閃乱カグラ 小さな先生と忍学生たち   作:ダーク・リベリオン

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引きこもりの物心

 

――PM:室内演習場――

 

 

とある日、いつものように忍学生たちが長門の教育を受けていた

 

 

授業の内容は実戦を想定した組み手であり、生徒たちはそれぞれの相手と模擬戦を行なっていた

 

 

忌夢「さぁ紫、遠慮はいらない、全力でかかってこい!」

 

 

紫「う…うん…」

 

 

そんな中、忌夢と相対するのは妹である紫だった

 

 

気合い十分に棒を構える忌夢と対照的に気乗りしてない様子の紫が構える

 

 

忌夢「いくぞ!どりゃあっ!」

 

 

紫「――っ!!」

 

 

向かってくる忌夢に挑もうとする紫が飛び込んでいく

 

 

 

バキン!

 

 

 

紫「うっ…うぅっ…」

 

 

だが、勝敗はすぐに決した。忌夢の圧勝だった

 

 

紫「…や、やられちゃった」

 

 

倒れていた紫が起き上がる

 

 

紫「おい紫!」

 

 

忌夢「…おっ、お姉ちゃん?」

 

 

するとそこには紫に対して怒りの表情を向ける忌夢が立っていた

 

 

忌夢「なんださっきのやられっぷりは!?仮に勝てなかったにしろもうちょっと粘るくらいの気合いは見せないとダメだろ!」

 

 

紫「ご…こめん、なさい」

 

 

怒られてしまったことに紫はショックを受けてしまっていた

 

 

 

 

しかし、事はこれで終わった訳ではない

 

 

 

 

また別の日の時のこと

 

 

忌夢「こらぁあ紫ぃいい!!」

 

 

紫「えっ?ど、どうしたの…お姉ちゃん?」

 

 

廊下を歩いている紫の元に忌夢が猛ダッシュでやってきた

 

 

忌夢「どうしたじゃない!なんだこれは!」

 

 

紫「――っ!?」

 

 

やってきた忌夢が突き出したものを見て紫は青ざめる

 

 

突き出されたのは以前行ったテストの解答結果の書かれた紙だった

 

 

答案用紙にはお世辞にもいいとは言えない結果が刻まれていた

 

 

紫「ど、どうして…それを…っ?」

 

 

忌夢「部屋まで訪ねたらたまたま見つけたんだ。こんなものを隠すなんて、しかもなんだこのひどい点数は!?まったくお前と言うやつは!」

 

 

紫「うっ…ご、ごめんなさい…」

 

 

答案用紙を隠したこととひどい点数だったことも合わさり紫は二重に説教を喰らう羽目に

 

 

 

 

 

だが、まだ事は終わらない

 

 

これまた別の日、授業として手裏剣術の練習を行なっていた

 

 

皆が次々と手裏剣を的に当てていく中、紫だけはその半分くらいしか当てられていなかった

 

 

忌夢「こら紫!なんなんだこの制度は!それでも忍なのか!まったくお前ってやつは」

 

 

紫「うっ…ううぅ…」

 

 

あれやこれやする度に忌夢からお叱りを受けてしまった紫は……

 

 

 

 

ガタン!

 

 

 

 

長門「……で、引きこもってしまったと?」

 

 

忌夢「うっ…うん…」

 

 

とうとう心を病んでしまった紫は寮にある自分の部屋に引きこもってしまい、それから今に至るまで部屋から出てきてはくれなかった

 

 

長門「…忌夢さん。少しキツくしすぎですよ?」

 

 

忌夢「ぼ、ボクはただ…」

 

 

長門「あなたの言うこともわからない訳ではないですが、怒られてばかりではやる気も下がってしまうのは必然、故にこのようなことになってしまっているんですからね?」

 

 

忌夢「うっ…」

 

 

小言を言われてしまった忌夢は自分より約一回り年下の子にそんなことを言われてしまったことに恥辱を覚えるも

 

 

言っていることが正論であることや自信でも多少自覚があったが故に何も言い返すことができなかった

 

 

長門「ともかくです。こうなった以上は仮にも教師としてなんとかしなとですからね。ここはボクが試みてみます」

 

 

教師として心を病んで引きこもってしまった紫をなんとかしてみると進言する

 

 

忌夢「な、ならボクも!」

 

 

長門「いいえ、今回は忌夢さんは待機していてください」

 

 

忌夢「えっ?な、なんで?」

 

 

自分も紫を部屋から出すのに協力すると申し出る忌夢だったが、長門はそれを丁重にお断りする

 

 

長門「事の発端であるあなたが今説得を試みようとしても逆効果になる可能性があります。だからまずはボクの方で対処してみますから、ひとまず忌夢さんは待機をお願いします」

 

 

焦りで冷静さを欠いている忌夢に対する長門なりの気遣いだった

 

 

忌夢「……わかったよ」

 

 

ここは長門に任せるほかないと忌夢も渋々それを了承し、紫を任せてその場を後にしていった

 

 

長門「…さてと」

 

 

そうして忌夢が帰った後、長門は自身のやる事を果たすべくドアの方に視線を向ける

 

 

長門「紫さん、紫さんいらっしゃいますか?」

 

 

ドアをコンコンとノックし、中にいる紫に声をかける

 

 

しかし何度かやって見ても何の反応もなかった

 

 

長門「…応答なしか、でもそれは想定内です」

 

 

こうなるとわかっていた長門は次なる手に出るべく懐をガサゴソと弄る

 

 

長門「マスターキー(テッテレテ〜テテテ〜ン♪)

 

 

懐からだしたもの、それはかねてより月光、閃光より渡されていた寮のマスターキーだった

 

 

マスターキーを出した長門は鍵穴に鍵を刺すとそれを軽く捻る

 

 

するとその直後にドアからガチャっという鍵の開いた音が聞こえた

 

 

長門「紫さーん、入りますからね!」

 

 

ドアが開いたのを確認し、入室する前に念押しで長門が部屋の中にいる紫に声をかける

 

 

当然向こうからの反応は未だにない

 

 

長門「…では失礼します」

 

 

声かけを終えた長門が満を辞してドアノブを捻り扉を開く

 

 

長門「お邪魔します」

 

 

ドアを開けるとともに声をかけながら入室する

 

 

部屋に入ってみるとそこは電気をつけていないのかかろうじて見える程度に薄暗かった

 

 

長門「紫さんは…この奥ですね」

 

 

薄暗い部屋の奥の部屋から漏れる明かりを見た長門は意を決して紫がいる方に向かっていく

 

 

歩いている最中に左右にはビニール袋に詰め込まれたゴミの山が積まれていた

 

 

なんとかそこを通り抜けた長門は部屋の扉の前までたどり着く

 

 

長門「紫さん。紫さんボクですけど?」

 

 

扉の向こうに語りかけても特に反応はなかった

 

 

長門「…仕方ない。では失礼します」

 

 

応答がない以上は仕方ないと長門はドアを開けて部屋か入ってみる

 

 

長門「おじゃまします」

 

 

恐る恐る扉を開けた長門がその先の光景を目にする

 

 

そこには寝布団の上に座り、頭に掛け布団を被りながらゲームに勤しんでいる紫がいた

 

 

どうやらこちらには気づいていないようだった

 

 

長門「紫さん?」

 

 

声をかけながら近づくも反応がなく、ちらっと見てみるとヘッドフォンをしていた

 

 

いくら呼びかけても反応がない理由を悟った長門はならばと彼女に近づく

 

 

長門「…っ」

 

 

紫「……えっ?」

 

 

長門「こんにちは紫さん」

 

 

接近した長門がちょんちょんと指でこづくとようやく紫が反応し、長門の方に視線を向ける

 

 

数秒の沈黙が部屋の中に流れる

 

 

紫「きゃ、きゃぁああああ!?」

 

 

長門「まぁ、そうなりますよね」

 

 

自分の隣に長門がいることに気づいた紫はとてつもないほどに驚いていた

 

 

紫「えっ…えっ、ええっ!?せ、せせせ、先生!?」

 

 

長門「はい、先生ですよ」

 

 

困惑する紫の声に長門は返事を帰すのだった

 

 

 

 

紫「あっ、あの……どうぞ」

 

 

長門「ありがとうございます」

 

 

あれから少しして紫と布団の上で向かい合うように長門は座していた

 

 

そうして紫がボトルから紙コップに注がれたお茶を差し出され、長門はそれをありがたく受け取った

 

 

紫「と、ところで…どうして先生が、私の部屋に?鍵が掛かってたはずなのに?」

 

 

まだソワソワしている紫が警戒心を臭わせながら問う

 

 

長門「マスターキーを使ったんです、それで入りました」

 

 

紫「あっ、もしもし警察ですか?不法侵入です」

 

 

長門「待って待って、ボクたちの立場上警察はまずいですから!?」

 

 

スマホを取り出し110番に電話をかけようとする紫に長門はツッコミを入れた

 

 

長門「だいたい不法侵入と言いますがさんさん呼びかけているのに反応を示さなかったのは紫さんのほうですからね?」

 

 

紫「そっ、そんなこと」

 

 

長門「ヘッドホンつけて耳を閉ざしていたあなたが何を言おうとも言い訳にしか聞こえませんからね?」

 

 

紫「うっ…」

 

 

不法侵入ではないと訴える長門にヘッドホンをつけて呼びかけを聞いていなかったことを指摘されて紫は論破されてしまった

 

 

紫「……ど」

 

 

長門「…っ?」

 

 

紫「どうせ、お姉ちゃんの差金…ですよね?」

 

 

すると紫は話題を変え、長門がここにいるのは忌夢が関与していることを指摘する

 

 

長門「確かに忌夢さんからあなたのことを相談はされましたが、ボクがここにいるのはボクがそうしたいからしたことですから」

 

 

紫「…どうだか?」

 

 

理由を聞いた紫だったが、未だ疑いの目は拭えなかった

 

 

紫「ともかく、私は何があろうと出るつもりはありませんから…帰ってくれませんか?」

 

 

自分は動かないと告げると再びゲームをし始めてしまう

 

 

そうしてゲームのプレイを再開した紫だったが、不意に隣から何か違和感を感じて再び視線を向けた

 

 

長門「……っ」

 

 

紫「…っ?」

 

 

見るとそこには自分がやっているゲーム画面に釘付けになっている長門がいた

 

 

紫「…先生、もしかしてゲームに興味あるんですか?」

 

 

長門「えっ?あっ、いえごめんなさい…そうですか、これがゲームっていうものなんですね?ボク、ゲームって見るの初めてです」

 

 

画面に映るゲームに長門は興味津々な様子だった

 

 

紫「……よかったらやりますか?コントローラーならまだありますし」

 

 

長門「いっ、いいんですか?」

 

 

紫「はい…このゲーム対戦もできますから」

 

 

長門「…じゃ、じゃあ…少しだけ」

 

 

ここで紫が一緒にやろうと提案し、コントローラーを渡してきたので長門はそれを受け取る

 

 

紫「最初はプラクティスから始めましょう…まだ、操作もわからないでしょうから」

 

 

長門「あ、ありがとうございます」

 

 

どうすればいいかを紫が長門にいろいろと教えていき、少しずつだが、操作を教えて行った

 

 

そしてある程度まで練習を終えた長門は紫との対戦に望んだ

 

 

長門「いけ!そこです!よし、この調子でゴールまで!」

 

 

紫「そうは…させません!はい、赤甲羅!」

 

 

長門「うわー!?」

 

 

紫「はい、ゴールです」

 

 

ゴールまでもう少しのところで邪魔をされ、紫に先にゴールされてしまった

 

 

長門「あぁ…あと少しだったのに、これで10敗目です」

 

 

紫「ふふふっ、まだまだ…と、言いたいところですが…正直さっきのは赤甲羅が来なかったら危なかったですよ。最初より随分と、上手くなりましたね」

 

 

長門「本当ですか!やった!」

 

 

上手くなったと喜ぶ長門の姿は普段からは想像もつかないほど「子供」であった

 

 

紫「(…そうだ。先生は…)」

 

 

そこまで考えていたところで紫はハッとなる

 

 

自分たちにとって先生であり、その肩書きに埋もれがちになってしまっていたが

 

 

本来であれば長門の年齢から考えるとこんな風に無邪気に笑ってゲームをしたり、誰かと一緒にいることの方が当たり前なのだ

 

 

紫「(でも、ここに来るまではずっと戦ってたん…だよね。いろんな忍務をこなしてきたんだよね)」

 

 

以前話しに聞いていた長門の境遇、その時は特にどうとも思わなかったが

 

 

こうして話をして人柄を知るほど彼が如何にらしからぬ人生を送ってきたか想像すると胸が苦しくなる

 

 

過酷な日々を生き抜いていたこの少年に比べたら自分は何だと自問自答をしていた

 

 

長門「紫さん?」

 

 

紫「――っ!?」

 

 

長門「どうかしたんですか?」

 

 

考え込んでいた紫が長門の声ではっと我に返った

 

 

紫「いえ…先生はすごいなって、なんでもできて、すごくって…それに比べて私はどうだって、ちょっと失敗したくらいで、怒られたくらいで臍曲げて…こうして引きこもってゲームばっかりしてる。そう…考えてしまって」

 

 

心配している長門を見て紫はついつい心の内を明かした

 

 

長門「ボクは紫さんが思っているほど凄くはないです。それにそんなに気に病む必要はありませんよ」

 

 

紫「えっ?」

 

 

長門「誰だって得意不得意はあるものです。失敗したら悲しいし、怒られて落ち込んで嫌気がさして逃げてしまうことなんて誰にだってあることですから、時にはそんな時も必要なこともあります。大事なのはその失敗をバネにどう今後に活かすかが重要なんですよ」

 

 

紫「失敗をどう活かすか…」

 

 

否定も肯定もされた訳ではない、しかし紫にとってこの長門の言葉は彼女の心に何かを感じさせるほどに響いた

 

 

長門「ボクから言わせてもらえば紫さんだってすごいです」

 

 

紫「私が…すごい?」

 

 

長門「はい、ボク今までこんなにも負けたことってあんまりないんです。負けて悔しいってこんな感じなんだなってしばらく忘れてました。でもそれ以上にゲームがこんなに楽しいんだって知りませんでした」

 

 

敗北の悔しさや盛り上がれるほど楽しいと言う感覚、忘れかけていた想いを取り戻せたのは紫のおかげだと告げる

 

 

長門「紫さん…ありがとうございます」

 

 

紫「……っ///」

 

 

屈託のない心の底からの感謝の言葉、その言葉を聞いた瞬間、紫は心の内からドキッとした感覚に襲われ、頬を赤らめた

 

 

長門「あ、あの紫さん?どうしたんですか?顔が赤いですよ?」

 

 

紫「いっいえ、なんでもありません!?そ、それよりもほら次の勝負をしましょう」

 

 

長門「はいわかりました。今度こそ勝たせてもらいますからね!」

 

 

紫「ふふっ…そう簡単に、勝たせては…あげませんよ」

 

 

なんとか話題を逸らし、ゲームの方に持ち込んだ紫はその後も何回も長門と対戦を行うのだった

 

 

 

 

 

忌夢「おーい。紫、先生?」

 

 

あれからいくらかの時が経った頃のこと

 

 

2人のことが気がかりだった忌夢がしびれを切らして紫の部屋を訪れていた

 

 

忌夢「…返事がない。やっぱりダメだったのかな?」

 

 

不安を感じながらも徐に忌夢がドアノブに手をかける

 

 

 

ガチャ

 

 

 

忌夢「…あれ、開いてる?」

 

 

なんとなく捻ってみるとドアが開いたことに忌夢は驚く

 

 

どう言うことかはわからないが、これをチャンスと捉えた忌夢は意を決して部屋に入る

 

 

忌夢「紫、いるのか?」

 

 

ドアを開けて部屋に入った忌夢が紫の名を呼ぶ

 

 

道中、ゴミの山に思うところはあれど奥の方へと進んでいく

 

 

忌夢「…紫?」

 

 

恐る恐る紫がいるであろう奥の部屋のドアを開けて中を伺う

 

 

忌夢「……えっ?」

 

 

するとそこで忌夢は予想外のものを目にする

 

 

長・紫「「すぅ…すぅ…」」

 

 

そこには仲間と紫が隣り合わせの状態で気持ちよさそうに眠っていた

 

 

眠る2人の手にはコントローラーとDRWで終わったゲームの対戦画面が映っていた

 

 

忌夢「…ふふっ、全くしょうがない奴らだな」

 

 

2人の様子を見て忌夢はなんだか微笑ましいと言った感情が浮かび

 

 

しばらくの間、寝静まる2人に見入っているのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以降のこと、紫の成績は以前よりも良くなり、忌夢も言い過ぎていたことを謝罪したことにより

 

 

無事に紫は復帰することができたのだった

 

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