一方佐世保鎮守府の執務室の空気は、重苦しいものであった。
「...で、尻尾を巻いて帰ってきたと」
「しかし、当時の艦隊の損害状況を鑑みても継戦は不可能で....」
「誰が口を開いていいと言った。たかが哨戒部隊相手に轟沈を出した上、外部それも通常戦力に助けを求めたなど....それでこの佐世保鎮守府の艦娘か、情けない」
報告書にじっとりとした視線を落とすこの男こそ、佐世保鎮守府の”提督”である。
「たかが哨戒部隊というが、あれは明らかに本隊か別動隊クラスだった!事前の偵察も出さずに軽編成でいいと決めつけて」
「現場での判断は貴様の責任だろう、旗艦長門」
「しかし....」
「もういい....まあ、これで貴様らの顔を見るのも最後と思えばな」
「何?」
「あー....駆逐艦・秋月、至急執務室へ出頭のこと」
急に館内放送を始めた意図がいまいち理解できず、長門・初月両名、顔を見合わせる。
数分と経たず、秋月が入室する。
「失礼します!駆逐艦秋月、参りました」
「よろしい。貴様らに辞令が出ている」
「辞令....?」
初月の口から洩れた疑問符を無視し、提督が書面を読み上げる。
「戦艦長門、駆逐艦秋月、同・初月。以上三名、横須賀鎮守府への転属を命じる.....だそうだ。何故貴様らの様な無能を登用するのか、理解しかねるな」
この場にいる艦娘三名全員が「轟沈艦が出るのは貴様の采配ミスだろう」と思っている。
が、そんな事は露知らず、提督は辞令の書面を読み進めていく。
そして、あるところで視線の移動が止まり、僅かにその目が見開かれた。
「ふむ...貴様らの配属先は横須賀鎮守府の本隊ではないそうだ」
「では、どこに?」
「『横須賀鎮守府第1海上歩兵隊 第1分遣隊』とある」
「分遣隊?」
「知らないのか。貴様らは原子力空母『かさぎ』の配属になるんだ....めでたく前線送りという訳だ」
原子力空母『かさぎ』の名を知らぬ自衛隊関係者は存在しないだろう。
戦後日本初の正規空母にして、アジアでは初の核動力空母であり、同型2番艦『あそ』と共に数々の戦闘に参加して来た「動く最前線」である。
「まあ、せいぜい空母を守る肉壁にでもなれという事だろう....きっちり役目を果たせよ。以上、全員下がって良し」
「は、失礼します」
3人揃って一礼し、退出する。
しかし、その足取りは重い。
「....私達、これからどうなるんでしょうか....」
秋月が、代表する様に不安を口にする。
全員が全員、提督に言われた通りの理由で”左遷”されたのだと思っているのだ。
その誤解が解けるのは、もう少し先の事となる。
短くてすまんかった