超音速   作:ネコガメ

29 / 29
第29話

 二時間後には、蒸気の流れる甲板から、轟音と共に次々と暗青色のF-14が発艦していた。

 『かさぎ』には、艦首に二つ左舷に一つ、計三つのスチーム・カタパルトが装備されている。

 そのうち、左舷の第1カタパルトは、アングルド・デッキの影響により前端が斜めになっている為、重量制限がされていて余り使われないのだが、今日に限っては2分間隔で艦載機を打ち出していた。

 文字通りの全力出撃である。

 

『4番機発艦....4番機発艦....』

 

 1機打ち出すごとに、後続機を受け入れるため起倒式のジェット・ブラスト・ディフレクターが格納される。

 

 ホークの106号機も動翼のチェックを済ませ、甲板員とパイロットでサムズアップと敬礼を交わし、時速265kmで射出されて行く。

 艦首前方に飛び出すと共に、高揚力装置とランディングギアを格納、アフターバーナーを全開として上昇を開始し、一瞬にして先に発艦していた他の戦隊機へと追いつく。

 遅れて、レイマンの107号機も106号機の横に滑り込む。

 107号機は前期型仕様である為、106号機より(相対的にではあるが)加速が劣るのである。

 

『第2小隊は高度33000ftまで上昇、セクション4は私に続け』

 

「Cougar7、了解」

 

 ホークの頭上では、第2小隊....セクション5と6のF-14J 4機が、数百m間隔の編隊を組んで急速上昇をかけており、眼下に目を向ければ、展開していく艦娘達が微かに見える。

 高速飛行中である上既にかなり上昇しており、普通なら個々の判別などできないのだが、ある一人だけは、ホークには容易に見分けられた。

 故に、それを思わず独り言として溢した。

 

「....あいつ、今回も出るのか....」

 

「あいつって?」

 

 ターボファン・エンジンの爆音に包まれながらも、時雨が耳聡くその独り言を捕らえる。

 爆音に曝される為耳が遠く、普段から声が大きい弊害であった。

 なお、時雨は艦娘である為、中耳・内耳を含め内臓が損傷しても高速修復材を被れば元通りである。

 

「瑞鶴だよ、あいつ最近哨戒任務が多くてな。でかい作戦は翔鶴に任せるかと思ったんだが....」

 

 ホークが、バックミラーに向けて、機の左後方を指し示す。

 確かに時雨の目にも、特徴的な盾状の装備....飛行甲板を持った緑髪の艦娘が見える。

 

「心配してるんだ?」

 

「当たり前だ、疲労抜きなしで出られてしくじりましたなんてやられてみろ、目も当てられん。きっちり戦えんなら文句はないがな」

 

「へえ....」

 

 時雨、誰へともなく含みのある笑い方をした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。