『Wadjet1よりDemon1, 敵艦隊進路120へ転進』
「Demon1了解。進路2-2-4....」
上空を飛ぶグラマンE-2C『ホークアイ』早期警戒管制機からの通信に従い、長門が敵艦へ進路を取る。
横須賀から出港した後、『かさぎ』はフィリピン海へ回航、新たに配属されたばかりで艦載部隊としての経験が浅い長門・秋月・初月の三名へ、連携訓練を行っていた。
これは、
深海棲艦は第二次大戦での古戦場海域付近に多く発生するという特性があり、日本近海にこれが集中しているという地理的理由から『かさぎ』等護衛艦が敵哨戒艦隊等に遭遇する事例は多い。
空母は通常、上空に
しかし、CAP機はあくまで哨戒任務機であり、TARPSを積んでいる関係からも対艦兵装を積む事ができない。
かといって哨戒部隊相手に新たに攻撃隊を発艦させるのはコストと手間的に好ましくない。
そこで、CAP機はこれら深海棲艦を感知した段階でE-2経由、もしくは直接母艦へ通報、これを受け取った母艦が、整備も維持も航空機より遥かに低コストであり、発艦作業も簡便な艦娘による小隊を発艦させ、これの迎撃に向かわせる。
その間、CAP機は敵艦隊を見失わぬ様上空で監視しつつ位置情報をE-2や母艦
超拡張・近代化した弾着観測射撃という訳である。
「砲雷撃戦用意....測距ニ・マル・マル、一斉打方!」
長門の艤装にアームを介して装着された、41cm連装砲───と言っても、艦娘サイズに縮小された、外見が似ているだけの別物───が旋回し、砲身が仰角を取る。
ここからは、艦娘個々人の腕の見せ所である。
戦艦に限らず、砲腔兵器を扱う艦娘の艤装には機械式の弾道計算機が搭載されており、大まかな数値は出してくれる。
しかしサイズの制約もあり精度が悪く、正確に当てるには、艦娘自身による光学観測並びに自身の経験と
そして、長門はその点、ベテランであった。
「打方、始めェッ!!」
轟音。
41センチ連装砲4基8門の大火力が唸り、原色の赤と橙で塗られた演習弾が飛翔する。
そしてそれは、上空のCAP機からも観測されていた。
『Cougar7, Redeye
余談であるが、Redeyeとは、艦娘による攻撃の
そうこうしているうちに弾着、仮想敵艦を務めていた瑞鶴の周りに水柱が上がり、余りの至近弾な上、降りしきる視認性向上のための染料の雨に、情けない悲鳴が漏れる。
「ギョエーッ!....なんて精度なの!?」
そして、通信からは口笛。
今回CAPを担当していたのは、ゴスホーク組(RIOを含む為数える際は”組”となる)とレイマン組の2機である。
口笛は、ホークのものだ。
『Rounds on target, 敵空母撃沈....凄いな、一撃で夾叉か!』
「ありがとう。だが作戦中の私語はどうかと思うぞ、大尉」
『いっけね、開放回線....』
そうは言いつつ長門、まんざらではない。
続いて、CDCからも通信が飛ぶ。
『戦艦長門・主砲射撃訓練を終了、続いて秋月・初月両名の対空攻撃訓練に移行する。長門とアグレッサーの瑞鶴は帰投、秋月・初月はその場で待機せよ』
「「了解!」」
「....では二人とも、先に戻っているぞ。頑張れよ」
「はい!」
「了解!」
二人の返事を聞き届けて着艦コースに入る長門に対し、秋月・初月は長門の方から向き直り、空を見据える。
「行くよ、長10cm砲ちゃん....」
「望むところだ....!」
なんせジェット戦闘機との交戦はこれから始まる演習をを入れてもたったの2度、新鮮な体験への期待と、リベンジへの渇望から来る余りの興奮に、二人して口角が吊り上がっていた。
そして二人の奮起に応え、言葉は発さずとも身振り手振りで十分な戦意を伝える、珍妙な武装達....いや、どちらかというと攻撃能力を持ったR2-D2といった趣か。
いわゆる、自律型兵装である。
「島風」タイプと「天津風」タイプ等一部の陽炎型系列以外には、最新タイプである秋月型にしか配備されていないものであった。
しかし口角の吊り上がりは、
もっともこちらは少々異なる理由であったが。
なんせ─────
『レイマン、ECMをRPTモードに入れろ』
『了解!』
彼らは、対艦攻撃のプロフェッショナルである。