店の外では、大歓声に通行人が足を止めて驚く。
「よーし、今日は俺の奢りだ!お前ら好きなもん頼め!」
TAM、そう言うなり興奮し切った隊員達を御する為に席を立つ。
酔ってはいても、やはり"責任者"である。
と、呆然としているホークを見かねたか、隊員の一人が声をかける。
「注ぎましょうか....失礼、僕"Mudslide"と言います。"マッド"でいいですよ」
「ああ、よろしく....凄い勢いだな、そっちの隊長はいつもあんなもんなのか」
「ええ、母艦が隠密行動だったんで、出撃すらできなかったんですよ....それだけに、あなたの飛行がだいぶ刺激になったみたいで」
「そこまでか」
続いて、次々と隊員たちが寄って来る。
「実際見事なもんだったぜあんたの腕は。1ミリたりとも機体を上下もさせずにナイフエッジ、そこから滑らかにロールして上昇、ちょっとした航空ショーだ....ああ、俺はSam Hancock”Streak”、よろしく」
「よろしく....お褒めに預かり恐悦至極」
「謙遜するこたない、
「....何?」
ホーク、最後の一言に違和感を覚えた。
あの空域には「かさぎ」艦載機隊以外の航空機がいなかったのは、当時自身の搭乗機のレーダーが証明している。
「....どっから見てたんだ?」
「艦娘さ。空母の奴ら、F6F-5Pって偵察機型のヘルキャットを使えるらしい。俺達は後で映像で見ただけだが....」
「へぇ....進んでるんだな」
「艦娘の兵装だの運用ノウハウだのは
「僕もそう聞いています。最近では、艦娘は無眼に湧くから人手不足解消に繋げられるんじゃないかって、他兵科へ”人材”として教育・投入しているとか。あれ、本当なんです?」
「待て、俺は、というか海上自衛隊の中じゃそんな話聞いた事ないぞ、都市伝説か何かじゃないのか?」
マッドとストリークが顔を見合わせ、続いてマッドが体を捻って顔を向け、TAMに呼びかける。
「大佐....大佐!あの話の出処どこでしたっけ!?」
「どの話だ?」
「ホラ、日本が艦娘を通常兵科に転属させようとしてるって」
それを聞いた瞬間、TAMの表情が険しいものに変わる。
「....お前ら、話したのか」
「え?あれ?ダメでした?」
「ちょっと....」
TAM、二人を押し除けてホークの隣に座ると、声量を絞って話し始める。
「これな、
そう言うと一旦話を切り、周りを見渡してから改めて、更に顔を近づけて、一段と声を低くして言葉を続ける。
「CIAあたりが、ぶっこ抜いた機密情報を意図的に流したんじゃないかと思ってる」
ホーク、爆笑。
「ワハハハハハハハハ....いや失礼、すまんがそれはないな。
「しかしおかしいと思わないか、ネットも紙でも、いくら漁ってもこの噂を取り扱ったのが出てこないんだ。紙はともかく、ネットなら個人ブログやSNSで取り上げられていてもいい筈だ」
「局所的なヤツなんだろう....まあ、こちらでも気にかけてみるよ」
「助かる」
その後はしばらくどうでもいい話題(航空機の事や、お互いの艦上での生活)で彼らと談笑し、21時になるかならないかという頃にお開きとなった。
VF-84の面々と別れ、店を出て少し歩くと、聞き慣れた声に呼び止められ、少しのタイムラグと共に肩に手を回される。
「なんだ、お前外出てたのか?」
「プレイヤーか」
待っていたか偶然か、呼び止める側と呼び止められる側、艦内と艦外....先日とは全てが対照的な構図である。
「どこ行ってたんだ」
「....久々に、飲みに行ってた」
「珍しいな、またあのクソ甘いやつか」
「甘党なんだ」
「コーヒーはブラックで飲むのに?」
「うるせぇ....お前はどこ行ってたんだ」
「俺か、俺はな....」