2016年5月24日、23時0分。
フィリピンから出港した原子力護衛空母『かさぎ』は、随伴の護衛駆逐艦及びミサイル巡洋艦と共に北太平洋マーシャル諸島沖合を航行していた。
「これより、作戦内容を説明する」
作戦開始より二時間前、各国軍が本格的に作戦へ向けて最終段階へ入り、それは『かさぎ』並びに同艦麾下の海上自衛隊第一護衛隊も例外ではなかった。
101空のレディ・ルームでは、各隊員がフライトギアの装備を完了、ニーボード用のものとブリーフィング用の資料が配られ、今まさに彼らの任務が飛行隊長・トーチより説明される所であった。
「現在ハワイ諸島は資料にある通り、深海棲艦によって完全に包囲され、島内にはレーダーサイトや防空陣地が多数設置されている。我々空母艦載機隊の第一任務は、これら敵警戒網を完全に破壊する事、我々海上自衛隊第101航空隊の担当地区は、オアフ島だ」
「いきなりSEADか....こりゃHARDだな」
「HARMが使えりゃNormalぐらいにゃなるんじゃねえの」
トーチ、親父ギャグの応酬を務めて無視し、説明を続ける。
「まず日・米・英の水上艦艇から、巡航ミサイル”トマホーク”による攻撃を行い、それと同時に本艦『かさぎ』搭載の艦娘が、護衛艦隊の援護下でオアフ島を奇襲、空と海からの両面攻撃によって敵の防衛網に穴をあける。この穴がウェイポイント2。当然この穴を維持できる時間はそう長くないと考えられる。よって我々は敵レーダー探知距離外の空域....ウェイポイント1で事前に空中待機、艦娘の攻撃開始とほぼ同時に低空で高速進入し、同行するハンマー・ダガー両
「隊の編成は?」
「もう決めてある....まずSEAD部隊だが、セクション1つまり私とヒーター組、それにセクション5の4機小隊で当たる」
名前を呼ばれなかったホークとレイマン、顔を見合わせる。
援護機に回され甲板待機ではたまった物ではない。
「隊長、俺らは....」
「慌てるな。お前ら2機は哨戒部隊に回す、上がってくる要撃機を我々に近づけるな。米海軍も援護機を上げるから、うまく連携しろ。それと、攻撃隊本隊と飛行ルートが全く異なっているから、資料を良く読み込んでおけ」
「「了解!」」
出撃できると分かり、打って変わって気合の入った返事が上がる。
「援護機はセクション3、それ以外の者は待機だ。以上、質問は?」
全員が、沈黙を以て否定する。
「よし....この作戦はパール・ハーバーとそれに付随する軍施設を奪還し、ハワイ攻略の基盤を固めるための重要な作戦だ、各員気を抜くな。実働部隊の発艦開始は1時間後、作戦行動開始は2時間30分後だ。以上、解散!」
各自が席を立ち、作戦参加者は格納甲板へ向かう。
と、ホークとレイマンの二人が呼び止められ、揃って振り返る。
「おい、お前ら」
「はい?」
「全員生きて返す必要がある、お前達の腕を見込んでのこの配置だ。存分に暴れてこい!」
「....了解!」
「了解!」
攻撃隊から数十分遅れて、TARCAP隊の発艦許可が降りた。
現在時刻は既に午前0時30分を回っており、先んじて発艦した海上歩兵隊....艦娘部隊は、既に交戦を開始している頃だろう。
「コントロール、Cougar7スタンバイ。総重量3万2千kg、パイロットはゴスホーク」
RIOのプレイヤーがバブル担当士官に、発艦準備完了を伝える。
総重量を伝えるのは、カタパルトの出力をそれに合わせて調整する必要がある為である。
続いて、プレイヤーからホークへの質問形式のプレフライト・チェックが始まる。
「ブレーキ」
「ブレーキ、圧力よし、スポイラーブレーキ解除....燃料は?」
「こちら16-0」
「よし....供給ノーマル、燃料移送システム自動、燃料投棄オフ、移送チェック....総燃料16-2、翼内二千と二千、テープ両方とも六千。供給タンクフル、ビンゴ4コンマ5」
続いてレインボー・ギャングが106号機に走り寄り、ハンドサインでカタパルトへ向けて誘導を開始する。
「主翼展開オート、後退角20度」
ホークがスロットル右横のハンドルを一番前まで押し込み、マスターリセット・スイッチを押すと、主翼がコンピュータによる自動制御に移行。
それに一拍遅れて主翼基部に据え付けられた油圧アクチュエータが追従、可変後退翼が最大まで展開される。
「フラップ・スラットダウン....」
コクピット右コンソールのレバーが手前に引かれ、主翼後縁フラップ・前縁スラットが全開となる。
操作中にも同時進行でタキシングは進み、遂に蒸気カタパルトに正対する形で機体が静止。
甲板要員のハンドサインに合わせて機体の位置を微調整すると、ゴツン、という"テイキング・テンション"の音が聞こえ、搭乗員二人は機体がカタパルト・シャトルへ接続された事を確認する。
甲板士官側でもそれを確認、前脚後部にホールドバック・バーを接続してから、操縦席へ「出力上げろ」のハンドサインを送り、さらにそれを確認したホークが、スロットルを"ミルパワー"表示の位置まで押し込む。
元より騒々しい甲板上に、異質でありながら力強い、甲高い音が響き渡る。
「動翼チェック」
「ン、動翼....問題なし」
最終確認を終えると、ホークのサムズアップを確認したシューターが腕を振って甲板に手をつけ、少しのタイムラグをおいて、バブルからの操作を受けたカタパルトが起動。
機体に一気に加速がかかり、コクピットからは、飛行甲板が後方に飛び退っていく様に見える。
「Cougar7, Airborn.....ギアアップ、フラップアップ」
遅れて射出された107号機が合流、2機でエシュロン陣形を組んでアフターバーナーを点火、轟音と共に急速上昇が始まる。