鎮守府決斗録   作:石田零

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読者の皆さん、お久しぶりです。
明けまして……というには遅すぎますが、今年初の投稿です。
ショートランド泊地編ラスト、前後編で2週にわたりお送りします。
前編はデュエル分薄いですが、その点はご容赦を……
それでは、本編をどうぞ。


47 総合演習

「旗艦、天津風より各艦へ。間もなく変針地点。艦隊は既定の進路に沿い、一番艦より逐次回頭せよ」

 

 天津風の指示に、曙、潮、島風の三人が了解と答える。

 間もなく、艦隊の先頭を進む曙が左に舵を切る。後続の三名も同じ場所で同じように進路を変える。

 

「このまま南下していけば、ショートランド泊地よ。みんな、気を引き締めていきましょう」

 

 無線機越しに、天津風は艦隊の面々に声をかける。

 四人は現在、南太平洋ブーゲンビル島沖を南に向け航行している。彼女らが目指す先は、ブーゲンビル島と対岸のチョイセル島が作る水道、そしてその向こうにあるショートランド泊地だ。

 艦隊の陣形は単縦陣。先頭より、曙、天津風、島風、潮の順に並んでいる。それとは別に、艦隊から少し離れた位置にももう一人がいる。

 

一一二二(ヒトヒトフタフタ)。艦隊、左九〇度逐次回頭。針路一八〇度となす……、と」

 

 その一人の艦娘――電は、手元のノートに先ほどの艦隊の動きを書きとめる。彼女はノートを閉じると前方の四人を見て微笑する。

 

「皆さん、はりきっていますね。いつにも増して、動作がしっかりしているのです」

 

 それも無理のないことだと、電は思う。なぜなら、今日は彼女たちにとって大事な日だからだ。

 

「この様子だと、今日の総合演習は白熱しそうなのです」

 

 楽しげな表情で電は独語する。

 彼女が口にした、総合演習という単語。それは、今まさに行われているこの演習を指している。

 演習は、艦娘役の青軍と深海棲艦役の赤軍に分かれて実施される。青軍は最上、雪風、時津風の三名、赤軍は天津風、島風、曙、潮の四名からなる。両者の作戦目標は、青軍が敵艦隊の撃退、赤軍が泊地の攻略である。時間は無制限、どちらかの作戦目標達成をもって演習が終了する。

 ここまでは、普段こなしている演習と変わらない。しかし、この総合演習には通常の演習と大きく異なる部分がある。それは、演習内容にデュエルを取り込んでいる点である。

 総合演習では、赤軍の一部をD型艦に見立てて演習を行う。その艦は実際のD型艦と同じく、通常の攻撃手段を失う代わりにデュエル以外でのダメージを受けない扱いとなる。何隻をD型艦とするかは自由であり、その情報は青軍には知らされない。一方の青軍も、それに対抗して任意の艦をデュエル可能なD装備で出撃させることができる。そのため、演習では海戦とデュエルが同時に発生することになる。それを通じ、D型艦との「実戦」に対する感覚を養うことが総合演習の目的である。

 この総合演習は、いわば教導の総仕上げ。これが実施されている今日は、ショートランドでの教導の最終日でもある。ゆえに、天津風たちはいつも以上に気合いを入れて演習に臨んでいた。

 

「対空電探に感! 七時の方向、数は一。距離四万メートル!」

 

「全艦、対空戦闘用意!」

 

 各自の主砲が空を睨み、臨戦態勢が作られる。待ち受けることしばし、東の空に敵機が現れる。と言っても、それはまだ小さな点にすぎない。常人であれば見落としてもおかしくはない大きさである。しかし、艦娘である天津風たちはその姿をしっかりと捉えていた。

 

「敵機! 左一〇〇度、距離二二〇〇! こちらに向かってきます!」

 

 最後尾の潮が真っ先に敵機を発見し、警報を発する。それを受けた天津風は艦隊に対空戦闘用意を発令し、射程に入り次第発砲を始めるよう指示する。やがてその命令は実行に移されるが、どういうわけか、潮と曙の二人は敵機が頭上に到達しようとも攻撃に加わらなかった。

 

「えっと、天津風さん。本当に、私は射撃をしなくていいんですか?」

 

 主砲塔を胸元に抱え、おずおずと尋ねる潮。そんな彼女に、天津風ははっきりと頷く。

 

「そうよ。むしろ、あなたはぎりぎりまで発砲してはダメ。砲撃したら、その艦はD型艦でないことが相手に知られてしまう。この艦隊の誰がD型艦なのかは、会敵の瞬間まで秘密にしておきたいの。幸い、飛んできてるのは零式水偵だから、すぐに攻撃される心配もないわ」

 

「けどそれなら、私たちも撃たない方がいいんじゃない?」

 

「その通りではあるんだけど……」

 

 天津風は、島風の言葉に同意しつつも首を横に振る。

 

「たぶん、私たちがやっても効果は薄いわ」

 

「どうして?」

 

ショートランド(ここ)の戦い方は、内地の教本とはまるで違う。その動きに対応できるのは、同じ動きができる艦娘だけ。つまり、青軍との砲雷撃戦は自動的に私たちの役目になる。おそらく、向こうも同じように考えて、初めから私と島風はD型艦の候補から外していると思うわ」

 

 会話をしている間にも二人の連装砲は砲弾を撃ち上げているが、なかなか命中弾は得られない。そのうちに水偵は対空砲火の射程ぎりぎりまで後退する。二人も射撃を中断し、睨み合いが始まる。

 

「ねぇ天津風。あれ放っておいていいの? さっきからずっと何か通信してるよ。きっと、私たちのこと報告してるんだよ」

 

「私もその通信は傍受してるわ。内容は、あなたの言う通りでしょうね。暗号化はされてるけど、この状況でする通信なんてそれ以外に考えられないわ」

 

「なら早く落とさないと! ……といっても、撃ち落とそうとしても逃げられちゃうんだよねー。あー、駆逐艦も飛行機が積めればいいのに」

 

「それは無理な相談ね。まぁ、気持ちは分かるけど」

 

「二人とも。悪いけど、お喋りしてる場合じゃなさそうよ」

 

「どうしたの、曙」

 

「対空電探に感。十二時方向、数五、距離七万メートル。こいつらは……」

 

「おそらく、最上さんが射出した攻撃隊ね」

 

「水上機が攻撃隊? そんなことできるの?」

 

「ええ。最上さんの搭載機には、偵察機以外の水上機もいるわ。あなたの電探に映ったのは、その機体……水上爆撃機、瑞雲よ」

 

「偵察はもちろん、爆撃も空戦もできる万能水上機。とっても頼りになるんだよ」

 

「敵には回したくない相手ね」

 

 嘆息混じりに呟いた曙は、主砲を構えつつ行手の空を睨む。ほどなくして、その目が標的を捉える。

 

「見つけた! 敵機、十二時方向、数五。時速三〇〇キロ以上で接近中!」

 

「全艦、第五戦速、対空戦闘用意! 潮も今度は射撃に参加して」

 

「はい!」

 

「敵編隊、二手に散開。左から二機、右から三機!」

 

「島風、右をお願い。私と潮で左を迎撃するわ」

 

「了解。連装砲ちゃんたち、出番だよ!」

 

「連装砲くん、よろしく。撃ち方始め!」

 

「潮、主砲撃ちます!」

 

 先頭の曙を除く三人が次々に砲門を開く。撃ち上げられた砲弾は、時限式信管により炸裂し、敵機の周囲に爆煙を生む。しかし、敵機の群れはそれに怯むことなく接近を続ける。対空砲火など、意に介していない様子だ。

 

「一機撃墜! 右の編隊、残り二機!」

 

 島風から待望の撃墜報告が上がり、敵機の数が初めて減少する。これにより防空戦も勢いづくかと思われたが、既に戦果を重ねるだけの時間は残されていなかった。

 

「左の敵編隊、急降下してきます!」

 

「回避運動! 全艦取舵一杯!」

 

 潮が報告するや否や、間髪入れずに天津風の号令が下る。

 これまで単線であった航跡が突如四つに枝分かれし、一斉にきつい弧を描く。敵機が投下した爆弾は、弧の外側に着弾し水柱を立てる。

 

「回避成功。潮、被害ありません」

 

 着弾地点の最寄りにいた潮が報告を上げる。敵弾が落ちたのは、直進していた場合の彼女の予想針路上。回避が遅れていたら、被弾していたかもしれない場所だ。それゆえに、潮の顔にも安堵の色が浮かぶ。

 しかし、彼女は重要なことを忘れていた。

 

「なにボケっとしてんの潮! 敵機直上、急降下!」

 

「えっ」

 

 潮が上空に目を向けたのは、ちょうど右の編隊が急降下に入った時だった。

 発動機を唸らせ突入する機体、その胴体に吊られた爆弾が切り離される。二発の爆弾は、母機の速度と重力の力を借りて威力を増し、標的を叩く。潮に与えられた猶予はあまりにも短く、彼女が動こうとした時、敵弾はもう目の前に迫っていた。

 

「きゃあっ!」

 

 小さめの炸裂音とともに、潮の悲鳴が上がる。命中した演習用爆弾は着弾と同時に識別塗料を飛散させ、彼女の上半身に山吹色の塗料を塗りたくった。

 

「うう……すみません、被弾しました。直撃弾、至近弾ともに一。航行は可能ですが主砲塔が大破、射撃不能です」

 

「了解。まずは応急作業に専念して、被害の拡大を防いで。敵は全機投弾を終えているから、追撃の心配はないわ。他艦は引き続き警戒を厳にしつつ、潮の援護に当たること」

 

 幸い、潮の被害判定は主砲塔の大破だけにとどまり、機関も全力発揮可能とされた。しかし、泊地突入前に一隻分の火力を失ったのは無視できない。

 

「で、どうするの」

 

 潮の応急作業が完了した頃合いを見計らい、曙が尋ねる。

 

「戦力比は四対三。数では勝ってるけど、相手には重巡がいる。ただでさえこっちは火力で劣るってのに、これじゃ絶対に撃ち負けるわよ」

 

「分かってる。けど、作戦に変更はないわ。元から私たちは短期決戦狙い。その方針がさらに強まっただけだわ」

 

「ま、そうよね」

 

 その答えに、曙は素直に頷く。今の問いは、単に旗艦の意思を確かめるためのものであったようだ。

 

「それなら、なおさらもたもたしてらんないわ。二度も空襲なんてまっぴら御免よ」

 

「同感ね。艦隊増速、速力三一ノットとなせ」

 

 空襲後、速度を巡航に戻していた艦隊が再び加速する。作戦に従い、燃費よりも進撃速度を優先した形だ。損傷を抱える潮も、機関は無傷のため難なく同行できている。

 これ以降、艦隊は依然として水偵の接触を受けつつも、さらなる妨害には見舞われずショートランド泊地近海へと到達。ここで迎撃のため出撃した青軍艦隊と衝突した。

 

「敵艦見ゆ! 二時の方向、距離二万メートル。数は二……いや、三。こちらへ向かってくる」

 

 第一報をもたらしたのは曙。それを受けて天津風は即座に対艦戦闘用意を下令する。

 体勢は反航戦。両艦隊は、互いの動きを注視しながら接近する。動きが起きたのは、彼我の距離が三〇〇メートルにまで詰まった頃。最上率いる青軍が、海戦の火蓋を切った。

 

「敵艦回頭。面舵を切り、丁字を作る模様。……ッ、敵艦発砲!」

 

 直後、艦隊の後方に三本の水柱が立つ。続く二射目が艦隊を夾叉する中、天津風の指示が飛ぶ。

 

「全艦最大戦速、一気に懐へ飛び込むわ!」

 

 艦隊の最高速度は、曙と潮に合わせ三五ノット。その速度で、四人は突撃を行う。一方、迎え撃つ最上たちにとっては、この構図は丁字有利そのもの。ここぞとばかりに砲弾を叩き込む。水上機の支援があるお蔭で敵艦隊の砲撃精度は高く、先頭の曙は早くも何発か直撃を喫する。

 演習弾には炸薬こそ入っていないが、事前の設定により、被弾するとそれに応じて艤装の機能が低下するようになっている。しかし、複数の命中弾にも関わらず、曙の動きは一切鈍らない。敵弾を一身に引き受けて、仲間の盾となり驀進する。

 相手がこの異常に気づくまでに、そう時間はかからなかった。間もなく、敵の戦列から一人が分離し、曙の阻止に乗り出す。

 

「駆逐艦一、高速で接近中。時津風よ」

 

「連装砲くん、目標を時津風に変更。島風も手伝って」

 

「了解。連装砲ちゃん、お願い」

 

 二人は時津風に集中砲火を浴びせるが、向こうも同じショートランド泊地の艦娘。的確な回避運動で攻撃をかわし、なおも艦隊に接近する。やがて彼女は魚雷の射点に到達し、雷撃体勢を作る。それを見た曙は急回頭し、僚艦を守ろうと射線上に割り込んだ。

 しかしその瞬間、時津風は突如として雷撃を中止する。そして間髪入れず、全速力で曙の懐へと飛び込む。予想外の動きに驚く曙は、これに対処することができない。気づいた時には、銀色に光る手錠が彼女の左手首にはまっていた。

 

「何よこれっ!?」

 

 声を上げた曙は、時津風を睨みつける。

 

「時津風。これは一体何の真似」

 

「決まってるじゃん。曙を捕まえたんだよ」

 

 時津風は曙の剣幕にも怯まず、平然と答える。

 

「D型艦は自分から攻撃できないといっても、いられるといろいろ困るんだよね~。だから最初に倒させてもらうよ」

 

「あたしがD型艦役だってこと、気づいてたのね」

 

「もちろん。ていうか、気づかない方がおかしいよ。あれだけ砲撃くらってるのに無傷だなんて、D型艦以外に考えられないでしょ」

 

「それもそうね。で、この後はどうするつもり」

 

「見て分からない?」

 

 尋ねる曙に、時津風は問い返す。

 

「あたしの腕には、デュエルディスクがある。そしてこの手錠は、あたしのディスクと繋がってる。手錠の鍵は、ライフが残っている限り開かない」

 

「ありがと。とってもよく分かったわ」

 

 要するに、手錠を外すには時津風とのデュエルに勝たなければならないということだ。となれば、やるべきことはただ一つ。

 

「要は、あんたをぶっ倒しゃいいわけでしょ。単純な話だわ」

 

 曙は背中に隠し持っていたデュエルディスクを装着し、デッキをセットする。さらに、カードケースから取り出した数枚のカードをそこへ加えた。

 

「今のカードは?」

 

「あんたを倒す秘密兵器よ。今日は、絶対にあんたを満足させない」

 

「できるかな~」

 

「ふんっ。その余裕ぶった顔も、すぐに変えてやるわ。デュエル!!」

 

 

曙   LP4000

時津風 LP4000

 

 

「先攻は貰うわ。カードを二枚セット。モンスターを裏守備表示で場に出して、さらに永続魔法『補給部隊』を発動。ターン終了よ」

 

 

《補給部隊》

永続魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

「あたしのターン」

 

 ドローした時津風は、「おっ」と小さな声を上げ、にやりと笑う。

 

「いいねいいね~、この手札! かんっぺき!」

 

 今にも飛び跳ねそうな勢いで興奮する時津風。端から見ると可愛らしい姿だが、対峙する曙の目には、それはひどく不穏なものに映る。

 

「あたしは『インフェルニティ・ガン』を発動。その効果で、手札の『インフェルニティ・デーモン』を墓地へ。続いて『ダーク・グレファー』を召喚。その効果を使って、手札の『インフェルニティ・ビートル』を捨てて、デッキの『インフェルニティ・ネクロマンサー』を墓地へ送る。そしてカードを二枚セット」

 

「これであいつの手札はゼロ……ハンドレス!」

 

「さあ、満足させてもらおっか! あたしはインフェルニティ・ガンの効果を発動! このカードを墓地に送ることで、墓地のデーモンとマンサーを特殊召喚する。そして、デーモンの効果であたしはデッキの『インフェルニティ・ブレイク』を手札に加える。これを伏せてもう一度ハンドレスにしてから、今度はネクロマンサーの効果。墓地のビートルを復活させる。さらに――」

 

 相変わらずの爆発力を発揮させ、時津風はモンスターを大量展開していく。ここからレベル8、9のシンクロ召喚へ繋ぎ、場を制圧するのが彼女の十八番だ。以前の戦いでは、曙はこの展開力に抗しきれずに敗れたのだった。

 しかし、あの時からは何日もの時が流れている。その間、曙はデュエルの鍛錬に励み、着実に腕を上げている。あの時の彼女とは違う。その彼女が、時津風をこのまま野放しにしておくはずはなかった。

 

「させないわ。トラップ発動、『不協和音』! 3ターンの間、互いのシンクロ召喚を禁止する!」

 

「き、禁止!?」

 

 

《ダーク・グレファー》

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1700/守1600

(1):このカードは手札からレベル5以上の闇属性モンスター1体を捨てて、手札から特殊召喚できる。

(2):1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を捨てて発動できる。

デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。

 

《インフェルニティガン》

永続魔法

1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。

また、自分の手札が0枚の場合、フィールド上のこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついたモンスターを2体まで選択して特殊召喚する。

 

《インフェルニティ・ネクロマンサー》

効果モンスター

星3/闇属性/悪魔族/攻 0/守2000

このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。

また、自分の手札が0枚の場合、このカードは以下の効果を得る。

1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

《インフェルニティ・デーモン》

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1200

(1):手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、このカードを相手に見せて発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「インフェルニティ」カード1枚を手札に加える。

この効果は自分の手札が0枚の場合に発動と処理ができる。

 

《インフェルニティ・ビートル》

チューナー(効果モンスター)

星2/闇属性/昆虫族/攻1200/守 0

自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースする事で、デッキから「インフェルニティ・ビートル」を2体まで特殊召喚する。

 

《不協和音》

永続罠

このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーはシンクロ召喚できない。

発動後3回目の自分のエンドフェイズ時にこのカードを墓地へ送る。

 

 

「え、ちょっと待って。嘘でしょ? これじゃ全然満足できないじゃん!」

 

「当然よ。最初に言ったじゃない、今日は絶対に満足させないって」

 

 悲壮感あふれる時津風の叫びにも、曙は冷静に答える。

 

「ハンドレスコンボは確かに凶悪極まりないけど、その凶悪さは強力なシンクロモンスターがあってこそ。シンクロ召喚さえさせなければ、あんたのデッキなんて怖くないわ」

 

「ぐぬぬ……」

 

 何か言い返してやりたいが言葉が見つからず、時津風は歯軋りする。

 インフェルニティの中でも、彼女のデッキはシンクロ特化の構築。そのシンクロ召喚を封じられるということは、両腕を縛られて戦うに等しい。致命的と言ってもいい打撃だ。

 それを理解しているからこそ、曙もこの作戦を採用した。苦渋の表情の時津風を前に、彼女は笑みを浮かべる。

 

「今度はこっちの番よ。さあ、満足させてもらおうかしら」

 




雷「ショートランドでの教導もいよいよ大詰めね。デュエル込みの演習っていうのは、私もまだやったことないわ」
暁「そうね。なんだか面白そう」
響「おっと、見かけに騙されてはいけないよ。総合演習では、海戦で疲れ切った後でもデュエルのために頭をフル回転させないといけない。実際はとてもハードな演習なんだよ」
暁「そ、そうなのね。甘く見てたわ」
雷「演習の勝敗も気になるけど、やっぱり注目はデュエルよね。曙にとってはリベンジマッチみたいなものだし」
暁「時津風の動きを封じて、最初のピンチは上手く切り抜けたわね。でも確か、曙もシンクロ使いじゃなかったかしら。自分でシンクロを封じちゃって平気なの?」
電「電もそう思いました。でも、曙ちゃんはそこもしっかり考えていたのです」
暁「どんな手なの……っていうのは、次回のお楽しみよね」
電「はい。もったいぶるようですが……。次回『もう一つの戦い方』。デュエル・スタンバイです」
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