超音速   作:ネコガメ

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第12話

「Cougar8は上空で待機、情報収集を続けろ」

 

『何....どうするつもりだ』

 

「低空進入、接近して確認する」

 

「おい待て、ちょっと待て、接近って何するつもりだ」

 

 後席のプレイヤーからの焦燥の混じった質問に答える事無く、スロットルを絞って速度超過を予防し、緩やかに降下をかけ始める。

 

「待て....待て....仮に、いやそうでなくても外交問題になるかもしれないんだぞ!?」

 

「日本のEEZを断りもなしに通ってる方が悪いだろ」

 

「そうだが....せめて正規の手続きを」

 

「いや....問題ない」

 

「何?」

 

「いいか、行くぞ....」

 

 そう言うなりホーク、機体をある方向に向ける。

 すると、コクピット内に余りにも聞き覚えのある、それでいて何度聞いても慣れる事のないけたたましい電子音が響く。

 

「っ!?電子妨害....!」

 

「そう、奴は明確にECMを使ってる....あんまり弱いんで、機尾のアンテナ使わねぇと受信しないんだけどな。攻撃はできないにせよ....Show of forceぐらいされても文句は言えない所業だ」

 

「....どうなっても知らねぇぞ」

 

「上等!」

 

 プレイヤー、あまりの理論を耳にして遂に音を上げ、106号機は完全にホークの制御下となる。

 可変翼を後退させて高速飛行形態をとり、被弾面積を減らすと共に、対空兵装対策としてこちらもECMを起動する。

 

「さーて....鬼が出るか蛇が出るか」

 

 エンジン出力を絞ったとはいえ、その位置エネルギーは緩降下によって運動エネルギーに変換され、対気速度計の針はおよそ430kt(ノット)まで跳ね上がる。

 そして海面数十mまで降下し、低空の空気抵抗によって、すれ違い様に目視で確認するに十分な速度まで減速、当該空母と正対する位置へと機体を動かす。

 

「撃ってくると思うか」

 

「来ないと願いたいね」

 

 気休めの無駄口を叩きながら機体を半回転させて、コクピットを偵察対象へ向け、急角度での直進....所謂"ナイフエッジ"状態で飛行を続け、空母へ接近する。

 

「プレイヤー、艦娘が見えるか」

 

「バッチリ、もうちょっと近づいたら手が届くぜ」

 

「このまま進入する、瞬きすんなよ!」

 

 そのまま106号機は件の空母の飛行甲板直上を高速でフライ・パス、随伴の艦娘たちが驚愕の表情で空を見上げるのも、ホーク達にははっきりと視認できる。

 そして艦の上空を飛び抜け、再びアフター・バーナーを点火して急上昇する。

 

「プレイヤー、識別できたか!?」

 

「ありゃあ....アメリカのフレッチャー・タイプじゃないか!?重巡洋艦くさいのもいた、前にRIMPACで見た記憶がある」

 

「....やっぱりか」

 

「何、お前何か見たのか」

 

「形からそうじゃねぇかとは思ってたが....艦橋の側面に、"65"と書いてあった」

 

「待て、おい待て、ちょっと待て....」

 

 プレイヤーが余りの情報量に混乱し、ぶつぶつと意味のない言葉を呟きながら眉間を押さえ、キャノピーの天蓋を仰いで困惑する。

 

「Cougar7よりLesser1、当該艦艇はアメリカ海軍所属、攻撃空母CVN-65と判明、繰り返す....」

 

「なんで()()()()()()()()がこんな所にいるんだよ!?」

 


 

「ホーク、貴様やってくれたな」

 

 二時間ほど後、ホークとプレイヤーの二人は艦長室で上島に詰められていた。

 

「しかし相手は明らかにECMを使用しており、また付近に艦娘を展開して警戒に当たらせていた事から不審だと判断し....」

 

「わかってるんだよ、そんな事は....問題はそこじゃない。相手の問題だよ」

 

「相手....艦長、質問よろしいでしょうか」

 

「なんだ」

 

 プレイヤーが、先ごろよりずっと浮かべていた疑問を口にする

 

「結局のところ、エンタープライズは何故あのような場所に居たのでしょうか?」

 

「それを今から話すんだよ....」

 

 そう言うと上島、ため息一つに続いて制帽を取り、椅子に倒れ込む様にして座る。

 

「どうも、予定では極秘裏にベーリング海を大回りして小笠原付近経由でフィリピンに入る予定だったらしいがな、途中で奇襲による損傷で艦隊から落伍、中国軍や自衛隊の勢力下にあり比較的深海の脅威が少ないあの海域に停泊、応急修理中だったと言う訳だ....ECMも艦娘も無線封止も、深海、または東側対策で、こちらへの戦意はなかったものを、貴様が挑発してしまったと。今回は向こうが自分の落ち度もあるとしてアイコで終わったが、一歩間違えば国際問題だぞ」

 

「申し訳ありません!」

 

「まあいい、以後独断専行は避けるように....それと」

 

 一拍おき、眼光を一層鋭くして続ける。

 

「先の108号機による艦艇発見は誤報であり、貴様らが低空飛行で見たのは瓦礫の塊だった。そしてCVN-65エンタープライズ隷下の空母打撃群は現在フィリピン周辺海域で停泊している。いいな?」

 

「はい....?」

 

 今いち意図を理解しかねるプレイヤーに対し、ホークはその意図を察し、含み笑いを浮かべて明瞭な声で答える。

 

「は、狭山および三島両大尉、本日の飛行において瓦礫の塊より他には全く何も見ておりません!」

 

「うむ、よろしい!....以上だ、下がってよし」

 

「は、失礼します!」

 

「し、失礼します....」

 

 プレイヤー、終始狐につままれた様な表情であった。

 一方ホーク、退出する時に背後から「ああ言うところは物分かりいいんだがなぁ....」と聞こえた気がしたが、()()()()と同様、聞かなかった事にした。

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