艦長室を後にしたレイマン、フレクスと別れ、その足で医務室へ向かった。
ホークの様子を見てやろうと思ったのである。
メンタルをやられていた場合上手く慰められる自信はないが、とにかく一度話した方がいいだろうという気がしていた。
そして医務室の前で、意外な人物と鉢合わせた。
「....瑞鶴ちゃん?」
「ぅえ!?レ、レイマン大尉....」
艦娘・瑞鶴であった。
「君もホークを冷やかしに?」
「あー....皆がこれ持ってけって」
そう言って瑞鶴、袋に煩雑に突っ込まれた大量の見舞いの品を指し示す。
「成程な....」
気を取り直して扉をノックし、返答を待たずに開く。
「すみません、ホークを見に....」
「だから破片は抜いたんだろ!?」
「ええ、確かに抜きました」
「急所も逸れてたんだろ!?」
「奇跡的にね」
「なら飯食ったっていいだろう」
「あのですね、破片を抜いたところに穴が開いてるんですよ、そこから全部漏れますよ?」
「は....?塞いでないのか!?」
「塞ぎました、塞ぎましたよちゃんと手術までして。でもね、まだくっついてないんですよ断面が」
「なら大丈夫だよ、俺傷の治りは昔から早くてな」
「バカ言わんでくださいまだ二日経ってない、抜糸もしてないんですよ!?治ってる訳ないでしょ!?」
「なら試してみりゃいい、だからレーションでもいいからなんか持ってきてくれよ」
「それで悪化したら誰が治すと思ってるんですか!?ほかならぬこの僕なんですよ!?ホントにもう....」
「....元気そうね」
瑞鶴が、顔を引きつらせながら呆れたように零す。
蓋を開けてみれば、無二の相棒を失った戦友は、意気消沈どころか重傷かつ術後の身で、図々しくも軍医に飯を要求していた。
「瑞鶴....とレイマンか!勿論、この通りよ。クソみてえに体力使ったから腹減ってしょうがねえ」
「じゃあこれ....チョコレートとかだけど」
「没収です」
「うわーーーーーーーーッ」
せっかく手に入れかけた食糧を目の前で簒奪され、大音量で悲痛な叫びが漏れる。
「レイマン大尉....あなたからもなんか言ってやって下さい。一事が万事この調子で」
「あー....森本先生、少し席外してくれるか」
「手早く済ませてくださいね」
「5分で終わるさ」
軍医が隣室へ退出したのを見届け、そこらにあったパイプ椅子に腰かけて、本題に入る。
「....それでお前、
「....ハァーーーッッ....」
いきなり核心を突かれ、無言のまま額に手を当ててベッドに倒れ込む。
「大丈夫もクソも....そりゃ死体も残さず吹っ飛んじまったってのは堪えたが....俺が何言ったって死人が生き返る訳でもないんだから、受け入れるしかないだろう。ましてや実戦だからな....卑しくも『かさぎ』の戦闘能力の一旦を担ってる自信はある。不調ですなんて言ってられる様な状況じゃない....幸い、傷の治りは早いんで、すぐ復帰できそうだ」
顔から手を離し、笑って再度起き上がる。
「お前、無理だけはするなよ。それでお前迄落ちたらシャレにならん」
「
「何度も言わんでも、分かってるよ....余り後ろ向いて歩くと
「なんだって?」
「何も....」
「あ、そうだ、これ....」
瑞鶴が、思い出したように包みを手渡す。
「緊急用のナイフ、失くしちゃったって聞いたから....これ、私から」
「ありがとう....」
ホークが丁重に包みを解くと、黒い長刃の折り畳み式コンバットナイフが姿を現した。
「へえ....いいじゃないか、振り回し易くて。まあ、パラシュートのコードを切るにはオーバー・スペックかな」
「えっ、あっ、緊急用ってそういうやつだったの!?」
「逆に何だと思ってたんだ....?」
レイマンが呆れながら聞き返す。
「いや、敵地で脱出した時とか用かなぁって....」
「それ想定するならグロックあたり持つだろ....百歩譲ってもそこは多用途ナイフじゃないか....?」
「ご、ごめんなさい....」
「いや、いい、いいよ。お守りだと思ってありがたく貰っとくよ。なんせ幸運艦がくれたもんだからな」
「あう....」
結局、その後少し雑談をして、森本医師による強制打ち切りで解散になった。
どうも当分の間は、ホークのメンタルについての心配はしないで良さそうだった。