超音速   作:ネコガメ

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第10話

 演習より数日後の『かさぎ』甲板では、着艦作業が進行中であった。

 

『フラップダウン、ギアダウン....プレイヤー、下りてるか』

 

『スリーグリーン、フラップグリーン、問題なし』

 

『OK....106トムキャット、ボール、7コンマ8』

 

「了解、ボール7コンマ8」

 

 晴天を背景に、LSO(着艦信号士官)がホークからの通信に応えつつハンドコントローラーを操作、それに従い光学着艦装置が作動。

 これに誘導され、機の後ろに排煙をうっすらと引きながら、可変翼とそれに装着された前縁スラット及び後端フラップを全開としたF-14トムキャットが、緩く旋回しつつアングルド・デッキと正対する位置へ進入してくる。

 近づくにつれて段々と轟音を高めながら、ランディング・ギアとアレスターフックを降ろし、さながら猛禽の様な姿となって、甲板へ近づいていく。

 そして────

 

「ランプ!」

 

 けたたましい金属音が響き、アレスティングフックが強烈に引かれる。

 

 ホーク・レイマン組は通常通りのCAP任務へ戻り、現在丁度その哨戒飛行から帰投した所であった。

 キャノピーを開き、甲板士官にタラップを展開して貰いつつ機から降り、僚機(ウィングマン)に絡みに行く。

 

「うい、お疲れぃ!」

 

「おう、元気だなーお前....コーヒー飲もうぜ。淹れてやるよ」

 

「よっしゃッ!プレイヤー、プレイヤー!レイマンがコーヒー作ってくれるってよ!」

 

「はいよー!」

 

「待て、2人分は聞いてないぞ」

 

「3人分だろ?偉く自分のRIOに冷たいな?ん?」

 

「勘弁してくれ....」

 

 そんな雑談を交わしながら、4人揃って艦橋のハッチから艦内へ入り、レディ・ルームへ向かう。

 


 

「戻ったか。全隊員に伝えておくことがある。一旦席につけ」

 

「えぇーーーーッ、コーヒー飲もうと思ったのに....」

 

「すぐ済む、3分かからん」

 

 やっとコーヒーが飲めると安堵していた矢先、入室した瞬間に部隊長である”Torch”こと斎藤源三中佐から声をかけられる。

 ちなみに落胆するホーク、プレイヤー、そして自分のRIOであるフレクスを横目に、自分含めて4人分コーヒーを作らされそうになっていたレイマンは内心安堵していた。

 

「よし、ついたな....4人がCAPへ行ってる間に、艦長から次期作戦の説明があった。『かさぎ』は

これより第三護衛隊と第五護衛隊、並びに太平洋上に展開中のCVN-76『ロナルド・レーガン』麾下の第5空母打撃群と合流して、フィリピン・スービック海軍基地へ回航する」

 

「レーガンと....?まさか!?」

 

 感づいた隊員の一人が目を見開いて身を乗り出すと、それにトーチが頷いて返し、話が続けられる。

 

「そのまさかだ、先ごろ防衛省より発表があった。アメリカをホスト国とし、日本、韓国、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリア、フィリピンの8か国で....ハワイ諸島に総攻撃をかける」

 

 隊の全員が、余りの衝撃に硬直。

 それを見ながら、トーチが話を続ける。

 

「....現在スービックには英仏の空母打撃群はじめ各国の水上艦隊が合流を始めている。特にアメリカは再編された第七艦隊に第三艦隊の半数、それにモスボールされてたエンタープライズや戦艦戦隊まで引っ張り出して来たそうだ。クラーク空軍基地へは既に戦略航空軍団のBナンバー(戦略爆撃機)が集結している」

 

「ひぃえ....やっこさんブチギレてら....」

 

「しかし何故このタイミングで?第二次真珠湾攻撃ってったらもう25年....四半世紀も前ですよ?」

 

 第二次真珠湾攻撃....1991年12月7日、2体の深海棲艦上位個体が巨大艦隊を率いてハワイ・パールハーバーを急襲、アメリカ海軍太平洋艦隊司令部の壊滅や原子力空母CVN-70『カール・ビンソン』の沈没などアメリカに甚大な被害を齎し、全世界的に深海棲艦の攻勢が強まるきっかけとなった事案である。

 いつしか「中枢棲姫」と「リコリス棲姫」と呼ばれる様になった2体の深海棲艦は、パールハーバーからオアフ島全土、オアフ島からハワイ諸島全域と次第に支配域を広げ、奇襲から1週間後には太平洋の海運と空路を完全に寸断するまで勢力を拡大。

 今日まで太平洋の中心に君臨し続けている、人類最大の敵であった。

 

「それについてはアメリカからも説明があった。日本をはじめ世界各地に兵器と技術をバラ撒いて、アフターサービスに運用人員の育成にと手厚い援助を与えてたのはこの為という訳だ」

 

「はーーーー....メリケン共、わしだけじゃ敵えへんさかい他の国に武器与えて育てて仲間増やして....こっちがガチンコのケンカぶちかましてる中、一人だけ育成ゲームやっとった訳か、ようやるわ....」

 

「前例が無い訳じゃないが、ここまで大規模なのは前代未聞だぞ」

 

「流石世界の警察ってとこかな」

 

「世界の管理人の間違いだろ....」

 

 関西弁の特徴的な堂本浩成”Rollie”大尉に続き呆気に取られた様なつぶやきがそこかしこから漏れる。

 アメリカの壮大な陰謀に全員揃って絶句した所で、トーチが話を再開する。

 

「アメリカ曰く、機が熟したと言う事だ。日本・韓国・フランスと揃って空母と艦載機の扱いに慣れて来たし、オーストラリアもF-14を導入してから実戦・演習共に経験を積んでいる。練度はかなり上がっているだろう」

 

「パーティのレベルが十分に上がりました、なのでそろそろラスボスに挑みましょうと....それこそゲーム感覚だな....」

 

「フィリピンに着き次第、各国の幹部が合同ブリーフィングを行う。それまで、我々にできる事は....」

 

「訓練あるのみって事ですかね」

 

「....ま、そういう事だ」

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