超音速   作:ネコガメ

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第21話

「FOX-3!」

 

 ホークの威勢のいいコールに続いて、106号機の主翼下部パイロンからAIM-54”フェニックス”が飛び出す。

 後方を飛ぶ107号機からも同様に、白煙が伸びていく。

 もう、彼ら....人間の仕事は終わった様なものである。

 

 あとはF-14に搭載されたAN/AYK-14ミッションコンピュータが自動で”フェニックス”を誘導、ピットブル(自己誘導)距離に達し”フェニックス”の先端に搭載された誘導レーダーが起動すれば、彼らが敵機をレーダーレンジに捉えておく必要はない。

 

「Pitbullまで約60秒」

 

「OK、右クランク」

 

 ミサイルを追い越さぬよう、艦艇で言う之字運動の様な軌道を取って着弾迄の時間を稼ぐ。

 当然、レーダーの走査範囲を越さぬ程度の旋回....

 

 の、筈だった。

 

「なん....だ....?」

 

 プレイヤーの眼前で、敵機を表すコンテナがTID(戦術情報ディスプレイ)から掻き消える。

 

「Bandit Lost!....消えちまった!」

 

「こっちでも見えてる....レイマン、敵機を捕捉できてるか?」

 

『駄目だ!失探した!....そっちもか!?』

 

 ホーク、その質問には答えず、あくまでも冷静に、直ちにAWACS(空中管制機)へ敵機の位置確認を取る。

 

「Telescope1, Cougar7, Request BOGEY DOPE」

 

『Cougar7, Telescope1, BRA 160/27 1000 HOT, HOSTILE, Tipe Unknown』

 

「フレクス、プレイヤー、落ち着いて捜索し直せ。フェニックスは再誘導が効く」

 

「OK....」

 

『Wilco!』

 

 プレイヤーがレーダーモードを切り替えると、F-14の機首に収められたAPG-71の大径AESAアンテナが、モーター機構によりそのサイズに似つかわしくない機敏さで駆動を始め、機首前方の空間を舐め回す様に電波を飛ばす。

 

 補助の為ホークが機首を空中管制機から伝えられた方向に向けると、間を置かず電子音と共にTIDに再度コンテナが現れる。

 

「Radar Contact 11 O'clock!」

 

「フェニックスはどうだ」

 

「再誘導してる、Pitbullまで20秒」

 

「チッ....回避の気配もなしか....」

 

 そして、フェニックスの飛翔は最終段階に入り....

 

 炸裂。

 

 前方で閃光が花開き、遅れてAWACSから撃墜確認がなされる。

 

『Cougar7, Telescope1, Lead group Vanished....いや待て』

 

 が、今日は様子が少し異なっていた。

 

『Recommend commit threat BRA 168/25 3280, Type Unknown』

 

 管制官が言い終わると同時に、F-14両機後席のTIDに三度(みたび)コンテナが出現する。

 

『新手か!?』

 

「違う、さっきのと同じ奴だ!」

 

『何ィ!?』

 

「"モグラ叩き"だ、俺がアラスカで使った手だ!BVRは不利だ、フェニックス投棄!」

 

 前席左コンソールのスイッチが押され、残った1発のフェニックスが投棄、遅れて機密保持のための自爆装置が作動し、空中で瓦礫となって海に落下していく。

 

 ”モグラ叩き”とは、ホークが独自に開発した戦術....というより、苦し紛れに考え出されたヤケクソに近い機動であった。

 超低空飛行(ツリートップレベル)でマルチパスエコーや地形の影などに紛れる事で、相手の探知を逃れつつ不規則に軌道をとり、時折急上昇してミサイルを撃たせ、発射を確認したところでチャフを散布して再び降下、敵機に消耗戦を強いながら接近するという、アメリカ空軍防空網制圧部隊"ワイルド・ウィーゼル"の技術と、F/A-18が爆撃に使用する飛行軌道である”ホーネット・ハイ・ポップ”を組み合わせ、空中戦闘に転用した戦闘機動である。

 

 ホークはかつて、アメリカで開催された"レッドフラッグ・アラスカ"演習においてF-22ラプターの相手をさせられた際、当時の演習内容がBVR重視に移りつつあった事を逆利用し、”史上最強の戦闘機”に一度だけこの戦術で勝利した経験があった。

 ただし、最終的に(地形追従飛行システムがあったとはいえ)最低高度を割った危険飛行をした為失格とされている。

 

『開発者様なら当然対処法もあるんだろうな!?』

 

「無いこたないが、難しい」

 

『どういうこったい』

 

「俺らが死なん様にするなら全力で上昇すりゃいい、あれはエネルギー頼みの戦法だからな。だがそれをやったらFORCAPの意味がない」

 

『つまり?』

 

「奴らを撃墜したいなら、何をどうするにしたってまず目視で見つけるしかない」

 

『NAV-FLIRは?』

 

「この昼日中に役に立つと思うか?」

 

『クソッ....』

 

 早急に見つけなければ、造成中の基地施設に被害が及ぶ恐れがある。

 が、彼らは現在高度7000mを飛行しており、ただでさえサイズの小さい深海機の目視発見などは絶望的な難易度である。

 

「....13000フィートまで降下するぞ」

 

『大丈夫なのか』

 

「今までのハインケル・タイプやメッサーシュミット・タイプなら、ハイレート・クライムで登れるのは10000ftまでだ、後ろにさえ気を付ければいい。行くぞ!」

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