超音速   作:ネコガメ

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第7話

 第03甲板に繋がるギャングウェイを登り終わった男は、見知った顔に突き当たった。

 

「....何だ、お前また残ってたのか」

 

「バイク弄るだけ弄って早めに帰って来たんだ」

 

 寄港より3日目の夕刻、半舷上陸で横須賀の街に繰り出していたクルーも、娑婆を満喫して実家....「かさぎ」の居住区角に帰ってくる。

 101空メンバーのうち、いの一番に帰ってきた台場真樹....プレイヤーを出迎えるのは彼の相棒にして106号機前席担当、狭山敬一こと”Goshawk”である。

 

「どうだったよ、街は」

 

 相棒の荷物を持ってやりながら、都会の様子を尋ねる。

 が、興味というよりも、プレイヤー自身と話す事を楽しんでいるといった趣である。

 

「相変わらずのボケ具合、デモ隊なんつってたと思う?」

 

「何だったんだ」

 

「”深海棲艦は存在しない”だとヨ」

 

 ホーク、これを聞いて弾かれた様に笑い出した。

 

「傑作!写真あるか?」

 

「フレクスが撮ってた筈だぜ。あいつ方々に土産話バラ撒いてるからもうちょっとかかるんじゃねーかな」

 

「じゃ当分来ねーな....寝直すか」

 

「この時間に!?」

 

「いいだろ非番なんだから....張り切り過ぎて12キロ近くランニングしてたんだよだよ」

 

「お前バカだろ」

 

「何を今更」

 

 双方、爆笑。

 

「そっちはどうだったんだよ」

 

 そして今度は、プレイヤーが逆にホークの様子を聞き出す。

 

「変わんねーよ、バイクを確認がてら転がして、後は帰って来て寝てた。なんか瑞鶴の知り合いが来てたみたいだが」

 

「なんだそりゃ」

 

「横須賀から来たって艦娘3人、あのうち2人が艦時代の僚艦とかなんとか」

 

「へぇ....」

 

「それぐらいかね。大体変わりようがねーだろ、閉鎖空間だし」

 

「お前も街行けば良かったのによ」

 

「いや、俺どうも人混みは苦手なんだ」

 

 嘘である。

 行く宛がないのだ。

 この男、感覚が麻痺しているのか何か、酒や女等凡そ一般人が好むであろう事柄に全く惹かれない傾向にあった。

 

 プレイヤーもそれが分かっているから、冗談の範疇で言うだけで、しつこく誘ったりはしない。

 

「つくづく、変な奴だなお前....」

 

「俺も、そう思う」

 

 二人で笑い合う。

 


 

 同刻『かさぎ』の艦橋、艦長・上島治大佐は、打って変わって思索に耽る様な表情であった。

 見かねた副長・須田が、声をかけた。

 

「艦長、何か気掛かりが?」

 

「....いや、個人的な悩みだ」

 

 上島が首を振りながら答える。

 が、須田も上島とは長い付き合いである。

 彼が気にする事柄などは、おおよその見当はついた。

 

防衛省(お上)の動きですか」

 

「....もとより我々現場の人間が考える事じゃない。私如きが考えても何にもならんさ」

 

 ここ最近、外交ルートで米国防省が接触してきている事は、「かさぎ」クルーの間でもメジャーな噂であり、特に目ざとい者は「大規模な軍事作戦の前触れではないか」という推測をぶち上げ、これが諸クルーの主流な意見となっていた。

 が、上島が気になっているのは、それとはまた別視点での事であった。

 

「タイミング、ですか」

 

「相変わらずズバズバと当てて来るな」

 

 上島、余りの推測の精度に苦笑するより他ない。

 

「いえ....確かに直近であったのなんかウチのEEZ(排他的経済水域)内での小競り合いぐらいで、最近は共産圏も北朝鮮も特に動いちゃいないですからね。ま、そもそもリソースを殆ど深海共に持ってかれてて、派手な動きはできないんでしょうが」

 

「東側も大人しく、棲艦の動きが変わったという話も聞かん。一体何故今なのか....と思ってな。だが、止めだ。明日には出港だからな、余計な事を考える暇もなかろう」

 

「でしょうね」

 

 今度は須田が苦笑し、防弾ガラスの窓の外では、山の稜線へ陽が沈んでいく。

 そろそろ、士官食堂(ワードルーム)が開く時間である。

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