よく考えたら、前回は去年最後の投稿だったのに酷い終わり方でしたね。憲兵に連行されるところで年越しとか(苦笑
それでは、今年最初の『鎮守府決斗録』の投稿、お楽しみください。
「いい加減に認めんかっ!」
ダンッ、と机を叩く音が響く。打ち下ろしたばかりの片手を机上についたまま、憲兵が強い口調で問いつめる。
「貴様はドックの裏で覗きをしていたのだろう! おまけに幼い少女たちを人気のない場所に連れ込んで……実にけしからん奴だ!」
「だから、違うって言ってるだろ!!」
こちらも声を張り上げ、春瀬が反論する。
「あそこにいたのは、偶然だ! 覗きをしようだなんて微塵も思っちゃいない。それと、電たちは俺の部下だ。あんたは何もかも誤解してる!」
「そんな言い訳が通じると思うか!」
再び机を叩き、憲兵が威嚇する。
「騙されんぞ。貴様が覗きを図る瞬間を、俺はこの目でしかと見ている! 言い逃れる術はない!」
「それが誤解だっつってんだ! だいたい、あんたの記憶だけじゃ証拠にはならんだろ!」
「ぐっ……」
春瀬の指摘に憲兵が言葉を詰まらせる。それが正論であることは憲兵自身も承知しているらしく、彼は春瀬の主張を聞き入れる形で尋問を再開した。
「じゃあ、貴様はどうしてドックの裏にいたんだ」
憲兵の口調は、先ほどよりも幾分か穏やかになっている。春瀬も語気を和らげてそれに答える。
「機械のテストをしてたんだ。広くて、かつ人の邪魔にならない場所を探したらあそこに辿り着いた。あの建物がドックだとは知らなかったし、だから当然、覗きなんて考えてもいない」
「機械? それはどんな機械だ?」
そう訊かれて、春瀬は答えに窮す。その機械について説明すること自体は簡単だが、製作経緯があまり公言できるものではないため、どう言ったものか判断がつかなかった。
「どうした。やはり、人に言えないようなことをしていたのか?」
春瀬が沈黙したのを見て、憲兵が目つきを鋭くする。沈黙は不利になると判断した春瀬は、慎重に言葉を選びながら答える。
「……娯楽用の機械だ。カードゲームの絵柄を立体映像化して、対戦を楽しむものだ。一緒にいた艦娘の中に二人、腕に円盤型の機械をつけている子がいただろう。あの機械がそうだ」
「カードゲーム?」
反応したのは、春瀬を尋問している憲兵とは別の憲兵だった。尋問者の後ろに立って事のなりゆきを観察していた彼は、「何のカードだ」と続けて春瀬に尋ねる。
二人の憲兵は、春瀬に対して名を明かしていない――そのため春瀬は、彼を尋問している方を憲兵A、その後ろに立っている方を憲兵Bとして区別することにした。
「デュエルモンスターズだ……と言っても、あんたらには分からないだろうが……」
「デュエルモンスターズ、だと?」
春瀬の返事を聞き、憲兵Bは眉を寄せる。
「貴様……デュエリストか?」
「ああ。まさか、あんたも?」
「いかにも」
首肯した憲兵Bは、
「ならば、私とデュエルしろ」
「な……」
「はいい!?」
唐突な台詞に、春瀬と憲兵Aは揃って自分の耳を疑う。
「このまま問答を続けていても、埒が開かない。ならばデュエルで決着をつけよう。正義と悪が戦う時、悪は必ず敗れる。このデュエルの勝敗で、貴様が本当に無実かどうか確かめてやる」
「ちょ、ちょっと待ってください
抗議の声を上げたのは、憲兵Aだ。
「カードゲームで容疑の真偽を決めるなんて、無茶苦茶です! 非論理的すぎます!」
「心配するな、渋谷」
憲兵A――渋谷の抗議に、憲兵B――光江は力強く答える。
「デュエルとは、文字通りの決闘。互いの全力を賭した戦いでは、自ずと本性があらわになる。こいつが本当に
「いや、そうではなくて……」
自信満々の光江を前にして、渋谷は呆れとも戸惑いともつかない表情を作る。
一見したところ、渋谷の年齢は二十代後半。対する光江の年齢は四十歳前後。もうじき中年の域に入ろうかという大人がそのようなことを言っているのを見れば、渋谷でなくても呆れるというものだ。
しかし、春瀬は驚きつつも渋谷とはまた違った考えを抱いていた。
デュエルで証言の真偽を確認するというのは確かに乱暴な手段だが、見方を変えれば、勝てば面倒な取り調べを省いて無実のお墨つきを得られるチャンスでもある。また、これまでの光江の言動を考えると、デュエルを断れば即座にクロだと決めつけられるおそれもある。
そしてなにより、良くも悪くも「デュエリスト」である春瀬にとって、挑まれたデュエルに背を向けるという選択肢は、
「分かった。このデュエル、受けて立つ」
「そうこなくてはな」
満足そうに頷いた光江は、渋谷に向かって春瀬の執務室からデュエルディスクを取ってくるように命じる。
「せっかくだからな。貴様の試していた機械のテストも兼ねよう。回数は多い方がいいだろう」
そう言う光江だったが、緩んだ頬を見れば本音が別であることは明白だった。
十数分後、二台のデュエルディスクを抱えた渋谷が戻ってくると、三人は取調室を出て別の部屋へと移動する。着いたのは、学校の体育館の半分ほどの大きさを持つ部屋だった。
「ここは営倉内の集会場だ。収容された奴らは、毎朝ここで整列させられる。貴様がこのデュエルに負ければ、明日から通うことになる場所だ」
「縁起でもないことを言ってくれる」
苦い顔をした春瀬は、デュエルを始める前に光江に確認する。
「このデュエルに勝てば、俺を無実だと認めて解放してくれるんだな」
「約束しよう。だが、敗北すれば貴様は悪と認定され、即刻営倉入りだ」
「要は勝てばいいんだろう? 簡単な話だ」
「自信があるようだな」
「もちろん。俺は覗き魔なんかじゃないからな」
「いまの言葉を含めて、デュエルで真偽を確かめるとしよう。では、いくぞ」
「「デュエル!!」」
光江 LP4000
春瀬 LP4000
「私のターン」
デュエルディスクが決定した先攻プレイヤーは光江。先攻一ターン目はドローできないため、光江は五枚の手札でデュエルを開始する。
「私はモンスターを裏守備表示で召喚してターン終了」
「俺のターン」
相手の場には、セットモンスターが一体だけ。これだけでは、相手のデッキが何かは分からない。ここは様子を見るか、それとも――
「俺は魔法カード『テラ・フォーミング』を発動する。その効果でデッキから『Sin World』を手札に加え、そのまま発動。さらに、エクストラデッキの『スターダスト・ドラゴン』を除外し、『Sin スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚する」
《テラ・フォーミング》
通常魔法
デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。
《Sin World》
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、自分のドローフェイズ時に通常のドローを行う代わりに発動する事ができる。
自分のデッキから「Sin」と名のついたカード3枚を選択し、相手はその中からランダムに1枚選択する。
相手が選択したカード1枚を自分の手札に加え、残りのカードをデッキに戻してシャッフルする。
《Sin スターダスト・ドラゴン》
効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
このカードは通常召喚できない。
自分のエクストラデッキから「スターダスト・ドラゴン」1体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚できる。
「Sin」と名のついたモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
このカードが表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃宣言できない。
フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、表側表示で存在するフィールド魔法カードは効果では破壊されない。
景色はそのまま、異様な色合いへと変化した世界に、細長い体躯のドラゴンが舞い降りる。レベル8というだけあって、高レベルモンスターに相応しい風格を持つドラゴンだが、黒い仮面を着けたその姿はどこか禍々しくもあった。
「最上級モンスターを手札から直接召喚するだと?」
「Sinモンスターは、対となるモンスターを除外することで手札から特殊召喚できる。ただし、場にフィールド魔法が存在しないと破壊されるが……。しかし、Sinスターダストがいる限りフィールド魔法を破壊することはできない。よって、今はこのデメリットもあってないようなものだ」
春瀬は、光江の場に伏せられたモンスターを指さす。
「バトルフェイズ。Sinスターダストで裏守備モンスターを攻撃だ」
攻撃を受けたことで、光江のモンスターが表側表示になる。伏せられていたカードの正体は――
「私がセットしていたのは『ライトロード・ハンター ライコウ』。ライコウのリバース効果により、私はフィールドのカードを1枚破壊できる」
《ライトロード・ハンター ライコウ》
効果モンスター
星2/光属性/獣族/攻 200/守 100
リバース:フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。
自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。
「そのドラゴンがいる間は、フィールド魔法を破壊することはできないんだったな。ならば、まずはそいつから消えてもらおう。Sinスターダスト・ドラゴンを破壊! その後、私はデッキの上から3枚のカードを墓地へ送る」
「ライトロードか……。こりゃ、長期戦はマズいな」
光江のモンスターを見て、春瀬は顔をしかめる。
ライトロードとは、その名の通り「ライトロード」と名のつくモンスターを中心に構成されるカテゴリーだ。モンスターはすべて光属性とされ、そのほとんどが特定の場合に自分のデッキを墓地へ送る効果を持つ。
デッキからカードを引けなくなれば敗北となるデュエルモンスターズにおいて、この効果は一見自分の首を絞めるものに思える。しかし、実態はまったく逆。カードを墓地に送ることによって、ライトロードは力を増していくのだ。いたずらに時間をかければ、勝利へのハードルはどんどん上がっていく。
だから短期決戦が望ましいのだが、生憎と今の春瀬の手札では追撃をかけることはできない。彼は仕方なく、フィールドを空けたまま相手にターンを渡す。
「私のターン。私は手札から『ソーラー・エクスチェンジ』を発動する。手札の『ライトロード・ビースト ウォルフ』を捨てて2枚ドローし、デッキの上から2枚を墓地へ送る」
《ソーラー・エクスチェンジ》
通常魔法
手札から「ライトロード」と名のついたモンスター1体を捨てて発動できる。
デッキからカードを2枚ドローし、その後自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。
「ふむ、いいカードを引いた。魔法カード『光の援軍』を発動。デッキのカードを3枚墓地へ送り、デッキから『ライトロード・サモナー ルミナス』を手札に加える。そして、そのルミナスを召喚する」
《光の援軍》
通常魔法
自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動できる。
デッキからレベル4以下の「ライトロード」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
《ライトロード・サモナー ルミナス》
効果モンスター
星3/光属性/魔法使い族/攻1000/守1000
1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。
自分の墓地からレベル4以下の「ライトロード」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。
また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。
自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。
度重なる墓地肥やしにより、既に光江の墓地には複数の「ライトロード」モンスターが存在している。ルミナスの効果を活かす用意は十分だ。
「私はルミナスの効果を発動! 手札を1枚捨てて、墓地から『ライトロード・アーチャー フェリス』を特殊召喚する」
《ライトロード・アーチャー フェリス》
チューナー(効果モンスター)
星4/光属性/獣戦士族/攻1100/守2000
このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが効果モンスターの効果によってデッキから墓地へ送られた時に発動する。
このカードを墓地から特殊召喚する。
また、このカードをリリースして発動できる。
相手フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。
その後、自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。
「レベル3のルミナスに、レベル4のフェリスをチューニング! 光の守護者よ、悪しき者共に断罪の刃を振るえ! シンクロ召喚、降臨せよ『ライトロード・アーク ミカエル』!」
《ライトロード・アーク ミカエル》
シンクロ・効果モンスター
星7/光属性/ドラゴン族/攻2600/守2000
チューナー+チューナー以外の光属性モンスター1体以上
1ターンに1度、1000ライフポイントを払って発動できる。
フィールド上のカード1枚を選択して除外する。
このカードが破壊された時、このカード以外の自分の墓地の「ライトロード」と名のついたモンスターを任意の数だけ選択して発動できる。
選択したモンスターをデッキに戻し、自分は戻した数×300ライフポイント回復する。
また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。
自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。
まばゆい黄金の鎧をまとった戦士が、白いドラゴンの背に乗りフィールドに降り立つ。ライトロードを守護する天使でもあるその者は、自らの敵、すなわち悪である春瀬に対して高所から睨みをきかせた。
「また大物を呼び出されるのも厄介だからな、まずはそのフィールド魔法をどかすとしよう。ミカエルの効果を発動! ライフを1000払うことで貴様のSin Worldを除外する!」
光江 LP4000→3000
フィールド魔法が消滅したことで、周囲の景色も元に戻る。これで春瀬のフィールドは完全にガラ空き。そうなれば、次にくるものは決まっている。
「いくぞ、ライトロード・アーク ミカエルで貴様に直接攻撃! 断罪の一撃を受けろ!」
「ぐっ!」
春瀬 LP4000→1400
降下速度をつけて威力を増した斬撃が春瀬のライフを一気に削る。手痛い一撃をくらった春瀬は、その場で二、三歩よろめいた。
「これが正義の力だ。ここで屈すれば、貴様は悪だったということになる。さあ、貴様が本当に無実だというのなら、その手で証明してみせろ!」
攻撃を終えたミカエルが光江の背後に降下する。仁王立ちになった光江は、地獄の閻魔のような形相で叫んだ。
響「どうしてデュエルで証言の真偽を決めるんだ……」
雷「だって、当然でしょ? デュエリストなら」
電「まるで意味が分からないのです……」
暁「なぁにこれぇ」
雷「お願い、負けないで司令官! 司令官がいなくなったら、この艦隊の指揮は誰がとるの? 次回、第十話『ジャッジメント・タイム』。デュエル・スタンバイ!」