超音速   作:ネコガメ

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第11話

 スービックへ回航せよとの命を受けた『かさぎ』は、一路フィリピン海を南下、目下北マリアナ諸島の北東を航行中であった。

 第101航空隊はこれを支援する為戦闘空中哨戒任務に就き、深海棲艦並びに中国軍機の警戒に、現在は関西弁話者のローリーと、安田洋行”Jones”組のコンビが当たっていた。

 

「おい、おい!見えたぞ!」

 

『見えたって、何がや』

 

「レーガンだよ、間違いないぜ、ありゃ原子力空母だ!ロナルド・レーガン!4時の方向!」

 

『....なんぼ何でも早ないか?まだフィリピンまで1900マイル近うあんねんで』

 

「だってお前、ありゃ確かにスーパー・キャリアの艦影だろうが。見ろよ、これ見よがしに艦娘展開しちゃってよ....」

 

「.....んん....?」

 

 ここで、ジョーンズの後席で件の艦影を観察していた彼のRIO、佐野健吾"Bailey"、違和感を覚えた。

 

「....なあ、レーガンにホーンないよな?」

 

「なに....あ本当だ、ホーンがある」

 

 ホーンとは正式名称を「ブライドル・レトリーバー」といい、ワイヤーで機体とカタパルト・シャトルを繋いで射出する方法を用いていた旧式の艦載機を搭載する空母において、このワイヤーが射出後に海へ落ちないよう設けられていた。

 しかし、ロナルド・レーガンはニミッツ級の中でも最後から2番目という新しい艦であり、竣工時から付いていない筈で、かといってF-14はじめローンチバー式の艦載機が主流である中、新たに増設するとも考えにくい。

 

『待ちや、今確認する....Cougar9, Lesser1, Bullseye162/50 で艦娘を随伴させた不明の艦艇を確認、こちらは当該海域において艦艇通行の報告を受けていない....』

 

『Lesser1, Cougar9, 当該海域においてどの国からも艦艇または艦娘が行動中という報告は受けていない。かさぎの見間違いではないのか?』

 

『何やて....?Lesser1、かさぎは海上歩兵小隊を展開しているか」

 

「Negative, 現在かさぎの海上歩兵隊は展開していない」

 

『.....Lesser1, TARPS機による援護を要請する』

 

『Lesser1, 了解....』

 

 しばしのホワイトノイズ。艦長に具申しているのだろう。

 

『Lesser1, Cougar9, ゴスホーク隊を援護に回す。到着まで対象の監視を続行しろ』

 

「Cougar9、了解」

 

 通信を切り、ローリーが再び眼下の艦影に視線を落とす。

 この場にいる四人の脳内に、全く同じ仮説が浮かび上がる

 

『まさか、中国とちゃうやろな』

 

「CATOBAR式の『福建』はまだ竣工してない筈だ。第一、中国に艦娘はいないだろ」

 

『....せやけど、この海域にいる理由言うたら海路の輸送ぐらいで、やとしたら軍艦が無許可でぬすっとみたいにこそこそ動く必要もあれへん。それでないとしたら....『かさぎ』を偵察に来とったか』

 

「じゃ何であんな威圧みてーに艦娘出してんだよ、隠密行動ならそれこそ悪手だろ」

 

『....そればっかりはわからん。ともかくTARPSが着くの待つしかあれへんな』

 

「ピーピング・トムの面目躍如ってところかな」

 

 ジョーンズはつとめて陽気に振る舞うが、その実全員の顔に脂汗が浮き出ている。

 


 

『Cougar7, 発艦許可』

 

「了解!」

 

 一方ホーク、援護機任務での甲板待機はは基本待ちぼうけで警戒解除になる事が多く、珍しく出番が来たことにより俄然興奮状態、臨戦態勢であった。

 

「プレイヤー、動翼」

 

「ン....異常なし」

 

 最終チェックを終え、キャノピーの外、甲板上のシューター(カタパルト・オフィサー)に向かって親指を立て、「準備よし」のサインを送る。

 それを確認したシューターが大きく腕を振り、さらにそれを確認したバブル(射出ステーション)担当士官がカタパルトの操作スイッチを入れ、26トンにもなる艦載機としては重量級の機体が、轟音を伴って瞬時に時速250kmまで加速、『かさぎ』の艦首から射出。

 その衝撃から一拍置いてホークがスロットルを操作、F-14のアフターバーナーが点火され、合計30トンを誇る双発エンジンの大出力が機体を押し上げる。

 F110搭載型のF-14は、エンジン出力が高すぎる為、発艦時のアフターバーナーの使用が禁止されているのである。

 

「ギアアップ、フラップアップ.....Cougar7, Airborn」

 

 ギアを格納する106号機の後方で107号機が発艦、『かさぎ』の甲板にカタパルトからの蒸気が流れる。

 

「レイマン、右エシュロンにつけ」

 

「了解」

 

 全員が緊張の糸の上にいる状態である。

 何せ相手が中国軍であった場合、F-14による偵察を挑発行動と取られ、直接戦闘が勃発する危険すらある。

 

────────────────────────────────────────────

 

「Telescoop1, This is Cougar7, Checking in, two ship of F-14, Request alpha check Bullseye」

 

『Cougar7, Telescoop1, alpha check Bullseye 260/24』

 

「Telescoop1, Cougar7, Good alpha check」

 

 当該空域に到着して直ぐに、すでに展開していたE-2C「ホークアイ」空中管制機の指揮下へ入る。

 元々日本に導入される際の使用目的から、敵航空機を遠距離から探知する早期警戒機のイメージが強いホークアイであるが、米海軍や現在の海上自衛隊では、空中管制機として戦闘をサポートする用途にも使われていた。

 これは、F-14が元々E-2との連携を前提に設計されていた事にも起因する。

 

「Cougar7, Cougar9, 当該艦艇の位置は」

 

『Cougar9, 不明艦艇の位置はBullseye 120/31、艦娘を展開中』

 

「了解」

 

『....しかし、なんで『かさぎ』の水上レーダーに引っかからなかったんだ?』

 

 レイマンがごく根本的な疑問を呈する。

 通常、艦載機に視認される様な距離にいる、特に空母の様な大型の艦艇は、『かさぎ』備え付けのOPS-28D対水上捜索レーダーで探知される筈だが、件の空母は一瞬たりとも『かさぎ』CDCのレーダー・スコープに映りはしなかった。

 これが意味する事は即ち....

 

「奴さんもやましい事があるんだろうよ」

 

 人為的な、電子妨害である。

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