超音速   作:ネコガメ

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第2話

『Cougar106, Telescope1, you are cleared to Engage(交戦許可). Say again, you are cleared to engage....』

 

「Solid copy, Cougar106 Engage」

 

『Cougar107 Engage』

 

 明暗2種類の青で塗装された2つの鋭い三角形が並んで飛びぬけ、旋回に伴って鈍い駆動音と共にきつい後退角の付いていた主翼が外側へ開き、直線翼に近いシルエットへと変化していく。

 ────可変後退翼である。

 

「Cougar7, Radar contact, 2 O'clock」

 

『Cougar8, Radar contact, same target』

 

 両機のRIO(レーダー管制士官)席に設置された大型の戦術情報ディスプレイに光点が映る。

 F-14の搭載するAPG-71デジタルレーダーが敵機を捕捉、RIOがその旨をコールする。

 しかし同時に前席、コクピットで警報音が鳴り始め、前面コンソールのMFDに表示されていた円形のスコープ....RWRに、「S」のアルファベットが2つ現れる。

 

「Radar spike 12 O'clock Daemon-ear....POS-RUKモード起動....Cougar7, Magnum!」

 

 独特の発射コールと共に操縦桿のトリガーが引かれ、事前の設定通り少しのタイムラグをおいて、胴体両サイドのパイロンからAGM-88E HARMが射出される。

 

『Cougar8, Magnum!』

 

 続いて2番機もHARMを撃ち出し、2機揃って旋回、回避行動に移る。

 HARMから尾を曳くロケットモーターの白煙に気づいた深海棲艦がこちらも回避運動をとり、盛んに対空砲火を上げ始めるが、終端速度マッハ2を誇る高速空対地ミサイルに当たる物ではない。

 その間にも、コクピットのMFDに表示されたTOT(着弾予想時間)が刻々と減少していく。

 しかし、それを気に留める暇はない。

 彼らの主目標、艦娘達を襲ったジェット戦闘機を仕留めなければならない。

 

「AGM-88 Winchester....プレイヤー、敵機捕捉できるか」

 

一番機パイロット”Goshawk”がRIOに索敵指示を飛ばす。

 

「Radar Contact 11 O'clock 21mile, LOCKED(捕捉済み)

 

「OK, FOX-3!」

 

 操縦桿上部に搭載されたキャッスル・スイッチを操作して兵装を切り替える。

 すると今度は胴体下部から寸胴のミサイル、AIM-54フェニックス2発が切り離され、一瞬の自由落下の後ロケットモーターに点火、敵機へ向けて飛翔を始める。

 続いて2番機も2発を発射、都合4発のフェニックスが敵編隊に向けて突進する。

 

 一方、遥か遠方の海上で4度の爆発。

 HARMの着弾である。

 同時にRWRが鳴り止み、スコープに映っていた「S」のコンテナが消失する。

 敵艦の対空レーダーは破壊された。

 

「Cougar106, Rounds on target. Kill Daemon-ear」

 

『Cougar107, Rounds on target』

 

 遅れて別方向の空で、巨大な火球が発生する。

 これは、AIM-54の炸裂。

 これらは元々通常の爆風破片弾頭を搭載していたが、深海棲艦の小さく数の多い艦載機に対応する為、一撃で多数を葬り去る範囲制圧を目的として、この様な巨大な爆発を発する燃料気化弾頭を搭載されたのである。

 

「Splash 3....制空権を確保、AIM-54 Winchester. Flight, RTB」

 

『Cougar7, Roger. RTB.』

 

 F-14二機は仕事を終え、離脱していく。

 HARMの標的とならなかった敵が数隻水上に残っているが、止めは彼らF-14隊の仕事ではない。

 F-14導入以後、海上自衛隊は「第一波として戦闘機が対空火器制圧・制空権確保、第二陣攻撃機部隊が対地・対艦攻撃をかける」という波状攻撃スタイルを基本戦術としていた。

 

『Hammer1, Tally to 12 O'clock』

 

 目標視認のコールと共に亜音速で戦闘空域に接近してくるのは、緩めの後退角がついた主翼の下にMk82通常爆弾三十二発を鈴生りにした、特異なシルエットを持つ機体群。

 F-14の打撃力不足を補う為導入されたベトナム戦争時代からの老兵、A-7EコルセアⅡ艦上攻撃機の4機編隊である。

 対空火器の直撃を避けるため申し訳程度に緩く旋回しながら、風防内部に取り付けられたHUDで目標を捉える。

 

 そして、HUDに表示された照準線が投下指示ラインに重なる。

 

『Bombs AWAY!』

 

 1番機のコールを皮切りに雨の如く次々と自由落下爆弾が投下され、遠心力に従って緩やかに旋回円の外に向かって横滑りで落ちていく。

 中々に奇妙な爆撃方法であるが、これは従来の直線機動で進入する方法では対空火器に落とされる可能性が上がる為に取られている方法で、デジタル式FCSと高性能のHUDの成せる業である。

 旧来のアナログ式弾道計算機ではこうもいかないであろう。

 

 そして、着弾。

 爆炎と水柱が地獄の如き様相を呈し、第2波、第3波と親の仇の如く爆発が続いていく。

 もはや、水上と水面下の見分けすらつかない。

 

 一通り爆発し終わり、黒い体液と肉片に金属片が辺り一面に浮かび上がる。

 

『Hammer1, BDA: 2 heavy cruiser, 1 light cruiser and 2 destroyer destroyed, BDA over. Flight RTB』

 

 こちらも全ての爆弾を投下して身軽となり、帰投していく。

 呆気に取られる艦娘達を残して。

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