超音速   作:ネコガメ

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第25話

 艦長室を後にしたレイマン、フレクスと別れ、その足で医務室へ向かった。

 ホークの様子を見てやろうと思ったのである。

 メンタルをやられていた場合上手く慰められる自信はないが、とにかく一度話した方がいいだろうという気がしていた。

 そして医務室の前で、意外な人物と鉢合わせた。

 

「....瑞鶴ちゃん?」

 

「ぅえ!?レ、レイマン大尉....」

 

 艦娘・瑞鶴であった。

 

「君もホークを冷やかしに?」

 

「あー....皆がこれ持ってけって」

 

 そう言って瑞鶴、袋に煩雑に突っ込まれた大量の見舞いの品を指し示す。

 

「成程な....」

 

 気を取り直して扉をノックし、返答を待たずに開く。

 

「すみません、ホークを見に....」

 

「だから破片は抜いたんだろ!?」

 

「ええ、確かに抜きました」

 

「急所も逸れてたんだろ!?」

 

「奇跡的にね」

 

「なら飯食ったっていいだろう」

 

「あのですね、破片を抜いたところに穴が開いてるんですよ、そこから全部漏れますよ?」

 

「は....?塞いでないのか!?」

 

「塞ぎました、塞ぎましたよちゃんと手術までして。でもね、まだくっついてないんですよ断面が」

 

「なら大丈夫だよ、俺傷の治りは昔から早くてな」

 

「バカ言わんでくださいまだ二日経ってない、抜糸もしてないんですよ!?治ってる訳ないでしょ!?」

 

「なら試してみりゃいい、だからレーションでもいいからなんか持ってきてくれよ」

 

「それで悪化したら誰が治すと思ってるんですか!?ほかならぬこの僕なんですよ!?ホントにもう....」

 

「....元気そうね」

 

 瑞鶴が、顔を引きつらせながら呆れたように零す。

 

 蓋を開けてみれば、無二の相棒を失った戦友は、意気消沈どころか重傷かつ術後の身で、図々しくも軍医に飯を要求していた。

 

「瑞鶴....とレイマンか!勿論、この通りよ。クソみてえに体力使ったから腹減ってしょうがねえ」

 

「じゃあこれ....チョコレートとかだけど」

 

「没収です」

 

「うわーーーーーーーーッ」

 

 せっかく手に入れかけた食糧を目の前で簒奪され、大音量で悲痛な叫びが漏れる。

 

「レイマン大尉....あなたからもなんか言ってやって下さい。一事が万事この調子で」

 

「あー....森本先生、少し席外してくれるか」

 

「手早く済ませてくださいね」

 

「5分で終わるさ」

 

 軍医が隣室へ退出したのを見届け、そこらにあったパイプ椅子に腰かけて、本題に入る。

 

「....それでお前、()()()()()()()()()?」

 

「....ハァーーーッッ....」

 

 いきなり核心を突かれ、無言のまま額に手を当ててベッドに倒れ込む。

 

「大丈夫もクソも....そりゃ死体も残さず吹っ飛んじまったってのは堪えたが....俺が何言ったって死人が生き返る訳でもないんだから、受け入れるしかないだろう。ましてや実戦だからな....卑しくも『かさぎ』の戦闘能力の一旦を担ってる自信はある。不調ですなんて言ってられる様な状況じゃない....幸い、傷の治りは早いんで、すぐ復帰できそうだ」

 

 顔から手を離し、笑って再度起き上がる。

 

「お前、無理だけはするなよ。それでお前迄落ちたらシャレにならん」

 

こっち(艦尾側)でも皆心配してたからね?辛かったら誰でもいいから言ってね?」

 

「何度も言わんでも、分かってるよ....余り後ろ向いて歩くと()()()()()()()しな....」

 

「なんだって?」

 

「何も....」

 

「あ、そうだ、これ....」

 

 瑞鶴が、思い出したように包みを手渡す。

 

「緊急用のナイフ、失くしちゃったって聞いたから....これ、私から」

 

「ありがとう....」

 

 ホークが丁重に包みを解くと、黒い長刃の折り畳み式コンバットナイフが姿を現した。

 

「へえ....いいじゃないか、振り回し易くて。まあ、パラシュートのコードを切るにはオーバー・スペックかな」

 

「えっ、あっ、緊急用ってそういうやつだったの!?」

 

「逆に何だと思ってたんだ....?」

 

 レイマンが呆れながら聞き返す。

 

「いや、敵地で脱出した時とか用かなぁって....」

 

「それ想定するならグロックあたり持つだろ....百歩譲ってもそこは多用途ナイフじゃないか....?」

 

「ご、ごめんなさい....」

 

「いや、いい、いいよ。お守りだと思ってありがたく貰っとくよ。なんせ幸運艦がくれたもんだからな」

 

「あう....」

 

 結局、その後少し雑談をして、森本医師による強制打ち切りで解散になった。

 

 どうも当分の間は、ホークのメンタルについての心配はしないで良さそうだった。

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