二時間後には、蒸気の流れる甲板から、轟音と共に次々と暗青色のF-14が発艦していた。
『かさぎ』には、艦首に二つ左舷に一つ、計三つのスチーム・カタパルトが装備されている。
そのうち、左舷の第1カタパルトは、アングルド・デッキの影響により前端が斜めになっている為、重量制限がされていて余り使われないのだが、今日に限っては2分間隔で艦載機を打ち出していた。
文字通りの全力出撃である。
『4番機発艦....4番機発艦....』
1機打ち出すごとに、後続機を受け入れるため起倒式のジェット・ブラスト・ディフレクターが格納される。
ホークの106号機も動翼のチェックを済ませ、甲板員とパイロットでサムズアップと敬礼を交わし、時速265kmで射出されて行く。
艦首前方に飛び出すと共に、高揚力装置とランディングギアを格納、アフターバーナーを全開として上昇を開始し、一瞬にして先に発艦していた他の戦隊機へと追いつく。
遅れて、レイマンの107号機も106号機の横に滑り込む。
107号機は前期型仕様である為、106号機より(相対的にではあるが)加速が劣るのである。
『第2小隊は高度33000ftまで上昇、セクション4は私に続け』
「Cougar7、了解」
ホークの頭上では、第2小隊....セクション5と6のF-14J 4機が、数百m間隔の編隊を組んで急速上昇をかけており、眼下に目を向ければ、展開していく艦娘達が微かに見える。
高速飛行中である上既にかなり上昇しており、普通なら個々の判別などできないのだが、ある一人だけは、ホークには容易に見分けられた。
故に、それを思わず独り言として溢した。
「....あいつ、今回も出るのか....」
「あいつって?」
ターボファン・エンジンの爆音に包まれながらも、時雨が耳聡くその独り言を捕らえる。
爆音に曝される為耳が遠く、普段から声が大きい弊害であった。
なお、時雨は艦娘である為、中耳・内耳を含め内臓が損傷しても高速修復材を被れば元通りである。
「瑞鶴だよ、あいつ最近哨戒任務が多くてな。でかい作戦は翔鶴に任せるかと思ったんだが....」
ホークが、バックミラーに向けて、機の左後方を指し示す。
確かに時雨の目にも、特徴的な盾状の装備....飛行甲板を持った緑髪の艦娘が見える。
「心配してるんだ?」
「当たり前だ、疲労抜きなしで出られてしくじりましたなんてやられてみろ、目も当てられん。きっちり戦えんなら文句はないがな」
「へえ....」
時雨、誰へともなく含みのある笑い方をした。