『かさぎ』艦尾方向の岸壁上では、佐世保から来た三人の小規模な着任式が行われていた。
「副長の須田です。君たちの使う設備に関しては、こちらの....鳳翔が案内してくれます。では、後を」
「はい、航空母艦、鳳翔です。長門さん、秋月さん、初月さん....で間違いありませんね?」
「は、戦艦長門、駆逐艦秋月、同・初月、以上三名、横須賀鎮守府第一海上歩兵団第一分遣隊へ着任しました」
「確かに。では、艦内を案内いたします。こちらに」
「はい!」
鳳翔が先行し、3人が続いてギャングウェイに足を乗せる。
「ふふ、気張らなくても大丈夫ですよ、今日からあなた達の家ですから」
一方瑞鶴及びホークと物好きのデッキクルー数名、航空甲板艦尾に集結して一部始終を覗き見ていた。
「ホラ、あの鳳翔と艦長と一緒にいる三人....話にあった佐世保から転属して来た艦娘って、あいつらじゃないか?」
「俺に聞かれても分からねぇよ....瑞鶴、分かるか」
「あれ....秋月と初月!?」
「なんだ、知り合いか」
「いや、どっちかというと艦時代の....」
「よく分かるな、まるっきり見た目違うのに」
「えーっと....そうなんだけど、何というか....なんか分かるの。こう....雰囲気....じゃないな、よく分かんないけど、なんか分かったというか....」
「わーかった、分かったから無理に説明しようとしなくていい」
「んんーーーー....私、下りてくる!」
何やら呻いたと思うと、そう言うなり瑞鶴、艦橋に向かって駆け出す。
「下りるって....おい、どこ行くんだ!?」
「二人を迎えに行くー!」
「迎えに行くって....」
「知り合いなんだろ?」
「知らねーよ....」
残された男数名、呆気に取られていた。
「....艦娘の居住区角は、第四甲板の艦尾側にあります。艦そのもののクルーや飛行隊の方々の居住区は艦首側にありますから、基本顔を合わせる事はないでしょう。食堂とシャワー室も、艦娘専用のものが割り当てられています。ここが,,,,居住区画、寝台です。」
「結構....ぎゅうぎゅうなんですね」
かなりの密度で詰め込まれた大量の寝台を目にし、秋月が目を丸くする。
「ええ。それでも、艦首側の人間クルーの方々のものよりはかなりゆとりがあるんです。そうですね....艦首側は、ここの2倍ぐらいの密度はあるでしょうね」
「そんなに」
「この艦は本来空母ですから、そこまで大規模な艦娘運用設備はありません。現在この艦に乗っているのは、全部で12名....2小隊分だけです」
「では、我々を含めて15名?」
「いえ、先日三人転属して行きまして、あなた方が補充人員なんです。ああ、それで....戦艦・空母は右手、駆逐艦は左手になります。おそらくあなた方が使う場所に、既に名札が貼ってあると思います。私物はその直下の引き出しに収納してください」
「了解した。その後は....?」
「この後着艦訓練がありますので、私物を置いたらウェルドックに行きます。その後1800から、艦娘全員による歓迎会があります。訓練が終わったら、自分の寝台で待機しておいてください。シャワー室は、訓練終了後に案内します。何か、質問などは....」
ここで、秋月が遠慮がちに手を挙げる。
「あの、鳳翔さん以外の艦娘はどちらに....?」
「今日は半舷上陸なので、皆街へ出ています。あなた方は着艦訓練があるので、まだ艦外へ出る事はできませんが....」
「ありがとうございま───」
皆まで言う前に、秋月の感謝の言葉は遮られた。
「秋月っ!初月っ!?」
「なに....瑞鶴さん!?」
突如現れたかつての僚艦に、秋月姉妹二人揃って驚愕の表情を取る。
「あんたらこの艦に配属になったの!?」
「ああ、横須賀から転属してきたんだ、僕らは瑞鶴さんがこの艦にいるなんて全く....」
「そういえば、秋月と初月はレイテで第一機動部隊にいたんだったな....」
「そうよ、小沢艦隊よ!」
「じゃあ瑞鶴ちゃん、2人の着艦訓練、お願いしてもいいかしら?」
「ウェ!?藪蛇....大体私だってあんまり上手くないんですけど」
「んー?」
「はい喜んで」
鳳翔の迫力を前に瑞鶴、首を縦に振るより他に選択肢はなかった。
「最先任」は伊達ではないのである。