンサーとビートルを復活させる!」
《ダーク・バースト》
通常魔法
(1):自分の墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を対象として発動できる。
その闇属性モンスターを手札に加える。
《ヘルウェイ・パトロール》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1200
(1):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。
そのモンスターの元々のレベル×100ダメージを相手に与える。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。
手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する。
「ちょっと……どういうことよ、何なのよ、これ」
つい今し方、シンクロ召喚の素材に使われて姿を消したはずのモンスターたちが、再び時津風のフィールドを埋めていく。その様子を前に、曙は悪夢を見ているような呻きを漏らす。
「一体、何が起こってるっていうの。時津風には手札もないのに、どっからこんなにモンスターが湧き出てくるのよ」
「ないからこそ、だよ」
薄笑いを浮かべ、時津風はそれに答える。
「あたしのデッキを動かすのは、無の力。普通のデッキは手札が多いほど強いけど、あたしのデッキはそうじゃない。手札がゼロの時にこそ、真の力を発揮するんだよ」
「そんなデッキがあるなんて……」
「インフェルニティのカード効果は、どれも手札がゼロじゃないと発動できない。んで、今のあたしには手札が一枚もないわけだけど……」
「つまり、インフェルニティの効果を使うことができる」
「ご名答ー。まずはレベル6のメタファイズ・ホルスとレベル2のビートルで『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』をシンクロ召喚! さらにネクロマンサーの効果で墓地のデーモンを蘇らせる。そして、特殊召喚されたデーモンの効果でデッキから『インフェルニティ・バリア』を手札に加えて、すぐにカードを一枚セット! これであたしの手札はまたなくなったよ」
《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守3000
闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
島風から受け継いだスターダスト・シフルを筆頭に、五体のモンスターが時津風の場に肩を並べる。攻撃力0のネクロマンサーを除いて、表示形式はすべて攻撃表示。それを迎え撃つものは、攻撃力が元の1900に戻った潮のゴヨウ・チェイサー一体のみ。勝敗は明らかだ。
「バトルフェイズ! あたしはスターダスト・シフルで曙にダイレクトアタック! それからトリシューラでゴヨウ・チェイサーを撃破して、続けてオーガ・ドラグーンとデーモンで潮を攻撃!」
曙 LP4000→0
潮 LP4000→3200→0
「やったー! 勝った勝った~!」
勝利を手にした時津風は、諸手を挙げて飛び跳ね、喜びを表現する。さらに、「うぉーい!」と雪風に向かって手を振る。
「雪風ぇー! あたしの活躍見た見たー? MVPだったでしょ!」
「見てましたよー! 大活躍でしたね、時津風!」
雪風からの讃辞に嬉しげ笑顔を見せる時津風。そこへ、敗れた二人が歩み寄る。
「時津風。あんたの宣言通りね。あたしたちの負けだわ」
「島風さんと時津風さん、二人とも強かったです。私たちは張り合うのがやっとでした」
「そんなことないと思うよー。途中まで、あたしの動きはどれも止められちゃってたし」
「それに、私のことは倒したしね」
戦闘不能になった後、その場に座り込んでいた島風も三人の輪に入り込む。
「しょーじき、最初は二人の実力疑ってたんだよね。二人が電と互角に戦ったって聞いても眉唾な感じだったし。でも、今のデュエルで嘘じゃないって分かったよ」
「あんたたちには届かなかったけどね。島風を倒せた時は、いけるかと思ったんだけど」
「仲間のモンスターを素材にシンクロ召喚をしたり、コンビネーションもまるで及びませんでした」
「そこはまぁ、経験の差ってやつかなー。それに、あたしたちもそう簡単に初心者に負けてられないし。教官サマに怒られちゃうからね~」
「私が何だって?」
「うわっ、響!?」
いつの間にか背後に立っていた響の声に、時津風は飛び上がりつつ振り返る。
「教官がどうのと言っていたように聞こえたけれど。私が、どうかしたかい」
「いやいやまさかー! 響のことはなんにも言ってないよ!」
「じゃあ、電のことですか?」
「ひっ!」
耳元で電に冷たく囁かれ、時津風は掠れた声を上げる。
「――なんて、冗談なのです。響ちゃんも、怒ってなんかいませんよ」
「うん。でも、相手を侮っていたのは感心しないね。デュエルは、本当に何が起こるか分からない。たとえ相手がドのつく素人だったとしても、油断していると足元をすくわれるよ」
「そうそう。油断してなくても、私みたいになるかもしれないし」
「島風、それ自虐ネタ?」
「違うっ!」
時津風と島風が小競り合いとしている横で、響は曙と潮に話しかける。
「二人にとっては、いきなりのタッグデュエルで大変だっただろうね。感想はあるかい?」
「足りないことだらけで、何から始めたらいいか分からないわ。タッグの連携も、単独でのプレイングも、あたしたちはまだまだだわ」
「私も、曙ちゃんとだいたい同じ感想です」
「それは仕方ないさ。二人は、まだ二度しかデュエルの経験がないんだから。むしろ、それにしてはよく戦ったと思うよ」
「はい。曙ちゃんは、クェーサーの効果の隙を上手について倒してました。潮ちゃんが皆既日食@の書を使った時も、曙ちゃんを上手くフォローして時津風ちゃんの動きを止めていたのです。二人とも、大健闘なのです」
「細かいことは、私たちが教えるから心配しなくていい。筋のいい教え子が増えて、嬉しい限りだ」
「ここでの教導も、ますます賑やかになりますね」
「そうだね。……ほら、時津風、島風。教導の続きを始めるから、そろそろ離れて」
じゃれ合いを続けていた二人を引き離し、響は再び全員を集める。
「今ので、曙と潮の力は理解してもらえたと思う。改めて、今後はこの二人も一緒に教導を行っていくからよろしくね」
その方針に対して疑義を挟む者は、もういない。ショートランドの面々と曙たちは、互いに視線を交わして小さく頷き合う。
「では、タッグデュエルの続きに移ろうか。今度は――」
新たな仲間を加え、ショートランド泊地のデュエル教導は再開された。
雷「最終的な勝利は島風たちのものになったわね。二人の方が経験者だから、まぁ妥当な結果なのかしら」
電「でも、曙ちゃんたちも頑張っていたのです。甘く見てはいられません」
雷「そうね。私たちもうかうかしてられないわ」
響「頼むよ。もしもショートランドから帰ってきた時に君たちの腕が鈍っていたら、再教育してあげるよ」
雷「大丈夫よ。逆に、響たちの方こそ実戦の機会が減って腕が落ちてるんじゃないかしら」
響「なら、試してみるかい。帰ったら真っ先にデュエルだ」
雷「望むところよ」
暁「ねぇ。それなんだけど、響と電はいつになったらトラックに戻ってくるの? いい加減、ここだけの出番なのは飽きちゃったわ」
響「それなら心配いらないよ。もう少しでショートランドでの教導任務は完了の予定だから」
暁「本当! ようやく、暁の出番がくるのね!」
響「ああ。だから、もう少し大人しく待っているんだよ」
電「ショートランドでの教導も大詰め。次回は、その総仕上げの一戦です。次回、『総合演習』。デュエル・スタンバイなのです」